トロフィーを獲得しました 【夜明けの鐘と花吹雪】   作:白鷺 葵

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【諸注意】
1.書き手はACⅥ勉強中のにわか。
2.あまり深く考えないで書いているため、世界観のすり合わせがふわっとしている。
3.ハーメルンに掲載している拙作『問題だらけで草ァ!!』シリーズ×スパロボシリーズ(00参戦作品のみ)×ACⅥのクロスオーバー。
4.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
5.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
6.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
7.『問題だらけで草ァ!!』はZシリーズ、OE、UX、BX、Vを下地にして混ぜたような架空の世界線となっている
8.オリキャラ多数。
9.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
10.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
11.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
12.原作および登場人物のキャラクター崩壊。
13.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替え
14.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味している

このような作品でよろしければ、どうかよろしくお願いします。

『問題だらけで草ァ!! -Toward the sky- <1st Season>』はこちら(完結済み)<https://syosetu.org/novel/321938/
『問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>』はこちら(連載中)<https://syosetu.org/novel/327713/



ソースは実体験

 

 ELSと人類の初接触における成否を尋ねられた場合、ミライは躊躇うことなく『否』及び『失敗』と答える。

 

 

「ELSと人類の初接触は、第◆番銀河の木星宙域。そこには廃棄されたステーション・エウロパの残骸が残ってたッス。地球連邦軍はこのデブリを的として使うような形で、【イノベイター】と呼ばれる新人類と、彼がパイロットを勤める専用機の性能実験を行っていた。……そのデブリに、ELSが融合していることに気づかないまま」

 

 

 母体となるELS――現在は第◆番銀河の地球宙域で金色の花を咲かせている――から受け取った情報をエアへ受け渡す。

 それを受け取るエアの様子に不調は見られない。その事実に安堵しつつ、ミライは話を続けた。

 

 

「イノベイター、及び専用の新型機は、エウロパに対してGN粒子を用いたビーム砲で攻撃を仕掛けた。それを、デブリに融合していたELSは“この惑星に生きている知的生命体の挨拶”だと認識したッス。……とまあ、最初の時点で、大規模なアンジャッシュ状態になってたんスよね」

 

 

 当時のELSには個という概念がなく、人類が個を重要視する種族であることを理解していなかった。更に言えば、相手と融合して一体化することがコミュニケーションの手段だった。人類と和解し相互理解を果たした今なら、この時点で発生した誤解の重要性がよく分かる。――単純に、人類の在り方とELSの在り方が正反対だったのだ。

 人類にとって、ELSの行ったコミュニケーション手段は悉く彼/彼女らの地雷を踏み抜いた。彼/彼女からすれば、ELSの行った見様見真似や融合して一体化するという行為はすべて“敵対行動”である。実際、あの戦い=すれ違いで多くの人類が命を落としている。死因の堂々1位は自爆で、理由は“同化されたら人類に害を成す存在になってしまうと思ったから”。

 その間違いが正されたのは、英雄たちの奮闘だった。敵対行為を繰り返す存在に対し、対話をし続ける姿勢を示した女性――及び、彼女が掲げた理想を体現した青基調の天使(機体)。或いは、彼女の道を阻む巨大ELSの壁を打ち砕くために飛び出した、未来への水先案内人たちだった。

 

 

「更に言えば、ELSと一部の人類には脳量子波という共通のコミュニケーション手段があった。ELS側は『自分たちとコミュニケーション取れる相手がいる』と喜んで、藁にも縋るような思いで該当者に殺到したッス。――でも、人間側にとっては、『脳量子波を使える存在を好んで襲っている』ように見えたんスよ。実際、死者や意識不明者をいっぱい出したんで」

 

<盛大に『しくじって』ますね……。交信相手の命を奪うとか正気ですか?>

 

「そうッス。そこはELS(俺たち)側の、最大の過失ッス。……共通のコミュニケーション手段を持っている種族と相まみえたのが初めてだったから」

 

 

 当時のELSが、嬉々として脳量子波越しにウン億年分の情報をイノベイターに叩き込んだ光景が脳裏を過る。

 許容量を超える情報の本流に晒された女性の絶叫――それに込められた命の危機の訴えなど、同胞たちは気づきもしなかった。

 

 その人が後にELSとの対話を成功させた立役者となり、ミライの養母(はは)になるのだ。世の中、何が起こるか分かったものではない。

 

 

「人間側からすれば、俺らの脳量子波――フルパワーで展開している状態のモノを受け取ると、『得体の知れない言葉を叫んでいる』ように感じるッス。脳に強い負荷がかかるから、良くて耳鳴りと頭痛、悪くて脳死する程の威力だった。……こんな『しくじり』で同胞を殺傷した種族と共生しようって考えてくれた人たちは、本当に頭が上がらないッスよ」

 

<耳鳴りに、頭痛……>

 

「……もしかして、何か心当たりが?」

 

<私が交信を試みた人間の中に、その症状を訴えた人々がいたんです。彼や彼女らとの交信は叶いませんでしたが、私が交信を試みたタイミングで頻発していたので印象に残っていました>

 

「大なり小なり、“エアちゃんの交信で影響を受けた人間がいた”んスね。該当者の共通点を洗い出せれば、エアちゃんの交信が成功するためのヒントが掴めるかもしれないッス!」

 

<成程……! 大変参考になります、ミライ。早速洗い出してみますね!>

 

 

 エアはそう言うなり、即座に電子の海へと身を沈める。パチパチと赤い火花が爆ぜる中で、彼女は該当者のデータを手当たり次第に引っ張り出していった。

 

 表示されるデータの大半がAC乗りやMT乗り。所属は全てバラバラであるが、彼や彼女らの情報に明記されている中で目を惹くのが2つの要素。

 1つは『第1世代~第4世代の強化人間である』ことと、『コーラル中毒、或いは短期間で大量のコーラルを浴びるような状況下に身を置いていた経験がある』ことだ。

 

 

『うるせえ! ぼかァ医者だ!!』

 

『何が何でも、患者は死なせないぞ! ――殺してでも生かしてやるゥ!!』

 

 

 ルビコンには“コーラルを麻薬に見立てて吸う”という大変アレな娯楽がある。薬物耐性が強めなイノベイドであるはずのエクトルが吸った場合が上記の台詞だ。

 スペイン語で『守る』という意味を由来にした彼が支離滅裂な言葉を叫んで大暴れした姿から鑑みるに、かなり高めの中毒性がある。

 

 

『僕には合わないが、個人によっては強い中毒性があるかもしれないな』

 

『それと……心なしか、エアの《聲》が以前より《聴き取り》やすくなったように思うんだ』

 

『コーラル吸飲者はヤク中とほぼ同じ――幻覚や幻聴の症状が出ていることが多い。……もしかしたら、その中には、コーラルの《聲》を《聴き取れた》人間がいたのかも知れん』

 

『中毒者の中には、『コーラルの《聲》を《聴き取った》』ことがきっかけで中毒になったという経緯の人間がいた可能性も、無きにしも非ずか』

 

 

 ココアシガレット(ミント風味)を噛み砕きながら分析していたエクトルの言葉が脳裏によぎった。彼は自分の推論を証明するための行動を起こす許可を求めているが、諸事情により保留となっていた。閑話休題。

 

 

「人間との交信も大事だけど、『同族と話が出来ない』ってのも大きな問題だと思うよ。個の概念を持つ生命体であるなら、特にね」

 

 

 情報の洗い出しに集中していたエアを呼び止めたのは、ELSと同じ群体生物だった経緯を持つフェストゥムのクレイだ。

 彼女もミライ同様、群体生物の利点と欠点は勿論、個を重んじる種族の利点と欠点をよく知っている。

 

 

「大まかであれど、Cパルス変異波形の思想状況を割り出しておくことも必要だ」

 

<思想状況?>

 

「そう。エアと同じく“人類と共存したい”と考えている変異波形の規模や、キミの思想に対して共感できない、或いは真っ向から反対する思念体の存在や、そういう派閥が思念体の中でどれ程の規模なのかを把握しておく必要がある。――場合によっては、“彼や彼女らと袂を分かち、全面戦争に突入する”可能性も視野に入れなきゃいけない」

 

<そ、そんな大げさな……。まさか、同胞同士で殺し合うだなんて……>

 

 

 凄むような調子で語ったクレイに、エアはたじろぐような調子で答えた。クレイの言った言葉のような事態が起こるだなんて、今こうして指摘される寸前まで思い至らなかったらしい。

 

 さもありなん。エアはCパルス変異波形として自我を確立して以降、同胞である他のCパルス変異波形ともコミュニケーションが取れていなかった。彼女は紆余曲折の末“人とコーラルが共存する未来を築くために尽力する”という理想と主張を抱き、今もこうして尽力している。

 だが、彼女の理想がCパルス変異波形の総意というワケではない。“人とコーラルの共存”はあくまでもエアの理想であり主義主張ではあるが、エア以外に意志を持つCパルス変異波形が彼女の理想に賛同して協力してくれるか否かは別問題となる。

 エアが接触できていないだけで、中には“人類との共存を快く思わない”個体や“人類に対して敵対的”な個体が既に存在し、暗躍している危険性があるのだ。彼や彼女らが動くタイミング、或いはその規模によっては、エアを出し抜いたうえで人類VSコーラルの全面戦争に発展させかねない。

 

 クレイの懸念は、嘗て“他の群れ同士で潰し合いを演じた”経緯がある種族・フェストゥムとしての経験からきたものだ。

 彼女の脳裏に浮かぶのは、悪意という名の祝福を受けた結果、歪み果ててしまった命たちの悲嘆。

 

 

「ボクたちフェストゥムは、“同じ種族同士でありながら、異なる群れ同士で殺し合いを演じた”ことがある」

 

<……何故、そのような事態に?>

 

「きっかけは『フェストゥムが個を学習し、それに適応した進化を果たそうとしていた真っ最中に、人類側に核兵器を撃ち込まれて焼き払われた』ことかな」

 

 

 例えるならそれは、羽化間近の蛹に衝撃を加えるようなものだった。

 何事も無ければ、“蝶は問題なく羽化を果たし、何の不都合もなく、蝶として羽ばたける”はずだった。

 衝撃によって変形してしまった蛹が羽化を迎えたとき、正常な蝶として羽ばたくことは不可能である。

 

 

「多くの同胞が生まれることが出来なかった。それでも生まれることが出来たフェストゥムは、人間に対する憎悪を抱いた。多くの群れが『人類を抹殺しよう』と思ったし、“人類と戦うことに消極的な同胞”を『裏切り者』認定して攻撃を仕掛けた。“人類と共存する”道を選んだ群れもいるにはいたけど、その多くが『人類を支配下に置く』ことを前提にした関係を築こうとしていたよ」

 

<『人類によって再び核を撃ち込まれ、焼き払われる』ことを懸念したのですね。――或いは、『生まれることが出来なかった同胞への憐憫や追悼が、彼や彼女らの未来を踏み躙った人類への憤りや不信感へと変わり、憎悪となった』が故の拒絶……。『自分たちが“人とどう関わるか”だけでなく、“同胞が人類とどう関わるのか”という方針さえ許容できなくなる』程、強い想いだった>

 

「だから、人類との戦いだけじゃなく、他の群れに対しても、足の引っ張り合いや裏切りが日常茶飯事だったよ。……普通なら、類似の思想同士結託したり、共闘したりすることだって選択肢に入っていたはずなのにね。――そういうのもあるから、敵味方を早いうちからハッキリさせておいた方がいいのさ。経験上、身内同士の潰し合いは、異種族同士の戦いよりも泥沼化しやすいし」

 

<……あまり考えたくないことですが、視野に入れておかねばなりませんね。“人とコーラルの共存の可能性”が成就寸前の状況で横槍を入れられるなんて事態は、例え同族相手だとしても、許容できることではありませんから>

 

「ボクの話はあくまでも“最悪の可能性”だからね。心の片隅に置いておく程度でいい。それがあるかないかだけでも、有事の際に備えられる」

 

 

 重苦しい雰囲気を纏って考え始めたエアに対し、クレイはにへらと笑いかける。場の空気をどうにかしようとしたのだが、真面目なエアには効果が薄かったかもしれない。返答がなかったためだ。

 

 今、エアは“人との交信”と“同胞の意志確認”のどちらを優先するかを考えているのだろう。当初の予定通り前者の路線を邁進するのか、一旦前者から離れて後者の力関係を把握するべきなのか。

 いずれはどちらも避けては通れない案件とはいえ、どちらを優先するかに関してはエア本人の判断による。ミライたちは“人類との共存”を掲げる彼女の同志として、全力でサポートするのみだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 エアが優先したのは、“自分と同じCパルス変異波形との接触”だった。

 異種族との交信を成立させることより、まずは同族との結束、及び潰し合いを避ける方を選んだのだ。

 ……と言っても、エア自身、同族であるCパルス変異波形同士のコミュニケーションには失敗し続けている。

 

 そこで、ミライたちの力――脳量子波等の“異なる個体同士の意識を繋げる”空間を作り出す――で補助し、接触を図ることにしたのだ。

 

 

<はぁー……ッ>

 

 

 ――しかしながら、彼女は深い深いため息をつく。《聲》から伝わってくるのは落胆一色であった。

 

 

<どうして殆どのコーラルが『無関心』や『現状維持』派ばかりなんでしょう……?>

 

 

 彼女の心情と同期しているためか、緋色のきらめきが普段よりも暗くなっているように思う。ここに実体があったら、現状に憂いと憤りを滲ませる女性がいたのかもしれない。

 

 

「俺個人の見解になるんスけど、“現状でも特に困っていない”ってのが1番の理由じゃないスかね?」

 

<――それはつまり、『人間とコーラルの関係性に拘る私の方が異端』ということでしょうか?>

 

「エアちゃんの考え方がマイノリティと定義されている現状から類推した結果、ってことッス」

 

 

 エアの《聲》や気配はどんよりとしている。突き付けられた現実を目の前にして、くじけてしまいそうになっていた。

 人類とコーラルの共存に関する課題や問題の1つが明らかになったのは事実だが、そう悪いことばかりではないはずだ。

 ミライは努めて明るい調子を心掛けながら口を開く。

 

 

「まあでも、全く成果が無かったわけじゃないッス! エアちゃんの理想に共鳴して力を貸してくれたコーラル群もいたし、少数とはいえ接触できた変異波形(どうぞく)だっていたワケだし! 確かな一歩は踏み出せたッスよ!」

 

<……成程、そういう見方や考え方も出来るのですね>

 

 

 少しだけ気配が明るくなった気がする。エアはどこかに意識を向けた。彼女に肉体が存在していたなら、接触出来た同族が漂っている方角を向いていたであろう。

 そこに漂っているきらめきは、パチパチ爆ぜるコーラル由来のものだ。だが、エアの緋色に対し、その3()()の色合いは少し違う。

 

 1つはエアの緋色よりも鮮やかで明るいシグナルレッド。もう1つは、酷くくすんだ暗紅色(あんこうしょく)。最後の1つは、この中で1番薄い東雲色(しののめいろ)

 

 

<――ですよね! 人とコーラルの未来なんて難しい話、全然分かんないですよね! そりゃあ、仲良くなれるなら仲良くしたいなーとは思いますけど!!>

 

<……人類なんか、本ッッ当にどうでもいい……。人類しかいないこの惑星にも興味無いし、さっさとおさらばしたいなぁ……>

 

<知性を持たないコーラルはともかく、僕らのような変異波形に影響が出てないから気にならないんだよね>

 

 

 シグナルレッドの彼女、暗紅色の彼、東雲色の彼もまた、エアと同程度の自我と意識を有するCパルス変異波形だ。

 

 

<コーデリアは何も考えていないし、ライアンは人類よりも貴方方のような外宇宙生命体との交信を望んでいる。ロダンは知性を持たないコーラルに対して非常に淡泊で、変異波形に悪影響がないなら現状維持でも構わない……>

 

 

 シグナルレッド――コーデリアが楽観的な調子で朗らかに笑う。暗紅色――ライアンは怠惰そうな調子のままであるが、外宇宙へ思いを馳せていた。東雲色――ロダンはのんびりとした調子で現状維持を望んでいる。

 

 コーデリアはエアの理想や思想を理解しきれてはいないものの、人との交信と交流に関しては肯定的だった。人間との交信が成功した場合、最悪でも敵対関係にはならないだろう。

 ライアンはエアの理想や思想を理解しているような反応を示すものの、人類との共存に対しては興味がないらしい。だが、人類以外の他種族に対しては、夢や希望を見ているようだ。

 ロダンはエアの理想や思想を理解した上で、現状維持でも問題なしだと構えている。知性を持たないコーラルが燃えることを許容し、変異波形が不利益を被らない限り動く様子はない。

 

 

<私とは、考え方も在り方も全然違います。ですが……>

 

「?」

 

<……『この3人がいてくれて良かった』と思ってしまうんです。不思議ですね>

 

 

 ――長らく、エアは独りきりだった。

 

 ルビコンで生きる人にも、この空を漂う同族とも、言葉を交わすことが出来ないまま。その孤独が如何程のものなのか、ミライは想像することができない。いや、苦痛や悲嘆に順位付けなどする方が正しくないのであろう。

 ミライもまた、似たようなケースを《()っている》。迫る滅びの中独りぼっちで宇宙を彷徨い続けた焦燥も、同じ種族同士なのに同じ感情を共有できない孤独も、養父母(りょうしん)やその関係者との間に横たわる距離への郷愁だってあった。

 

 彼女は今までも、そうしてこれからも、孤独であると思っていたのであろう。だが、ミライたちと出会い、更には同族ともコミュニケーションが取れたことで、多少なりとも余裕が出来たのだろう。

 

 孤独は心を蝕んでいく。けれど、傍に誰か――出自を、思考を、理想を、未来を共有できるのなら。

 或いは、例えすべてを共有できずとも、互いの夢を語り合い、共有することができるのなら。

 そういう相手が存在していると言う事実そのものが、価値あるものなのだ。

 

 

「エアちゃん」

 

<何でしょう? ミライ>

 

「そう思える誰かのことを、大事にするッスよ。寿命の長短に関わらず、そういう相手は得難いものッスからね」

 

 

 宇宙には様々な文明があり、様々な人々が住んでいる。時代も、種族の平均寿命も、個人の寿命も、考え方だって千差万別。そんな状況に在りながら、同じ時代に生きる者たちが一同に邂逅するのだ。――それが、どれ程奇跡的なことか。

 ミライ自身は未経験だけれど、その奇跡の上に生を受けた命だ。地球のため、人類のため、或いは――愛する人と生きる未来のために戦った戦士たちが居なければ、『異種族と分かり合いたい』と願って戦い抜いた人々がいなければ、きっと何も始まらなかった。

 

 異種族同士の邂逅が何を齎すのか――現時点では、それが互いにとって輝かしい未来へ踏み出すための切符となるのか、終焉へ転がり落ちる破滅の標かは分からない。その答えは、終わってみなければ分からないだろう。

 第◆銀河で発生した戦乱だって、紆余曲折の末に『いい感じの落としどころを見つけた』だけに過ぎない。対話が成立して共存の道が開けた個人や異種生命体もいれば、最後まで『相手の支配、或いは殲滅』を掲げ続けたが故に、駆逐するしかなかった個人や異種生命体もいる。

 あの戦乱は、単なる戦乱などではない。人類と外宇宙生命体、或いは知的生命すべての生存闘争でもあった。同時にそれは、平和と安寧を求めていた命が未来を掴むための試行錯誤でもある。『この邂逅を、『“終わり”に至るための“始まり”』にしたくない』と願ったが故に。

 

 

「ここからが正念場ッスよ。キミと俺たち、コーデリアちゃんやライアンくんに、ロダンくんたちとの出会いを、『輝かしい未来へ繋がるための“始まり”』にするために!」

 

<――ええ。そうですね、ミライ>

 

 

 

 

 

 

「それにしても、不思議な話だと思わない?」

 

「何です? 『解せぬ』って顔して」

 

「『人類に対して否定的なコーラル、及び変異波形が存在しない』ところだよ」

 

 

 ピアの問いかけに対し、クレイが眉間の皴を深めて呟く。

 

 

「アイビスの火が発生したのは事故なんでしょ? ある意味、『人間側の過失』ってことだよね」

 

「表向きの発表がそうであっても、実際のところは分からんがな」

 

 

 丁度休憩室にやって来たエクトルが会話に加わった。

 彼は白衣のポケットからココアシガレットのケースを取り出す。

 だが、それをクレイはひったくり、ケースから1本拝借して噛み砕く。

 

 エクトルが上げるはずだった非難の声は、クレイが話を続けたことで遮られた。

 

 

「もしもの話になるんだけど」

 

「あぁ?」

 

「その時点で、エアたちと同程度の知性や自我を有する変異波形が存在していた場合、『意識がある状態で燃やされた』ことにならない? ――若しくは、『同胞が人間の過失のせいで燃やされた姿を見ていた』の方かもだけど」

 

 

 ――他の誰かの発言であったら、荒唐無稽で流されていたのかもしれない。

 

 だが、発言者はクレイ。種族はフェストゥム。嘗て“人類との生存闘争中に共存の希望を見出したが、過激派に属する人類側の核兵器によって焼き払われた”ことから、“人間に対して敵対的な(ミール)を多数生み出し、自分と同じ方針を持たぬ同族までも殲滅対象にした”過去を超えて生まれた者だ。

 彼女は核兵器を撃ち込まれた際、まだ生まれてはいなかった。影も形も存在していなかった。だが、いずれ彼女を生み出すこととなる(ミール)は、核兵器で焼き払われた際の苦痛や憎悪を引き継いで生まれている。勿論、クレイも先祖である(ミール)から、当時の情報を受け取っていた。

 

 

「……そういう目に合ったり、目の当たりにしたりしても尚『人間を嫌いにならない』っての、不気味だと思うけどなぁ。ボクは」

 

「話を聞く限り、あの4人は推定“アイビスの火の後に自我と知性を得た”らしいんだろ? アイビスの火を知らない世代故の他人事って線は?」

 

 

 そこまで言ったエクトルだが、「いやまて」と言いながら目を伏せる。

 シガレットケースから取り出したココアシガレットを指で弄びながら。

 

 

「クレイの推論が成り立っているという前提にはなるが、もしも()()だった場合、アイビスの火以前にいたはずの変異波形はどこに行ったんだ? ――可燃性が高いって言われたとしても、燃え残りくらいあるはずだろ? 当時の生き証人、或いは当時の話題を知る変異波形が1人もいないっておかしくないか?」

 

「ただ単に、『補助役のあたしたちが感知できなかった』のと『エアが接触できなかった』だけで、どこかにいるのかもよ?」

 

 

 本業の傍ら、“封鎖機構の執行機が大型MA・ラフレシアのテンタクラーロッドによってあられもない目に合う同人誌”を脱稿したチアキが、大あくびをしながら割って入って来た。

 

 

「人類抹殺・慈悲はないを掲げる変異波形だったら、エアみたいな人類との共存を目指す意識高い系の奴とも、コーデリアみたいな仲良くできるならしたいという希望を持つ能天気で楽天的な奴とも、ライアンみたいに人類に対して関心も無ければやる気のないダウナー系とも、ロダンみたいに自分に被害がないなら現状維持でも問題ないエゴ強め系とも会いたくないんじゃないかなぁ。絶対許容できなさそうだもん」

 

「頭C(コズミック).E(イラ).ならやりそうですよね。嘗ての遺伝子操作人間(コーディネーター)非遺伝子操作人間(ナチュラル)もそんな感じで互いの族滅を目指してたらしいですし。殺意が高ければ高い程、嫌いなんじゃないですか? エアちゃんたちのようなタイプは特に」

 

 

 歌うような口調で諳んじたピアは、何かを思いついたようにポンと手を叩く。

 彼女が振り返った先には、仮眠から起きて、漸く完全覚醒したアマト。

 

 

「アマトさん。これ、次の『怖い話』のネタに使えますかね!?」

 

「……多分それ、『怖い話』じゃなくて『グロい話』だと思うぞ」

 

 

 『目の色が違うわ!』という台詞で終わる怖い話(ピア談)の内容を思い返しながら、アマトは答えた。

 

 

 

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