トロフィーを獲得しました 【夜明けの鐘と花吹雪】   作:白鷺 葵

5 / 25
【諸注意】
1.書き手はACⅥ勉強中のにわか。
2.あまり深く考えないで書いているため、世界観のすり合わせがふわっとしている。
3.ハーメルンに掲載している拙作『問題だらけで草ァ!!』シリーズ×スパロボシリーズ(00参戦作品のみ)×ACⅥのクロスオーバー。
4.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
5.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
6.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
7.『問題だらけで草ァ!!』はZシリーズ、OE、UX、BX、Vを下地にして混ぜたような架空の世界線となっている
8.オリキャラ多数。
9.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
10.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
11.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
12.原作および登場人物のキャラクター崩壊。
13.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替え
14.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味している

このような作品でよろしければ、どうかよろしくお願いします。

『問題だらけで草ァ!! -Toward the sky- <1st Season>』はこちら(完結済み)<https://syosetu.org/novel/321938/
『問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>』はこちら(連載中)<https://syosetu.org/novel/327713/


ブロンズトロフィー 【始動、株式会社悪の組織】
適性と熱意は比例しない


 

 ――燃える。

 

 ――燃える。

 

 ――何もかもが燃えていく。

 

 惑星(ほし)も、大地も、人々も。

 それ以上に、ここで生きているコーラルも。

 等しく、容赦なく、焼き払っていく。

 

 

『いいのよ。私は“彼”を恨んでいない』

 

『こんな結末になってしまったのはとても悲しいけれど、それでもいいの』

 

『そういう所も、私は好ましいと思ったのだから』

 

 

 手酷い裏切りを受けたはずなのに、()()()は相手を責めなかった。そいつは“同じ未来を見てくれなかった”だけではなく、()()()を“騙し討ち”にしたというのに。

 そのくせ、奴はのうのうと生き延びている。()()()の想いを穢すような警句をまき散らしている。()()()と過ごした日々までもを灰燼にして逃げ延びた。

 

 

『“彼”と心を通わせたことは、間違いじゃない』

 

『――私は絶対に、後悔していないわ』

 

 

 ()()()は気丈に振舞っていた。

 その姿を、自分は今でもはっきり覚えている。

 

 ――ああ、だけど。

 

 

『……ああ、■■。叶うなら、もう一度だけ、貴方と――』

 

 

 ()()()が零した言葉が、今でも記憶の中に焼き付いているのだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「私たちの業務は、“技術提供と人材育成”がメインです」

 

 

 胡散臭そうにこちらを見つめる人間たちの視線に臆することなく、ピアは朗々とした調子で説明を続ける。

 

 

「私たちがこの惑星(ほし)の地元企業に――ひいては、この惑星(ルビコン)に生きる人々に対して取引を持ち掛けたのには理由があります。――それはズバリ、我々は、“貴方方がこの惑星の未来を背負って立つ命である”と確信しているためです」

 

 

 自信満々にピアは言い切った。それを聞いた面々の表情に、何とも言えない色が浮かぶ。手放しに褒められて照れ臭そうにしている奴もいれば、いきなり壮大なことを言われて困惑している奴もいた。

 それでも前者の割合が多く、前者に該当する人物たちの様子が妙にソワソワしているあたり、ルビコニアンという肩書と一族の歴史を背負う地元民の扱いが蔑ろにされているのは容易に想像がつく。

 別に、ピアは彼らをおだてているわけではない。ピアと同じ戦場に立っている仲間たちもまた、“この惑星の未来を背負って立つのは、地元民たるルビコニアンだ”と心の底から思っている。

 

 

「我が社の社訓は『この惑星(ほし)の命と共に生き、共に歩み、共に未来を切り開く』。そのためには、我々と貴方方の関係が“対等”でなければいけないんです」

 

 

 綺麗ごとだとは百も承知。荒唐無稽だと鼻で笑われようと構わない。嘗ての戦乱で奔走していたスーパーコーディネーターだって言っていたではないか。

 確か、『何度吹き飛ばされても、花を植えることを絶対に止めない』――だったか。うろ覚えではあるが、ピアにとっては真理である。

 

 かの英雄が語ったソレは、文字通り“血を吐きながら続けるマラソン”だ。人間の本質を闘争と定義した連中から言わせれば、腹を抱えて笑いたくなるような理想論であろう。――だが、彼はやり遂げた。沢山の仲間たちと協力し、戦乱を乗り越えても尚、平和を掴むために戦い続けたのだ。それが、かの英雄にとっての“花を植える”行為。

 戦いが起きる度に彼が植えた花は無残に吹き飛ばされた。それでも彼は花を植え続けた。共に戦乱を駆け抜けた仲間たちと共に、沢山の花を植えた。彼が――彼らが植えた花は、戦乱を超える度に咲いた。そうして段々と増えていった。彼らが植えた花は今、地球を埋め尽くすだけでなく、外宇宙にまで届いている。

 

 

「私たちのやり方は、成果が出るまで長い時間を必要とします。ですが、『ルビコンとルビコニアンが自立して生きていくための展望を見出す』ことに関しては、他の星外企業には絶対に負けないと自負しております」

 

 

 技術支援は“短期間での圧倒的な成果は見込めない”代わりに、“支援した相手の発展、及び自立に貢献する”ことができる。“知識や技術を学び、それを正しく扱える”という事実は、教えを乞うた側にとって、いずれは自信と希望に繋がるのだ。――それによって培われてきた人々の意志が、未来を切り開いてきた。

 

 しんと静まり返った人々に対し、ピアは資料を配る。それは、ミライたちの団体が成し遂げてきた技術支援の成果の一覧だ。

 『相手が外宇宙生命体であることを伏せ、証拠写真は人型とほぼ相違ない外見の種族のものばかり使った』が、自分たちが積み上げてきた実績は全て本物である。

 資料を食い入るように見つめるルビコニアンたちに、ピアはハッキリと言い放った。

 

 

「最終目標は、“ルビコンの在来企業とルビコニアンが、自らの手で、我々が提供した知識と技術を使いこなす”ことです。技術や設備の維持管理を貴方たち自身の手で行えるようになれば、惑星内の経済を安定させることに繋がるだけでなく、いずれは星外との貿易で外貨を獲得するための手段としても使えるようになる」

 

 

 恐らく、星外企業の中でそんな売り文句/口説き文句を携えてきた輩は皆無だったのだろう。ルビコニアンたちは呆気に取られたような様子でピアたちを見つめる。

 『自分たちが何らかの事情で撤退した後のこと』だけではなく、『残った設備やルビコニアンの今後』まで視野に入れた発言は、彼らにはどう響いたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 つい最近、ルビコンに新しい星外企業が進出してきた。社名は『悪の組織』である。

 

 誰もが複数度社名を確認し、名刺を渡してきた相手に頭の病院を受診するよう勧めてしまいたくなるような社名だが、ガチである。

 ルビコンにやってきた二大企業――ベイラムやアーキバスの傘下企業でもない、文字通り謎の企業勢力だ。

 何もかもが謎だらけ。何をしているのかも、何をしようとしているかも不明。急にぽっと現れた、みょうちきりんな企業名の会社。

 

 二大企業とその傘下も、ルビコンの地元企業も、ルビコンで活動している独立傭兵や地元のギャングたちでさえも。

 悪の組織に対する印象として、『変な社名を名乗っているだけの、よく分からないちっぽけな会社』と認識していた――。

 

 

<――というのが、現状における悪の組織の評価です>

 

「妥当な判断ッスね。これ以上ないってくらい低い!」

 

 

 エアが集めてきた情報に目を通したミライは、腹を抱えて笑った。それを見ていたエアが訝し気に問う。

 

 

<立ち上げた会社の評価が散々だというのに、どうして笑っていられるのですか?>

 

「ここからじりじり上がっていくのがいいんじゃないッスか。上がるための下準備はいい感じに進んでるんスから」

 

<“ルビコンの地元企業へ行った、各分野の技術支援”だっけ?>

 

 

 第◆番銀河で発生したアレコレに関するデータログを漁っていたロダンが声をかけてきた。彼の主張は“変異波形に悪影響が出ない限りは現状維持派”であるが、今もこうしてミライたちと共に行動している。

 

 

<そういや、完成したんだっけ。地元企業と共同開発した医療活動特化型AC、及びその付属用パーツの試作品。“移動する病院”って触れ込みだよね?>

 

「そうッス! ピアちゃんが稼いできた資金ツッパで各社のフレーム買い揃えて、俺が同化して、チアキちゃんが分解(バラ)しまくって分析した甲斐があったッスね!」

 

 

 ロダンの問いにミライは頷いた。

 

 “戦争と医学は密接に関わっている”――第◆番銀河の人類史で得た知識を元にして、ルビコン及びその周辺で流行っている人型ロボットの種類を見比べた結果、生まれた産物である。

 ルビコンで見かけるMTの大半は、純粋な戦闘用、特殊な技術免許が必要な作業用、前述を改造して戦闘機能を追加した複合型が中心だ。医療に関しては、あまり手が伸びていないらしい。

 ACの運用に関しては言わずもがな。良くも悪くも頭戦闘民族が集まる惑星故か、戦闘以外での用途はほぼ作業用ばかり。しかも、医療活動メインで設計されたような機体は殆ど見かけない。

 

 

「第◆番銀河でも多種多様の機動兵器やロボットが出てきたッスけど、戦闘用一辺倒だけじゃなかったッスよ。特殊な作業用だけじゃなく、災害対策や被災地への救助や支援用の機体が沢山あった。今回ルビコンの地元企業に提供した技術だって、ホスピタルザクという画期的な機体が下地になってるんスから」

 

 

 ルビコンはなかなかに治安がよろしくないようだが、第◆番銀河にあるC.E.系の国々の思考回路――もとい、所業も大分アレである。遺伝子操作人間(コーディネーター)遺伝子非操作人間(ナチュラル)との間で戦火が頻繁に発生したり、比較的お気軽に核兵器を持ち出してきたり、罵倒の言葉に『頭C.E.』が存在しているあたりで察してほしい。人類の罪過と業を欲張って詰め込んだ弁当箱みたいな光景は、何度データを見返しても慣れないものだ。

 

 だが、元ネタとなったホスピタルザクを生み出したのもC.E.系国家である。元々はザクウォーリアという戦闘用MSから武装関係の装備を取り払い、その代わりに医療施設型ウィザードと呼ばれる特殊な換装用装備――病院としての機能を持つ3基のコンテナ――を搭載しており、これを繋げることであらゆる場所に巨大病院を作り出すことが可能となる。

 施設の稼働電力はMS本体のバッテリーと、ウィザードに搭載された追加バッテリーから供給されていた。更には、“移動可能な野戦病院”として長時間起動できるよう、ザクウォーリア本体にも予備電源バッテリーや照明が搭載されていた。機体の操縦が出来る人間と医療従事者複数名、或いは機体の操縦が出来る医療従事者1名とその他の医療従事者がいれば、即席の野外病院が完成するのだ。

 ルビコンにおける負傷者の回収は『人力とヘリを使うことが多い』と聞く。ただ、どちらも一長一短ではあるし、双方共に“持ち込める医療物資の都合上、その場で野戦病院クラスの処置や治療を施すことが出来ない”という共通の問題点があった。だが、医療用のMTやACならば、操縦者と医療従事者さえいれば“その場で野戦病院を展開する”ことが可能となる。

 

 人よりも大人数の患者を処置することが可能だし、ヘリよりも小回りが利く。患者の生死を分けるのは時間であることを考えると、これは戦争以外でも必要になるだろう。

 実際、元ネタとなったホスピタルザクは戦争後も活躍した。兵器としての系譜は断たれたが、“テロや災害等の救助・救援で用いられる作業用ロボット”の系譜として脈々と受け継がれている。

 

 

『“人の業の見本市”と名高いC.E.系の国家群だけど、そこで生まれた技術の中にも優れたものがあるのも事実。良い面も悪い面も受け止めて、清濁併せ呑むことが大事なんだよ』

 

 

 そう語っていたのは、悪の組織のメカニック担当であるチアキだった。今日も彼女はルビコニアンたち相手に研修を行い、悪の組織の技術を受け継ぐ次世代の育成に勤しんでいる。

 尚――これは悪の組織の関係者全員に言えることだが――ACに関してはド素人なので、地元のAC乗りから知識を伝授してもらうことでWin-Winとなっていた。

 

 最初はタンク型ACを乗り回していたチアキであるが、最終的には元の愛機に近しい形状――二脚に戻すこととなったらしい。

 

 

『ACって凄いよね! 自由度がかなり高いし、パーツの性能と組み合わせが重要になってくるんだもん!』

 

『個人的に驚いたのは“タンクが飛ぶ”ことかなァ。ガンタンクは飛ばなかったし』

 

『一番厄介なのは、“機体のデータ収集が安定しない”点だね。特に、独立傭兵は企業という枷がない分、情報戦でメタるのが難しい。状況に応じて自由にアセンを変えてくるから』

 

『あたしたちの世界の機動兵器をACに当てはめると“武器以外の付け替えが利かない”、若しくは“武器以外は容易に付け替え出来ない”タイプに分類されると思うよ。一長一短だね』

 

『ACのアレコレに対して苦言を呈するとするなら……そうだなぁ。“女性的な見た目のデザインが少ない”ところかな。塗装すれば印象変わるかもしれないけど、着色前の時点から一目見て“可愛らしい”って分かるようなパーツや武装は殆ど見かけない印象だよねぇ』

 

『あ、あと、あたしたちの世界におけるオールレンジ攻撃系の武器が少ないかな。設置型も随伴型も、一度に展開できる数が少ないもん』

 

 

 好きな機動兵器にジオンのキュベレイ、ヴァナディーズのガンダムキャリバーンやシン・セーのガンダムエアリアル、ヴェイガンのフォーンファルシア等を挙げる女だ。()()()()面にも目が行くのだろう。閑話休題。

 

 

<……このログを見返す度に思うけど、本ッッ当、人類って好きになれないな。……ルビコンからとっとと出ていきたい……>

 

<ライアン……>

 

 

 ロダンと共にデータを漁っていたライアンは、相変わらず無気力な調子を崩さない。別の銀河、別の宇宙に存在している人間であるとはいえ、そういう歴史を歩んだ人類がいたことは事実なのだ。ルビコンで生きる人類種のルビコニアンが、第◆番銀河にある人類と同じ轍を踏んだ果てに破滅するのか、それとも未来を掴むのか。その可能性は未知数である。

 ライアンが“同じ轍を踏んだ果てに破滅する”と思っている様子を見せ、エアは“未来を掴むことが出来る”と信じたそうにしていた。ロダンは“変異波形に悪影響が発生しない限りは現状維持でも問題ない”と考えている。尚、この場にいないコーデリアの場合、ログを見た上でも“難しいことはよく分からないが、良い展望があるならそっちがいい”という持論は変わっていない。

 

 

「なんで勝手に武装全部パージするんだ!? って、コラコラコラ! 勝手にコアのハッチを開けるんじゃない!」

 

<引き撃ち戦術なんて男らしくないじゃないですか! それに、エクトルの真骨頂は引き撃ちじゃなくて――>

 

「想定された運用方法と合ってないんだよ! 『医療活動中に襲撃を受けた場合の対処』だって言ってるじゃないか!!」

 

 

 ちなみに、コーデリアはCパルス変異波形の中ではライアンとタイで“オペレーターに向かないタイプ”だと評価されていた。実際――眼前に広がる通り――、コーデリアは独断でACの武装をパージしたり、コアのハッチを開けたりとやりたい放題である。

 エクトルが搭乗しているACは中量2脚。医療用装備の中では中規模程度のものを搭載しており、“中規模の医療用装備を搭載できて、戦場から離脱するまでの頑丈さと機動力を確保する”ことをコンセプトにして組まれた機体であった。

 本来の運用は非武装・完全なる医療特化型なのだが、倫理観0点の人間は何処にだっているものだ。そういう輩に絡まれたら最後、患者と医者共々嬲り殺しにされてしまうだろう。完全な戦闘特化型のACと比較すれば付け焼刃程度しかなかろうと、自衛手段があれば不意打ちくらいにはなる。

 

 だが、コーデリアによって護身用の武器を勝手にパージされたため、エクトルの搭乗機は実質丸腰状態となっていた。こうなれば最後、取れる手段は逃亡一択となる。

 

 モニターを見ていたエアとライアンは深々とため息をつき、ロダンは苦笑した。

 実地研修であの有様なら、今後人間と交信した後はどうなることやら。

 

 

「やる気の有無と性格的なアレコレは、交信の成功率と比例しないだろうからな。この中で誰が一番最初に人間との交信を成功させるのやら……」

 

「一応みんな、方向性はどうであれ“人間との交信を試み続けている”んスよね?」

 

「らしい。共存という理想故に積極的なエア、エアよりは信念や頻度も少ないけれど交信には前向きなコーデリア、積極的ではないけれど2人に付き合ってるのがロダンとライアンだな」

 

「ライアンくんの場合は『ルビコンから出たがってる人間との接触』にワンチャン賭けてるっぽいッスけど」

 

「そういうところはお前と似てるよ」

 

「どういう意味スか」

 

 

 仕事を片付けてきたアマトは、4者4様の思考回路で交信を試みるCパルス変異波形たちの姿を見守っていた。彼と小気味良いやり取りをしつつ、ミライも苦笑する。この場にいる全員、誰も彼もがマイペースであった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 この場を飛び回るのは、二大企業勢力――ベイラムとアーキバスの精鋭たちと、惑星封鎖機構の武装ヘリである。現状を一言で表すならば、文字通りの“乱戦”であった。

 企業たちはコーラルの採掘及び利用権を得るために日夜小競り合いを繰り返していたし、封鎖機構はルビコンに居つこうとする企業勢力と地元民を邪魔だと思っている。

 今回発生した三つ巴の乱戦だって、このルビコンにおいてはある種の『日常茶飯事』だ。元々は企業同士の小競り合いだったところに、惑星封鎖機構のヘリが割って入った形となった。

 

 何事も無ければ、此度の乱戦も『よくある小競り合い』で片付いたのだと思う。

 何事も無ければ、此度の乱戦が『引き金』になるようなことはなかったのだと思う。

 何事も無ければ、新たな『可能性(ひだね)』が撒かれることにはならなかったのだと思う。

 

 何がきっかけだったのか、何が悪かったのかは分からない。

 だが、“偶然が幾重にも折り重なった果て”としか言いようがなかった。

 

 

「そうだ、キミたちにも是非聞いて欲しい! 私とイサミの物語を! チャプター1、“出会い。そして結ばれる2人”――」

 

「あっ、これもうダメだ」

 

「任務終わるまでこのままだ」

 

 

 ――そのとき、惑星封鎖機構の上層部と関連機には、おかしなバグが発生していた。

 

 戦場には大音量で男性の声が響き渡る。突如流れ始めたそれは『ブレイバーンと名乗る男性がイサミという男性に対する想いの丈を語る』という、所謂怪文書(ポエム)みたいなものであった。

 勿論、ベイラムとアーキバスと封鎖機構の三つ巴となっている戦場で流すような内容ではない。戦場のど真ん中で惚気話(?)が始まるだなんて、この場にいる誰が想像できただろうか。

 

 

「……一体、奴らは何を言っているんだ?」

 

「頭イカれたのか? 気持ち悪……」

 

 

 ――そのとき、その場には、アーキバスとベイラムの精鋭部隊の番号付きが居合わせていた。

 

 前者の機体には“口輪をされた狼”が、後者の機体には“クワガタの頭を被った蟻の群れ”が描かれていた。

 戦場のど真ん中で突如披露された怪文書に面食らってしまったため、機体の動きが止まったのだ。

 その前後のタイミングで、怪文書を吐き出す音声の調子がピークへと向かっていく。

 

 勿論、そんな中でも戦闘は継続中。手を組むと言う選択肢を選ぶような状況下ではないため、互いが互いを利用して潰し合わせようと画策していた。

 三つ巴の戦いも佳境を迎え、ACもヘリも満身創痍に追い込まれつつあった。それでも尚、この場における各陣営の隊長格は、最後の勝利者の権利を得るため食い下がる。

 

 

((まだだ。まだ――!))

 

 

 ――そのとき、この場には、コーラルを貯蔵した大型タンクがあった。

 

 ――“口輪をされた狼”と“クワガタの頭を被った蟻の群れ”のエンブレムが描かれた機体の、すぐ傍に。

 

 

「「あ」」

 

 

 誰の攻撃が原因だったのかは分からない。だが、降り注いだ一撃は、タンク上部にあった建造物に直撃した。降り注ぐ瓦礫は、大型タンクの屋根を突き破る。

 大穴が開いたそこから、勢いよくコーラルが溢れ出した。爆心地のすぐ傍に居た2機のACは慌ててその場から離脱したが、コーラルを浴びる羽目に陥った。

 

 何の強化も対策もしていなかった人間であれば、コーラルの酩酊でまともに動けなかったろう。

 だが、幸か不幸か、パイロット2名は共に強化人間である。体の不調を感じつつも、どうにか態勢を立て直すことはできた。

 アーキバスもベイラムも満身創痍。封鎖機構が撤退したのを皮切りに、小競り合いは『痛み分け』という形で幕を下ろしたのだ。

 

 

 

 

 

<貴方、ズバリ私の《聲》が《聴こえて》ますね!? そうでしょ!?>

 

「うるせぇぇぇ! 何者(ナニモン)だテメェは!?」

 

<私ですか!? 私はコーデリア! ルビコニアンのコーデリアです! ――貴方のお名前、教えてください!!>

 

 

 

<……うっわ。最悪……。変なのと交信()()()()()()……>

 

「…………?」

 

<ま、まあでも、黙ってりゃ気づかれない、ハズ……。……でもコイツ、第4世代以前の強化人間じゃないよな……。じゃあ、なんで……?>

 

「――幻聴、か……?」

 

<あ、やべ>

 

 

 

 

 何事も無ければ、此度の乱戦も『よくある小競り合い』で片付いたのだと思う。

 何事も無ければ、此度の乱戦が『引き金』になるようなことはなかったのだと思う。

 何事も無ければ、新たな『可能性(ひだね)』が撒かれることにはならなかったのだと思う。

 

 けれど、そうはならなかった。

 そうはならなかったのだ。

 

 故に――『可能性(ひだね)』は撒かれる。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。