ウマ娘短編集(ジャンル:純愛・イチャイチャ) 作:のるどすとりーむ
セミがジー、ジーと鳴いている。キングがトゥウィンクルシリーズを引退してから約半年経った8月。
ドリームリーグに入ってから色々忙しくて、ようやく最近落ち着くけるようになった。キングが休みたいと言っていたので、前に貰ったチケットで温泉旅行に行った。
「来ないわね」
「そうだね……」
今はその帰りなのだが、実は乗るバスを間違えてしまった。途中で降りたのだが、次のバスは1時間後だ。
田舎特有のトタン屋根があるバス停の椅子に座る。所々、プラスチックが欠けているのが劣化を語っている。
「少し暑いわね……」
キングがTシャツの胸元をパタパタと仰ぐ。その時に彼女の素肌に流れる汗、少し紅潮している顔をみて、ドキッとしてしまった。というか、少しシャツが透けているような……いやいや、そういうことは考えちゃ駄目だ。
俺はあくまでもトレーナー。
……でもなあ、なんというかキングが高等部に入ってからだいぶ印象変わったんだよな……なんか女性らしいというか、すごく大人びた感じがする。正直ちょっとだけ異性として意識してしまう面もある。
「あ、ああ……そうだな」
すごく気の抜けた返事をする
「……」
会話が途切れる。
ココ最近キングと気まずくなる瞬間が増えた気がする。なぜだろう?やっぱり高等部に入って、なんというか成長を感じたからかな……
空が少し暗くなってくる。太陽が厚い入道雲に覆われたようだ。それからほどなくして、雨音が聞こえてくる。
すぐに雨は強くなり、トタン屋根に雨粒が強く打ち付けられる音がする。
「ねえ」
「うん?」
「……最近私から距離を取っていたの?」
「え」
なぜそれを、と思い声を漏らしてしまった。
「いや……貴方最近私に対して悲しい目をするんだもの……私、なにかした?」
心配そうにこちらを見るキング。
「いや、そういうわけではないんだ……ただ」
本音を言うことにした。
「ただ?」
「なんだかココ最近で君が遠くの存在になった気がして……」
「……なに?そんな事?」
キングの言葉にショックを受ける。キングは『何いってんだコイツ?』みたいな顔をしている。
「……貴方を置いていったりはしないわよ。……言ったでしょ『共に一流を目指す』って」
「ああ……」
「まったく……そんなことで悩んで私から距離を取っていたなんて……」
「ごめん」
「謝らないで。私にも原因はあるのだから……でも、貴方と私の関係の中でそういうことがあるといけないわね」
キングが席を立ち、俺の隣に座る。
「こうなれば今までよりも強固な関係にしましょう」
俺に顔を近づける。至近距離で見つめられるとドキドキする。
「あ、ああ……でもどうやって?」
キングは少し考える素振りを見せてから、俺にいう。
「そうね……じゃあ手を出して」
「手?……はい」
右手を差し出す。一体何をするのだろうか?
キングは俺の右腕を持って、キングの胸元の方へ動かす。
ゆっくりと、そのTシャツでくっきりと形がわかるところの前に持ってくる。キングって意外とあるんだな、と1ミリだけ下品なことを考えてしまった。
……あれ?これもしかしてやばいやつ?いやいやキングがそんなことをするわけがない。
「じゃあ、失礼して」
キングは俺の右腕を離して、自分の右手の小指と、俺の右手の小指を交差させる。
「はい、指切りげんまん。お互いを信頼してこれからも一緒に歩むこと!いい?」
キングが俺に少し強く言う。
「はい」
どうやら俺が危惧していたことは無いようだ。良かった。
二人との会話に集中していたため、雨音が気になっていなかったが、どうやら雨はやんでいたようだ、トタン屋根から、ポタ、ポタと水滴が落ちているだけだ。
「もうそろそろでバスが来るらしいわよ」
「そっか」
俺はキングを見つめる。
「……何よ」
怪訝そうな顔をしてキングが俺に尋ねる。
「いや、キングが可愛いなって」
正直に自白する。出会った頃から魅力的だと感じていたが、ココまで成長するとは思わなかった。
「は、はあ!?何を言ってるの?さっきといい、疲れてるの?」
すごい驚かれる。
「いや、だってこんなにも性格が良くて、そして可愛くて、もう惚れない人なんていないんじゃないかな?」
「はあ?…………ちょっとまって」
「?」
「仮に、わ、私に惚れない人がいないなら、あ、貴方はどうなのよ?」
キングが赤面しながら訊いてきた。
「え?そんなの決まってるじゃん。俺は昔から君の虜だよ」
「わかった、貴方トレーナーじゃないわね!?本物のトレーナーを何処にやったの!?」
キングは混乱しているのか、俺に掴みかかってくる。怖いって。
「いや、俺と君の関係ってそういうものじゃないの?」
思ったことを正直に口にする関係ってことでさっきまとまったんじゃないの?
「違うわよ、おバカ!」
俺を睨むキング。それもまた魅力を感じてしまう。
─────
遠くからエンジン音が聞こえる。多分バスが来たのだろう。
軽く荷物をまとめて席を立つ。
「じゃあ、乗りますか」
「……ええ」
停車したバスはブザーとともにドアが開く。
俺はバスのステップに踏み込んだ。