「さぁ、人識くん。せっかくのデートですから楽しみましょう」
「デートじゃねーよ。ただの休憩だ」
現在は昼の一番忙しい時間帯が終了して休憩時間だ。
俺はのんびり休んでいたかったのに、伊織ちゃんに無理矢理付き合わせられている。
「さぁ、子荻ちゃん。せっかくの学園祭だよ。楽しんでいるかい?」
「一姫、もうちょっと落ち着きなさい」
「レン、話を聞いてないぞ」
「澄百合学園では、学園祭ってなかったから楽しいですね」
「退屈ですよおー。ズタズタしたいですよおー」
ん、妙に背の高いスーツ姿の変態と燕尾服の男に女子高生が三人という怪しい連中が前から歩いてきている。
「って、何で兄貴がいんだよ!?しかも、曲識の兄ちゃんと玉藻もいるじゃねーか。見たことのないヤツもいるな」
「ああ、人識。久し振りだな」
「ひしときくんだあー」
いきなり玉藻のヤツが背中に乗ってきた。もしかして、こいつ、俺の背中が気にいっているのか?て言うか、何でこいつと兄貴が一緒にいるんだ。
「人識くん、その子は誰ですか?もしかして……」
「んな訳ないだろ。変な勘繰りしてんじゃねぇ!」
「やめなさい、玉藻。人識くんが困っているでしょう」
「ん?そういや、お前もどっかで見たことあるような?誰だったけ?」
んー。昔に一回見たことがあるような気がするんだが。
「……あー。思い出した。確か俺が中学生の時、兄貴と遊園地デートしてた女子中学生だ。て言うか、何で俺のこと知ってんだ?」
「そんなことは別にどうでもいいじゃないですか。それよりも、この変態をどうにかしてほしいんですけど」
「変態なんて酷いなぁ、子荻ちゃん。それと、私のことはお兄ちゃんと呼ぶ約束じゃないか」
「え!?お兄ちゃん、私以外にも妹がいたんですか?酷いです」
これ以上話をややこしくする気か。こいつらがいる時点で、すでにややこしいのに。
「曲識の兄ちゃん。黙ってないで、この状況を説明してくれ。確か死んでいるはずろ。もしかして、幽霊か?」
「いや、その表現は適切ではないな。俺達は幽霊ではないからな。確かに死んではいるが」
はっ!?もう意味分かんねぇ。
「もういい。とりあえず、落ち着ける場所に移動して、ちゃんと説明してくれ」
「あれ?汀目。こんなところで何してんだ?」
ここでお前かよ!これ以上、人が増えたら相手しきれねぇぞ。
「お前こそ何してんだ?」
「僕はちょっとトイレを探しているんだけど。どこにあるか知らないか?」
「あー!師匠じゃないですか!」
さっきまで、屋台で買ったであろう焼きそばを食べていてまともに喋っていなかったやつが欠陥製品を見て、いきなり声をあげた。
「あれ、姫ちゃん。それに子荻ちゃんに玉藻ちゃんも。君たちは死んだはずじゃあ」
ということは全員、すでに死んでいるということか。まぁ、玉藻はあんな戦い方して生きている方が不思議だもんな。
て言うか、じゃあ、何でさっきのヤツは焼きそばを食べられるんだ?さっきの曲識の兄ちゃんが幽霊じゃない、って言ってたのと関係あるのか?
にしても、さすがの欠陥製品もかなり驚いた顔をしているな。
「その話はどこか落ち着ける場所に移動してからにしましょう。ここだと人の邪魔になりますから」
子荻ちゃんとやらが兄貴と伊織ちゃんとお兄ちゃんがどうとか、妹がどうとか話していたのに、逃げるように欠陥製品の方にきた。
「うーん。でも、友と崩子ちゃんを待たせているからな」
あれ?人類最強はどうでもいいのか?
「師匠、崩子ちゃんも来ているんですか?久し振りに会いたいですよ」
「そうだね。だったら、Fクラスの中華喫茶に戻って話を聞こうか」
「分かりました。では行きましょうか」
「あれ、子荻ちゃん。行っちゃうの?だったら、私もついていくよ」
「ちっ!」
あれ、もしかしてこの女、兄貴のことが嫌いなのか?まぁ、兄貴の変態性を考えれば当たり前か。
「おい、玉藻。そろそろ降りろ」
「………」
「って、寝てんのかよ!どうりでさっきから喋らないわけだ」
しかも、よだれまで垂らしてるし。きたねぇーな。
「どうやら玉藻は貴女のことを気にいっているようですね」
「変なヤツにばっか気にいられても困るんだけどな」
「いいじゃないか、人識。むしろ、お兄ちゃんはそんな可愛いの娘のよだれなら嬉しいものだよ」
「俺はそれで喜ぶマニアじゃねーよ」
バカは死んで治らない、と言うが兄貴の場合は死んでも変態は治らないって感じだな。
「まぁいい。とりあえず、玉藻は起きるまでこのまま俺が運ぶわ」
そう言うと、俺はFクラスに向かって歩きだした。
「にしても、意外だな。人識なら、無理矢理にでも起こすもの思っていたが。それとも、その子が前に言っていた彼女か?」
「やっぱり、そうだったんですか?人識くん、背の高いおねいさんが好きじゃなかったんですか?つまり、私のことを」
「確か、みいこさんを狙っていたんじゃなかったのか?」
「ふむ。人識は意外とプレイボーイなんだな。私がお前ぐらいの歳の時はな(以下略)」
「ああぁー。うぜぇー。一人ぐらい俺に味方はいねぇーのか!」
完全にツッコミ不足だろ。何で俺の周りにはまともな人間がいないんだ。
「……うる、さい」
「起きたなら自分で歩け。って、また寝るのかよ、玉藻。おい、お前。こいつ、どうにかならないか?」
「お前ではありません。私には萩原子荻という名前があります」
「そりゃ、悪かったな。で、子荻ちゃん。こいつ、どうにかならないか?」
「諦めてください。そうなったら、私の言うことも聞きません」
マジかよ。あぁ、かったりぃー。
「それよりも、人識。吹奏楽部みたいな音楽系の部活はどこにある?地獄には楽器がなくてな。久し振りに演奏したいんだが」
「それは今言うことか!?そんなの後にしろ」
「師匠、あの人、さっきから叫んでいて怖いです」
「仕方ないんだ。あいつのクラスは男ばかりで癒しが足りなくてイラだっているんだよ」
あぁ、もうツッコむのもめんどくさい。
「おい、俊希。何叫んでんだ?他の客に迷惑だろ」
「おお、大将。貴女が救いの神だったか」
やっとツッコミ役が来たか。
「何言ってんだ?って、レンにトキ!?死んでなかったのか!?」
「アス?何でこんなところにいるんだ?」
「ああ、アスか。よかった。生きていたんだな」
大将の登場により、他の奴等も落ち着いた。
この後は、大将の意見でとりあえず、空き教室に移動して話を聞くことになった。まぁ、この大人数だと他の連中にも迷惑が掛かるからな。しかも、ほとんどまともなヤツはいないし。
そして、俺と欠陥製品の野郎でFクラスに残っている三人を空き教室に連れていくことになった。まぁ、女二人(人類最強は含まない)をFクラスにおいておくわけにはいかないしな。襲われないか、心配だからな。まぁ、人類最強がいれば心配ないか。そして、他の連中は大将が案内して、その間に俺達の事情を簡単に説明することになっている。
「ああ、おかえり。いーちゃん。遅かったね。トイレ、混んでいたのかな?」
「あっ!しまった。トイレに行き損ねた」
バカか、こいつは。いや、バカだったな。
「まぁ、いいや。とりあえず、別の場所に移動するからついてきてくれ」
「分かりました。お兄ちゃん」
「うにー。いーちゃん、人目のないところに移動して何する気?もしかして、僕様ちゃん達にあんなことやこんなことをする気?」
「人聞きの悪いことを言うな。他の人が聞いたら僕をロリコンの変質者だと勘違いするだろ」
勘違いではない気がするんだが。
て言うか玖渚とかいうヤツは今度、結婚するらしいし、崩子ちゃんは契約した闇口だろ。別にそういう行為をしても問題ないだろ。
「そういや、潤さんはどうしたんだ?」
「潤ちゃんなら急に仕事がはいったからって帰ったよ」
やっぱり人類最強と兄貴は会えないんだな。
その後、二人を空き教室に案内してから兄貴達の事情をやっと聞けた。
簡単に言うと、兄貴が閻魔様と仲良くなって酔わせた勢いで一日だけ生き返ることを許されたらしい。
兄貴曰く「ドラゴンボールの占いババに一日だけ生き返らせてもらった悟空みたいなものだと考えてくれればいいよ。まぁ、頭の輪はないけどね」ということらしい。
そして、他の連中も誘ったけど曲識の兄ちゃん以外には断られたらしい。人望ねぇーな。
子荻ちゃんは断られても何回も誘っているうちに向こうが折れて諦めたそうだ。で、その話を聞いた玉藻と一姫とやらが面白がってついてきたらしい。
出夢の野郎まで来ていたら、と思うと恐ろしいものがあるな。
て言うか、兄貴の野郎。俺のことを理解できないとか言いながら、どう考えても兄貴の方が得体が知れないだろ!
死者はもう出さないつもりだったのに、五人も出してしまった。こうなったら、番外編は何でもありの話にしよう(半分やけくそ)。
そして、いままで大した活躍のなかったバカテスメンバーだけど、今回遂に出番までなくなってしまった。本当にこのままでいいのだろうか?
番外編の清涼祭の続きは本編の間にちょくちょく挟んでいこうと思います。
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