「……何で魔法少女が増えているの?」
吉井くんが召喚大会の2回戦を終えて戻ってくると、そう言った。
「やぁ。久し振りだね、吉井くん。ちょっと手伝せてもらってるよ」
現在、欠陥製品さんは友さんの提案通りFクラスの出し物の手伝いをしてもらっています。
大将さんには逃げられました。まぁ、大将さんがいたら客も逃げるでしょうから、いない方がいいんですけど。
「……え~と、どちら様でしたっけ?もしかして知り合いですか?」
「まぁ、一回会っただけだし覚えていないのも無理ないかな。ほら、前に汀目の家で会っただろう」
「ああ、あの時の。何でそんな恥ずかしい格好をしているんですか?」
「いや、きみに言われたくないんだけど」
何を言っているんでしょうか、この二人は。人識くんにはわずかに劣るとはいえ、二人とも凄く可愛いのに。
「ん、何だ?客が少ないな」
坂本くんも戻ってきたみたいですね。
「そんなことよりも坂本くんの隣にいる可愛い幼女は誰なんですか?」
そう、今私が言った通り、坂本くんの隣には可愛い幼女がいる。大事なことなので台詞と地の文で二回言いました。
「……もしかして、雄二。幼女誘拐?」
「んな訳ねぇだろ!!人聞きの悪いことを言うな!!」
「言い訳しなくても大丈夫ですよ、坂本くん。その子は可愛いですからね。気持ちはわかります」
「それのどこが大丈夫なんだ!?明らかに犯罪者の思考だろ、それ!!」
「あ、あのおっきいお兄ちゃんはバカなお兄ちゃんを探しているのを手伝ってくれているだけなんです。だから、怒らないであげてください」
坂本くんを弄って遊んでいると、幼女がそう言ってきた。可愛いうえに優しいなんて最高ですね。お持ち帰りしたいです。
「別に起こっているわけじゃないですよ。ところでバカなお兄ちゃんですか?このクラスにはたくさんいますけど。名前は何て言うんですか?」
「あぅ……。分からないです……」
「?家族の兄じゃないのか?バカ以外の特徴は?」
名前が分からない相手でも探してあげようという坂本くんの温かい気遣いが感じられます。もしかして坂本くんはロリコンなんですかね?
「……おい、無桐。今、失礼なことを考えなかったか?」
「い、いやですねぇ。そんな訳ないじゃないですか」
心を読まれました。坂本くんって勘が鋭いですね。
「……え~と……物凄くバカなお兄ちゃんでした」
「「吉井(明久)だな」
人識くんと坂本くんの意見が一致する。
にしても、物凄くバカなお兄ちゃんって、凄い呼ばれかたですね。
って、あれ。吉井くん、泣いてませんか?
「全く失礼な!僕に小さな女の子の知り合いなんていないよ!絶対に人違い――」
「あっ!物凄くバカなお兄……お姉ちゃん?」
吉井くんを見て幼女が疑問の声をあげた。
吉井くんは今、女装しているから本人か自信がないんですね。まぁ、吉井くんの女装は似合っているから一目見ただけじゃ、男の子とは分からないですからね。
「お兄ちゃんであってるよ。ところでキミは誰?僕に小学生の友達はいないよ」
「え?お兄ちゃん……。知らないって、酷い……。バカなお兄ちゃんに会いたくて、葉月、一生懸命『バカなお兄ちゃんを知りませんか?』って聞きながら来たのに」
ふむ。この可愛い幼女は葉月ちゃんと言うのですね。良い名前です。
「……吉井。とりあえず、謝っとけ」
人識くんが葉月ちゃんに聞こえないように吉井くんに言う。
「バカなお兄ちゃんは物凄くバカなんじゃ。今朝の朝ごはんを覚えてないくらい記憶力が悪いんじゃ。だから、許してやってくれんからのう?」
木下くんが葉月ちゃんにフォローをいれる。にしても木下くんって意外と毒舌なんですね。
「でもでも、バカなお兄ちゃん、葉月と結婚の約束もしたのに。ファーストキスもあげたのに」
「明久……。それは犯罪だぞ」
「酷いです、吉井くん。こんな可愛い幼女と、そんなことまでしといて忘れるなんて。信じられません」
「ちょっと待って!僕にそんな記憶はないよ!後、無桐さんは怒るとこがズレてない?」
えっ!?他に怒るとこがあるんですか?
「あれ?葉月。なんでこんなところにいるの?」
美波さんと瑞希さんが帰って来たみたいですね。
「あ、お姉ちゃん。遊びに来たよっ!」
美波さんを見て葉月ちゃんは落ち着いたみたいですね。
「ああっ!あのときのぬいぐるみの子か!」
吉井くんがやっと思い出したみたいですね。葉月ちゃんみたいな可愛い幼女を忘れるなんて人間失格ですね。
「ところで美波さんと葉月ちゃんって知り合いなんですか?」
「知り合いも何も、ウチの妹よ」
「妹さんを私にください!!」
「へ!?いきなり何なの!?」
おっと。つい反射的に口が。
「いや、実は私、ずっと末っ子なんですよ。だから、ずっと妹か弟がほしかったんです。葉月ちゃんなら妹にぴったりです」
「そういうことね。でも、葉月はやらないわよ」
そ、そんな!?でも、諦めませんよ。
「あの、葉月ちゃん。私のことをお姉ちゃん、って呼んでくれませんか?」
「え~と、お兄ちゃんじゃなくてですか?」
しまった!今の私は男装してたんでした。
「ところで、アキと葉月って知り合いなの?」
「ああ。結婚の約束をして、ファーストキスまでしたらしい」
「ちょ、ちょっと雄二!何言ってげふぅ」
「アキ、遺言ぐらいは聞くわよ」
美波さんが吉井くんの鳩尾に目にもとまらない速さで右フックを決めた。さすがの私でも今の美波さんは怖いです。
「葉月ちゃん、吉井くんとそんなことを。羨ましいです」
「姫路さん!?何を言っているの!?」
確かに吉井くんの言う通りです。幼女に嫉妬するのは間違っていますね。
「おい、伊織ちゃん。だいたい何を考えているか分かるが、それは違うと思うぞ」
「さすが俊希くん。私の考えていることが分かるなんて。これぞ愛情のなせる業ですね」
「……いや、違うと思うが」
都合の悪いことを聞きません。
「ところで、この客の少なさはどういうことだ?」
教室を見回すと坂本くんが言った。
「そう言えば葉月、ここに来る途中で色々な話を聞いたよ」
「ん?どんな話だ?」
坂本くんが屈み込んで葉月ちゃんの目線に合わせる。
子供の扱いに慣れているようですね。やっぱりロリ――
「おい、無桐。また失礼なことを考えていないか?」
「失礼なことなんて考えてませんよ。子供好きなんて言っている人は大抵、ロリコンかショタコンに決まっていますから」
「開き直るな。にしても物凄い暴言だな。兄貴でも、そこまで言わなかったぞ」
失礼ですね。子供を好き、ってことはそういうことでしょ。
「えっとね、Fクラスは気持ち悪い女装をしているから行かない方がいい、って」
「あの、葉月ちゃん。それはどこで聞いたんですか?」
「お姉ちゃん、怖いです」
葉月ちゃんが私のことをお姉ちゃんと呼んでくれたのは嬉しいですけど、今はそれどころじゃありませんね。
「それでどこで聞いたんですか?」
「えっとですね……短いスカートを穿いた綺麗なお姉さんが一杯いる店です」
「なるほど。翔子さんのところですか。今すぐ行きましょう」
「…わ、悪いな。おれは店を見てなくちゃいけないから、お前らだけで行ってくれ」
相変わらず坂本くんは翔子さんを苦手にしているみたいですね。
「何を言っているんですか!どうにかしないと設備の向上なんて出来ませんよ!」
「……で、本音は?」
「俊希くんの女装をバカにされて黙っていられるわけないじゃないですか!」
「伊織ちゃんの言う通りです。吉井くんの女装は気持ち悪くなんてありません!」
瑞希さんも私と同じ気持ちみたいですね。
「「犯人はぶっ殺す」」
久し振りに話が進んだ気がします。
さて、常夏コンビに明日はくるのでしょうか?
次は女子(特に変態)を怒らせると怖い、という話の予定です。
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