何故、こんなことになっているのだろう?
「お兄ちゃん、あっちの店に行きませんか?」
「師匠、姫ちゃんはお化け屋敷に行きたいですよ」
崩子ちゃんと姫ちゃんに両手を引っ張られている。
僕としても可愛い女の子に取り合いをされているのは嬉しいものだ。全男性の夢と言っても過言ではない。
だが、実際になってみるとキツいものがある。二人とも違う場所に行きたがるから、どうしたらいいか分からない。それに周りの危険人物……つまりロリコンを見るような視線がキツい。普段は人の視線なんて気にしない僕でも、これは気になる。
そして、それ以上に子荻ちゃんの視線が一番キツい。
「………貴方は幼児体型の女の子にモテるようですね?」
この汚物を見るような視線。ゾクゾクするねぇ。
「子荻先輩も抱きつきたいなら抱きつけばいいんですよ」
「い、いや別に私はそういうことを言ってわけじゃありません」
照れて顔を赤くしている子荻ちゃんも可愛いな。
「……何、嬉しそうな顔をしているんですか、お兄ちゃん」
「い、いや別に僕はそんな顔をしていないよ」
「師匠と先輩は仲良いですね。同じ言い方をしていますよ」
周りからのリア充死ね、って視線も気持ちよくなってきたよ。
「一姫、からかわないで下さい」
「別にからかってませんよ。見たままを言っただけですよ」
それを世間一般ではからかっている、と言うのだと思うよ。
そう言えばトイレに行くのを忘れていた。いくら僕が忘れっぽいとは言え、まさか生理現象まで忘れるとはね。そろそろ行かないと漏れそうだ。でも、女の子にトイレに行きたいというのは恥ずかしいものがあるな。
「それよりも何か食べに行かない?僕、まだ食べてないからお腹が減っちゃたよ」
食事処なら少し席を外しても問題ない。我ながら完璧な作戦だ。
「姫ちゃんも少しお腹が空いたので良いですよ」
「あれだけ食べておいと、まだ食べるんですか?」
子荻ちゃんが驚いた顔をしている。あの子荻ちゃんが驚くなんて、僕と出会う前にどれだけ食べていたんだろう?
「崩子ちゃんもそれで良い?」
「私はお兄ちゃんの命令に従うだけです」
「じゃあ、意見がまとまったところで行こうか」
「どこで食べるんですか?」
「それは決まっているよ」
最初にパンフレットを見た時から、ここだけは行くと決めていた。
そして僕らは二年Aクラスがやっているメイド喫茶の前にやって来た。にしても『ご主人様とお呼び!』って凄い名前だね。誰が考えたんだろう?
「師匠は相変わらずメイドマニアのようですね」
「ちょっと待って!何で僕がメイドマニアってことになってるの!?」
確かに僕はメイドが好きだけど、それを姫ちゃんに言った覚えはない。
「春日井さんが言ってたですよ」
あの女か。次に会ったら一回、話し合いをする必要がありそうだな。
「お兄ちゃん、メイドが好きなら私がメイドになりますよ」
「前にも言ったけど、まだ崩子ちゃんには早い」
完全なる崩子ちゃんメイド化計画はまだ始まったばかりだ。
「……こういうのが好きなんですか?」
「いや、僕はメイド服が好きというよりも、その生き様が好きなだけなんだ」
何でこんな言い訳じみたことを言わないと駄目なんだろう?
とりあえずメイド喫茶で食事をして、次は姫ちゃんの要望通り三年A組のお化け屋敷に行くことにした。今日、一日だけしかいられないんだから、別に崩子ちゃんを蔑ろにするわけじゃないけど出来るだけ姫ちゃんと子荻ちゃんの言うことは出来るだけ聞いてあげたい。
「……ところで子荻ちゃん。そんなに抱き付かれると歩きづらいんだけど」
お化け屋敷に入った瞬間に子荻ちゃんが怯えたように僕に抱き付いてきた。
子荻ちゃんの大きな胸が左腕に当たっている。だが、ひかりさん?とデートした時みたいに動揺したりしない。僕は成長した。ここは冷静に対応するんだ。
「え~と、子荻ちゃん。もしかしてお化けとか苦手なのかな?」
「な、何を言ってるんですか!?こんなの所詮、作り物!怖いはずないじゃないですか!」
そう言いながら子荻ちゃんが僕の腕を握る力が強くなる。怖いんだね。と言うより、お化けであるはずの子荻ちゃんが何でお化けを怖がっているんだろう?まぁ、こういうのは理屈じゃないからな。
「ヒャ!」
子荻ちゃんが可愛い声を上げた。正直、普段とのギャップでかなり萌える。
どうやら首筋にこんにゃくを当てられたようだ。そして、僕の左腕を握る力がさらに増す。ここまで胸を押し付けられると成長した僕でも理性を保つのは難しい。
「……何、デレデレしてるんですか、お兄ちゃん」
僕の右腕に抱き付いている崩子ちゃんが不機嫌そうに僕の脇腹をつねってきた。
「こういうのも新鮮で楽しいですよ」
僕に肩車をされている姫ちゃんはのんきに楽しんでいるようだ。
そしてお化け屋敷を出たところで伊織ちゃんに会った。
「あれ?欠陥製品さんじゃないですか。凄い姿ですね」
それを言われると困るな。僕も歩きづらくて困っているんだから。まぁ、それを含めても幸せだけどね。
「伊織ちゃんこそどうしたの?汀目達と一緒にいたんじゃないの?」
「実は曲識さんが吹奏楽部で演奏に没頭してしまってですね。退屈なので俊希くんに任せて私は一人で回っているんですよ」
零崎から聞いてはいたけど本当に自由な性格をしているようだ。僕の頼りない記憶からすると自分から曲識さんとやらを誘っていたはずだ。
「じゃあ、私は別のところを回るので、また後で会いましょう」
「うん、そうだね」
僕は手を振って伊織ちゃんを見送った。
その後も子荻ちゃん達に振り回されて一日が終わった。可愛い女の子と一緒にいられるのは幸せだけど限度は大事だということを僕は悟った。何故なら一日で僕の財布は空になってしまったのだから。
まさかこんなに更新が遅れるとは思いませんでした。作品をどんどん増やした結果なので自業自得ですが。次回はもっと早く更新できるように頑張ります。
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