Dクラス戦、翌日の昼休み
「やっと昼飯が食えるな。腹が減ったぜ」
「最近、食べてばかりじゃないですか、俊希くん」
「気のせいだろ、伊織ちゃん」
絶対気のせいではないと思います。
「あの無桐さんに汀目くん、実は私が作った弁当を皆さんにご馳走しようと思っているんですけど、お二人もどうですか?」
私たちが弁当を食べようとしていたら、姫路さんが話かけてきた。
「俺は弁当を作ってきているんだけど、貰えるなら貰うぜ。伊織ちゃんはどうだ?」
「私もいいですよ。他には誰がいるんですか?」
「えーと、吉井くん、坂本くん、土屋くん、木下くんに美波ちゃんですね。後、屋上で食べることになっています」
「屋上ですか、いいですね。まだ行ったことありませんし」
「じゃあ、付いてきてください。案内しますね」
私たちが屋上に着くと、吉井くんたちが待っていた。
「汀目くんたちも来たんだね」
「ああ。ところで坂本と島田はいないのか?」
確かによく見たら2人居ませんね。どこに行ったのでしょう。
「2人は今飲み物を買いに行っているんだ。すぐに来ると思うから先に食べてようか」
「いいんですか、待ってなくて」
「先に食べておくって、言っておいたから大丈夫」
「じゃあ腹が減ったてきたし早く食べようぜ」
「シートを持ってきているから引きますね」
そう言って、姫路さんはバッグからビニールシートを取り出して引き出した。
姫路さんは準備がいいですね。
それに屋上には他に誰もいないから貸し切り状態です。
「あの、あんまり自信がないんですけど」
姫路さんはそう言って弁当の蓋を開けた。
おお、量も結構ありますし、何より美味しそうですね。
人識くんの方を見ると一足先に自分の弁当を開けて食べていた。
いつの間に食べていたんですか。他の人も待ちましょうよ。
「それじゃ、先に」
「………(ヒョイ)」
「あっ、ずるいぞムッツリーニっ」
土屋くんが素早い動きでエビフライをつまんで食べました。
「………(パク)」
バタン ガタガタガタガタ
豪快に頭から倒れ、小刻みに震えだしました。何があったのでしょう。
「「「「………………」」」」
さすがに人識くんも食べるのをやめて、こっちを見ています。
「わわっ、土屋くん!?」
「………(ムクリ)」
おお、土屋くんが起き上がりました。
「………(グッ)」
そして、姫路さんに向けて親指を立てる。
多分、『おいしかった』と伝えたいのでしょう。
「あ、お口にあいましたか。良かったです」
土屋くんの言いたいことが伝わったのか、姫路さんが喜んでいる。
でも土屋くんは、まだ足がガクガク震えている。その姿に何故か、潤さんにやられて瀕死状態の敵が思いだされます。
「良かったらどんどん食べてくださいね」
そんな笑顔で言われたら断りづらいじゃないですか。
「悪いな、姫路。俺は自分の弁当を食べてから、まだ足りなかったら食べるわ」
成る程、その手がありましたか。ナイスです、人識くん。
「そうですね、私も俊希くんの愛情たっぷりの弁当を食べれなくなったら困るので、そうします」
「いや、伊織ちゃん。別に愛情は入れてないぞ」
「そうですか、仕方ないですね」
姫路さんが納得してくれた。助かりました。さすがにあれを食べる勇気はありません。
「どうしよう、秀吉」
吉井くんと木下くんが姫路さんに聞こえないように小声でどうするか話あっている。
「明久。お主、身体は頑丈か?」
「正直胃袋に自信はないよ。食事の回数が少きすぎて退化しているから」
表情は笑顔のまま話あっている。姫路さんに心配させないために気をつかっているんですね。
ちなみに私と人識くんはそれを横目で見ながら、のんびりと弁当を食べています。
「ならば、ここはワシに任せてもらおう」
おお、木下くん。顔は女の子みたいなのに格好いいですね。
「そんな、危ないよ」
「大丈夫じゃ。ワシは存外頑丈な胃袋をしていてな。ジャガイモの芽程度なら食ってもびくともせんのじゃ」
ジャガイモの芽って確か毒だったと思うんですけど。て言うか、何でそんなものを食べたことがあるんでしょうか。
「おう、待たせたな。へー、旨そうじゃないか。どれどれ?」
木下くんが覚悟を決めて食べようとした時、坂本くんが飲み物を持って登場した。
「あっ、坂本くん」
止めようとしたけど間に合わず素手で卵焼きを口に放り込み、
パク バタンーガシャガシャン、ガタガタガタガタ
ジュースの缶を豪快にぶちまけて倒れた。
「さ、坂本!?ちょっと、どうしたの!?」
遅れてきた島田さんが坂本くんに駆け寄る。
坂本くんも土屋くんと同じような症状ですね。
これは本格的にまずいですね。
って言うか、どうやったらこんな料理が出来るんですか。
「気にするな、足がつっただけだろう」
人識くんが姫路さんに気を使って嘘をついた。ナイスフォローです。
「ダッシュで階段の昇り降りをしたからじゃないですか、島田さん」
「うん、きっとそうだよ。情けないなぁ、雄二は」
「そうなの?坂本ってこれ以上ないくらい鍛えられていると思うけど」
事情の分かっていない島田さんが不思議そうな顔をしている。余計なことを言われないうちに退場させた方がいいかもしれません。
「ところで島田さん。その手をついているあたりに、さっきまで虫の死骸がありましたよ」
嘘ですけど。
「えぇっ!?早く言ってよ」
「すみません。とりあえず手を洗ってきたらどうですか?」
「そうね。行ってくる」
そう言って島田さんは席を立った。
「明久、次はお前がいけ」
その後ろ側で私たちは必死に作戦会議をやっていた。
「む、無理だよ。そうだ、次は汀目くんが食べたら」
「ふざけんな、あんな毒物食べられるわけないだろう」
「確かに。ワシも決心がにぶってきたしの」
「仕方がないですね、皆さん」
「まさか無桐さんが食べるつもり。駄目だよ。女の子にそんな危険なことはさせられないよ」
「おい、吉井。俺なら良いのかよ」
人識くんが何か言っているけど無視です。
「あっ!姫路さん、あれは何でしょう?」
「えっ、なんですか?」
姫路さんが別の方向を見ている間に倒れている坂本くんの口に無理やりに押し込んだ。
「伊織ちゃん、意外と鬼畜だな」
仕方がないじゃないですか。倒れていて押し込みやすかったんですから。
「すみません。見間違いでした」
「あ、そうだったんですか。あれ、もう食べてしまったんですか」
「はい、美味しかったですよ。特に坂本くんは美味しそうに食べてましたよ」
何とか助かりましたね。
「そうですか、良かったです。あとデザートもあるんでどうですか?」
まだあったんですか。一難去ってまた一難ですか。
「あれ、スプーンを忘れてきたみたいですから、ちょっと取ってきますね」
そう言って、姫路さんは教室にスプーンを取りに行った。
「どうしましょう。次食べたら坂本くん、死にそうですし」
「雄二が死ぬだけで助かるなら安いものじゃないか」
本当に吉井くんと坂本くんは友達なんでしょうか?
「こうなったら、姫路に本当のことを言うしかないんじゃないか」
「駄目だよ、汀目くん。そんなことをして、姫路さんが傷ついたらどうするんだよ」
この状態で姫路さんの心配ですか。吉井くんはもしかして、姫路さんが好きなんですかね。
「そんなの関係ない。このまま死んでもいいのか?」
「そういう訳じゃないけど。でも他の方法があるかも」
「じゃあ、吉井くんが食べたらいいじゃないですか」
「成る程、その方法があったか」
吉井くんは勢いよく、デザートを口に入れて食べた。
バタン
死んだように倒れた。
「食べなくて良かったのじゃ」
木下くんは助かって安心していた。
その後は木下くんに私達の弁当を分けたりしながら、平和に過ごした。