石造りの心臓   作:ウボァー

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ハーメルンに5D's二次創作の波が来ている気がしたので一発ネタを小説に仕上げました。


地縛神編
石造りの心臓


 ジャック・アトラスには兄がいる。

 

 生きるにも苦労するサテライト。自分を守ってくれたその男児はジャックと同じ金の髪――ではなく白。顔つきもジャックと全く違う。歳はそう離れてない。けれど、自分と比べるとずっと大人びていた。

 

 血は繋がっていないんだよ、と遠慮しがちに言うがそんなものを気にするこの未来のキングではなかった。

 兄だと主張すれば兄になるし、言われている本人も兄と呼ぶのを受け入れているのだから誰にも文句は言わせないぞと胸を張る。遊星やクロウの羨ましそうな顔でどことなく優越感を覚える。……きょうだいのいないサテライトの子供達みんなのおにいさんになってもいいかも、というとんでもないことを言い出したのを止めるためどれだけ苦労したことか。

 

 いつも自分を守ってくれる、誰よりも強いひと。だからこそ、守られる必要はないのだと力を付けようとして……結局兄の世話になっていた。

 このカードはジャックのデッキに相性がいいぞ、とか、エースモンスターをさらに活躍させるための戦略とか。ふと覗き込んで呟く、そのどれもが的を射る発言だった。

 拾ったカードを皆に配るばかりでデュエルをする姿を全く見ないものの、その知識は豊富でありデュエルに困ったらジャックの兄に聞け、と暗黙の了解になっていた。

 

 ――しかし、皆が見たこともないカードに対しても答えを出せるほどの知識はどこで得たのだろうか?

 首を捻るも、少年の頭では納得のいく答えは出てこないのだった。

 

 

 ある日、捨てられていたカードを丁寧に拾っていたのを覚えている。長い間雨風に晒され、元が何なのかわからないほどボロボロになり、崩れ……ゴミとして処分される未来しかないカードたち。

 なんとか使えそうなのはサポートがなければ使いにくい通常モンスター複数。シティのショップの売れ残りだろうか、被りも多く名前に統一性のないそれらを大事に抱え、綺麗に拭いて、デッキケースに入れて。

 

 ついに兄が作ったデッキとデュエルできるかも! というワクワクは「ごめん40枚に全然足りないからデュエルはまだできないや」という兄の発言のショックで壊れ……少年ジャック・アトラスは3日ぐらい拗ねた。

 

 

 

 

 元気もりもりメメント・モリ!(気合いを入れるための掛け声)

 前世の死因は恐らくヒートショックなどこにでもいた女性会社員! 冬場にお風呂に入る時は年齢関係なく温度に気をつけよう、という教訓を死後に得た。

 

 ――そう、死後だ。

 死んだ後、何故か私は意識があった。

 

 小さいもみじのおててに明らかに低い視点。……どう見ても男の子な自分の体。

 そして周りはスラム街か? ってぐらい治安の悪く、隣にはまだあどけない顔立ちをした金髪の少年。

 

 少年は震えながら……ぎゅ、と私の服を握っていた。

 

「一人?」

 

 こくり、と小さく頷く少年。

 

「私も一人なんだ」

 

 一呼吸おいて、切り出す。

 

「……ねえ。良かったら、一緒に行こっか?」

 

 

 

 きっかけとしてはそれだけ。

 転生者は――お兄ちゃんを始めることにした。

 

 

 

 突然飛躍しすぎじゃないかと言われそうだが待ってほしい。

 赤の他人同士よりもお兄ちゃんと弟なら心の距離が縮まるのでは? という思いつきで勝手にこっちが自称お兄ちゃんを始めたんだけど少年は案外気に入ってくれたんだ。つまり同意は取れている。兄を名乗る不審者ではないため何も問題はない。

 

 そして人間とは慣れる生き物。子供二人でもこの場所でなんとかやっていけるぞ、という基盤を作り……嘘ですデュエルで必要な物資を悪そうな奴らから巻き上げてます。

 

 

 というのも、どうやらここではデュエルが何よりも強い決定権を持つらしい。

 

 

 グヘヘへって笑う小物感ある大人からデュエルを挑まれ、デッキは少年の持っていた拾い集めたカードで作った悪魔族多めのものを拝借、エクストラデッキにはスラム(仮)を歩いてて私が偶然拾ったシンクロモンスター数枚を投入。デュエルディスクも少年が持っていたものを使用。

 

 ……え? デュエルディスク? 実物? となったがデュエル開始。

 

 なんかモンスターがすごくリアルな映像と共に動いてる。いい感じにデッキが回って「こんなはずではグワーッ」とモンスターによる攻撃でライフポイントが0になった大人が派手に吹き飛ぶ様を「ええ……」って眺める私と、私がデュエルに勝ったのをまるで自分のことのように喜ぶ少年。

 

 

 大混乱状態の私は……そういえば少年の名前を聞いてなかったな、という何故今それを? な疑問が浮上。

 聞いてみたところ、少年の名前は――ジャックというらしい。

 

 

 ここ遊戯王5D'sじゃないですか! しかもサテライトじゃないですか! やだー!!

 

 

 そうなると二人でずっとうろちょろするわけにも行かねえや。早くマーサさん探さなきゃ。原作の流れに乗せないと世界が滅ぶ。

 周辺の悪そうなデュエリストを(ジャックのデッキで)ボコリ倒した結果発生した安全圏を一人散策する。使えそうなカードがないか探してみる、とジャックには出かける理由を伝えたが本命はそちらではない。マーサさんを探すことである。

 

 ……ところでマーサハウスってサテライトのどこにあるの? 流石にアニメの細かいところとか覚えてないのですが。すみませんどなたか道を教えてくれる親切な方はいらっしゃいませんでしょうか。

 

「此方だ」

 

 いたのは親切な人ではなく妙にガタイがいい老人だった。

 口に∞のマークがある金属製のマスクをしているからか、くぐもった声でこちらに語りかけてくる。

 

「え、ほ……ホセ……?」

 

「やはり、()()()()()のだな」

 

 あっ。

 

「……くれぐれも、未来を変えるなよ」

 

「ひゃい……」

 

 ずいずい近付いてきての発言である。圧に負けて尻餅をついてしまった。

 にしてもまさかのイリアステル。……死ぬかと思った。原作にジャックのお兄ちゃんなんていないから未来のために排除! 過去改変! されるかと思ったのだけど。

 

 いやまあジャックも世界の未来には欠かせない存在だから、深く関わったらイリアステルが接触する可能性はあった。あったかもしれないけど……突然のホセは流石に怖い。未来の私何かとんでもないことしたのか?

 

 

 ……と、とにかく目指せマーサハウス! 原作の流れを掴めプレイメーカー!

 

 

 またホセが出てこないかビクビクヒヤヒヤしながらもジャックを連れて無事マーサハウスに到着。

 お兄ちゃんしてる間、ジャックが同年代の子と遊ぶ姿を見たことがなかったので孤児の皆と仲良くできるか不安だったけど、遊星とクロウを中心に友達ができたから一安心。取り敢えずは大丈夫だろう。

 

 考えるべきは私のこれからのこと。

 未来を変えるな、とはなんともまあ大雑把な忠告。つまりアニメ本編に首を突っ込まなきゃ解決するんだけど、そう上手くいく未来が見えない。

 

 だってお兄ちゃん始めちゃったから……。自分で自分の首絞めてるよぉ……。

 

 ――私の遊戯王歴だが、紙の遊戯王をプレイした経験は無く、やったことあるのはデュエルリンクスとマスターデュエルだけなエンジョイ勢。

 Wikiとか公式SNSも見て新規カードが〜とか裁定が〜なんかも調べたりしてるのでアニメ世界の人たちと比べたら知識はそこそこあるつもりだ。というかそれ頼みでやっていくしかない。デュエルアカデミアの教育レベルが分かればいいんだけど難しいよなあ。

 

 でも、知識がすごかったらデュエルも強いってことになるよね。デュエルをしたらなし崩し的に原作に関わっちゃう危険性が高くなるからなんかこう、うまいことデュエルをしない、できない理由を……。

 

 

 ……拾ったカードは全部皆にあげたら解決するのでは? 自分だけのデッキを持たなければ、多分デュエルをせがまれる回数が減る……はず。

 

 

 そんな私の思いにカードが応えたのか、いい感じに皆へあげたくなるカードばかりが見つかるようになってきた。ジャックと二人ぼっちであちこち移動してた時もなんでかジャックのデッキに合うカード多かったので、多分コレは私の才能なのだろう。

 遊星の《くず鉄のかかし》が使われる度にあれは私が拾った、ってドヤ顔しとこ。ドヤ。

 

 

 今日も今日とてカード拾い。かなりの収穫になったのでジャックに「ついに自分のデッキを作るのか!?」とワクワク視線ビームを浴びせられているがすまない……これも皆へのプレゼント予定してるものなんだ……。

 

 フレームの色から通常モンスターが多いということはわかるが、詳しくは土汚れで見えない。布でふきふき綺麗にしつつ、どんな売り文句で皆にあげようかを考える。

 ……うーん、通常モンスターを特殊召喚できる《予想GUY》も拾えてたら通常モンスターをオススメしやすかったんだけどなあ。便利なカードは流石にサテライトにはそうそう落ちてないか。

 

 一枚目、《シーホース》。

 

 拾ったカードでデュエルしなきゃ……。いや私がデュエルしたらダメなんだって。

 

 二枚目、《キーメイス》。

 

 チーム太陽戦を思い出すなあ。そいや観客皆が持ってるレベルで刷られてた《眠れる巨人ズシン》はまだ入手してないや。

 

 ダメだ、前世のこと思い出すと手が止まっちゃう。早くキレイキレイしてあげないと。えー《屋根裏の物の怪》、《エンジェル・魔女》、《スカゴブリン》……。

 

 あれ、そういや。

 

「モンスター、みんな【メメント】になってるなぁ……」

 

 そう呟いた瞬間、カードが熱を持ち――何故かカードがダブって見えるようになった。

 

 ……なんということでしょう。手の中にあった通常モンスター達のフレームの色がアハ体験開始直後レベルで変化、メメント化したイラストと効果が薄らぼんやり浮かび上がってきた上に――追加でエースたるレベル11のアレとメメントの魔法・罠カードも生えてきたではありませんか。

 

 手が止まっているのを見て不安になったジャックが覗き込んできたので、レベル11のアレをカード束の一番下へサッと隠す。

 

 いやなんで幻竜族がここに!? 自力で生成を!?

 時代を無視したカード使ったらイリアステルに殺されてしまう可能性があるのにぃ。

 ……今シンクロ召喚大正義の時代だし幻竜族なら【相剣】とかの方が良かったな……。

 

 メメントはとにかく墓地を肥やしてレベル11のアレを出してぶん殴る! をしたいデッキだったはず。1枚初動多かった気がする。手札1枚から攻撃力5000が出てくるデッキ……うん、アニメ世界で出たらダメな気がする。

 他人に使わせたらダメだと思い、一応持ってたデッキケースにしまう。

 

 数えた結果、メメントカードの合計40枚なかった。

 デュエルできると思ってたジャックに拗ねられた。

 

 ……ごめん。

 

 

 

 なんてこともあったなあ。チームサティスファクション結成後に三人の調子を確認しに行ったら「ジャックの兄貴!?」ってびっくりした鬼柳からデュエル挑まれそうになって、40枚ナイヨーで回避しようとしたら「オレのデッキを使ってやれ。久しぶりに兄のデュエルする姿が見たい」とジャックがデッキ貸してこようとするし。

 

 まだ【インフェルニティ】ではなく【デーモン】を使っていた時とはいえ、あの三人を集めてリーダーができる鬼柳はかなり強かった……。

 ジャックのデッキの中身をある程度知られてるのもキツかった。戦術がバレてるの困る。

 苦戦したもののなんとか勝利を収めた結果、めちゃくちゃ気に入られてチームサティスファクションのサブメンバー入りさせられそうになったし。やめろぉ!

 

 ……満足同盟がゴタゴタし始めてからは、三人のギスギス間近で見ることになって……あんまし思い出したくないや。

 

 その後に起きたことはなんか……その場に流されるままだったし記憶が薄い。ジャックにスターダスト・ドラゴンと一緒にシティへ拉致られて高そうなお家に住むことになり、なんかよくわからない間にトーナメント終わったり元キングになったり地縛神編が始まり……。

 

 

 と、ここまでが過去の振り返り。現実逃避とも言う。

 ここからが現在。

 私は今、石でできた心臓の中の謎空間でふわふわと漂っています。

 

……地縛神の生贄になってるじゃん! つまりまた死んだっぽいなワハハ!

 

 そして目の前には、今も40枚には足りないカード束の入ったデッキケースから飛び出した《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》がピカピカ主張している。

 

 これはテメェらの仕業かメメント! メメントの宣伝フレーズに冥府がナントカ言ってたの覚えてるんだぞこっちは! 地縛神の生贄になるのはシグナー達の戦う動機とかへ影響するから思いっきり原作ストーリーに関わってることになるじゃんか!! ホセに殺されたらどうするんだ!!

 

 というより、地縛神から解放された時の方がヤバくないか? ジャックにめちゃくちゃ叱られそう。

 

 ……今日も元気もりもりメメント・モリッッ!!(やけくそ)




《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》の元ネタってアステカ神話の死の神「ミクトランテクートリ」らしいですね。
5D'sはアステカ神話が関係あるお話ですよね。
【メメント】の相性はいいのでは? と思う作者だったり。でも一枚初動は勘弁な!

続きは《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》の召喚のためにデッキに戻されました。
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