ジェイドVS鬼柳戦です!
夕暮れ空の下、クラッシュタウンはデュエルタイムとなる。
二人の決闘者が見合う。互いに己の魂であるデッキはデュエルディスクにセット済み。後は腕へと装着するだけの状態となっている。
この街で使われるデュエルディスクは変形機構があり、普段は銃の形にしてガンホルスターに吊るし携帯する。
戦う際はガンホルスターから引き抜き、デュエルディスクを銃から決闘盤へと変形、手札5枚を先に揃えた方が先攻に……と、さながらガンマンの早撃対決を模しデュエルを始める。
この街の流儀に則り、二人が動き出したのは同時。
どちらもデュエルディスクを変形させる操作に淀みはない。それでも50戦と数を重ねて慣れた鬼柳の方が早い……かと思われたが、変形を終えた途端にジェイドのデッキが妙な動きを見せる。5枚のカードが勝手に彼の手の中へと飛び出してきたのだ。
――タッチの差でジェイドの先攻となった。
ジェイドの使うデッキのモンスターは全てが精霊憑きのもの。ある日突然書き変わったり増えたり、自分から手札として飛び込んでくるなど簡単なものだ。
デュエルディスクの変形練習をする中ふと思いついて頼んでみたところ、勝手にぴょんぴょんする摩訶不思議デッキが爆誕してしまった。
「黙ってて悪いね。ずるいと思う? 許せないなら先攻はそっちでもいいけど」
「お前の持てる全てを使っているだけだ。問題ない」
「…………そう」
台詞だけだと突然の理不尽を受け入れてなお相手を倒そうとする決闘者、となるが今の鬼柳だと言葉の裏の意味は「持てる力の全てを使い俺を殺せ」だろう。
ざわつく心をなんとか落ち着かせ、デュエルに支障が出ないよう集中する。
「私のターン、ドロー。自分フィールドに表側表示モンスターがいないため《メメント・シーホース》を特殊召喚。効果で自身を破壊しデッキの《メメント・ウラモン》、《メメント・メイス》、《メメント・ゴブリン》を墓地に。《メメント・ウラモン》を自身の効果で特殊召喚し、もう一つの効果で墓地の《メメント・メイス》を手札に加える」
連続した効果発動と特殊召喚。鬼柳に動きはない。
「《メメント・メイス》を通常召喚。《メイス》の効果で自身を破壊してデッキから《メメント・ボーン・パーティー》を手札に加えそのまま発動。《ウラモン》を破壊してデッキより《メメント・ダークソード》を特殊召喚。《ダークソード》の効果で自身を破壊し《メメント・エンウィッチ》を特殊召喚。《エンウィッチ》の効果でデッキから《メメント・メイス》を手札に」
着々とモンスターは墓地に貯まっていく。鬼柳に動揺はない。
「《エンウィッチ》の効果で自身を破壊し墓地の《メメント・ゴブリン》を特殊召喚。《ゴブリン》の効果で自身を破壊しデッキから《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》と《メメント・フラクチャー・ダンス》を墓地に」
ここでジェイドは言葉に明確な区切りを見せる。これから出すモンスターをしっかりと目に焼き付けろと天に手を伸ばす。
「来るか……」
鬼柳は呟く。それは決闘者として相手のエースモンスターを警戒するのではなく、ずっと待ち望んでいた終わりを与えてくれるものが登場することへの歓喜。
「墓地の『メメント』モンスター5種類をデッキに戻し、墓地より《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》を特殊召喚!」
《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》
星11/守5000
大地を突き破るようにして頭骨を備えた腕が現れる。ジェイドと似たポーズで墓地からフィールドへと迫り上がる竜は、上半身が全て出た後に翼を一度大きく羽ばたかせて、勢いをつけて大地の穴より抜け出し全身を見せる。
先攻は攻撃できない。防御の姿勢でフィールドに降り立つ骨の竜の守備力は5000。相手が攻撃力で突破するのは困難だ。
「カードを2枚伏せてターンエンド」
先攻1ターン目にして守備力5000の怪物を出されるも男は怯まない。カードをめくるだけの亡霊を自称する男には不要な感情であるがために。
「そうだ、それでいい……俺のターン、ドロー」
「ドローフェイズに永続罠カード《メメント・クレニアム・バースト》を発動する。チェーンは?」
「無い。……手札より魔法カード《調律》を発動。デッキからチューナーモンスター《インフェルニティ・セイジ》を手札に加え、デッキの上から手札に加えたチューナーのレベルの数だけカードを墓地に送る」
煉獄の賢者のレベルは2。よって墓地へとカードが2枚落ちていく。
「《調律》か……相手が効果を発動したので《テクトリカ》の効果により墓地の《メメント・エンウィッチ》を特殊召喚。《エンウィッチ》の効果でデッキから《メメント・ゴブリン》を手札に加える」
《メメント・エンウィッチ》
星3/守1000
竜は墓地の眷属へ呼びかけるように吠え、骨の翼を持つ魔女っ子はぴょこんと顔を出す。
「手札の《インフェルニティ・ジェネラル》を捨て《ダーク・グレファー》を特殊召喚」
《ダーク・グレファー》
星4/守1600
「……手札の《メメント・ゴブリン》を捨て効果発動。『メメント』モンスターはこのターン相手の効果対象にならない」
「手札3枚を伏せ、《ダーク・グレファー》の効果を手札の《インフェルニティ・セイジ》を捨てて発動」
鬼柳は残る最後の手札1枚を捨て戦士の効果を使用する。
デッキから闇属性モンスター1体を墓地に送る、墓地を利用する【インフェルニティ】相手に許してはならない効果。
「《メメント・クレニアム・バースト》の効果! 相手がフィールドのモンスターの効果を発動した時、《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》の攻守を1000下げてその発動した効果を無効にする!」
竜は全身から光線を放ち、使われようとしていた戦士の闇の能力をかき消す。
「無効効果か……! 俺の手札は0枚のため墓地に捨てた《インフェルニティ・セイジ》の効果を発動。デッキより《インフェルニティ・コンジュラー》を墓地に送る」
フィールドで発動したならばいかなるモンスター効果も止めてみせる光はかの竜のステータスを代償にする。エネルギーを消費したので纏う宝石の輝きは落ちているが、それでも攻守は4000ある。
――エースモンスターには使い手の性質が反映されやすい。遊星の使う《スターダスト・ドラゴン》が他のカードを破壊から守る効果を持つように。ジャックの使う《レッド・デーモンズ・ドラゴン》が守備表示の臆病者を許さないように。
「墓地から引き上げる優しさに、自分の身を削ってでも止める強さ、か。……お前は変わらないな」
……だからこそ、そんな彼にしてしまったことへの裁きが必要なのだ。
「セットした通常魔法《バレット&カートリッジ》を発動。デッキからカードを4枚墓地に送り1枚ドロー。その後デッキトップに発動したこのカードを置く」
1枚の魔法カードによる4枚もの墓地肥やしと1枚のドロー。効果の内容からするに墓地へ送ったカードはランダムではなく自分で決めている。OCGで許されることのないアニメ特有のトンデモカードだ。
デッキトップに置くため次のドローが固定されるデメリットだが、その後にデッキに触れる効果を使えばシャッフルされ消える。
――ドロー効果を使ったことで男の残り手札は1枚。ざわざわと外野の声が聞こえてくる。
「来るぞ……」
「来る……」
せっかく手札を0にしたのにドローして、それを崩した。しかし鬼柳ほどの決闘者が己の必殺の戦術を失敗するはずがない、と観客は皆分かっている。
期待の声を背に、いつも通りのデュエルを死神は行う。
「手札1枚をセット。――これで手札はゼロだ。セットしていた《インフェルニティガン》を発動!」
【インフェルニティ】が最も力を発揮する
《メメント・クレニアム・バースト》で止められるのはフィールドで発動したモンスター効果のみ。魔法カードはどうにもできない。
「《インフェルニティガン》を墓地に送り、墓地の《インフェルニティ・ネクロマンサー》と《インフェルニティ・ミラージュ》を特殊召喚!」
《インフェルニティ・ネクロマンサー》
星3/守2000
《インフェルニティ・ミラージュ》
星1/守0
ソリッドビジョンにより現れた巨大な銃火器のようなオブジェが自壊しながら射出した2体のモンスターも当然、手札0で真価を発揮する。
「《インフェルニティ・ネクロマンサー》の効果で墓地から――」
「《メメント・クレニアム・バースト》! その効果は無効にさせてもらう!」
幻竜より放たれた光がフィールドで悪魔が唱えていた死霊術を止める。
……が、悪魔の幻影が揺らいだ。
「チェーンして《インフェルニティ・ミラージュ》をリリースし効果発動! 墓地の《インフェルニティ・セイジ》2体を特殊召喚する!」
「なっ、フリチェ!?」
今使われている《インフェルニティ・ミラージュ》はアニメ効果なのだろう。墓地からの特殊召喚ができていた時点でおかしいと思うべきだった。まさかのフリーチェーンによりジェイドは驚きの声を上げる。
《メメント・クレニアム・バースト》は同一チェーン上1度の制限がある。既に《インフェルニティ・ネクロマンサー》へと効果を使っているため、あの幻影の効果は止められない!
《インフェルニティ・セイジ》
星2/守800
《インフェルニティ・セイジ》
星2/守800
妨害はしきれずフィールドにはモンスターが4体。そのうちチューナーが2体存在している。シンクロ召喚が行われるのは確定した。
「レベル4の《ダーク・グレファー》にレベル2の《インフェルニティ・セイジ》をチューニング」
「ゼロより出でし煉獄の悪魔よ、この世の虚無を喰らい尽くせ! 来い、《インフェルニティ・ヘル・デーモン》!」
《インフェルニティ・ヘル・デーモン》
星6/攻2200
シンクロの光の中より現れたのは細長い体躯を炎の色に染め上げた悪魔。
「《インフェルニティ・ヘル・デーモン》の効果で《メメント・クレニアム・バースト》の効果を無効に。また、自分の手札が0枚の場合そのカードを破壊する!」
「《メメント・クレニアム・バースト》でその効果を無効に!」
悪魔の放った煉獄の炎を冥骸の光が打ち消す。
三度目の無効化により攻守は2000へと下がった。現在の《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》は上級モンスターで突破可能なステータスへと落ちている。
「随分弱ってきたじゃねえか。息切れか? まだデュエルが終わるには早すぎるぜ……レベル6の《インフェルニティ・ヘル・デーモン》にレベル2の《インフェルニティ・セイジ》をチューニング!」
「死者と生者、ゼロにて交わりし時、永劫の檻より魔の竜は放たれる! シンクロ召喚! いでよ、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》!」
《インフェルニティ・デス・ドラゴン》
星8/攻3000
脳味噌を露わにしたグロテスクな姿。冠のように伸びる角、無数の眼球、胸部から飛び出た爪。異形の魔竜が爆誕する。
「シンクロ素材となった《ヘル・デーモン》の効果で《インフェルニティ・デス・ドラゴン》はモンスターへ2回攻撃が可能になる!」
「手札の《メメント・メイス》を捨て効果発動! 《インフェルニティ・デス・ドラゴン》のコントロールを奪う!」
力をほぼ失った幻竜と魔女っ子だけでは守りきれないと判断し、ジェイドは相手が出した攻撃力3000も自身を守る壁として利用する。
「墓地の《インフェルニティ・ジェネラル》を除外し、墓地の《インフェルニティ・ワイルドキャット》と《インフェルニティ・クイーン》を効果を無効にし特殊召喚」
《インフェルニティ・ワイルドキャット》
星3/守0
《インフェルニティ・クイーン》
星3/守900
《バレット&カートリッジ》により墓地へ送られていたモンスター達を使い鬼柳は動き出す。
「レベル3の《インフェルニティ・ネクロマンサー》とレベル3の《インフェルニティ・クイーン》に、レベル3の《インフェルニティ・ワイルドキャット》をチューニング!」
「レベルの合計は9……まさか!?」
チューナーと、チューナー以外のモンスター2体。インフェルニティではないが、他の媒体で確かな縁を持つあの恐るべきドラゴンの存在は知っている。
いるが、まさかレアカードに分類されるあのモンスターを持っていたとはジェイドは思いもしなかった。
「破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け! シンクロ召喚! 現れよ、《氷結界の龍 トリシューラ》!」
《氷結界の龍 トリシューラ》
星9/攻2700
それはこれまで鬼柳が使っていたインフェルニティと全く違う、世界全てを凍てつかせる冷気を放つドラゴン。
「シンクロ召喚した《トリシューラ》の効果をはつど、」
「《メメント・クレニアム・バースト》で無効に!」
ジェイドは食い気味で妨害を宣言。度重なる永続罠の使用により攻守は1000。
――モンスター効果を無効にできるのは残り1回。
「セットしていた《シンクロキャンセル》を発動。《トリシューラ》をエクストラデッキに戻し、シンクロ素材となった3体のモンスターを墓地から特殊召喚」
「――ッ!」
これで再びの《トリシューラ》のシンクロ召喚が確定した今、その間に挟まる展開を止めることはできない。
「墓地の《インフェルニティ・コンジュラー》を自身の効果で特殊召喚」
《インフェルニティ・コンジュラー》
星3/守900
「レベル3の《インフェルニティ・コンジュラー》にレベル3の《インフェルニティ・ワイルドキャット》をチューニング」
合計レベル6。呼び出したのはこのデュエルで2体目となる《インフェルニティ・ヘル・デーモン》。
「《インフェルニティ・ヘル・デーモン》の効果。《メメント・クレニアム・バースト》の効果を無効にし破壊する」
「ぐッ、《メメント・クレニアム・バースト》で無効に!」
出た当初の輝きはもう無い。ジェイドのエースモンスターはくすんだ宝石と覇気のない姿を晒しながらフィールドに残っていた。
「嘘だろ、5回の妨害を使い切らせただとぉ……!?」
「流石先生! このままやっちまってください!」
5回もの効果無効を乗り越え、鬼柳は研ぎ澄まされた刃をジェイドへと突き立てようとしていた。
「《ネクロマンサー》の効果で墓地の《インフェルニティ・ワイルドキャット》を特殊召喚――《ネクロマンサー》、《クイーン》、《ワイルドキャット》で《氷結界の龍 トリシューラ》を再びシンクロ召喚! 効果を発動する!」
「セットカード発動、《メメント・ボーン・パーティー》! フィールドの《テクトリカ》を破壊しデッキから《メメント・メイス》を手札に加える!」
「ここで手札の補充だと? 手札の重要カードを除外される確率を変えるためか……どちらにせよエースを失うお前に関係ないことだ。手札の1枚、フィールドの《メメント・エンウィッチ》、墓地の《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》を除外!」
「……そりゃあ、そうするよね」
かの竜の効果は、効果処理時にどれを除外するかを決める。故に男は誤ることなく、何を奪うかを決められる。三つの首から放たれた吹雪がそれぞれカードを凍結し、ジェイドの手で触れられない場所へと送った。
しかしモンスターが除外されたとはいえジェイドのフィールドにはまだコントロールを奪った《インフェルニティ・デス・ドラゴン》がいる。攻撃力は届かない。
モンスター同士で戦闘を行うのならば、の話だが。
「墓地の《インフェルニティ・クイーン》の効果。墓地の闇属性モンスターを除外し《インフェルニティ・ヘル・デーモン》はこのターン直接攻撃を可能とする」
チェスにてクイーンは最も自由に動ける駒だ。その能力を付与された悪魔は宙に浮かび、無数の赤い魔法陣を上空に展開する。
「インフェルニティ・ヘル・プレッシャー!」
魔法陣は束ねられ、そこから地上に立つ決闘者を押し潰すように巨大な腕が召喚された。攻撃力2200によるダイレクトアタックがジェイドへと叩きつけられる。
ジェイド
LP 4000→1800
「ぐうぅっ……!」
「俺はこれでターンエンドだ」
「……エンドフェイズに《メメント・メイス》の効果が終わり、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》のコントロールは元に戻る……」
鬼柳のフィールドに並ぶ3体のシンクロモンスター。対するジェイドのフィールドにモンスターはいない。
「次の俺のターンになれば再び《インフェルニティ・クイーン》の効果で直接攻撃が可能。…………ここまでなのか、ジェイド……」
鬼柳の顔に浮かぶのは絶望の色。このデュエルで終わりという救いが否定されてしまう、延々と闇の中で苦しみ続ける生が続いてしまう。
男にわざと負けるなどという愚かな選択肢はない。全力を出し、その上で敗北し葬られることでデュエルにより起こしてしまった罪を精算したいからだ。
「勝手に期待して勝手に諦めて、何様のつもりだよ鬼柳……!」
ジェイドとしては、そんな姿は見ていて非常に腹が立つ。こちらは死にたがっている鬼柳をデュエルを通して変えたいのに勝手にメンタルがコロコロ変わりやがってカメレオンかお前は。満足に向かってずっと進まないと駄目になるマグロみたいな生態しやがってコンニャロー。
……悪態は心の中だけで終わらせてデュエルに戻る。
《氷結界の龍 トリシューラ》の効果によるランダムな手札除外で《メメント・メイス》は除外されなかった。
なので、このターンで勝つことはできるが……それは相手が伏せているのがこちらが発動したモンスターの効果を無効にする《インフェルニティ・バリア》でないならば、の話だ。
「私のターン、ドロー! 《メメント・メイス》を召喚、効果で自身を破壊しデッキから《冥骸融合-メメント・フュージョン》を手札に!」
ジェイドは賭けに出る。鬼柳は動かない。
――効果は通った。ジェイドの頬が緩む。
「融合だと……!?」
融合召喚……魔法カードと複数のモンスターカードを要求するため消費が激しい召喚方法だ。
絶体絶命のこの状況で使うとなると、よほどの効果を持つものだろう。鬼柳に希望の光が戻る。
「《冥骸融合-メメント・フュージョン》発動! この魔法カードはこのターン自分の『メメント』モンスターが破壊されている場合、墓地の『メメント』モンスターをデッキに戻しての融合召喚を可能とする! 私は墓地の《ゴブリン》と《メイス》を戻し――《メメント・ツイン・ドラゴン》を融合召喚!」
《メメント・ツイン・ドラゴン》
星7/攻2800
融合の渦から出てきたのは頭だけでなく背にも口があるドラゴン。帯電する角はどこへ放電するかの矛先を求めている。
「攻撃力2800か……《インフェルニティ・ヘル・デーモン》は倒せても《インフェルニティ・デス・ドラゴン》には届かない」
《インフェルニティ・クイーン》による直接攻撃付与は闇属性モンスターへ行える。鬼柳のフィールドにいる闇属性モンスターは2体。どちらの攻撃力も現在のジェイドのライフを上回っている。
片方を倒すだけではいけない。どちらも倒す必要がある。それを分かって鬼柳は発言した。
「《メメント・ツイン・ドラゴン》の融合召喚した場合の効果を自身に対し使用、破壊する!」
「なっ、自身を破壊だと!? その融合モンスターも展開を補助するのか!」
モンスターを倒さねばならないのに攻撃はせず、出てきて即自爆。
自分が出した雷でぷすぷすコゲコゲになった二口の竜は崩れ落ちると同時に決闘者へカードを託す。
「そしてデッキの《メメント・シーホース》と《メメント・ゴブリン》を手札に加える。自分フィールドに表側表示モンスターがいないため《メメント・シーホース》を特殊召喚。《シーホース》の効果で自身を破壊してデッキの《ウラモン》、《ゴブリン》、《メイス》を墓地に送る。墓地に送られた《メメント・ウラモン》を自身の効果で特殊召喚し、《ウラモン》の更なる効果で墓地の《メメント・ボーン・パーティー》を手札に」
手札に加えた《メメント・シーホース》により先攻1ターン目とほぼ同じ展開ルートへと入る。
違うのは、最終目的であるレベル11の幻竜が除外されているため、このままではいくら墓地にモンスターを貯めても出せないこと。致命的な相違点だ。
「《メメント・ボーン・パーティー》を発動。《ウラモン》を破壊してデッキから《メメント・カクタス》を守備表示で特殊召喚」
モンモン鳴く悪魔と入れ替わり出てきたのは形容し難い、蝙蝠と魚を合わせたようなモノ。
「墓地の《メメント・フュージョン》を除外し効果発動。《カクタス》を破壊しデッキから《冥骸府-メメントラン》を手札に」
「っ……いくらデッキを回そうと、お前のエースは除外されている! 蘇ることはない!」
効果を全て把握できたわけではないが、あれほどのモンスターが除外された状態からでも特殊召喚ができるとは思えない。
鬼柳のカンは当たっている。《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》は手札・墓地にある時にフィールド・墓地の『メメント』モンスター5種類を戻すことで現れるモンスター。除外は天敵だ。
「――それはどうかな?」
鬼柳による指摘に対し、ジェイドは不敵な笑みを浮かべて答える。
「効果で破壊された《メメント・カクタス》の効果で、除外状態の『メメント』カード――《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》を手札に加える」
破壊された奇妙なモンスターはその姿が消える直前にどこかへと潜んでいたカードを見つけだした。
除外されていた1枚のカードが彼の手の中に帰還する。
「フィールド魔法《冥骸府-メメントラン》発動」
ソリッドビジョンによりクラッシュタウンは発動したフィールド魔法の風景に切り替わる。
西部劇ではなく、遥か昔の神を讃える遺跡に。かの幻竜を呼び出すに相応しい舞台に。
「墓地の『メメント』モンスター5種類をデッキに戻し、手札より特殊召喚する」
何を出すのか――それを言う必要はもはや無い。
「幾度破滅を迎えても我らは蘇る! 戦場へと帰還せよ、《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》!」
『オオオォォオオオオォォ――ッ!!』
幾度、太陽が変わろうともこの思いだけは変わらない。
夕陽を背に咆哮するのは何よりも頼もしいジェイドのエースモンスター。逆光の中、纏う宝石が夕焼けの光を反射し輝く。
《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》
星11/攻5000
「あのモンスターは全体攻撃効果を持つ! これで鬼柳もお終いだ!」
「だがセットカードがまだ残ってるぞ!?」
部外者達がざわざわと騒ぎ立てる。ざわめきに同調するように鬼柳も声が大きくなった。
「ああ、それで、俺を――俺の罪ごと!」
罪の象徴であるインフェルニティを全て戦闘で倒し、全てを終わらせてくれるのではないか。そんな濁った欲が見えた。
彼の思い通りにすると、きっと鬼柳はそこで満足してしまう。だから――。
「こんなことで満足されてたまるか! 《メメント・カクタス》の効果により、このターン《テクトリカ》は直接攻撃が可能となる! また、手札の《ゴブリン》を捨てることで『メメント』モンスターは相手の効果対象にとられなくなり、《メメントラン》によって『メメント』の攻撃時に相手の魔法・罠の発動は封じられる!」
鬼柳が伏せていたのは《インフェルニティ・フォース》――『インフェルニティ』モンスターが攻撃対象に選択された時に発動できる罠カード。直接攻撃には無力だ。
数多の守護を得て、罪の象徴を飛び越え、竜は鬼柳の眼前に踊り出る。主人の思いを直接伝えるかのように。
「ようやく、まともに話を聞いてくれるところまでもっていけた」
「無駄話はいい。早くデュエルを終わらせろ」
両腕を広げて
「――罪ばかりを数えるな。お前の掲げたサテライト統一という満足で救われた人々から目を背けるな! そもそもデュエルで殺せなんて妥協点を無理やり押し付けてきてる時点で、お前自身は最初からわかってるはずなんだ! こんなありきたりな断罪ごっこで満足できるはずがないってことぐらい!」
「ジェイド……! お前に俺の何がわかる!」
「その言葉はそっくりそのまま返す。裁く権利があるだとか決めつけてたけど私には無いんだよそんな思いは!」
「じゃあなんでクラッシュタウンへ来た!」
「友達が変なこと言ってたら誰だって止めにくるだろ! というか見当違いなこと言われた反応じゃないんだよさっきから! 無視できてない時点で当たってる部分あるって認めているのがわからない!?」
周囲を置いてけぼりにしてヒートアップする二人の世界は永遠ではない。はあはあと息切れするジェイドは深呼吸をした後に落ち着いた様子に戻る。
「……鬼柳京介の全部はわからないけど、さ。決闘者のことはようくわかる」
ぽつりぽつりと紡ぐ言葉は、全部本音からのもの。
「負けたら誰だって悔しくなるんだ。今度こそはって気持ちになって、次のことを考える。デュエルで負けるってのは、そう簡単に終わりにはならないんだ」
「ジェイド……」
鬼柳が攻撃という断罪を受けるために広げていた腕はいつの間にかデュエルをする姿勢へと戻っていた。
「だから――こんな街のせいで死ぬな、鬼柳!」
前のターン、ジェイドも直接攻撃されたが攻撃力はこちらの方が高い。
言葉と共に、その重さを叩きつける。
「鬼柳にダイレクトアタック! オーバーウェルミング・リ・ボーンフォース――」
攻撃宣言はされた。
鬼柳のライフ4000を削る一撃が届いた――そのはずだった。
「――がァッ!?」
突然ジェイドへと衝撃が走る。全身に響く痺れ。自由が奪われる。
「お前らやっちまいな!」
女性の嬉々とした声。……受け身ができずに倒れたジェイドは目だけを動かして正体を見る。
それは、真っ当に相手をする気なんてなかったバーバラの指示による電撃銃。鬼柳も撃たれたのか膝をついている。
「こ、のやろ……!」
「ハン、騙される方が悪いんだよ」
バーバラはジェイドから警戒されていることには当然気付いていた。
バーバラが自分から呼び出したならまだ距離感は近くなったのだが、鬼柳が呼んだよくわからない男に対してバーバラは突然絡んできた謎の女性にしかなれない。
故に、彼に話した通りに勝敗が決まってから爆弾入りの花束を渡すのではなく、彼らが最も油断する瞬間――デュエルが終わる直前を狙った物理的な手段による排除を決行した。
デュエルタイムに突然起きた事件に戸惑うラモングループへ追い討ちをかけるように、Dホイールに乗って乱入したのはマルコムの弟であるロットン。
帰ってきたのは偶然だが、マルコムグループは偶然といえど戦力が増えた機を逃しはしない。《ガトリング・オーガ》による先攻1ターンキルで対抗勢力のリーダーであるラモンを黙らせた。
――この瞬間マルコムグループはクラッシュタウンを完全支配する勢力として確立した。
「ほーう? こいつが、ねぇ」
ざっくりと兄から話を聞き、そんじゃ負け犬のツラを拝んでやろうとロットンが軽い気持ちで近寄り最後の言葉をかける。
「地獄で仲良しごっこでもしてな、おふたりさん」
「「………………あ゛ぁ?」」
試合に水を差されたジェイドだけでなく、話を聞く限り生きる気力を失っていたはずの鬼柳も口答えをしてきた。
さしものロットンも決闘者の放つ殺気に気圧される。
「チッ、早く運べ!」
その言葉により急いで棺桶に詰められて鉱山へと送られていく。
「これで良かった、そのはず、そのはずなんだ……」
バーバラは無意識に胸を押さえていた。彼らが最後に発した殺気で鼓動が早まっている。
最後まで見届けなければ。目を離した隙に戻ってくるのではないか……そんな思いが胸のどこかに燻り、二人を乗せた馬車が地平線へと点になり消えていくまで安心はできなかった。
いやージェイドVS鬼柳戦がアニメで放送された時の「OCGでやれ」「公式認定満足竜」とかの感想の数は凄かったですよね。ね?
「何!《インフェルニティガン》を使うのなら《インフェルニティ・デーモン》も使って満足しないのか!?」と満足している読者の皆さんに言われそうですが、原作効果のデーモンくんは手札0の状態でドローし手札に加わったときに特殊召喚、しかも自身の効果で特殊召喚した時だけのサーチ効果なので満足できないんですよね……。
OCGで強化されすぎている。
〜今話の不満足状態鬼柳の満足ゲージの変遷〜
ようやくデュエルで殺してくれるぞ!ヤッター!(上がる)
↓
妨害貫通できて攻撃が通った……次の俺のターンになると勝っちまうな……駄目か……(下がる)
↓
うおおおお!!そのままインフェルニティモンスター全部倒して裁いてくれ!!それでいい!!(妥協満足)
↓
ジェイド……(ダイレクトでっかい感情説得アタックでゲージ上限の妥協満足にヒビが入る)
↓
…………乱入? あ゛? よくもデュエルの邪魔しやがったなそのツラ覚えたぞ(斜め上へゲージが丸ごと吹っ飛んでいく)
追記
《インフェルニティ・ビートル》に対して《クレニアム》使えたよ、なデュエルミスはアニメ効果の《調律》とアニメ効果の《インフェルニティ・ミラージュ》で修正できたと思います。アニメ効果こわい。
追記への追記
アニメ効果の《インフェルニティ・ビートル》はそもそもチューナーではなかったという重大事実を2025/5/26からのアニメ公式配信で確認したため、《ビートル》をチューナーとして使っていたところはレベル2チューナーの《インフェルニティ・セイジ》に差し替えました。デュエルの流れに大きな変更はありません。
調べが甘かった……。誠に申し訳ありません。
お気に入り・感想・評価など貰えますと更新予約により書き溜めレスコンボをした作者がとても満足します。