鉱山脱出&ロットン戦です!
クラッシュタウンにて負けたものが送られてくる鉱山内部は苦悶の声と怒号が響く地獄であった。
「オラオラさっさと働け負け犬どもぉ!」
「ぐわぁあ!」
劣悪な環境で鞭を打たれ、くたばるまで働かされる。
痛みに悶える決闘者を助けに行きたいが、今それをしては彼らが画策する脱出計画は全て水の泡になる。
「いつからこんなことやってんだこの街」
「全くだ」
さっきまでのギスギスはリアリストのせいで吹き飛び、デュエルを中断させられた者同士で意気投合していた。許すまじバーバラ。許すまじロットン。
木製のツルハシというまともに鉱石を掘る気があるのか疑わしい道具を渡されて、適当な奴を選び勤務態度が悪いと言いがかりをつけて罰が与えられる。
――非効率的な作業と、監督役に持たされた過剰な暴力。
デュエルする時間を制限されたために娯楽が少なくなったクラッシュタウンでの鬱憤の捌け口なのかもしれない。
いや、皆が好き勝手にデュエルをしすぎて鉱山送りになる決闘者が多すぎたから1日1戦と制限し代表者を立てて……? まあそれがわかったところで今役に立たないしなあ、とジェイドは途中までの考察を放棄する。
「……悪いな、こんなとこまで付き合わせちまって。お前だけじゃなく他の奴が……俺以外のチームサティスファクションのメンバーが一人でもいたらこうはならなかったかもしれねぇな」
頼れるあいつらがいれば二人とも捕まる危機的状況にならなかったのでは、と悔やむ。
「今は泣き言言ってる場合じゃない。まぁ、ここに来たのがもし他のメンバーだったとしても自殺志願妥協満足は許さないと思うけども」
「妥協満足……?」
突然何言ってんだコイツの視線がチクチク刺さる。デュエルしてる時のお前をこれ以上なく表した言葉ですけど、とジェイドも視線で答える。
怒りの矛先がリアリストへと向いたためジェイドは元の調子に戻っていた。今日も元気もりもりメメント・モリ!(おもしれー男)
口と手をどっちも動かしているため無駄口を叩くんじゃねえと鞭による叱責は時折喰らうが、そんな中でも集めた情報により脱走は十分可能だと判断した。
「監視の隙はあるな。いつ動くかだが」
「もちろん今日中。警備の雑さはこの首輪でなんとかできるからの油断かな」
「デッキもデュエルディスクも無い、心が死んだ決闘者が反乱を起こせるはずがないと思われているのもあるだろう」
首に嵌められた装置はカリカリ引っ掻くもびくともしない。決闘者の魂たるデッキも手元にない。普通なら全てを諦めてここを墓場にするのだろうが、二人ともとても諦めが悪かった。
ジェイドに首輪の鍵を釘でちょちょいと解除できる遊星ほどの鍵開けスキルは無い。なので物理的に対処する。
「さてと、そろそろ誘拐されっぱなしに飽きて戻ってきたかな……っと」
上着の右ポケットをもそもそ漁り取り出したのは【メメント】デッキ。もそもそは左側でも行われ、今度はジェイドのものではないデッキが出てきた。
「で、多分こっちが鬼柳のデッキ」
手渡されたデッキに欠けがないことを確認した鬼柳は引きつった笑みを浮かべる。
「……とんでもねえな、ソレ」
クラッシュタウンで50連勝を重ねた【インフェルニティ】と、そんなデッキから勝利を奪った【メメント】。マルコムグループはそんな危険物を持たせたまま鉱山に放り込む愚かな真似はしなかった。
当然、デッキを奪われたのだが……その際にカードに向かって「《テクトリカ》、ある程度したら【インフェルニティ】と一緒にみんな連れて帰って来い」と呼びかける姿を見られて狂人扱いされたのは必要な犠牲だろう。
結果として取り上げられたはずの二人のデッキは全てジェイドの懐に入っていた。ワープしている。何も知らなかったら恐怖体験だ。タネも仕掛けもないが精霊はモリモリいるので超常現象はお手のものなので問題はない。
「カード達も気に入らない奴に使われるなんてまっぴらごめんだろうし、ひとりぼっちはヤだからね。……【インフェルニティ】も一緒にってのはこんな状況だからこそしてくれた特別対応だと思うけど」
ジェイドは己のデッキから1枚のカードを手にする。
「それじゃちょっとごめんね。動かないでね」
鬼柳の顎に左手を、カードを持った右手を首輪に。肌を傷つけないよう注意しながらカードを首輪に当て、勢いよく引く。金属へ切れ込みが斜めに入りカードの切れ味の鋭さを物語る。
ジェイドがぐいっと力を込めれば切れ込みの部分から割れていき……首輪は外れた。
「はい終わり」
自分の首輪もカードでスッパリからの破壊。
自由になったことを確かめるようにはまっていた箇所を撫でるジェイドと、首を左右に動かし鳴らす鬼柳。
「行くか、満足を取り戻しに」
「当然。さっさとくだらない支配を終わらせよう」
隙をついて気付かれないよう脱出。急ぐために山道ではなく斜面を滑り下り……その先で見たのは突き刺さっている数多のデュエルディスク。
見渡す限り存在するデュエルディスクは全てクラッシュタウンで使われているもの。雨風に晒されているこれらは何の意味もなく配置されたのではない。
その様はまるで――。
「…………墓場?」
「ここに送られてきた人達のもの、なのかな」
「……俺がデュエルで殺したやつも、ここにいるのかもしれない」
どこまでもどこまでも広がるデュエルディスクの墓標は、クラッシュタウンが鉱山の中へ押し込み隠していた犠牲者の数に等しい。その一部を鬼柳が担ってしまったのは事実だ。
ジェイドはどう声をかけるべきか正解がわからなかった。
「鬼柳」
「……俺一人では、何もうまくいかなかった」
思い出すのは崩壊の始まり。
セキュリティへの襲撃。遊星と自分以外いなくなったアジトで持ちかけたとっておきの目標は、その時の自分で考え出せる最高のものだった。
これならきっとチームサティスファクションがまた集まって、満足できる。本気でそう思っていた。……現実はそうではなかった。
「つまんねぇ勘違いで全部無駄にして。大事にしていたものはなにもかも無くなっちまったと思ってた」
でも、と繋ぐ。
「ずっとあいつらは俺のことを心配していた。繋がってるものはちゃんとあったんだ」
馬鹿なことをして捕まっても、ダークシグナーになっても、デュエルで殺してくれと願うときも、男のことを思ってくれる人間は確かにいた。
故に男はここで立っている。生きている。
「しかも面倒ごとに巻き込まれても友達だ、って言ってくれるやつまでいる」
それは遠回しであるが、隣にいる彼への感謝の言葉。
「ここでくたばっちまったらあいつらだけじゃねえ……俺とデュエルしてきた全員に顔向けが出来なくなる」
鬼柳は拳を強く握る。
……罪の一端を見せられても戦意は消えていない。ジェイドの心配は杞憂に終わりほっとする。
「――鬼柳さん!」
「へへ、思ったとおりだ! やっぱり逃げてた!」
耳に飛び込むのはこんな場所で聞こえるはずのない子供の声。声の方へと振り向けば幼い姉弟が必死に黒いDホイールを押し運んでいた。
「なっ、ウェスト! ニコ! どうして」
「ってそれ私のDホイール! 重くなかった?」
「へっちゃらだよこのぐらい」
タイヤがある乗り物のため勢いがつけば動くが、そうだとしても重量物を子供二人だけに任せて斜面を登らせるのは酷だ。慌ててジェイドは二人からDホイール――レストインピースを受け取る。
「鬼柳さん、ジェイドさん。このDホイールで逃げてください!」
「なんでこんな危険な真似を……!」
逆らってくるだろう決闘者に逃走手段を与える。どう考えてもクラッシュタウンの支配者になったマルコムグループに楯突く行為だ。バレたらタダでは済まない。デュエル中の妨害を容認した奴らだ、子供にも容赦なく罰を与えるだろう。
「鬼柳さんはこんな街にいるべき人じゃない。私達の大切なヒーローだから……」
ニコは子供らしい純粋な眼差しで男を見ている。
チームサティスファクションによるサテライト統一……伝説の末路を知らない子供達ではあるが、死に場所を求めデュエルを続ける亡霊と化した鬼柳を知っている。
その上で、諦めずに戦い続ける姿をヒーローだと認めてくれた。
「ヒーロー……か。ヒーローってのは、守らなきゃいけないものや救わなきゃいけないものを見捨てて逃げる奴のことか?」
鬼柳の目には、子供の口からこんな街と言わせるほどに堕ち切ったクラッシュタウンとあの時のサテライトが被る。
どこまで行こうと諦めが満ちている、何もしなければ皆が腐っていくしかない狭い世界。
――そんな状況を変えるために彼は立ち上がったのだ。
「任せな。チームサティスファクションリーダー、鬼柳京介がお前達を――この街を救ってやる!」
鬼柳京介は罪による死よりも絆による生を選んだ。墓標の前に膝を折ることなく、むしろ倒れていった彼らの思いすら自身の力に変えて歩み出した。
クラッシュタウンで暴れるよりも子供達をデュエルの被害が及ばない安全な場所まで送り届けるのが先だ、とジェイドのDホイールに乗せようとして……邪魔がやってきた。
「見つけたぜ! あの二人に手を貸したガキも同罪だ!」
駆け上ってくるDホイールの駆動音。ロットンだ。
後ろにはマルコムグループの部下だろう二人も引き連れている。
「俺はジェイドって野郎をやる、お前らは鬼柳を仕留めろ」
「アイアイサー!」
目標を見つけたからか加速し、一気に駆け上がってこようとしている。時間はない。
「鬼柳!」
「俺はこいつらを守る! お前はロットンを頼むぞ!」
これからライディングデュエルをするだろうジェイドの足手まといになってはいけない。そう考えた鬼柳は二人を連れて走る。入り組んだ坑道ならばいくらDホイールといえど全速力は出せないと踏んでの逃走経路だ。
「わかった! 無事でいてよね!」
ジェイドは頷きメットを被り、愛用するDホイールのレストインピースへと乗りロットンの横っ腹へと突っ込む。
ぶつかるより前にロットンは加速して回避したが、一歩間違えれば二人とも山の斜面へと真っ逆様に転がり落ちていた。
「おおっと危ねえ。死にたがり野郎に感化されちまったか?」
「御託はいい。とっとと始めよう」
怒りの対象を前にしたジェイドは普段とは異なる突き放すような声に変わる。Dホイールを操作し、ライディングデュエルに必須のフィールド魔法を発動させる。
『《スピード・ワールド2》セット』
「ライディングデュエル、アクセラレーション!」
二台のDホイールが鉱山へと入っていく。
山道、坑道――どれもライディングデュエルをするための道路ではない。狭い通路のためジェイドはロットンを追い越すことはできず、そのまま先攻は奪われた。
「俺の先攻になるってわかっててライディングデュエルを吹っ掛けて良かったのか?」
「さっさと進めろ」
無駄話によって苛立ちが高まってきているのか口数は少ない。鋭い言葉を放つ。
「ひゅう、怖い怖い……俺のターン、ドロー! 《ガトリング・オーガ》を召喚!」
《ガトリング・オーガ》
星3/守800
名前の通りにガトリングを持つ悪魔はロットンの先攻1ターンキルの要になるモンスター。逆らってきた決闘者に何もさせず葬ってきたロットンの最強カードだ。
「フフフ……カードを5枚伏せる。そして《ガトリング・オーガ》の効果を発動だ! こいつはセットされたカードを墓地へ送ることでカード1枚につき800ポイントのダメージを与える! 合計4000ダメージ、受けてもらおうか!」
セットカードが弾丸として装填される。鬼は手回しガトリングを使おうとして――どこからかクリクリと可愛らしい声が響き、弾丸が暴発してモンスターが破壊された。
「何ィ!?」
「手札の《ジャンクリボー》の効果。このカードを手札から墓地に送ることで、自分にダメージを与える相手の効果の発動を無効にし破壊する!」
《ジャンクリボー》――遊星のマーカーと同じ模様を持つ機械のクリボーは遊星のキング就任と地縛神撃退の記念カードとして作られた。
決闘王やオシリスレッド所属の彼が使ったクリボー達は戦闘ダメージを0にできた。それらとは違う守護効果……つまり効果ダメージを0にする効果を持つ。
「そんなカードがあっただとぉ……!? ックソ、これで俺はターンエンド!」
ロットンは初めて手札誘発に出会ったのか、狂わされた戦術を修正できずにターンを終えた。
「私のターン、ドロー」
ロットン SPC 0→1
ジェイド SPC 0→1
スタンバイフェイズに互いのスピードカウンターが増える。デュエルが始まったばかりなのでたったの1。今は何もできないがそれは相手も同じ条件。速攻で終わらせる、とジェイドはモンスターを召喚した。
「《メメント・ダークソード》を召喚!」
《メメント・ダークソード》
星4/攻1800
召喚したのはジェイドのデッキの初動となる二刀流の剣士。
「手札の『メメント』カードを捨てて《ダークソード》の効果発動! 相手フィールドの魔法・罠カードを1枚を破壊する!」
「残弾を削りにくるか……《ダークソード》に対して《奈落の落とし穴》を発動! そいつを破壊して除外する!」
突如足元に開いた大穴へと落ちる寸前に剣士は斬撃を飛ばす。
破壊されたのは《狭小の地下道》。お互いのプレイヤーのフィールドに存在できるモンスターを1体までにする極悪な効果の永続罠だ。
《狭小の地下道》は使えなくなったがあいつに通常召喚権は使わせた。これで大したことは出来ねぇはずだ……ロットンはそう考えていた。
「――相手によって『メメント』モンスターがフィールドから離れたので、手札から速攻魔法《メメント・ボーン・バック》発動」
「…………は?」
『マジックカードプレイペナルティ、2000ポイント』
ジェイド
LP 4000→2000
《スピード・ワールド2》による効果。機械音声が告げたようにジェイドは2000のダメージを受けて車体が衝撃で大きく揺れる。
流石のロットンもこれにはひどく動揺した。
「なっ、テメェ、イカれてんのか!? ライディングデュエルで普通の魔法カードを使うなんて馬鹿のやることだ!」
「何を言ってるのかわからないな。たった2000のライフポイントでお前を倒して街を平和にできるんだ。安いぐらいだよ」
公式戦じゃないのに何ぐちぐち言ってんだ、と呆れた顔でジェイドは答える。
「《メメント・ボーン・バック》の効果。召喚条件を無視し、デッキから《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》を特殊召喚する!」
《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》
星11/攻5000
「馬鹿な……そのモンスターはたった1枚の魔法から出せるのか……っ!」
剣士が消えていった落とし穴を引き裂くようにエースモンスターが降臨。
眷属の消失により呼び出された神は決闘者と同じく怒りに燃えていた。子供に手をあげようとしていた事実は断じて許せることではない。手となる頭骨をガンガンと打ち鳴らし攻撃指示を急かす。
「行け! ダイレクトアタックだ!」
「くそ、させるかよ! 罠発動、《バックアタック・アンブッシュ》! 相手モンスターが攻撃してきた時にバトルフェイズを終了し、相手の攻撃表示モンスターの数だけ自分フィールド上に《アンブッシュ・トークン》を特殊召喚! さらに特殊召喚時にこのトークン1体をリリースすることで相手ライフに500ポイントのダメージを与える!」
罠によって攻撃は止まり、出現した1体のタンブルウィードがジェイドへと衝突し爆発する。
ジェイド
LP 2000→1500
「カードを1枚伏せてターンエンド」
ライフポイントの半分以下となるダメージを受けても男は騒がない。このターンでダメならば次のターンで仕留めるだけだからだ。
ロットン SPC 1→2
ジェイド SPC 1→2
「俺のターン、ドロー……チッ。1枚伏せてターンエンドだ」
「エンドフェイズに罠カード《メメント・フラクチャー・ダンス》を発動し、そのセットカードを破壊! さらに《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》がいるため追加でもう1枚のセットカードも破壊だ!」
「なんだとぉ!?」
骨の竜は踏みつけと咆哮の音圧でロットンの残っていたカードを全て粉砕。フィールドを丸裸にする。
ロットン SPC 2→3
ジェイド SPC 2→3
「私のターン、ドロー! さっさと終わらせる! 《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》でダイレクトアタック!」
邪魔になるカードは無い。
今度こそロットンに裁きの鉄槌が届く……はずだった。
「攻撃宣言時に墓地の《ダイナマイト・ウォール》を除外して効果発動! その攻撃モンスター1体と自分フィールド上に存在する全てのカードをゲームから除外する!」
電撃で弱っているはずなのにまだ戦おうとしている異常者二人と出会った瞬間から、こいつらとまともに戦ってはいけないとロットンの頭は警鐘を鳴らしていた。
故に男はダイナマイトを取り出した。デュエルを続けても勝てないのならば、別のもので葬り去るしかない。
「まずっ――」
Dホイールは急には止められない。一本道のため回避は不可能。知識で知っていたとしてもどうしようもできない一手が繰り出されようとして……。
「んなくだらないもので邪魔をすんじゃねえよ!」
鬼柳が追っ手から奪ってきたDホイールで突撃し、ジェイドを守るためロットンが持つ爆弾を奪おうと車体へ体当たりを繰り返す。
「鬼柳さん!」
トロッコに残るニコとウェスト……と、父親を含めた三人は不安そうにその様子を見る。
鬼柳は機を見てロットンの無駄にデカいDホイールに飛び移り、直接奪い取ろうと格闘し始める。
「これでっ」
「クソがっ、死に損ないどもがぁ! このまま逃がしてなるものかよ! 粉々に爆破してやるぜ!」
後少しで手が届く、そんな時にDホイールが変形。鬼柳は振り落とされた。
「鬼柳っ!」
ジェイドは地面に叩きつけられようとする鬼柳を助けに向かい、トロッコに乗る三人は最悪の光景を想像してしまい目を背け。
ロットンを止められるものがいないまま……ジェイドが覚えていられたのはそこまでだった。
爆発に巻き込まれてデュエルは強制的に中断された。巨大で頑丈なDホイールにより爆風から守られたロットンは意識を保てていたが他はそうではない。
「この高さなら生きてはおるまいが……ハハハハハ……」
衝撃で倒れ伏す者たちを見下しロットンは笑う。支配者へ逆らった愚か者を見せしめにするとともに三人をDホイールへと荷物のように乗せて下山していった。
……その際、かちゃん、とネックレスが音を立てどこかへと落ちたことには気が付かなかった。
意識が戻った二人は周囲を確認し、三人がいないことにすぐに気付いた。
「あいつまさか!」
「連れ去られた……!」
残されているのは爆発により紐が脆くなってちぎれたのだろう、彼らの父、セルジオのネックレスだけ。
「ちくしょうっ」
守ると、救うと誓ったのに……進んでいたはずの自分たちはデュエルディスクの墓場へと逆戻り。鬼柳は拾い上げたネックレスをぐっと握りしめる。
「まだだ、まだ、終わらせてなるものかよ……!」
野晒しにされ、もはや動くはずのないデュエルディスクへ彼の思いが届いたのだろうか。奇跡は起きた。モーメントが虹色の光を発し再起動する。
「……あんたらも、諦めちゃいないんだな」
言葉を交わすことのできない彼らへと心が通じた――鬼柳はそう確信し蘇ったデュエルディスクを引き抜く。
「俺は死神に戻る。地獄を作った奴らを、本当の地獄へと引きずり落とす! だから、力を貸してもらうぜ」
決闘者の証を掲げて叫んだ言葉は亡き人々への決意表明。
死者の無念の重さは、最期の願いを叶えるためにダークシグナーとなった自分がよく知っている。
己がデュエルによる死を望んだように、デュエルで始まった地獄はデュエルで終わらせるしかない。
クラッシュタウンを見下ろして男は告げた。
「俺を……満足させてくれよ……!」
だがやつらは……弾けた。(物理的な意味で)
無駄にレールが長くて奈落の底へ直通するルートもあるトロッコなんてあるはずないですよね。ね?
というわけで二人の父親であるセルジオさんも一緒に脱出ルートです。
セルジオさんの首輪は鬼柳がカードで破壊したので安心してください。
除外対策として《メメント・カクタス》、効果ダメージ対策として遊星から《ジャンクリボー》。対策パワーはジェイドが持つと両方そなわり最強に見える。
アニメだと鉱山で妥協満足していた鬼柳がこの話では輝いていた頃まではいかないけど妙にテンション上がってるのは目的を共通とする仲間がいるから。
「セキュリティ倒して満足!」に遊星が「ああ!」しちゃった場合のif的なイメージです。
決闘者の墓標見た後はしんみりモードなのである程度落ち着きました。
あの時の遊星が同意してしまった場合は内心で悔やみ続けるだろうけど、今回のジェイドのケースだとリアリストの被害を受けている被害者同士という共通点のせいで「俺はやるぜ俺はやるぜ」「そうかやるのか やるならやらねば」してますがまあ満足の前には些細な問題です。
お気に入り・感想・評価など貰えますと読者たちの絆☆パワーにより作者は満足します。