ロットン戦(タッグデュエル)です!
強者になびいたバーバラによって街の権利書はロットンへと渡され、街の名前が自己顕示欲の犠牲になって変えられていく。
鉱山送りになる者はデュエルタイムの一騎打ちで決めるルールも撤廃され、先程まで仲間同士だったはずなのに潰し合いを強要される。
ロットンにより攫われてきた三人は縛り付けられ、その光景を見ることしかできなかった。
……地獄のようだった。
父親であるセルジオはロットンの使用したダイナマイトによる爆発から二人を庇ったため怪我が重く、目を開くのも声を出すのも難しかったが、耳はしっかりと機能していた。
だからこそ願う。こんな世界を見てはいけない。こんなものが世界であると我が子に覚えてほしくない。
ロットンの笑い声が耳にこびりつきそうな中――クラッシュタウンにいる者には聞き慣れたハーモニカのメロディが聞こえてくる。
「まさか」
この音色を誰が鳴らしているのか理解した人々の反応ははっきりと別れた。
喜ぶ顔の三人に、戸惑いと恐れが見える支配者たち。
「鬼柳さん!」
「地獄の底から舞い戻って来たぜ」
夕日の逆光。黒いコートをたなびかせ、死神がクラッシュタウンへと帰還した。
ぐるりと見渡し、たった数日で活気を失った人々へと呼びかける。
「あそこ以上に酷い場所はこの街にはないと思っていたのに、ここも地獄に堕ちちまったか。……いいのかよ亡者ども! このまま地獄の底で、生贄の順番を待ってるだけで!」
言われた者たちは顔を背ける。何もかもが良くないのは分かっている。……が、どうすればいいのか、したところで本当に良くなるのか、と結局動けないでいた。
「何を言おうと無駄よ。今、この街は俺が支配しているんだからな」
「なら、お前がいなくなれば全部終わるワケだ」
「何言ってるんだい、こっちには人質が――」
バーバラの脅しのセリフを遮るように響いてくるのはDホイールの走行音。
黒いDホイール――ジェイドのレストインピースだ。
鬼柳と反対側、背後からの急襲。飛翔するDホイールが狙うのは三人を縛り付けている柱と縄。
「鬼柳がここにいるんだ。そりゃあ、てめぇも無事だよなぁ!」
ジェイドはカードを投擲し、Dホイールを叩き落とそうとしていたロットンの鞭と相殺。そのせいで彼らを縛り付けている縄を切れず、勢いのまま鬼柳の横へと着地。急ブレーキの熱が地面を焼く。
「ごめん、失敗した」
「全てうまくいくなんて思ってはいないさ」
Dホイールから降りたジェイドは申し訳なさそうに告げる。まず人質だけでも解放を、と思っていたのだが妨害により達成できなかった。
そう気にするなと鬼柳は優しく声をかける。チームのリーダーとして活動していた男からの言葉はすとんと胸に落ち、落ち込むよりも今優先するべきことをせねばという気持ちにさせてくれた。
「くたばりぞこない共め……確実に俺の手で葬り去ってやる! ちょうどデュエルタイムだ。ここでまとめて決着をつけようじゃねえか」
「タッグデュエル、ということか?」
ずっと卑怯な手を使っていた男がこの街のルールに則ったデュエルを持ちかけた。二人は何かあるのではと勘繰る。
「そうだ。だが、ちいとばかしハンデはもらうぜ。俺の最初の手札は二人分の10枚にさせてもらう」
当然の権利のように要求したのは普通では許されない行為。
「先攻1ターンキル狙い……」
「負けた時の言い訳に困ることを自分からするのか」
鬼柳とジェイドで反応は分かれるが内心で思うことは似通っていた。呆れである。
デュエルで手札の数はそのままアドバンテージに直結する。5枚を10枚にするのはちょっとという軽い言葉で済まされない。友人同士なら遊びの延長線で許されるだろうが、街の未来を賭けた戦いでいけしゃあしゃあと言えるものでは絶対にない。
部下から一人選んでこちらもタッグで戦うぞと言い出さなかったのは足手纏いは不要と下に見ているからか、それとも横暴な街の支配者に力を貸す決闘者はいないはずと心のどこかで認めてしまっているのか。
ともかく、クラッシュタウンを支配するリーダーであるロットンは一人で戦うことを選んだ。
「これが受けられないのならデュエルは無しだ」
「誰が受けないと言った?」
睨み合う。沈黙。
……静寂と緊張の中、観客の一人が偶然発した金属のすれあう音。その音が合図となった。
三人とも弾かれたように動き出す。デュエルディスクの変形、初期手札のドロー。
「――悪いな、俺の先攻だ」
先攻1ターンキルにかける執念の技か、50戦の慣れと精霊の後押しを受けた二人よりも先にロットンは準備を終えることに成功した。
「ドロー! 《ガトリング・オーガ》召喚!」
《ガトリング・オーガ》
星3/守800
彼のデュエルに必ず現れる、先攻1ターンキル戦術の中核となる鬼が出現する。
「そしてカードを5枚伏せる……ここまで言えばわかるよな? 《ガトリング・オーガ》、効果発動だ!」
最初に狙われたのは鬼柳。ジェイドが効果ダメージ対策をしているなら、対策方法が不明な鬼柳を先に潰し不確定要素を削ろうとしたのだろう。
「鬼柳!」
「手を出すなジェイド! それはお前自身のために残しておけ」
鬼柳は焦る様子のジェイドを声一つで制止する。
「おいおい仲間割れかぁ? そんなに死にたいのなら全部食らわせてやるよ!」
全弾発射。合計4000ポイントのダメージ。
弾幕の中に鬼柳の体は埋もれていく。
鬼柳
LP 4000→0
「全弾命中……! あっけない終わりだったな」
手を出すなという命令に馬鹿正直に従った結果ともに戦う決闘者を失ったのだ。さぞかし間抜けなツラをしているだろうと鬼柳がいた横へと視線を動かそうとして――。
「終わり……何を勘違いしているんだ?」
――死神はまだ立っていた。
デュエルから脱落していない。
「馬鹿な、確かにライフポイントは0にしたはず!」
「死神は死なねぇ」
敗北しているはずの決闘者がデュエルを続行する。デュエルモンスターズにおいて決してあり得ない状況。
その原因だろう1体のモンスターが鬼柳のフィールドで浮遊していた。
《インフェルニティ・ゼロ》
星1/守0
「いつの間に……!?」
「効果ダメージによってライフが0になった時、手札の《インフェルニティ・ゼロ》以外の手札を全て捨ててこいつを特殊召喚した。こいつがいる限り、俺はライフポイントが0になっても敗北することはない」
「敗北条件の変更だと!」
クラッシュタウンへと戻るまでに武者修行として各地の決闘者と戦っていたロットンが初めて見る特殊すぎる効果。予想できるはずがなかった。
「だが、ダメージを500ポイント受けるごとに1つこいつにカウンターを乗せる。カウンターが3つ貯まった時に《インフェルニティ・ゼロ》は破壊され俺は負ける」
ぼうと青い炎が鬼柳の横で燃え、そこに0の文字が刻まれる。カウンターの数を示すエフェクトのようだ。
「死に損ないが……再びカード5枚をセット!」
もう一度、《ガトリング・オーガ》による効果発動を。あと3回で相手の息の根を止められるのだから。
鬼柳へと6発目の弾丸が射出され……ガトリングとは違う銃口がロットンへと突きつけられる。
「なにっ!?」
ロットンの真横には悪魔がいた。リボルバーを片手に男のこめかみへと銃口を当てがう。
「手札が0で効果ダメージが発生した時、墓地の《インフェルニティ・デス・ガンマン》を除外しその効果ダメージを無効にする。そして相手は《インフェルニティ・デス・ガンマン》の効果を選択出来る」
「選択……だと」
こんな演出をしているカードで、相手に選択させるときた。もしや、と男はごくりと唾を飲む。
「今から俺はデッキの1番上のカードを引く。それがモンスターカードだった場合、お前はこのターン、俺が受けた効果ダメージと無効にした効果ダメージの合計分のダメージを食らう。引いたのがモンスターカードじゃなかった時、俺はこのターン受けた効果ダメージ分のダメージを受ける」
このターンで発生した効果ダメージの合計は4800。互いに耐えられるはずのない大ダメージが襲いくることになる。
「そしてこの選択を拒否した場合、お前はこのターン効果ダメージは与えられない。……死のロシアンルーレットだ。どうする?」
鬼柳はうっすらと笑っていた。その表情はまるで、デュエルの中で命を投げ捨てることを期待するかのようで。ロットンの背に鳥肌が立つ。
「賭けを受けるか、逃げるか。俺も正直どれだけデッキにモンスターカードが入ってるかわかっちゃいねぇ」
「ふざけるな、そんなギャンブルに付き合ってられるか……! その効果は拒否する。ターンエンドだ!」
鬼柳の捨て身の策により弾丸を消費させたものの、ロットンの場に伏せカードは4枚残った。
ターンは鬼柳へと移る。変則タッグデュエルだが、それぞれ1ターン目は攻撃できないため準備を整えるのが定石。
「俺のターン、ドロー! 手札0の時にドローした場合こいつは特殊召喚できる。来い、《インフェルニティ・デーモン》!」
《インフェルニティ・デーモン》
星4/攻1800
「奴のデッキトップはモンスターだったか……」
鬼柳がドローしたのはモンスター。結果としてロットンが《インフェルニティ・デス・ガンマン》の賭けから降りたのは正解だったらしい。
「《インフェルニティ・デーモン》が自身の効果で特殊召喚に成功したため効果発動!」
「ええい、どいつもこいつも逆らいおって、支配するのは俺だ……! そいつの効果にチェーンして永続罠、《御前試合》と《群雄割拠》を発動!」
二人は表側になったセットカードに目を丸くする。
「その罠は……!」
《御前試合》――お互いのフィールドにそれぞれ1種類の属性のモンスターしか表側表示で存在できない。
《群雄割拠》――お互いのフィールドにそれぞれ1種類の種族のモンスターしか表側表示で存在できない。
2枚の永続罠の効果が組み合わさることで、フィールドに表側表示で出せるのは1属性1種族のみと限定される。
「これでシンクロ召喚は満足にできねぇ! お前らの望みも叶わない!」
相手の戦術を力尽くで抑えロットンは笑う。
鬼柳のフィールドには《インフェルニティ・ゼロ》と《インフェルニティ・デーモン》がいる。よって彼が表側表示で出せるのは闇属性悪魔族のみとなる。
「……俺はデッキから『インフェルニティ』カード、《インフェルニティ・バリア》を手札に加える。カードを1枚伏せターンエンド」
あの永続罠がある間は派手に動きにくい。《インフェルニティガン》を絡めてモンスターを連続特殊召喚するのではなく、堅実に防御を固めてロットンの攻撃に備えることを選んだ。
「…………」
【インフェルニティ】は闇属性で統一されており、殆どが悪魔族。一部昆虫族や獣族、戦士族なども含むが悪魔のみでも戦うことはできる。シンクロ召喚はほぼ封じられるが何もできないというわけではない。
……問題はジェイドだ。あのデッキではこの状況はとても苦しいはず。
「私のターン、ドロー」
鬼柳の思考は当たっている。《御前試合》と《群雄割拠》、どちらも【メメント】としては困るカードだ。なにせモンスターの属性と種族がバラバラなため影響を強く受ける。
自分フィールドに表側表示モンスターがいるなら、そのモンスターと同属性同種族しか表側表示で出せない。そのせいでデッキ・墓地から仲間を出す効果がまともに使えない。
墓地を肥やしつつモンスターを増やす基本戦術は封じられてしまった。
「《メメント・ダークソード》召喚!」
《メメント・ダークソード》
星4/攻1800
封じられてしまったとしても何もできないわけではない。
これはタッグデュエル。鬼柳のサポートをするのも戦術の一つだ。
「手札の『メメント』カードを捨てて効果を発動し、お前のセットカードを破壊する!」
ジェイドとしてはここまで強力な永続罠を並べているところに嫌な予感がしていた。謎のセットカード2枚のうちどちらかはアレかもしれない、と剣士に破壊を命じたわけだが……。
「チェーンして《ゴブリンのやりくり上手》と対象になっていた《非常食》を発動! 《非常食》でフィールドの《ゴブリンのやりくり上手》を墓地に送りライフポイントを1000回復。また、墓地の《やりくり上手》は3枚になったため効果で4枚ドローし1枚をデッキに戻す」
ロットン
LP 4000→5000
「……よかった、考えてる中で一番平和だった」
永続罠を守るための《宮廷のしきたり》や、レベル6以上のモンスターに対して強いロック効果を持つ《超古代生物の墓場》あたりも伏せられているのでは思って狙ったが、どうやら違ったようだ。
「これで伏せカードは全て使わせた! 手札から速攻魔法《サイクロン》発動! 《群雄割拠》を破壊する!」
「クソッ、罠を破壊できるカードをまだ持っていやがったか」
ロットンが舌打ちをする。本命の突風が永続罠1枚を叩き割ったことで、ここからはフィールドに出せるモンスターは属性のみが縛られることになる。
「助かったぜジェイド」
「あの永続罠が残されるのはこっちとしても困るからね。《メメント・ダークソード》を自身の効果で破壊し、デッキから《メメント・エンウィッチ》を特殊召喚!」
《メメント・エンウィッチ》
星3/守1000
剣士と魔女はどちらも闇属性。《御前試合》適用下でも特殊召喚が可能だ。
「《エンウィッチ》の効果でデッキから《メメント・シーホース》を手札に加える。カードを1枚伏せてターンエンド」
《ダークソード》の効果発動コストとして使用していたのは《メメント・ゴブリン》。よって《エンウィッチ》の効果でさらなる展開が可能だが……ジェイドは原作知識により、ロットンには相手モンスターを除去しながらダメージを与えられる強力なモンスターがいると知っている。
下手に高攻撃力を出すと狙い撃たれる可能性が高まるため使用は控えた。
「俺のターン、ドロー! 《埋葬呪文の宝札》で墓地の魔法カード3枚を除外して2枚ドロー! さらにもう1枚の《埋葬呪文の宝札》も使い同様に3枚除外の2枚ドローだ!」
これにより先攻で《ガトリング・オーガ》により弾丸にしていたカードは《ゴブリンのやりくり上手》2枚、魔法カード4枚と明かされる。
ロットンはこれまで使ってきた魔法カードをほぼ全て除外して手札を一気に6枚へ増やす。
「装備魔法《ダブル・アームズ》を《ガトリング・オーガ》に装備。こいつは装備モンスターの与える効果ダメージを倍にする! カードを1枚伏せる……《ガトリング・オーガ》の効果! 伏せカードを墓地に送り鬼柳へ1600のダメージを与える!」
倍量に増えたガトリングの弾幕。これを受けてしまえば一気にカウンターは3つとなり、鬼柳は敗北する。
「《インフェルニティ・バリア》発動! 《ガトリング・オーガ》の効果発動を無効にし破壊する!」
手札0という窮地でのみ使える防壁が相手モンスターによる銃撃を反射、効果を使った鬼を破壊し決闘者を守る。
「当然ここに無効効果を使うしかないよなぁ……これで俺を止められなくなったってワケだ。《おろかな埋葬》でデッキから墓地に《ロングバレル・オーガ》を送り、《死者蘇生》で復活させる!」
《ロングバレル・オーガ》
星7/守3000
鬼柳の行動を想定済みだと笑い、墓地を経由して特殊召喚されたのはロットンの新たなるオーガ・モンスター。
「こいつは相手フィールド上に表側表示で存在する攻撃力が一番高い攻撃表示モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。さらにこの効果は1ターンに2度まで使用できる!」
鬼は自身の三倍以上の長さを持つ銃を構え、鬼柳のモンスターへと照準を向ける。
「グレートスナイプ・ファーストショット!」
「そうはさせない! 私はセットしていた速攻魔法《禁じられた聖杯》を《ロングバレル・オーガ》へ発動! 攻撃力を400上げ、効果を無効にする!」
引き金が引かれるその直前、火薬が湿気り使い物にならなくなる。効果無効と引き換えに攻撃力を上げてしまったが、相手は守備表示なので攻撃はできない。
「何度も必殺効果を止めてきやがる……! 俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」
先攻決め以降思い通りにデュエルを進められずロットンは苛立ちのままに言葉を吐き出す。
「俺のターン、ドロー…………」
ドローカードを見て、ほんの少し鬼柳の口角が上がった。その反応からジェイドは彼が何をしたいのかを察する。
「《バレット&カートリッジ》発動。デッキからカードを4枚墓地に送り1枚ドロー。その後デッキトップに発動したこのカードを置く」
ジェイドとのデュエルでも使ったトンデモ効果の魔法カード。墓地に送られていく4枚の中にあのカードを見て、察しは確信へと変わる。
「《インフェルニティ・ミラージュ》を召喚」
《インフェルニティ・ミラージュ》
星1/攻0
「《インフェルニティ・ミラージュ》をリリースし、効果で墓地の《インフェルニティ・セイジ》2体を特殊召喚する」
《インフェルニティ・セイジ》
星2/守800
チューナーである2体の賢者を見てもロットンに変化はない。
「レベル4の《インフェルニティ・デーモン》にレベル2の《インフェルニティ・セイジ》をチューニング!」
「ゼロより出でし煉獄の悪魔よ、この世の虚無を喰らい尽くせ! 来い、《インフェルニティ・ヘル・デーモン》!」
《インフェルニティ・ヘル・デーモン》
星6/攻2200
シンクロ召喚により現れたのは鬼柳が先程使っていた煉獄の悪魔の強化形態である存在。
「《インフェルニティ・ヘル・デーモン》の効果で《ロングバレル・オーガ》の効果を無効にして破壊する!」
「そうは行くか! 《メタル・コート》を発動し《ロングバレル・オーガ》に装備! これでその効果じゃ破壊されねぇ!」
全てをゼロにする悪魔の炎が相手を焼き尽くすかに見えたが、鬼の全身が鋼色に染まり炎を受け流す。
「まだだ! レベル6の《インフェルニティ・ヘル・デーモン》にレベル2の《インフェルニティ・セイジ》をチューニング!」
「死者と生者、ゼロにて交わりし時、永劫の檻より魔の竜は放たれる! シンクロ召喚! いでよ、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》!」
《インフェルニティ・デス・ドラゴン》
星8/攻3000
インフェルニティの効果を活かした連続シンクロ召喚により煉獄の魔竜が呼び出された。
「墓地の《スキル・サクセサー》を除外し、ターン終了時まで《インフェルニティ・デス・ドラゴン》の攻撃力は800アップする」
《インフェルニティ・デス・ドラゴン》
攻3000→3800
魔竜を強化するのは《インフェルニティ・ゼロ》特殊召喚のために墓地に送られていた罠。
「《ロングバレル・オーガ》の守備力を上回ってきたか……しかし《メタル・コート》には戦闘破壊の身代わりになる効果もある。俺に攻撃は届かんぞ」
「誰がモンスターを攻撃すると言った? 墓地の《インフェルニティ・クイーン》の効果発動。墓地の闇属性モンスターを除外し――このターン、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》はダイレクトアタックが可能となる!」
墓地からの援護を受けた竜は禍々しいオーラを纏い咆哮する。翼を広げ飛翔し、守備体勢の銃鬼を無視して相手へと一直線に向かっていく。
「なにぃ!」
「《インフェルニティ・デス・ドラゴン》でダイレクトアタックだ! デス・ファイア・ブラスト!」
「ぬおおぉぉおおっ!」
ロットン
LP 5000→1200
眼前に舞い降りた竜の吐き出す炎に焼かれ、ライフポイントを大きく削られたロットンは苦悶の声を上げる。
「俺はこれでターンエンド。《スキル・サクセサー》の効果は終了し《インフェルニティ・デス・ドラゴン》の攻撃力は元に戻る」
攻撃に対して伏せカードを使わなかったのが気になるが、あとひと押しで倒せる状態まで運ぶことができた。このターンで為すべきことをするためジェイドは動き出す。
「私のターン、ドロー! 《エンウィッチ》の効果で自身を破壊し、墓地の《メメント・ゴブリン》を特殊召喚」
《メメント・ゴブリン》
星1/守400
「《ゴブリン》の効果で自身を破壊し、デッキから《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》と《メメント・ボーン・パーティー》を墓地に」
フィールドから闇属性の小鬼が消え、ほんのひとときだけ属性の縛りが解かれる。
「《メメント・シーホース》を特殊召喚。自身を破壊してデッキから《メメント・メイス》、《メメント・ゴブリン》、《メメント・スリーピィ》を墓地へ」
特殊召喚、そして即自壊。モンスターを墓地に一気に送りエースモンスターを出す準備は整った。
「墓地の『メメント』モンスター5種類をデッキに戻し、墓地より《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》を特殊召喚!」
《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》
星11/攻5000
満を持して登場したのは地属性の幻竜。
先のロットンとのデュエルでは決着をつけられなかった分、戦意を強く漲らせている。
「墓地の《メメント・ボーン・パーティー》を除外して《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》へ貫通効果を与える!」
ジェイドは守備表示の《ロングバレル・オーガ》ごとロットンのライフポイントを消し飛ばす方を選んだ。
「《ロングバレル・オーガ》に攻撃! オーバーウェルミング・ボーンフォース!」
突進と同時に真っ直ぐに突き出される腕。攻撃によりコーティングが剥がれ、戦闘破壊の身代わりとなる。
しかしモンスターが無事だとしても発生するダメージは2000。ロットンの残りライフポイント1200は削り取れる。
「かかったな馬鹿め! 罠カード《ディメンション・ウォール》発動! 2000の戦闘ダメージはお前に受けてもらう!」
このまま通れば、と思ったのがフラグだったのか、突如として現れたエネルギー壁が攻撃を転送し、次元を超えてジェイドの背後から衝撃を与える。
「ぐあぁっ!?」
ジェイド
LP 4000→2000
「ジェイド!!」
「……ヘーキ。鬼柳は自分の心配をして」
意識外からの急襲で膝をついたタッグ相手は大きく息を吐いて呼吸を整える。
「クッ、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》の攻撃に対して使わなかったのはジェイドのライフポイントを減らすためか……!」
「1500ポイントのためのダメージ元はお前が自分でシンクロモンスターとして用意してくれたから放置したのさ。これで《メタル・コート》は剥がれちまったが……《ロングバレル・オーガ》さえ残ればいい! 次の俺のターンでお前らはおしまいよ!」
鬼柳は《インフェルニティ・デス・ドラゴン》を破壊されて1500のダメージを受ければカウンターが3つ貯まり敗北。
ジェイドは《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》が破壊されたら2500のダメージを受け敗北。
――二人とも《ロングバレル・オーガ》の射程圏内へと入った。
「私はカードを1枚伏せてターンエンド」
互いに追い詰められている。次のロットンのターンで全てが決まる……そんな緊張を裂く女性の鋭い声がした。
「――デュエルごっこはもうお終いだよ!」
数多の銃口が二人に向く。ソリッドビジョンではない、現実のものだ。
「いいかい、この街はロットンが仕切ってるのさ。なら、最初からデュエルなんかしなくたって答えは決まってんだよ!!」
支配者の横で美味い汁を啜る生活が台無しにされてしまうことを危惧したバーバラの独断行動だ。人質たちへと鞭を振りかぶる。
「さあ、とっととサレンダーしな。その後で二人仲良くくたばってもらおうか」
このままではデュエルどころではない。この場から助けようと走ったとしても間に合わない。
……また失ってしまうのか、と後悔で手が揺れる。鬼柳の手はゆっくりと、デッキに乗せられようとして。
「ダメ!」
「いけません鬼柳さん!」
人質となった三人はデュエルの続行を望んでいた。
未来を託したヒーローが負けてはいけない。たとえ自分がどうなろうとも、この堕ちきった街には彼が必要なんだ、そう信じる彼らができる最大の献身。
「鬼柳さん……あなたは死神なんかじゃない、この街の救世主なのよ! だから、こんな奴らに負けちゃだめ! 戦って、戦い続けて――勝って!」
涙を流し、決闘者へと戦う理由を思い出させようと訴える。
彼らの勇気に心を揺らされたのか、配下の者たちが鬼柳らに向けていた銃口をバーバラへとずらした。
「なっ……あんたら、何をしているのかわかってるのかい!?」
「俺たちは……救世主鬼柳に運命を賭ける!」
これからどうなるかなんて誰にもわからない。わかるのは、こんな街でずっと戦い続けていた男の姿は本物であること、それだけ。
――その光を信じ、彼らは己の足で立ち上がった。
「どうする、鬼柳?」
「……ハッ、わかってて聞いてるだろジェイド。サレンダーはしねえ! デュエルを続けるぞロットン!」
これでデュエルへと戻れるはず――だった。
銃声。ロットンが懐から取り出したショットガンで反乱を起こした部下を撃ち抜いたのだ。
「やめろロットン! それでも決闘者か!」
「リアリストだ」
互いの自認がそもそも違うため、常人ならば効くだろう説得の効果はない。
ロットンはそのまま鬼柳へと狙いをつける。デュエルなんてどうでもいい。何をしようと、こいつらさえ排除できればいいのだから。
「アディオス」
引き金が引かれるその瞬間、手裏剣の如く飛翔してきた1枚のカードが彼の手から銃を弾く。その衝撃で誰もいない場所へと銃弾は飛んでいった。
地面に突き刺さったそれは――《
そのカードを持つ男を、鬼柳は知っている。
「鉄砲玉のクロウ様の参上だぜ!」
「クロウ!?」
驚く鬼柳に対しクロウ・ホーガンはわずかに微笑み答える。
「あの手紙を残した上に無断外出、返事も何もしてこなかった野郎を迎えに来たんだよ」
ジェイドは誰にも言伝を残さなかったが、鬼柳から送られてきた手紙はポッポタイムに置き去りにしていた。異常事態に巻き込まれていると知らせるには十分すぎる忘れ物だ。
「な、なんだいお前ら! それ以上近寄ったら、」
鞭で首を絞めるぞ、と人質を確保するバーバラだったがそんな彼女に力強く張り手をかます男が一人。
「ジャック・アトラスはレディといえども非道なマネを許さない!」
「ジャック!」
「全く……鬼柳のような疫病神と絡むと碌なことにはならんぞ!」
嗜めるような口調だが、本気で言っているわけではないことが表情からわかる。
「鬼柳、助けに来たぞ」
最後に現れたのは不動遊星。
遠くに鳴り響くサイレンの音からするに、ダークシグナーの一件で知り合っていたセキュリティを連れてやってきたのだろう。
裏切りや誤解などひとかけらもない。あの終わりの記憶を書き換えるようなすがすがしさを伴って四人が揃った。
「――最高だぜ、チームサティスファクションの復活だ!」
鬼柳は満ち足りた笑みを浮かべていた。
「観念しな、鉱山の労働者達は全て保護した。どんな企みをしていたのは後で聞こう。大人しくお縄につけ」
牛尾が手錠を手にロットンへと近寄る。武器は奪われ、部下は失い、もう抵抗手段はないと踏んでの行動だ。
「ああ、そうだな」
観念したかのように手を……出さずにポケットに突っ込み、そこに隠していたスイッチを起動させた。
クラッシュタウンの各地から爆発音がし火の手が上がる。
「爆弾だと! いつから仕込んでいたというのだ!」
「というかあの野郎デュエルを放棄しやがった!?」
まさかの行動に唖然とする。混乱に包まれる中、ロットンは自身を慕っていたバーバラを置き去りにDホイールに乗って逃走。デュエルは中断された。
「くそっ……応援求む! ホシが爆弾を使用し被害多数! ホシは逃走中! 繰り返す――」
牛尾は鉱山へ行った同僚達へ連絡を取る。
「どうする、どうすれば……」
支配者が逃げてデュエルが終わったところで、今は平和になったがいつか帰ってくるのではと住人は未来に怯えて暮らすことになる。この街に真の満足は訪れない。
一刻を争う状況でジェイドは爆発で倒れた自身のDホイールのメットを鬼柳へ投げた。それを反射的に受け取った鬼柳は戸惑いを隠せないでいる。
「私のDホイールを使え! 準備は整えてあるんだろ、1ターンで倒してこい!」
「ジェイド……」
一切の曇りなき眼。彼は自分が何をしたいか察してくれている。
「行け! 鬼柳!!」
「――ああ!」
押された背中の勢いのまま、レストインピースに乗り疾走する。
夕日はまだ沈み切っていない。デュエルタイムは終わっていない。この街の流儀に則って始まったのだから、この街から逃れるなど許されるはずがない。
先に走っていたDホイールに伸びる影に追いついた鬼柳はロットンへと叫ぶ。
「逃げるなよ、お前のターンだぜ!」
「何を今更……!」
振り向いたその目は決闘者からの執念に怯えているように見えた。
「あんなにいた決闘者の前でデュエルを汚して許されると思っているのか? だから逃げたんだろう。支配者を名乗った割にはとんだ臆病者だな」
もはや逃げられぬと悟ったかロットンはDホイールの速度を落とす。
二人は停車し、決闘者として向かい合う。
「……条件を追加しろ。俺が勝てばセキュリティに手を引かせることだ」
「ああ、お前が勝てば見逃してやるよ」
もはや言った者勝ちになりつつあったデュエルだが、鬼柳はあっさりと承諾した。
「しかし良かったのか? ダメージから守ってくれるお友達がいないようだが」
無言。答える必要はない、と態度で示す。
「そうかい……なら、俺のターン、ドロー! 《ロングバレル・オーガ》の効果を発動! 《インフェルニティ・デス・ドラゴン》を破壊し1500のダメージを与える! これで終わりだ!」
禍々しい竜は胸を撃ち抜かれ、破壊のエフェクトと共に爆発。
「墓地の《インフェルニティ・クライマー》と《インフェルニティ・デス・ガンマン》の効果発動」
効果ダメージが鬼柳へと降りかかるはずが、ジャキッ、とロットンに悪魔の銃口が突きつけられた。
「すでに説明はしたからわかってるな? 俺のデッキの一番上がモンスターだった場合、俺の勝ちだ。それ以外のカードだった場合は俺の負け。選択しなければ効果ダメージは与えられない。さあ、どうする?」
「またそのモンスターを墓地に送っていたか……」
《インフェルニティ・クイーン》によるダイレクトアタックを考えるとこのターンで終わらせなければならないが、モンスターが引かれる確率は…………いや待て、あのモンスターはどうやって墓地に送られていた? 墓地に送る効果を持つカードは……。
『《バレット&カートリッジ》発動。デッキからカードを4枚墓地に送り1枚ドロー。その後
そうだ、あの魔法カードしかない!
あいつ自身が確かに言っていた。デッキトップに置く……つまり、今あいつのデッキの一番上のカードは魔法カードで確定している!
デュエルで決着をつけようと追いかけるのに集中しすぎたあまり、自分のターンで使ったカードの効果も忘れているのか。
「いいぜ、受けてやるよそのギャンブル!」
当たると分かっている賭け事。一人勝ちのため、救世主サマにはその犠牲になってもらおう。内心ほくそ笑みながら、ロットンは死神の誘いに乗った。
「――さあ、確認だ」
デッキから1枚、カードを引く。
「人の言葉はよく聞いておくべきだぜ、ロットン」
ニヤリと笑い見せつける。
鬼柳の手にあったのは魔法カード《バレット&カートリッジ》――ではない。
「馬鹿な! モンスターだと!?」
《インフェルニティ・クライマー》。
モンスターカードだ。
「あの時、俺は《インフェルニティ・クライマー》の効果の発動も宣言していた。こいつは俺の手札が0枚の場合、墓地からデッキトップへと這い上がることができるのさ」
「そんなカードがっ」
「聞いたことのないカードが使われたのなら警戒するべきだった。ずっと慎重だったお前にしてはとんでもない凡ミスだな……勝利に目が眩んだか?」
悪魔は拳銃のセーフティを外す。あとは引き金を引けばロットンの敗北。
逃げることはもはやできない。がくりと項垂れ、街の支配者を自称していた男は引き金が引かれるのを待つだけの敗者となった。
「――なぜ、攻撃表示にしなかった」
勝敗が決まったからか、鬼柳は会話という猶予時間を与える。
「何の話だ」
「《ロングバレル・オーガ》の攻撃力は3000あった。十分に戦える。それに《インフェルニティ・ゼロ》のカウンターは戦闘ダメージでも増える。効果ダメージを使うとわかっていたから俺はその対策を中心に展開するしかなかった。バトルをメインにした戦術へシフトしていた場合、俺に打つ手はなかった」
「そ、れは……」
ロットンが使ったカードには《メタル・コート》、《ディメンション・ウォール》など攻撃に対する備えもあった。バトルを中心にすることも可能だった。
二人としては《ロングバレル・オーガ》を《ガーディアンの力》などで強化しゴリ押してくるデッキに切り替えられていた方が実は厄介だったのだ。
「効果ダメージに特化したデッキを否定したいわけじゃねえよ。……そのツラだと違うみたいだがな」
石橋を叩かなければ賭けに出ることもできない臆病者。それがロットンの本質だった。
真正面からぶつかり合うことを避け、都合の悪いことから目を逸らし……結果として決闘者にもリアリストにもなりきない、中途半端になってしまった男。
「これが最後の質問だ。――お前はクラッシュタウンの頂点に立って、何をしたかった?」
男は沈黙し続ける。
「……未来すらわからず、か」
目標を達成してしまい迷走していたあの時の自分が被る。爆弾を使い暴れるところまでそっくりとはいっそのこと笑えてくる。
「半端な気持ちで入ってくるんじゃねえよ、デュエルの世界によ」
わずかながら決闘者の誇りがあったのか、馬鹿にするなと反論するべくロットンは顔を上げ、鬼柳と視線が合い……ひ、と声が漏れた。
それはロットンが決闘者であることを拒絶するのではなく、もっとデュエルの深みへと誘う――満ち足りることのない悪魔の姿。
悪魔の銃の引き金が引かれ、荒野に立つのは勝者のみ。
陽が沈みきった中、男は呟く。
「――満足したぜ」
一夜明け、セキュリティによるロットンとバーバラの連行や復興作業で騒がしくなったクラッシュタウン。
外へ出た鬼柳が見たのはそれらとは違った意味で騒がしい仲間の姿だった。
「あいででで、痛い痛い!」
「こんにゃろ、心配させやがって!」
ことの発端とも言えるジェイドはクロウにこめかみをグリグリされていた。
ジェイドはジャックと同じぐらいの身長があるためクロウのタッパでは届かない。が、クロウにお前ちょっとそこでしゃがめ、と謎なお願いをされたので迷惑かけたしまあ説教かな……と従ってしまったのだ。
そしたらコレだ。ひどい。
「鬼柳」
遊星のつぶやきに反応してクロウはグリグリを止めジェイドを解放する。
「後で詳しく話は聞くけどよ、今回の件でお前から言っときたいことってなんかあるか?」
「えー……妥協満足ダメ絶対?」
「何じゃそりゃ」
ふふ、ハハハ、と遊星とジャックの笑い声がこぼれる。
あの頃、地区を制圧した後のように、なんてことのないことで話を続けられる日常がそこにはあった。
「……これからどうするんだ、鬼柳」
遊星はどこか一緒に来てくれることを期待するような顔でチームサティスファクションリーダーへと問いかける。
「俺は残る。こいつらを放ってはおけないからな」
「そうか」
こいつら、と呼んだのはクラッシュタウンの住人たち。態度からなんとなく予想はしていたのか、遊星は説得も引き留めもしない。
「あーあ、チームサティスファクションが再結成するのも悪くねえと思ったけどな」
「冗談言うな。あんなハチャメチャな日々二度とゴメンだ。……だが、久々に四人揃って楽しかったな」
「改めてになるが……ありがとう、ジェイド。俺が変われたのも、この街を救えたのもお前のおかげだ」
「いいや、鬼柳の元々持ってた力だよ」
始まりの再会は最悪の形だった二人は、別れを惜しむように握手を交わす。
……もうこれ以上の言葉はいらない。さよならとは口で言わず、サムズアップで終わらせる。
別れではあるが、絆が完全に断たれたわけではない。
ネオドミノシティへとDホイールで走っていく四人を見て、鬼柳は清々しい笑顔で言葉を発する。
「この街を復活させるまでは、まだ……満足できねぇぜ……!」
もう、この街はクラッシュタウンではない。
新たに掲げる街の名前はサティスファクションタウン。
未来を――満足を求める者たちによる、希望に満ちた場所だ。
「ああ鬼柳さん! あの友人さん、あの人はカードデザイナーなのかい? だとしたらずいぶん仕事が早いなぁ」
街の修復作業の中、一人の作業員が鬼柳へと話しかけてきた。
彼の手から差し出された1枚のカードはフレームが緑色のため、魔法カードだとわかる。
――《舞い戻った死神》。
夕日をバックに、あの瞬間を切り取ったようなイラストのカードだった。
「鬼柳さん宛だってさ。大事に使ってやりなよ、俺たちの救世主さんよ!」
「あ、ああ……」
ジェイドからの置き土産、となれば有益なのは間違いない。遊星たちからカード拾いの才能については何度か聞いている。
深く考え込むことなく、ありがたく貰っておきたかった……効果に混じる『インフェルニティ』の文字がなければ。
「落ちていたのなら、持ち主がいる。だが……【インフェルニティ】は俺が持っているだけしかないはずだ」
この世で一番【インフェルニティ】を使い込んでいるのは自分だけ。その自分が見たことがない、インフェルニティをサポートするカード。
「これは元々――誰のものだったんだ、ジェイド」
最後に謎を残して、翡翠の目の男はネオドミノシティへと帰っていった。
これにてクラッシュタウン編は完結となります!
シリアスかつ遊戯王なストーリー、満足していただけましたでしょうか?
〜鬼柳発ジェイド宛の手紙を見つけてからのポッポタイムについて〜
衝撃的な内容に驚くも、ジェイドがするはずのない無断外出をしたとなるとその街に何かあるのではと勘付いた遊星。
そこでクラッシュタウンについて持ち前の技術力で調べたところ、一攫千金を求め向かった決闘者と比べて街の住人となっている決闘者の数が釣り合っておらず何かおかしい――不自然な点を掘り下げるにつれ犯罪臭が濃くなり牛尾さん含めたセキュリティが検挙に動けた、という裏話があったり。
本文ではほとんど何もしてないようでしたが彼が裏では一番頑張ってます。
クラッシュタウン編は鬼柳の罪や後悔を振り返らせるような描写が多く、ロットンのやってきたことは迷走していた鬼柳とも繋がっていたり(暴力やらメンバーの気持ちを分かってない行動やら爆弾やら)。
――故に、ロットンとのデュエルを終わらせられるのは鬼柳以外にいない。そんなお話でした。
ジェイドも鬼柳もかなり強いデッキのため、ロットンにはあの頃に存在していた永続罠でよりリアリストになっていただきました。ウゲッてした読者は多分いるはず。
鬼柳がちゃんと効果発動宣言していた以外でロットンへ仕掛けていた罠に気付けるポイントとしては、《バレット&カートリッジ》で4枚も墓地送りして展開したのにそこから一切デッキに触れることなく展開を終えていることも挙げられます。
4枚も自由な墓地送りして《ミラージュ》の効果使って……で蘇生したのが《セイジ》2体。《セイジ》がシンクロ素材として墓地に行ったのに墓地肥やし効果使わないとか【インフェルニティ】知ってたらいくらなんでもおかしいと判断できるので。
ロットンがリアリスト混じりではなく、きちんと決闘者になれたなら問題なく勝てていたデュエルでした。
最後のジェイドのカード拾いの謎についてですが……OCG次元やマスターデュエルやデュエルリンクスなどから持ってきているわけではなく、ちゃんとあの世界に存在するカードです、とだけ。
読者の皆様、お気に入り・感想・評価などなどありがとうございました!
……とかなんとか言ってますがこれで完結するわけではなく、不定期更新ないつも通りのペースに戻っていきますので気長にお付き合いください。
そして下の挿絵は108様に依頼して描いていただいたジェイド・アトラスの立ち絵となります。
兄弟コーデ!襟を立ててなかったり肩の鋲が無かったりと細かいところが違うぞ!
【挿絵表示】
俺たちの満足はこれからだ!