《地縛神
《インフォーマー・スパイダー》星4/守1800
《スパイダートークン》星1/守100
《スパイダートークン》星1/守100
魔法・罠
伏せカード3枚
ルドガー LP1000 手札5→6枚
《デスカイザー・ドラゴン》星6/攻2400
フィールド魔法
《アンデットワールド》
「私のターン、ドロー!」
このドローにより先のターンで使用した《活路への希望》と合わせてルドガーの手札は6枚になる。
フィールドでは《デスカイザー・ドラゴン》が相手フィールドを睨んでいるが、邪神は敵対者のことを気にするそぶりを見せない。
「《ゴブリンゾンビ》を召喚!」
《ゴブリンゾンビ》
星4/攻1100
フィールドに躍り出るのはゴブリンの愛嬌など一欠片もない不気味な屍。感情を感じさせない虚な目のまま剣を握っている。
「バトル! 《ゴブリンゾンビ》で《スパイダートークン》に攻撃!」
屍鬼は手にした獲物で無慈悲に子蜘蛛を両断する。
「続けて《デスカイザー・ドラゴン》で《スパイダートークン》に攻撃!」
ドラゴンは一度は止められた攻撃を今度こそ成功させるべく大きく息を吸い込み、ブレスを放つ準備を整える。その様子を見ていた邪神が口元を緩めた。
『その攻撃を待っていた! 永続罠《地縛神の咆哮》!』
罠が発動する。神が嗤う。
『攻撃宣言した相手モンスターの攻撃力が地縛神たる我の攻撃力より低い場合、その攻撃モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える! 己のモンスターと共に消え去れい! ルドガー――!』
黒き蜘蛛が吠えた。その声はここに辿り着くまでの途中で太陽龍を襲ったものと同じ、破壊をもたらす衝撃波。残りライフ1000のルドガーが受けたならば敗北が決定する滅びの歌。
「それは想定済みだ! 手札より速攻魔法《突進》を《デスカイザー・ドラゴン》を対象に発動し、ターン終了時まで攻撃力を700アップさせる! これによりお前の攻撃力3000を上回った事で《地縛神の咆哮》による破壊はできず、こちらの攻撃は通る!」
《デスカイザー・ドラゴン》
攻2400→3100
強烈な音の波は標的に届かず、ドラゴンブレスが蜘蛛を焼き焦がす。
『なんだと!』
「《地縛神の咆哮》は相手モンスターを破壊できなければダメージを与えられない。大きくライフポイントを減らした私をそのまま倒したかったのだろうが……人間の力を舐めてもらっては困る」
『……確かに、その足掻きは認めよう。我にダメージを与えるには至らなかった無駄なものとしてな』
ルドガーが使ったカードに驚愕していた姿と打って変わり、神らしい態度で戦果を見下す。
2体のモンスターで攻撃したが連続攻撃や貫通を付与するカードなどを使わなかったため、地縛神のライフポイントはひとつも減っていない。
「無駄なものなど何一つとして存在しない。ここに至るまでの過程は全て必要なものだ」
バトルフェイズを終えたルドガーはメインフェイズ2に入る。
「《ゴブリンゾンビ》を墓地に送り《トランスターン》を発動。デッキより闇属性・アンデット族・レベル5の《ノーブル・ド・ノワール》を特殊召喚!」
《ノーブル・ド・ノワール》
星5/攻2000
青肌に尖った耳。誰が見てもわかる人ならざる存在だが、高貴さを感じさせる優雅な礼をひとつ披露。黒のマントが翻る。
「フィールドから墓地に送られた《ゴブリンゾンビ》の効果でデッキから《劫火の舟守 ゴースト・カロン》を手札に」
上級モンスターを出しつつ手札にモンスターを補充。通常召喚権はもう使っているので新たにモンスターは召喚できないが、男の手には融合魔法が存在する。
「《幽合-ゴースト・フュージョン》発動! 本来ならばこの魔法で素材にできるのは自分フィールドにいるモンスターのみだが――自分のライフポイントが相手よりも少ないため、フィールド以外にいるアンデット1体を除外し融合素材とすることが可能となる!」
ルドガーが使っているのは対地縛神を考えて組まれたデッキ。地縛神は直接攻撃によりライフポイントを確実に減らしてくる相手であるため使い難い融合魔法の真の力を発揮できる。
「私はフィールドの《デスカイザー・ドラゴン》と墓地の《劫火の翼竜 ゴースト・ワイバーン》で幽合!」
2体のアンデット族が融合の渦へと吸い込まれ、新たな一つのモンスターとなる。
「――二体の亡者の魂が冥界の主を呼びさます! 冥界の扉を破り現れよ! 幽合召喚! 《冥界龍 ドラゴネクロ》!」
《冥界龍 ドラゴネクロ》
星8/攻3000
肩を覆うように突き出る骨と爪。人に近い顔付きをした、筋繊維を剥き出しにしたおぞましき龍。フィールド魔法の影響によりドラゴン族からアンデット族になったはずなのに、その見た目に特に変化はない。
龍は防御など一つも考えていない前傾姿勢でルドガーの前に陣取る。
邪神は融合魔法から感じ取っていた気配が目の前に現れたことでその正体を看破した。
『そのモンスターは……闇のカードか!』
デュエルディスクに置かれたカードから黒い瘴気が発生し、周囲の闇を深めていく。
そんなモンスターを使っているのだ、当然カードの影響を受けているルドガーの目が闇色に……ダークシグナーと同じ色へと染まる。
「闇のカードではあるが、赤き竜の力の一つ。心の闇を増幅させてしまうためシグナーの龍とはしなかったが、運命を終わらせるため我らに与えたのだ」
かつてダークシグナーだったが、運命を乗り越えようとする彼等ならば闇に呑まれることはないと判断し与えられたもの。
闘うための力――
「カードを1枚セットしてターンエンド。エンドフェイズに除外された《ゴースト・ワイバーン》の効果でデッキから《ゾンビキャリア》を手札に」
次のターンで攻撃が通れば負けると言うのに、その先を考えたような効果を使って手札を補充している。勝負を諦めていない。
愚かな人間を心の中で嗤いながら邪神はラストターンを開始する。
『我のターン、ドロー……《インフォーマー・スパイダー》をリリースし、我の効果で《ドラゴネクロ》のコントロールを奪う!』
「永続罠《洗脳解除》発動! コントロールは元に戻る!」
龍に絡みついた糸は即座に断ち切られる。
メインフェイズ2にわざわざ出してきた未知の融合モンスターという不安の種を消したかったが、ルドガーの1枚のみのセットカードが攻撃に反応するものではないとわかったのは収穫だ。
『まあいい、我で直接攻撃だ! これで今度こそ終わりよ!』
「本当にいいのか?」
『惑わそうとしても無駄だ。我には魔法も罠も通用しないのだから……む?』
突進しようとした蜘蛛の眼前に黒き貴族が浮遊している。進行方向を遮るようにいる邪魔なモンスターを無視して攻撃するはずが……目を離せない。体の自由が効かない。
『これはいったい! 何をした!』
「《ノーブル・ド・ノワール》の効果だ。お前が攻撃する先は私が決める」
『何だと!? クッ、《闇の幻影》で……!』
「これはモンスターを対象にするのではなく、決闘者へと作用する効果! それでは守れん! 私が指定するのは――《冥界龍 ドラゴネクロ》!」
貴族はにやりと牙を見せて笑う。どうぞこちらにと示された先には闇の龍が待っている。
『くっ、う……ウオオオオオオオッ!』
「迎撃せよ《ドラゴネクロ》! ソウル・クランチ!」
蜘蛛の牙と龍の牙、攻撃力3000同士の衝突。爆風の中に2体のモンスターが消えていく。
相打ち――ではない。
『……我が、残っている、だと?』
「《ドラゴネクロ》の効果。このカードと戦闘を行うモンスターはその戦闘では破壊されない。そして――」
何のために戦闘させたのか、と呆然としていた蜘蛛を突然の苦しみが襲う。
『ガッ、グアアアッッッッ!!??』
「――ダメージステップ終了時に、戦闘したモンスターの魂を奪う」
龍に喰いつかれた傷口からずるずると引き摺り出されるのは《地縛神
「魂を奪われたモンスターの攻撃力は0になり、魂は《ダークソウルトークン》として私のしもべになる」
魂が刻一刻と抜けていくため体を自由に動かせなくなっている。はくはくと口を、牙を動かした邪神が何を言っているのかは耳ではわからないが、ルドガーは理解した。
「残念だが魂を奪うこの効果も対象を取らない。幻影による誤魔化しは効かないぞ、地縛神よ」
《地縛神
攻3000→0
《ダークソウルトークン(地縛神
星10/攻3000
『あ、嗚呼――我をよくも! このような仕打ちをしてタダで済むとは思うなよルドガーッ!!』
ダークシグナーであった頃に何度も見た後ろ姿が、今はこんなにも弱々しい。敵対するはずの決闘者のしもべとなったことで文句を言うことしかできていない。
「もう手は無いようだな。では、私のターン、ドロー。終わりにしよう、地縛神よ……《ハリケーン》を発動。全ての魔法・罠は手札に戻る!」
神が伏せていた最後のカードは《虚無坑》。自身のモンスターの攻撃力を0にして破壊を無効にするカード。……もはや何の意味もない。止められない突風がフィールド全てを包む。
フィールド魔法が無くなる。
アンデット化の力が失せる。
そして地縛神の力も消える。
《地縛神
「《死者蘇生》を発動。戻ってこい、《冥界龍 ドラゴネクロ》! そしてチューナーモンスター《劫火の舟守 ゴースト・カロン》を召喚!」
《劫火の舟守 ゴースト・カロン》
星2/攻500
冥界の存在がルドガーのフィールドに並んだ。邪神は自分をこんな風にしたドラゴンを横目で睨む。
「レベル8の《冥界龍 ドラゴネクロ》にレベル2の《ゴースト・カロン》をチューニング!」
「冥界を流るる嘆きの河より、亡者の激流を逆巻き浮上せよ! シンクロ召喚! 《冥界濁龍 ドラゴキュートス》!」
《冥界濁龍 ドラゴキュートス》
星10/攻4000
光を裂き現れたのは角が枝分かれし、胸部に更なる顔を出現させた冥界龍の強化形態。
邪神と同じレベルだが、その攻撃力は4000と上回っている。
「バトルだ! 《ダークソウルトークン》で」
『なっ、待て!』
カードは失われ、残るのは魂が奪われた無力な抜け殻。防御手段はもうないとわかっているのに、まさか、そんな。
神の考えを見透かしたかのようにルドガーは恐るべきことを口にした。
「――お前の肉体を、お前の魂で破壊する!」
『何を馬鹿なことを!』
《冥界濁龍 ドラゴキュートス》は攻撃力4000。それは初期ライフポイントと同じ数字。
現在の《地縛神
しかし、こいつは余計な一撃を挟もうとしている。
『それでも決闘者か、貴様!』
「幾度も繰り返す戦いの中で光に負けても敗北を認めぬのならば、闇で――貴様自身の力で葬るほかない!」
闇色の目は本気だ。本気でこの人間は、神殺しを成し遂げようとしている。
「闇によって闇を制す! これこそ彼等には任せられない、私達兄弟がするべきこと! 《ダークソウルトークン》よ! 《地縛神
『や、やめ――』
逆らえない。使う者と使われるモノの絶対的関係。
一歩、また一歩と進む。進んでしまう。攻撃するべき、自分自身に。
「命乞いをされた相手に正しく慈悲を与えた過去があるのならば考えてやらんこともないが……無いだろう?」
魂と抜け殻が衝突する。口では嫌だと喚きながら、その口で肉体を食いちぎる。
闇のデュエルによりダメージは現実となり、フィードバックで邪神の魂は動けなくなった。
地縛神
LP 4000→1000
魂がなくなった抜け殻が消え、残るのは石の心臓。
地縛神復活の核となるもの。
『それだけは、それだけは――!』
地に伏した神は助けを必死に願う。元々存在しない可能性に賭けている。
「《ドラゴキュートス》でダイレクトアタック!
当然だが、ルドガーに命乞いを聞き入れる慈悲など最初からない。
哀れな神の声を掻き消す奔流が石の心臓を襲った。
地縛神
LP 1000→0
『ひ、あぁ、う…………』
デュエルはルドガーが勝利した。敗北した地縛神はボロボロになり地を這う。死にかけの虫ケラのような惨めな姿を晒す神を見下ろし、ルドガーは問いかける。
「魂を奪われた瞬間から闇のデュエルの支配権は私に移った。よって、お前に選択肢をやろう」
攻撃で完全に破壊されたと思っていた石の心臓はまだ残っていた。……が、闇の力を持つ龍がそばにいるためいつ壊されてもおかしくはない。
「選べ。我らと共に他の地縛神を葬る旅路に加わるか、それとも――このまま消えるか」
消える、という選択肢を告げると同時に龍はほんの少し牙を立て、石の心臓にヒビが入る。
選択肢なんて与えてないじゃないか、そんな反論はできない。
だって、しにたくない。
『わかった、やめてくれ! なんでもするから、それだけは……!』
「契約成立だ。お前の命は私が握っていること、忘れるなよ」
敗北を完全に認めた邪神の体から浮かび上がったカードを手にする。
――《地縛神
ダークシグナーだった彼が使っていたモンスターだが、あの頃と違い精神を侵食する気配は微塵も感じられない。
「兄さん!」
遠くから声がした。ダメージから回復したのか、道の途中で一人うずくまっていたはずのレクスが駆け寄ってくる。
「もう動いて大丈夫なのか!?」
「ええ、一応は。……そのカードを持っているということは」
「ああ、成功した」
「良かった……」
デュエルを終えた兄の無事を確認して安心したせいか、回復したはずなのにドッと疲れが噴き出す。
「こんなに疲れたのはデスマーチ一歩手前だった時以来ですかね、ほら、コーヒーの味が舌に染み付いてた頃の」
「取り敢えずカフェインがあるなら安物でもって飲んでいたあれか。……思い出したら飲みたくなってきたな」
「赤き竜に頼めばもしかしたら差し入れをしてくれるかもしれませんよ?」
「フフ、そうだといいな」
過去の思い出に花を咲かせようとして、あの頃の話をするなら忘れてはいけない一人の顔が浮かぶ。
思い出してしまったのは、共にいたはずなのに裏切ってしまった心優しい人のこと。
「不動博士……貴方の息子が守った世界を、私達なりに支えていきます」
一人呟いたそれは、弟に聞こえることはなかった。
――ふと、ダークシグナーになった時に特別仕様のDホイールが与えられていたことから、ここにもDホイールがあるのでは? と思いついたことをそのままルドガーは話す。
それは確かにそうかもしれない……なら探しましょう! と疲れているはずの弟は伝説のDホイーラーとして語り継がれたためだろうか、Dホイールと聞きいてもたってもいられず邪神の棲家だったものを嬉々として荒らしに向かった。
召喚した竜はお手伝いとしてあちこちがっしゃんがっしゃんひっくり返して崩して穴を開けていく。
……棲家が更地と化す様を見せられた蜘蛛はひとり泣いていた。
『おい、おい。……死んでいるのか?』
たったかたったか、てしてしぽすぽす。
枕元で音がする。
お手洗いから戻ろうとして寝ぼけたままで部屋を間違ったのかな。誰だろうか。起こされたジェイドの寝ぼけ眼が見たのは……。
「…………アシダカ軍曹?」
『何をどう見ればアシダカグモに見える! 目は確かか貴様!? ……クッ、なぜこの我があの二人の伝令係などせねばならんのだ……!』
デフォルメされたちんまい手のひらサイズの蜘蛛が怒りの足踏み。ダカダカとダンスを踊っているようにも見える。
『うぐぐ、何で我がいつもこんな目に……《
愚痴っていた蜘蛛だったが、急に挙動不審になる。
『ヒッ、ミクトランテクートリ……! いや違う、寝首とかそういう訳では、うあああああああ――』
命の恐怖で高速バイブレーション。からの逃走。
ゆるっとした感じのデザインになっていた邪神はよくわからないまま何処かへと消えた。
「…………ウン。夢だな。寝よ」
とりあえず。
ジェイドは二度寝をした。
・《アンデットワールド》で地縛神のアドバンス召喚を封じる
・《アンデットワールド》発動下で墓地を経由し地縛神を出そうとしたら《デスカイザー・ドラゴン》で奪う
・油断した瞬間に《デスカイザー・ドラゴン》に《バスター・モード》してアンデットの物量で潰す
・地縛神を速攻で出された場合は《ノーブル・ド・ノワール》で《ドラゴネクロ》に攻撃誘導して本話みたいに相手の心を折りにいく
本編では出しきれませんでしたがルドガーのアンデットデッキには上記の戦法が組み込まれていたりします。
二度寝したせいで記憶がフワッとして「なんか部屋に黒いのがいた気がする……Gかな……掃除するか!」なジェイドがいたとか。