石造りの心臓   作:ウボァー

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前話にて触れた『霊廟で出会う彼』についてですが、追加のヒントを出したら一発でわかる決闘者です。高攻撃力なエースを有する【メメント】使ってて会ってないのはおかしいよなってなる相手なのだよ。


ところにより決闘

「ミクトランテクートリがもう一柱いる……?」

 

「それって、どういうことなの?」

 

「……そこまではわからない。けど、納得できるのはこの答えなんだ」

 

 イリアステルがどこまで知っていて、何を隠しているのか。その取っ掛かりになりそうなもう一人の神はちょっと休む、と私の中に入っていったっきりだ。何回か心の中へと呼びかけてみたが返事はない。

 

「《テクトリカ》に直接は聞けないのか?」

 

 遊星が確認を求めたように、《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》は《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》と言い争いができた。つまりその気になればこの場に現れて話すことができる。

 が、それは今できない。

 

「神殿から脱出する直前にもう一柱の神様のせいでしもべと一緒に破壊されてるから無理。デッキの調子もガタ落ちだし復活してからじゃないと確認は無理かな」

 

 帰りの飛行機に乗っている間、試しに初期手札と同じ5枚をドローする行為を何回か繰り返したが結果は見事な手札事故。一刻も早く復活してもらうため【メメント】がその力の全てを神に注ぎ込んでいる疑いようもない証拠だ。

 

「……ま、いくら考えてもわからないことはあるんだし。それよりもデュエルしよう!」

 

「デュエルが終わったらナスカで何があったのかの続きをきちんと全部話すんだぞ」

 

「忘れないでね!」

 

「ハイ」

 

 三人でデュエルするなら室内じゃなくて外でやろう、と場所を移動しようとしたジェイドに忘れるなと念押しの言葉を投げかけられる。

 

 【地縛】はあと一回しか戦えない、と赤き竜に言われているためジェイドとクロウと龍可は一対二の特殊ルールでデュエルすることになった。変則的なタッグデュエルだ。

 最初のターンは全員攻撃不可能。ライフは4000。クロウと龍可はフィールドを共有しない。味方のターンにおいて、相手ターンで使える速攻魔法や罠カード類を使用することは可能。

 

「先攻は譲るぜ。流石に使い慣れてないデッキで二人を一度に相手にするのはキツイだろ?」

 

「私も賛成。せっかく赤き竜が試練として用意したんだから、先攻を取られても勝てる力があるって証明しないと!」

 

「それじゃあお言葉に甘えようかな」

 

 ジェイドはしもべが使っていたデッキをそのまま確認はしたが、カードの入れ替えはしていない。というか【地縛】を使うことになるなど思いもしなかったので調整するための用意がなかった。

 

 ターンの回る順番についてはジェイド、クロウ、龍可で一巡し、またジェイド……と彼のターン数が少なくなる不利なものに。二人の使用カードのほとんどを知っているからこれぐらいでちょうど良くなるはずだ、とジェイドが言い張り説得し、デュエルは始まった。

 

「私のターン、ドロー。チューナーモンスター《地縛囚人 グランド・キーパー》を守備表示で召喚。効果でデッキから《地縛囚人 ストーン・スィーパー》を特殊召喚」

 

《地縛囚人 グランド・キーパー》

星1/守300

 

《地縛囚人 ストーン・スィーパー》

星5/守1600

 

 呼び出されたのはごろごろと整地ローラーを引きずる悪魔と、その後ろについてくる鯨の悪魔。

 

「カードを2枚伏せてターンエンド」

 

 先攻1ターン目、ジェイドは守備モンスター2体にセットカード2枚という静かな立ち上がりで展開を終えた。

 

「チューナーを出したがシンクロはしないのか」

 

「攻撃が可能になるまでは大きく動かないつもりだろう。それに……」

 

 恐らく手札に《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》を持っていないのだろうな、とジャックは一人納得していた。

 

「……ん?」

 

 フィールドでは守備表示として大人しくしているのが正常なモンスターが何故か動いている。

 ヴゥウと《グランド・キーパー》は唸り、《ストーン・スィーパー》はヒレをバタバタ動かしてジャックに威嚇。そんな様子を見てジェイドは困ったように笑っていた。

 

「ええい、デュエルに集中せんかお前ら! そんなにオレが嫌いなのか!?」

 

「ええと……その、オマエダイキライ、だって」

 

「いちいち訳さずともわかるわそのぐらい!」

 

 取り敢えず教えたほうがいいのかな、と龍可が精霊の言葉を人間の言葉に翻訳したがジャックがすかさず突っ込む。

 

「え、えーと……とりあえず普通にデュエルしたいんだけどな……」

 

 ジェイドの言葉で2体はぴたっと動きを止める。最初からこのように落ち着いてましたが? な感じの顔だ。

 

「ハァ……何故お前の言うことは聞いているんだ。元は地縛神が使うためのカードだろう」

 

「なんでなんだろうね?」

 

 だんだん突っ込む気力が失せつつあるジャックと、やっぱり理由がわからないジェイド。

 地縛神からの力を受けているのは見た目から間違いないのだが、こんなコミカルな動きをするせいで本当にそうなのか? とシグナーそれぞれの脳内に疑問が浮かぶ。

 

「ま、デュエルの進行に関係ないんだしそこまで気にする必要ねえだろ。……互いに最初は攻撃できないのを利用して連続シンクロ召喚の準備を整えようってんだろうがそうはいかねえぜ!」

 

 戦意を昂らせたクロウの鋭い目がジェイドを射抜く。

 

「俺のターン、ドロー! 手札の《BF-鉄鎖のフェーン》を墓地に送り《黒羽の宝札》を発動! デッキからカードを2枚ドロー!」

 

 クロウが最初に行ったのは手札交換……いや、一番の目的は墓地にモンスターを送ること。

 

「永続魔法《黒い旋風》を発動し《BF-極北のブリザード》を召喚! 《ブリザード》の効果で墓地の《フェーン》を特殊召喚し、《黒い旋風》の効果でデッキから《BF-蒼天のジェット》を手札に加える」

 

《BF-極北のブリザード》

星2/守0

 

《BF-鉄鎖のフェーン》

星2/守800

 

「自分フィールドに『BF(ブラックフェザー)』モンスターが存在するため、手札の《BF-黒槍のブラスト》を特殊召喚!」

 

《BF-黒槍のブラスト》

星4/攻1700

 

 黒羽の連続した特殊召喚。手札には破壊から守るためのカード。合計レベル。そしてターン開始時の発言からするに連続召喚の妨害を狙っている。

 となると、クロウが出したいシンクロモンスターは自ずと導き出せる。

 

「その特殊召喚でセットしている速攻魔法《終焉の地》を使わせてもらうね。効果でデッキからフィールド魔法《フュージョン・ゲート》を発動する」

 

 ジェイドが使用した魔法により、デュエルをする三人がいる空間が歪む。見た目に大きな変化はないが、融合を補助する効果がフィールドへ展開された。

 

「融合効果を持つフィールド魔法か……だが、その効果は自分のターンにしか使えない。俺のターンで邪魔をすることはない!」

 

 デッキの圧縮のために使ったのだろう、とクロウは判断。その手を止めることなくシンクロ召喚へ移る。

 

「レベル2の《BF-鉄鎖のフェーン》とレベル4の《BF-黒槍のブラスト》に、レベル2の《BF-極北のブリザード》をチューニング!」

 

◎◎

⚪︎⚪︎ ⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎

2+
4+
2=
8

 

「吹き荒べ嵐よ! 鋼鉄の意志と光の速さを得て、その姿を昇華せよ! シンクロ召喚! 《BF-孤高のシルバー・ウィンド》!」

 

《BF-孤高のシルバー・ウィンド》

星8/攻2800

 

 太刀を携え、鳥人の剣士が風と共に到来。

 

「《シルバー・ウィンド》の効果! このカードの攻撃力よりも低い守備力を持つフィールド上のモンスターを2体まで選択して破壊できる! 俺が選ぶのは当然ジェイドのモンスター2体だ! パーフェクト・ストーム!」

 

 黒羽による一閃。地を這う囚人達へと嵐が襲いかかる。ジェイドの手には風除けも妨害もないため、モンスター達は真正面から破壊の暴風を受けることになった。

 

「……何っ!?」

 

 しかし風が晴れた後に残っている影がある。2体とも無傷だ。どちらも破壊されていない、その事実にクロウは驚きの声をあげる。

 

「《グランド・キーパー》の効果。このモンスターとフィールド魔法がある限り『地縛』モンスターは破壊されない」

 

「そんな効果を……!?」

 

 速攻魔法《終焉の地》は特殊召喚に反応してフィールド魔法を発動できる効果のカード。クロウがシンクロ召喚による破壊を狙おうと特殊召喚を多用したことで、逆にジェイドへ対抗手段を与えてしまった。

 

「……俺が特殊召喚したせいだ。すまねえ」

 

 自分が攻めを優先したせいで龍可に負担をかけてしまう。クロウは味方である龍可に謝る。

 

「ううん。相手の効果が早くに分かって助かったわ」

 

 地縛神はフィールド魔法によって維持されていた。あの囚人はその力を一部受け継いでいるのだろう。

 守りがフィールド魔法の存在を軸とするのなら、龍可のデッキならやりようはある。そのための準備をするのがこのデュエルでの私の役割だ、と彼女は認識した。

 

「俺はカードを2枚セットしてターンエンド」

 

 堅固な壁となったモンスターを突破する手段は今のクロウには無い。ジェイドの攻撃に備えるためのカードを並べ、ターンは龍可へ。

 

「私のターン! ドロー!」

 

 彼女は特に悩むそぶりを見せず、手札から複数のカードを取り出す。

 

「モンスターをセット。カードを3枚セットしてターンエンド!」

 

 突撃したクロウをサポートするためか、龍可はフィールドに多くのカードをセット。デュエルの中で攻めと守りの役割分担が完成しつつある。

 

 厄介だな、とジェイドは考える。それを覆す手はアレしかない。手元へ来るよう望み、デッキからカードを引く。

 

「私のターン、ドロー! ……私に使われるのって満更でもなかったりする? 《地縛囚人 ライン・ウォーカー》を召喚! 効果で《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》をデッキから手札に加える」

 

《地縛囚人 ライン・ウォーカー》

星3/守1100

 

 その魔法の名前を聞いてジャックが反応する。が、使うのは少し後だ。

 

「レベル5の《地縛囚人 ストーン・スィーパー》にレベル3の《地縛囚人 ライン・ウォーカー》をチューニング!」

 

◎◎◎

⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎

5+
3=
8

 

「シンクロ召喚! 《地縛戒隷 ジオグリフォン》!」

 

《地縛戒隷 ジオグリフォン》

星8/攻2500

 

 拘束具に身を包んだ鷲獅子が翼を広げ、フィールドへ禍々しい風を巻き起こす。

 

「《ジオグリフォン》の効果で墓地の《ストーン・スィーパー》を守備表示で特殊召喚。――さあ、【地縛】の力をここに解放しろ! 《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》発動!」

 

 待ってました、と悪魔達はジェイドの呼びかけに共鳴する。

 

「シンクロ……」

 

「……フュージョン?」

 

「《ミラクルシンクロフュージョン》みたいなものかしら」

 

 二人が魔法カードの一部である召喚法の名前を反復する中、デュエルアカデミアで学んだことのあるカードをアキは呟いた。

 

「でも、あれは墓地にシンクロモンスターを必要とする魔法カードだ。ジェイドがしようとしているのは、きっと……」

 

「来るぞ! ここからが本当の勝負だ!」

 

 ブルーノはジェイドが何をするのかを察しつつある。ジャックは己を苦しめたあのモンスター達を二人がどう乗り越えるのか一挙手一投足を注視する。

 

「レベル1チューナーモンスターの《グランド・キーパー》とレベル5の《ストーン・スィーパー》を墓地に送り、エクストラデッキからその2体で召喚可能なシンクロモンスターと融合モンスターを出す!」

 

「ハァ!? 一度に二つの召喚をするだぁ!? なんつーインチキ魔法だ!」

 

「…………ん? その言い方だと……?」

 

 大型モンスターを一気に2体出す効果にイチャモンをつけるクロウと、ジェイドの言い方から何かに気付きつつある龍可。光柱を軸に光輪と渦が重なり、大地に縛られた悪魔達は真価を発揮する。

 

「レベル6のシンクロモンスター《地縛戒隷 ジオグレムリン》と、『地縛』2体を素材とする融合モンスター《地縛戒隷 ジオクラーケン》を特殊召喚!」

 

《地縛戒隷 ジオグレムリン》

星6/攻2000

 

《地縛戒隷 ジオクラーケン》

星8/攻2800

 

 鷲獅子、地妖精、海魔。ジェイドの眼前には天地海を荒らす3体の地縛戒隷が並ぶ。

 

「特殊召喚した《ジオクラーケン》の効果でデッキからフィールド魔法《地縛牢》を手札に加える。《シルバー・ウィンド》を対象に《ジオグレムリン》の効果発動!」

 

「――その効果にチェーンして《シモッチによる副作用》を発動するわ!」

 

 精霊が囁いたのか決闘者の勘か。地妖精の効果が何かを教える前に龍可が永続罠を発動。

 

「ここで《シモッチ》かぁ……《ジオグレムリン》の効果の説明に移るよ。対象を破壊するか、対象の攻撃力分だけ私のライフを回復するか、相手に選択してもらう。……どうする、クロウ?」

 

 効果を聞きクロウは笑う。

 仲間の発動した永続罠があるなら、選ぶのは当然。

 

「なら、ありがたくお前のライフを回復させてもらうぜ」

 

「《シモッチによる副作用》により、その回復はダメージに変換されるわ!」

 

 悪魔がもたらした回復の光は反転し、黒い闇となってジェイドに降りかかる。

 

「いてて……」

 

ジェイド

LP 4000→1200

 

 2800の回復が2800のダメージに。その原因となった効果を使った地妖精はオロオロしているように見えた。

 

「フィールド魔法《フュージョン・ゲート》の効果発動。フィールドの《ジオグリフォン》と手札の《ネクロ・ディフェンダー》を除外し、《地縛戒隷 ジオグレムリーナ》を融合召喚!」

 

《地縛戒隷 ジオグレムリーナ》

星6/攻2000

 

 融合によって現れるは地妖精の番。

 

「《ジオグレムリーナ》の効果でデッキから『地縛』モンスター、《ストーン・スィーパー》を手札に加える。そして《闇の誘惑》を発動。デッキから2枚ドローし、手札の《ストーン・スィーパー》を除外」

 

 効果でコストとなるモンスターを確保したのちに手札を交換。良いカードを引けたのだろうか、その表情からは読み取ることができない。

 

「墓地の《ライン・ウォーカー》を除外してエクストラデッキから特殊召喚されたモンスター――《BF-孤高のシルバー・ウィンド》を対象に効果発動。対象をデッキに戻す。相手はその後、同名モンスターをエクストラデッキから特殊召喚するかを選ぶ」

 

「バウンス……じゃねえのか? 俺は《シルバー・ウィンド》を特殊召喚するぜ」

 

 消えたのはほんの一瞬。しかし、エクストラデッキからの特殊召喚は行われた。それを見逃さなかった海魔がのそりと動き触腕を持ち上げる。

 クロウの行動がキーとなり、なにかしらの効果を発動させてしまったとわかる動き。決闘者達の視線が集まる。

 

「相手のエクストラデッキからモンスターが特殊召喚されたため《ジオクラーケン》の効果を発動! このターンに特殊召喚された相手フィールドのモンスターを全て破壊し、破壊したモンスター1体につき800のダメージを相手に与える!」

 

「そういうことかよっ! 手札の《BF-蒼天のジェット》の効果を発動し、《シルバー・ウィンド》の破壊を防ぐ!」

 

 手札から飛び出した一陣の風が、振り下ろされた触腕による攻撃を防ぐ。

 

「エクストラデッキからの特殊召喚で、破壊する効果が発動されるって……つまり、シンクロ召喚ができないってことじゃん!」

 

「しかもモンスターを複数並べようとするほど、そのダメージは大きくなる……あんな相手によく勝てたな。ジャック」

 

 龍亞は恐るべき効果に身慄いし、遊星はナスカより帰還した幼馴染の戦果がどれほどのものかを再認識する。

 

「あの勝利はオレ一人で成し遂げたのではない。……それに、警戒するべきは《ジオクラーケン》だけではない。《ジオグレムリン》がいるならばヤツをこのターンに出すつもりだ」

 

「ヤツ、って……?」

 

「見ていればわかる。アレの力は――恐ろしいぞ」

 

 己のパワーに誇りを持つ王者がその力を恐ろしいと評した。これから出てくる脅威に対して悪い想像を膨らませた龍亞はごくりと唾を飲む。

 

「龍可ー! クロウー! 頑張れーっ!!」

 

 観客の話が聞こえていたのだろう、冷や汗を流す二人へと飛ぶ龍亞の応援の声。これが闇のゲームではなく仲間同士による特訓目的だと思い出せた二人はほんの少しだけ顔を和らげる。

 

「期待されているなら準備しないとね。速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動。除外されている《ライン・ウォーカー》、《ジオグリフォン》、《ネクロ・ディフェンダー》を墓地に戻す。……《ジオグレムリーナ》の効果を《ジオグレムリン》に対して発動。このターン《ジオグレムリン》はダイレクトアタックが可能となる」

 

 ジェイドは言葉を区切る。腕を伸ばす。

 地妖精が、動いた。

 

「バトル! 《ジオグレムリン》で龍可ちゃんにダイレクトアタックだ!」

 

 龍可のデッキには攻撃されると相手にダメージを与えてくるモンスターの《マシュマロン》がいるため、セットモンスターがそれである可能性を常に考えねばならない。ジェイドの残り1200のライフポイントで無闇にモンスターへ攻撃するのは危険だ。

 

「《シモッチによる副作用》を墓地に送って永続罠《強制終了》を発動! バトルフェイズを終了するわ!」

 

「おっとそう来たか。なら、その《強制終了》にチェーンして《ジオグレムリン》の効果発動! バトルフェイズにフィールドの《ジオグレムリーナ》と墓地の《ジオグリフォン》を除外し、融合召喚を行う!」

 

 龍可が伏せていたカードを発動し地妖精の攻撃を止めようとする。使われたカードを見て、決闘者の指示を聞いて、地妖精はジェイドのフィールドへと戻った。

 そして、その足を踏み鳴らす。己の効果により大悪魔を呼び覚ますために。

 

「――来るぞ! 気をつけろ!」

 

 除外されたのは『地縛』の融合とシンクロモンスター。一度倒した相手だというのに、ジャックは思わず手に汗を握り叫んでいた。

 

「悪魔よ、皆が超えるべき試練として今この時だけ私の力になれ! 《地縛戒隷 ジオグラシャ=ラボラス》!」

 

《地縛戒隷 ジオグラシャ=ラボラス》

星10/攻3000

 

 かのデュエルにてジャックを苦しめた、力のみでは倒せない相手。黒の体に赤の光が走る大悪魔。闇の力の塊。

 それがジェイドの手により、本来ならばいないはずのこの世界に再び顕現した。

 

「これが【地縛】のエースモンスター!」

 

「なんてプレッシャー……! まるで地縛神を相手にしているみたい……」

 

 シグナー二人からの恐れの言葉を受け取り大悪魔は上機嫌だ。しかし、チェーン処理によってこの後には《強制終了》が発動しバトルフェイズが終わる。

 バトルフェイズ中の特殊召喚だが、その力を振るうことはできなかった。

 

「メインフェイズ2に移行。伏せていた永続罠《闇次元の解放》を発動し、除外されている《地縛戒隷 ジオグリフォン》を特殊召喚!」

 

《地縛戒隷 ジオグリフォン》

星8/攻2500

 

「カードを1枚セットしてターンエンド。――さ、どう来る?」

 

 フィールドのモンスターはこれで4体。

 地妖精、海魔、鷲獅子、そして大悪魔。

 

 龍可が永続罠によりバトルフェイズを終わらせていなかったら、これらの地縛戒隷による一斉攻撃が襲いかかっていた。

 

「これで初めて使うデッキってマジかよ、つくづくジェイドが敵じゃなくて助かったぜ……。俺のターン、ドロー!」

 

「クロウのターンに《ジオグリフォン》の効果発動。墓地の《グランド・キーパー》を守備で特殊召喚」

 

《地縛囚人 グランド・キーパー》

星1/守300

 

「またそいつで守られちまうか……」

 

 鷲獅子が墓地より引き上げてきた囚人の効果により、フィールド魔法がある間は効果破壊も戦闘破壊も効かなくなる。

 

「これでジェイドのフィールドにはモンスターが5体。しかもシンクロを抑制する《ジオクラーケン》と、召喚条件からするに強力な効果を持つ《ジオグラシャ=ラボラス》……」

 

「でも、クロウと龍可なら勝てる……よね?」

 

 不安そうな龍亞。仲間同士の特訓目的のデュエルではあるが、ジェイドの使っているカードがカードだけに二人に勝ってほしいという思いは強い。

 

「フィールドに『BF(ブラックフェザー)』がいるため、《BF-漆黒のエルフェン》を効果でリリース無しで召喚!」

 

《BF-漆黒のエルフェン》

星6/攻2200

 

 漆黒の名に違わぬ羽毛と鳥の面を被る闘士は仲間の元へと推参。通常召喚したことでクロウのフィールドへ黒の風が巻き起こる。

 

「《黒い旋風》の効果で《BF-月影のカルート》を手札に加え――《エルフェン》の効果で《グランド・キーパー》の表示形式を変更する!」

 

《地縛囚人 グランド・キーパー》

守300→攻300

 

 ジェイドが並べている5体のうち1体だけ守備表示だった、低いステータスの囚人が攻撃表示へと変わる。

 

「フィールド魔法がある限り破壊されないってんならちょうどいいぜ、そいつをぶん殴ればいいだけだからな!」

 

「サンドバッグってワケね。確かにそれは困る。じゃあ、相手のメインフェイズに《シルバー・ウィンド》を対象にして《ジオグレムリン》の効果発動! さあ、破壊か回復どちらを選ぶ?」

 

「それも相手ターンで使える効果……! 俺が選ぶのは回復だ!」

 

ジェイド

LP 1200→4000

 

 折角削ったライフポイントが元通り。龍可の与えたダメージが無かったことになってしまった。

 しかし、クロウのフィールドにいるモンスターの攻撃力の合計は5000。この回復のみではジェイドは敗北から逃れられない。

 

「バトルだ! 《エルフェン》で攻撃表示の《グランド・キーパー》に攻撃――」

 

「それはどうかな! 攻撃宣言時に罠発動、《立ちはだかる強敵》! 攻撃対象は《地縛戒隷 ジオグラシャ=ラボラス》に変更される!」

 

「何っ!」

 

 相手が他のモンスターへと目移りすることを許さぬように、攻撃表示の大悪魔が翼を広げて最前線へ躍り出る。

 

「《立ちはだかる強敵》により攻撃は強制され、そして誘導される! さあ龍可ちゃん、その《強制終了》はどうする!」

 

 バトルフェイズを終了すればクロウのモンスターが攻撃することはない。ジェイドは龍可に選択を迫る。

 

「っ、私は――」

 

「その必要はねえぜ龍可! 俺は罠カード《イタクァの暴風》を発動! 相手モンスターの表示形式を全て変更する!」

 

《地縛戒隷 ジオグラシャ=ラボラス》

攻3000→守1800

 

《地縛戒隷 ジオグレムリン》

攻2000→守1000

 

《地縛戒隷 ジオクラーケン》

攻2800→守1200

 

《地縛戒隷 ジオグリフォン》

攻2500→守1500

 

《地縛囚人 グランド・キーパー》

攻300→守300

 

 罠カードから放たれた暴風でジェイドのモンスター全ての表示形式が変わる。

 これで、攻撃表示ではなく守備表示の《地縛戒隷 ジオグラシャ=ラボラス》に攻撃しなければならない状態に変わった。

 

「俺のモンスターの攻撃力は《ジオグラシャ=ラボラス》の守備力を上回っている! これで俺はダメージを受けることはない! 行け、《エルフェン》、《シルバー・ウィンド》! 攻撃だ!」

 

 2体の黒羽が守りに入った大悪魔へと攻撃する。

 

「――ダメージステップ開始時に《ジオグラシャ=ラボラス》の効果発動! このモンスターと戦闘したモンスターは攻撃力と守備力が0になる! ちなみにターン終了時までじゃなくて永続ね」

 

 大悪魔の力がクロウの黒羽を蝕み、その力を奪う。

 

「クロウ!」

 

「《強制終了》は使わなくていい! ライフは残る……!」

 

 再びの龍可からの助けを拒み、クロウは攻撃の続行を選んだ。

 

「ダメージ計算前に手札の《カルート》は使う?」

 

「……いいや、使わねえ」

 

 《カルート》はダメージステップ時――ダメージ計算前にもその効果を使える。よって《ジオグラシャ=ラボラス》の効果が使われるダメージステップ開始時が過ぎたのちに使えば、ターンが終了するまで『BF』の攻撃力を0から1400に上げて反射ダメージを減らせる。

 しかし、クロウは使わないと言った。

 

「なら、反射ダメージ1800を2回。合計3600のダメージを受けてもらうよ!」

 

《BF-漆黒のエルフェン》

攻2200→0

 

《BF-孤高のシルバー・ウィンド》

攻2800→0

 

クロウ

LP4000→2200→400

 

 大悪魔は力無い攻撃を跳ね返し、シグナーへ力を過信した報いを与える。

 

「うっ、ぐうううっ……! 俺はこれでターンエンドだ!」

 

 相手を倒そうと攻撃したというのに、失ったのは己のライフポイント。さらに攻撃力も削がれる結果で終わってしまった。

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