イリアステルと繋がりのあるモーメント・エクスプレス開発機構への潜入方法。それはボルガー&カンパニーの社員となり会社の内部へと入り込むという、バレてしまえば一巻の終わりとなる危険が伴うもの。
潜入の邪魔になる遊星のマーカーはアキの化粧により隠すことに成功。ただ、遊星は初めてのファンデーションで頬に何度も当てられるパフの感覚に慣れず、少しくすぐったそうにしていた。
その様子をジェイドは見るだけにとどめた。前世とは手の大きさが変わっているので感覚が違うし、そもそも今世は化粧をしっかりとやってないので突然手慣れた様子で始めたらなんで出来るんだよと突っ込まれるためだ。
その代わりとしてだが、遊星・ブルーノ・シェリーの三名が自分から偽名を使う時に変な部分が出ないか、また偽名で呼ばれてもちゃんと返事ができるかの特訓をジェイドが行なった。
それだけではなく、本来の歴史にいない存在である偽ジャック――アルターエゴもメモリに入れて連れて行かせて情報収集の準備を万端にして。
そうして送り出した彼らは海に不時着したシャトルから帰ってきて……中にいたのは二人。共にいたシェリーは、異次元へと消えてしまった。
「そう、か」
アーククレイドルでの出来事をアニメに近い形で進ませるためにも、復讐の相手を失った彼女の心を救うためにもここは変えてはいけない。
原作知識を共有したアルターエゴを連れて行かせたのは、ジェイドの目の届かない場所でストーリーから外れることを危惧して、という理由もある。
……けどもやっぱり、他に何かできたのではと考えてしまう。
知識を持つが故の後悔、というのはずっとついて回る。破滅の未来を変えようとする四人もこんな気持ちだったのだろうか。
ジェイドが暗い気持ちになっているのを察したのか、Dホイールへと戻ったアルターエゴが声を発する。
『気休めになるかは分からんが、あの場所に黄色い……とにかく大きな何か、としか呼べない生き物がいたのを確認した。一応は生命体が存在できる環境、らしい』
「本当なのか?」
「え、あの場所に生き物が!?」
信じられないと二人が目を丸くする。
正しいルートを進まなければシャトルの外壁が破損するほどの時空の乱気流内、そこで生存できる生き物とは本当に存在するのだろうか。
衝撃に耐えるのに精一杯で外を見る余裕はなかったため、二人とも彼の言葉が正しいかを保証できない。
「黄色い、生き物? ……それの詳しい見た目って」
『すまない。何故か記録したはずの画像と映像が共に消えている。オレがその時抱いた感想のログだけでしか語れんのだ』
「帰還する時の衝撃で破損したのか?」
『……わからん』
異次元に住む生き物……アニメにはそんなもの存在しなかった。よってジェイドは深掘りしようとしたのだが、記録が消滅していてはそれ以上の情報が得られない。
そういえばアルターエゴはイリアステルのシステムにもハッキングできると豪語したが、防御面については触れなかった。まさか何者かに……その生き物の生存の障害となるから干渉され消された、のだろうか。真相は闇の中だ。
ミゾグチはシェリーとの思い出の場所を巡りながら彼女を探すと告げ、ガレージを去っていった。きっと生きている……そう信じて。
また、チームニューワールドとしてイリアステルの三皇帝がWRGPに出場していた、という歴史改変を受けイェーガーは治安維持局に復帰。長官が不在のため副長官であった彼がその座に着くことでWRGPを続行することを宣言。
直接カードの刃を交えることができない各々が、それぞれにしかできない方法でイリアステルと戦う――そんな決意を固めた日となった。
本戦開催が迫るある日のこと。チーム太陽と接触し、彼らのDホイールをなんとかして直してあげたいと依頼主になった龍亞を連れ、遊星とブルーノは彼らのいる場所へと向かった。
それを知らないまま訪れたアキはエキシビジョンデュエルの観戦を共に、と遊星を誘おうとしていたが不在のため空振り。結局外出中の彼らを除いたチーム5D's全員で行くことになった。……アキは不機嫌になっていた。
エキシビジョンデュエルをするのは優勝候補のチームラグナロク。
イェーガーがとても頑張ってセッティングしたのだろう、本戦に出場する他チームの顔もちらほら見える。
『優勝最有力候補! 神の国から来た決闘者――チームラグナロク!』
実況の声に導かれ、満を持して車から登場した三人は悠々と歩く。歓声に包まれるのを当然だと受け止めているのは強者であることの現れだ。
リーダーを差し置いてセンターを歩くブレイブ、という目立ちたがりのトリックスターらしい登場となったがハラルドとドラガンは気にしていない。
『神の力が宿る星界の三極神を使う世界最強の決闘者! これまでにも数々の伝説を残しているプロのライディングデュエルチームだ!』
どうでもいいことだが、ジェイドの頭の中では実況の人が伝説と言ったせいで「伝説って?」「ああ!」が勝手に再放送されていた。かなり気が抜けている。
『それでは早速エキシビジョンデュエル! 対戦相手は怒れる神の腕を持つ男、ドラガンが指名する!』
暗くなった会場の中、スポットライトを浴びるドラガンがぐるりと集まった人々へと目を走らせる。
誰とデュエルするのかと緊張が高まっていく閉鎖空間。男が指差した、その相手は。
「俺の相手はお前だ! ――ジェイド・アトラス!」
「……えっ」
名前を呼ばれたその決闘者へライトが当てられる。
『な、なんと! ドラガンが指名したのは元キングの兄、ジェイド・アトラスだーッ!』
ドラガンと因縁があるのはジャックだから……と油断していた、気の抜けた顔のジェイドが照らされて周囲の人々によく見えるようになった。
「えっ?」
『
ジェイドとジャックの言い間違えや会場のスタッフの聞き間違いを疑い、本当に私なのかときょろきょろ挙動不審。
「早く上がれ。ジェイド・アトラス」
「ええー……」
対戦相手となる当人から呼ばれた。間違いではないらしい。
「じゃ、じゃあ行ってきます……なんで私なんだろ」
ジェイドは戸惑いつつも特設のデュエルステージへと向かう。
「……確かに、なんでジェイドを選んだの? チームラグナロクの狙いも情報収集ってこと……?」
「予選の三人抜きが目立ったせいで本戦にも出ると思われているのかもしれないわね」
「ジェイドは本戦には出ない予定だと知っているのはオレ達だけだからな」
「つまりこっちの新たな切り札はバレないまま、あいつらだけ損をするってことか?」
リフトへと乗り上がっていく途中、チームメイトである彼らの声に耳を澄ませる。考えられる理由は納得できそうなものだ。……なお、できそう、であり確信までは辿り着かない。
ただ使うカードが知りたいだけ、なんて単純な理由でこれほどまでピリついた――決闘者特有の殺気は出せない。
とても嫌な予感がする中でデュエルは始まった。
「「デュエル!」」
普段と異なり、リフトに乗ってデュエルフィールドを見下ろす形のデュエル。エキシビジョン用にあつらえた特別なフィールドだ。
「先攻は俺が貰う! ドロー! 《極星宝フリドスキャルヴ》を発動し、デッキから《極星獣グリンブルスティ》を特殊召喚!」
《極星獣グリンブルスティ》
星3/守100
それは神話にてロキがドヴェルグの兄弟との賭けにより作らせた黄金色の猪。どんな馬よりも早く駆け抜ける力を持つ、豊穣神の財のひとつ。
「特殊召喚に成功した《極星獣グリンブルスティ》の効果で手札から《極星獣タングリスニ》を特殊召喚。また、『極星』モンスターが俺の場にいるため手札から《極星工イーヴァルディ》を特殊召喚!」
《極星獣タングリスニ》
星3/攻1200
《極星工イーヴァルディ》
星4/攻1500
ドラガンの手札から特殊召喚されるのはトールの戦車を引く白山羊と、己の身長と同じ大きさを持つハンマーを振り回すドヴェルグ。
「特殊召喚に成功した《極星工イーヴァルディ》の効果でデッキから《極星宝メギンギョルズ》を手札に加える」
優れた鍛冶屋である彼はハンマーを数度振り下ろし、瞬く間に神へと捧げる宝物たるカードを作り上げる。
『フィールドには早くも3体のモンスターが並ぶ! そして合計レベルは10! これはもしや、先攻1ターン目から魅せてくれるのか――!?』
「レベル3の《極星獣タングリスニ》とレベル4の 《極星工イーヴァルディ》に、レベル3の《極星獣グリンブルスティ》をチューニング!」
「星界の扉が開くとき、
《極神皇トール》
星10/攻3500
――北欧の神、トール。その手に持つのは彼の代名詞として名高きミョルニル。雷を操る猛々しき者。
空より出でし大いなる存在が、人間達の世界へと降臨する。
「っ、は……………!」
神の降臨によって文字通り雷を撃たれたような衝撃がジェイドの心臓を揺らす。乱れた心拍を落ち着かせようと片手で胸を押さえ、白コートの内に着ている黒のシャツにぐしゃりと皺ができる。
この場にいるシグナーの痣も熱を帯び反応する。極神に気をつけろ、と警鐘を鳴らすように。
「ジェイド!」
「まさか、神の力の影響を受けているというのか!?」
休むと言い残して内へとかえったもう一柱のミクトランテクートリ神にダメージが入っているのか、ジェイドの大事なものが削れていくような感覚がする。
このままだとまずい。何が、とは具体的にはわからないが……とにかくなんとかしないと。でも、どうやって。呼吸を整えるのに精一杯なジェイドに妙案は思いつかない。
――冥府の力を持つ男をより深く視るべく、男の持つルーンの瞳が輝く。
「な、いや……そんな馬鹿な!?」
ジェイドと相対しているドラガンは突然戸惑いだす。ただ見ているだけなのに何が起きているのか、と観客は困惑する。
「お、おまっ……お、おん……!?」
神を操る男の気が緩んだのが原因だろう。ルーンの瞳の焦点がジェイドの心臓にいる神ではなく、それ以外のものに合ってしまった。一点集中の痛みから全身への痛みに変わる。
「うぐっ!?」
分散されたことで己の内にいる神へとダメージは減った。しかし、ジェイド自身へとダメージが及ぶようになった
「こんなことやっといてなにが恩だ……というか私は初対面で、痛っ……!」
ライフポイントは減っていないというのに、デュエルのダメージと違う部分で痛めつけられている。全身に電流が流れるような痛みだ。
本来ならこの世界に存在するはずのない【メメント】を警戒しているのだろうか。ハラルドやブレイブの持つルーンの瞳も光り輝いている。
「お、俺はカードを4枚伏せてターンエンド!」
ドラガンは神をシンクロ召喚したが先攻1ターン目のため攻撃はできない。ジェイドの攻撃に備えるべく手札を全て伏せターンを終えた。
「わた、しのっ……ターン、ドロー!」
痛い。が、動けないほどではない。
……こちらのエースの攻撃力が5000だと知られているのに、攻撃力3500の神を攻撃表示で出している。攻撃力を一気に上げる罠である《極星宝メギンギョルズ》があるからだろう。
ドラガンが伏せたのは4枚とかなり多いため他の罠もあるかもしれないが、それはその時になってから考えるとしよう。
「《メメント・ダークソード》を通常召喚!」
《メメント・ダークソード》
星4/守1500
最初に現れたのはジェイドのデッキに欠かせない剣士。
「召喚成功時、手札の『メメント』カードを捨てて相手の伏せカード1枚を対象に効果発動! そのカードを破壊する!」
「そうはさせん! カウンター罠《畳返し》を発動し、召喚成功時に発動する《メメント・ダークソード》の効果を無効にして破壊する!」
剣撃を飛ばして伏せカードを断ち切ろうとしていた剣士の眼前の床が突然跳ね上がる。がしゃんばらばら、と音を立てて剣士の体は崩れ落ち……モンスターが立っていた大地から、霧が滲み出る。
「『メメント』モンスターが相手によってフィールドから離れたことで速攻魔法《メメント・ボーン・バック》発動! デッキから《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》を召喚条件を無視して特殊召喚する!」
霧が濃く、深く、大きく広がる。
最初に霧を裂いたのは骨の翼。一度だけ、しかし力強く羽ばたき己の姿を隠していた霧を一気に払う。
骨の体を彩る数多の宝石は戦神の雷の光と負けず劣らずの、美しさよりも恐ろしさが勝る輝き。
《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》
星11/攻5000
『出たーーッ! これぞ、ジェイド・アトラスのエースモンスター、《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》だーーッ!!』
竜は息を吸い込み咆哮する。北欧の神に向かっていた視線を全て己へと集める。
「バトル! 《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》で《極神皇トール》に攻撃!」
数値は幻竜の方が上。このままではドラガンの神は戦闘破壊される。
「罠カード、《極星宝メギンギョルズ》発動! エンドフェイズまで《極神皇トール》の攻撃力と守備力を元々の倍の数値にする!」
それはかの神が身につけていたとされる力帯。強く握りしめると神力を倍にする効果のある、ミョルニルを振るうために必須となる神具の一つ。
この効果を通してしまえば攻撃力は3500から7000になり、《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》の攻撃力を上回る。
「チェーンして手札より速攻魔法《禁じられた聖槍》を発動! 《極神皇トール》の攻撃力はこのターン800ダウンし、これ以外の魔法・罠の効果を受けない!」
幻竜はジェイドが発動した魔法により出現した槍を腕の竜頭で器用に噛んで掴み、投擲。戦神が手にした帯を引き裂く。
《極神皇トール》
攻3500→2700
「行け、《テクトリカ》! オーバーウェルミング・ボーンフォース!」
「くっ、迎え撃て《トール》! サンダーパイル!」
魔鎚と竜腕。幻神獣と幻竜の衝突は、幻竜に軍配が上がった。神の膂力と雷の混ざった一撃を冥府の神は力任せに押し返し、槌を破壊。そのまま戦神の横面を殴り飛ばす。
ドラガン
LP 4000→1700
「これがお前の神の一撃かっ……!」
『ドラガン、いきなり2300のダメージだ――おおっとぉ!?』
神の戦闘破壊により会場が揺れる。地震が起きたのかと勘違いするほどの強大なエネルギーに会場は耐えきれず、屋根にヒビが入った音がした。
上から落ちてくるのは瓦礫。イェーガーの顔がさっと青ざめる。このままこの場にいてはどうなるのか、それを理解した観客達は早く逃げねばと出口に雪崩れ込む。
『こ、これはどうしたというのか!? まさか、神の力が現実になっているとでもいうのでしょうか!』
幻竜は敵対者に一撃を与えて取り敢えず満足した。
これがエキシビジョンデュエルということはわかっている。盛り上がりシーンは提供したから、人の子に被害が出る前にさっさとデュエルをやめにしたいとジェイドへ頼む。
それを拒む理由はない。ジェイドは互いの同意でデュエルを終わらせるべくドラガンへと訴える。
「ドラガン、こんな状態にしてまでデュエルをする意味があるのか!? 今すぐ中止して皆の避難を、」
「まだだ、まだデュエルは終わっていない! こんなことで終わらせてなるものか! ――お前が本当は何者なのかを、今ここで俺が暴く!」
どうやらこのデュエルを止める気はなさそうだ。この場の責任者であるイェーガーへとジェイドは叫ぶ。
「イェーガーさん、今すぐに中止を!」
「既に手は打っております! ですが、何故かこちらの緊急停止操作を受け付けず……!」
「まさかっ……《トール》の力で無理やり……!?」
ジェイドとしてはもうこのデュエルを続ける必要性は無い。自分の負けでもいい、とサレンダーするべく己のデッキの上に手を置こうとしたが全身に走る電撃のような痛みが強まりそれを阻む。
「サレンダーなど許さん! 真・KINGトーナメントで八百長が行われると知っていて、止めなかったお前に選択肢など与えるものか!」
「待て! 貴様何を言っている!?」
自分がキングとなるに至ったトーナメントでの八百長、という発言にジャックが反応する。後ろめたいところがあるイェーガーは彼らから顔を逸らす。
兄ならば何故弟の過ちを正さなかった、とドラガンは言いたいのだろう。しかしあの頃のジェイドは心が限界を迎えていたと彼は知らない。弁明をしたところで信じてはくれないだろう。
「それはっ……くそ、続けるしかないのか……! 私はカードを1枚伏せてターンエンド!」
避難誘導の声が響く中、デュエルは続く。
「皆は早く会場から出て! 私はほっといていいから!」
「お前だけ置いて逃げるわけにはいかねぇよ!」
クロウの言葉に皆頷いている。
「でもっ……」
「仲間の心配をする暇などないぞジェイド・アトラス! 神は不死身だ! このエンドフェイズに《極神皇トール》の効果発動! 破壊された神は雷と共に蘇り、相手に800のダメージを与える!」
墓地へと葬った神が再び大地を踏み締める。手にした槌を振り上げ、ジェイドへと雷を落とす。
ジェイド
LP 4000→3200
「カッ、は………!」
「ジェイド!!」
脳天から爪先まで貫くような雷撃。内側にいるもう一柱のミクトランテクートリが騒ついている。このダメージを請け負おうとしているのだろうが、休息している神をわざわざ引っ張り出して盾にするのは絶対にお断りだ。デュエルをしているのは私だから、これは私が受けるべきものだ。
けど……とてもまずい。たった800のダメージなのに、痺れて体をうまく動かせない。
相手が効果を発動した。なら、こちらは《テクトリカ》の効果を使えるのに。今は口も手も、どっちも追いつかない。
「俺の……ターン! ドロー!」
だからか、ドラガンは自分のターンを開始した。
「おい! ドラガン貴様!」
「黙れジャック・アトラス! お前に何も言われる筋合いはない! スタンバイフェイズに罠カード《神の呪縛レージング》を発動! この効果により、エンドフェイズまで《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》の攻撃力と守備力は2000下がり、お前の魔法・罠の効果を受けなくなる!」
「ちぇ……て、伏せ、速攻まほ、《メメント・ボーン・パー――ぐっ……!」
舌が回らない。故にデュエルディスクは声を認識しない。震える手ではセットカード発動のためのボタンをうまく押せない。
伏せられたカードは表にならないまま、効果処理が行われようとして――。
「――やめろドラガン! もうデュエルを続行する必要はない!」
救いの手を差し伸べたのはハラルドだった。
「ハラルド! このおんっ……こいつの中にいるヤツを引っ張り出すんじゃなかったのか!」
「無関係な人々を巻き込み、このような被害を出してまですることではない!」
ハラルドのルーンの瞳の光が強まる。《トール》の姿がぶれ始める。デュエルを中止するためにドラガンの神の力を無理やりに抑え込んでいる。
「俺がトレジャーハンターとして培ったのはこーいう時に使う技術じゃないんですけどね、っと! ……あそこだな。じゃ、頼むぜ《ロキ》」
ブレイブは親指と人差し指を伸ばし銃を模した右手で、ぱん、と何かを撃つ仕草をした。それは彼の神の力の一端である虚無の弾丸。
「あーあ、楽しいエキシビジョンが台無しになっちまった。……因縁のある男の兄だとしても、これは流石にやり過ぎだぜ?」
見えない攻撃が撃ち抜いたのはこのデュエルコートのシステムの基盤。強制的にデュエルを止め、神々のソリッドビジョンが完全に消える。
エネルギー切れで下降してきたリフトの中、ジェイドは座り込んでいた。デュエルが終わったことで張り詰めていた緊張の糸が切れてしまったようだ。
「あああ全身がいたいー……なんか最近はこんなのばっかりなような……いででで」
こちらへと歩いてきたハラルドがチームを代表してジェイドに謝罪する。
「
「………………はい?」
この惨状を引き起こしての謝罪、にしてはなんだかちょっと言い方が変な気がしたが……詳しく聞こうとする前にハラルドは去ろうとしていた。引き止めるわけにもいかず、ジェイドが中途半端に上げた手はジャックが掴む。
「立てるか?」
「……ちょっと無理そう……」
まだ痺れと痛みが残っていて立ち上がれなくなってしまったジェイドはジャックにおぶられる形で会場を後にした。