《手をつなぐ魔人》星4/守1600→2400
《キーメイス》星1/守300
《コピックス》星2/守500
魔法・罠
《スクラム・フォース》
伏せカード2枚
クロウ LP4000 手札5枚
《ランサー・デーモン》星4/攻1600
魔法・罠
伏せカード1枚(《モンスター・バトン》)
《キーメイス》、チーム太陽のフィールドに5ターン存在。
先程まで走行していたホイール・オブ・フォーチュンと入れ替わるようにブラックバードがスタジアムの外へと出て、海上に設置されたデュエルレーンを疾走する。
甚兵衛は先のターンでジャックの罠カードによりライフポイントが1000になり、使うカードも癖のあるノーマルカードばかり。対する相手は初期手札5枚、ライフポイントは4000。さらにスピードカウンターは9も貯まっている。
誰がどう見ても有利なのはクロウ・ホーガンの方。甚兵衛はハンドルを握る手に力が入る。じわりと手のひらに滲む汗は緊張によるものか、それとも……。
「……まだ、俺は戦える」
俯きはしない。真っ直ぐに前を見る。聞こえる声は応援するものから貶すものまで様々で、これまでしてきたライディングデュエルと何も変わってはいない。
空に昇る太陽は決闘者を平等に照らしていた。
「「デュエル!」」
甚兵衛 SPC 5
クロウ SPC 9
「俺は《
クロウが出したのはスピードカウンターが6つ以上ある時に使える魔法カード。
「だが、次の自分のターンに俺はドローする事ができない。俺はこの効果でデッキから《BF-隠れ蓑のスチーム》を墓地に送る!」
モンスターの強化と墓地肥やしの両方をこなす便利なカードではあるが、デメリットは次の自分ターンにドローが封印されるという大きなもの。このターンで終わらせてやるという思いを込め、一気に攻勢に出るべくクロウは手札からモンスターを召喚した。
「チューナーモンスター、《BF-極北のブリザード》を通常召喚!」
《BF-極北のブリザード》
星2/攻1300
黒羽と雪に紛れるための白い羽毛を併せ持つ鳥獣が翼を広げて風に乗る。
「召喚に成功した《ブリザード》の効果を発動し、墓地の 《BF-隠れ蓑のスチーム》を特殊召喚――」
「そうはいくか! 永続罠《暗闇を吸い込むマジックミラー》を発動! このカードがある限り闇属性モンスターがフィールド上、墓地で発動する効果は無効化される! よってその効果は使えない!」
鳥は一鳴きして効果を発動したが真っ黒で姿を映さぬ鏡の中へと力が吸い込まれてしまい、墓地へ繋がる穴は塞がった。
「発動する効果を無効に……!?」
クロウの使う【BF】は闇属性モンスターで構成されている。この永続罠は天敵と言えるだろう。
甚兵衛が使う効果モンスター、《手をつなぐ魔人》は闇属性だが発動する効果を持たない。よって、この罠による悪影響は何一つとして受けない。
「嘘ォ!? いやちょっと待ってあれノーマルカードだっけ!?」
『……2007年収録のノーマルカードだな』
悲鳴みたいなジェイドの驚愕の声がピットから上がり、デュエルに直接関係しない発売時期とレアリティについてをアルターエゴが補足する。
クロウはWRGP予選では結局デュエルをしていないのになぜ闇属性メタが刺さるとバレているのか。ジャックの使う《レッド・デーモンズ・ドラゴン》の相手守備モンスター全破壊は発動する効果なのでそれを止めるために採用した……にしてもどこか変だ。
「あ」
もしかして、とジェイドが思い浮かんだのはカップラーメンマン。イェーガーを捕まえようと脱いだ時にバッチリと顔を出している。
……そしてアルターエゴは勝手にあのイベントを配信していた。その際にクロウが【
「まずいぞ、このままではクロウの戦術は殆どが潰される!」
「次のクロウのターンになればスピードカウンターが10を超えるため《暗闇を吸い込むマジックミラー》の破壊が可能になるが……このターンでは無理だ。相手に時間を与えてしまう」
まさかの罠に対し、チーム5D'sはハラハラしながらもデュエルを見守り続けていた。
「レアカードを使わない相手だとはいえ、流石にソレが出てくるのは想定外すぎるぜ……」
――クロウが考えていた展開ルートはこうだ。
《BF-極北のブリザード》の効果で蘇生した《BF-隠れ蓑のスチーム》とジャックから受け継いだ《ランサー・デーモン》を使ってレベル7シンクロモンスターをシンクロ召喚し、《スチーム》の効果で《スチームトークン》をフィールドに特殊召喚。
その後に手札の《BF-黒槍のブラスト》を出して《ブリザード》とシンクロ召喚し、レベル6シンクロモンスターの《BF-星影のノートゥング》を特殊召喚。
《ノートゥング》の効果でダメージを与えたその後に《キーメイス》のステータスを下げ、《スチームトークン》が持つ相手モンスターの攻撃力が0になった時にそのモンスターを除外するという効果により《キーメイス》を除外してやろう――と。
しかし現実は非情だ。これらの流れはたった一つの永続罠の前に止まってしまった。
「ノーマルカードしか使わない田舎者と馬鹿にしてきた奴らほど、俺達の戦術の前に手も足も出なくなって負けていった。あんたらは違うようだが……それでもこいつはよく効くはずだ! ターンエンドするか?」
「この程度で何もできなくなる奴らとクロウ様を比べられたら困るぜ! デュエルはここからだ!」
フィールド、墓地の効果が封じられた……が、まだやりようはある。効果で除去できないのなら戦闘破壊するまで。攻撃力は《パワー・バトン》により底上げできる。
「自分フィールドに『
《BF-黒槍のブラスト》
星4/攻1700
黒槍の二つ名の通り、巨大な黒い槍を携えた黒羽の戦士が仲間達のいるフィールドに出撃。
これでクロウのフィールドにはモンスターが三体。うち一体はチューナー――となれば、行われるのは。
「レベル4の《ランサー・デーモン》にレベル2の《ブリザード》をチューニング!」
「漆黒の力! 大いなる翼に宿りて神風を巻きおこせ! シンクロ召喚! 吹きすさべ、《BF-アームズ・ウィング》!」
《BF-アームズ・ウィング》
星6/攻2300
黒で統一された武具の中で目立つ赤髪。舞う黒羽の中で銃を手に、この場で問題なく力を発揮できるシンクロモンスターがスピードの世界へと参列した。
《BF-黒槍のブラスト》は貫通効果を、《BF-アームズ・ウィング》は守備モンスターへの攻撃時に攻撃力を上げる効果と貫通効果の二つを持つ。
どちらも永続効果のため《暗闇を吸い込むマジックミラー》で封じられることはない。
「バトル! 《BF-黒槍のブラスト》で《手をつなぐ魔人》に攻撃! ダメージステップ時に《パワー・バトン》の効果で墓地に送った《BF-隠れ蓑のスチーム》の攻撃力分、800アップするぜ!」
槍を正面に構え翼を羽ばたかせて突進する。魔法カードによる強化を受けたことでその体はオーラを纏っていた。
このまま攻撃が通る場合、《ブラスト》の攻撃力は2500となり守備力2400の《手をつなぐ魔人》を倒せる。……そして《キーメイス》を《アームズ・ウィング》の貫通攻撃で倒せば甚兵衛の敗北と同時にチーム太陽の目論見は崩れ去る。
「《和睦の使者》発動! このターン俺のモンスターは戦闘破壊されず、受ける戦闘ダメージは0となる!」
黒槍が迫る中、甚兵衛の場に伏せられたカードのうち一枚が起き上がった。薄水色の障壁が魔人を守るように広がって攻撃を受け止める。
「やっぱり伏せていたのは攻撃を防ぐカードだったか……仕方ねえ、俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」
『バトンを託されたクロウだが、甚兵衛のあと1000のライフポイントを削れずターンを回した! チーム太陽はこのまま鉄壁の防御を維持できるのか!』
「俺のターン、ドロー!」
甚兵衛 SPC 5→6
クロウ SPC 9→10
何としても繋ぐ。勝利する。
それはこの場でクロウのみが抱く思いではなく、甚兵衛も同じものを胸に抱えていた。
「スピードカウンターを4つ取り除き《スピード・ワールド2》の効果発動! 俺の手札に『
甚兵衛 SPC 6→2
公開されたのは甚兵衛が持つ手札3枚全て。《ブラックフェザー・ドラゴン》がフィールドにいないクロウにこのダメージを防ぐ手段はない。
「ぐわあああぁーっ!!」
クロウ
LP 4000→1600
甚兵衛のDホイールから放たれた雷撃がクロウのライフポイントを半分以上削る。
「スピードカウンターが2つ以上あるため《
「ここで手札の入れ替え……!」
場のモンスターを守るためのカードを手に入れるためなのだろう。墓地に送られたのは当然、公開された《
「カードを1枚伏せてターンエンド!」
「待った! 俺はお前のエンドフェイズに《ブラック・ブースト》を発動し、自分フィールドに『
クロウは引き抜いたカードを確認してよし、と頷く。万が一自分が倒しきれなかった場合に必要な《BF-尖鋭のボーラ》はこのドローで手札に加わった。
「俺のターン! さっきも言ったが、《
甚兵衛 SPC 2→3
クロウ SPC 10→11
「スピードカウンターを10取り除き《スピード・ワールド2》の効果発動! 《暗闇を吸い込むマジックミラー》を破壊する!」
クロウ SPC 11→1
スピードの世界に吹き荒れる突風が鏡を砕く。
「くっ……」
「これで邪魔するものはなくなった! フィールドに攻撃力2000以上のモンスターがいるため《BF-下弦のサルンガ》を手札から特殊召喚! そして《BF-そよ風のブリーズ》を通常召喚!」
《BF-下弦のサルンガ》
星2/攻500
《BF-そよ風のブリーズ》
星3/攻1100
召喚されたのはどちらもチューナー。
「レベル6の《BF-アームズ・ウィング》にレベル2の《BF-下弦のサルンガ》をチューニング!」
「黒き疾風よ! 秘めたる思いをその翼に現出せよ! シンクロ召喚! 舞い上がれ、《ブラックフェザー・ドラゴン》!」
《ブラックフェザー・ドラゴン》
星8/攻2800
「続けていくぜ! レベル4の 《BF-黒槍のブラスト》にレベル3の 《BF-そよ風のブリーズ》をチューニング!」
「猛禽を操る漆黒の鷹匠よ! 眠れる鳥獣を呼び覚ませ! シンクロ召喚! 翔来せよ、《
《BF T-漆黒のホーク・ジョー》
星7/攻2600
二連続のシンクロ召喚で現れたのは黒翼の竜と黒羽を従える戦士。
『息をつかせぬ連続シンクロ召喚! これが――』
「まだだ、これで終わりじゃねえ! 《ホーク・ジョー》の効果を発動し、墓地のレベル5以上鳥獣族モンスター、《アームズ・ウィング》を特殊召喚する!」
実況の声を遮るようにクロウは効果を叫ぶ。シンクロ素材となったシンクロモンスターを効果でフィールドに呼び戻し、攻撃と防御両方の準備を整える。
『な、なんと! フィールドにシンクロモンスターは合計3体! これがチーム5D's、クロウ・ホーガンの実力だぁーッ!』
「墓地の《サルンガ》を除外して効果発動! 《スクラム・フォース》を破壊する!」
墓地から現れた半透明のモンスターが何度も爪蹴りし、後続に残したくない厄介な永続罠を破壊。
「バトルだ! 《アームズ・ウィング》で《手を繋ぐ魔人》へ攻撃! 守備表示モンスターを攻撃するダメージステップの間、このカードの攻撃力は500アップする!」
黒羽の鳥獣戦士は照準を魔人へと合わせ引き金を引く。発射された弾丸は己の効果で風を裂き勢いを増し、攻撃力2800となって相手を貫かんと迫る。
「んな攻撃通すかよ! 罠カード《城壁》発動! エンドフェイズまで《手をつなぐ魔人》の守備力は500アップし、2900になる!」
「な……ここで《城壁》だと!?」
それは先のターンで《暗闇を吸い込むマジックミラー》が使われたのとは違う驚愕。だって、上昇するのは守備力たった500だ。どう考えても使いにくい。
しかし、その500で《手をつなぐ魔人》の守備力は《アームズ・ウィング》の攻撃力を上回った。魔人へと当たった攻撃は跳ね返され、反射した弾丸がクロウのライフポイントを100削る。
クロウ
LP 1600→1500
「くっ……ターンエンドだ!」
攻撃力が一番高い《ブラックフェザー・ドラゴン》でも攻撃力は2800。守備力2900を超えられるモンスターはクロウの場にいない。攻撃をしても得られるものは何も無いため、ターンエンドを宣言するしかなかった。
「俺のターン、ドロー!」
甚兵衛 SPC 3→4
クロウ SPC 1→2
「スピードカウンターを4つ取り除き《スピード・ワールド2》の効果発動!」
甚兵衛 SPC 4→0
「手札の『
「《ブラックフェザー・ドラゴン》の効果! 俺が効果ダメージを受ける場合、代わりにこのカードへ黒羽カウンターを1つ置く! ダメージ・ドレイン!」
《ブラックフェザー・ドラゴン》
攻2800→2100
黒羽カウンター 0→1
黒翼が誇るのは効果ダメージに対しての絶対的な防御。黒羽の一部に色が付き、己の効果で攻撃力を下げる。
「そんな!? くそ、カードを1枚伏せてターンエンド……!」
一進一退の攻防の中、二人はDホイールでデュエルレーンをぐるりと一周し再びスタジアムへと戻ってきた。観客は戦う二人へ直接言葉を届けられるようになり、より一層声を張り上げる。
「こういうのが見たかったんだ!」
「いいぞ、そのまま田舎くせえ臆病者をやっちまえー!」
シンクロモンスターを多数並べる派手な戦い方はどうやら野次を飛ばす観客達からはお気に召されたようだが、クロウとしてはそんな声はどうでもいい。早くなんとかして《キーメイス》だけでも処理しなければ――そう考える中、子供らしい高めの声が響いた。
「――あ、あーっ! そうだ、この戦い方ってジェイド先生が言ってたやつだ! 《ズシン》のやつ!」
「んなっ……!」
「っ、なんで気付いてる奴がいるんだ!?」
二人とも思わず声がした方向を向く。
クロウは永続罠により当初の展開は妨害されたため《キーメイス》を露骨に狙えていない。気付かれるはずがないのにどうして……あと聞き間違えでなければあの子供はジェイド先生って言っていたような。
ジェイドが先生をしていたのは当然デュエルアカデミア。あの日、俺達にあの話をしたのは――デュエルアカデミアで話したからじゃなかったか?
「くそ、そーゆーことかよっ!」
あの話を知っている者の中には龍亞と龍可の同級生も含まれている。
「やっばい、スライが思い出しちゃってる!」
どうしよどうしよ、と慌ててもピットから観客席へはどうしようもできない。
急に《ズシン》の話を振ると変に思われる。ならデュエルアカデミアでした話なら皆へ伝えてもそう違和感はないだろう……と考えての行動だったが、それが今ここで牙を向いた。
「はぁ? 《ズシン》?」
「何言ってんだ、あんなモンスター使いようがないだろ」
子供の声をきっかけにざわつく観客席。チーム太陽の真の狙いがじわじわと伝播していく。
『な、なんとここで驚きの情報が入ってきた! チーム太陽が狙っているのは――《眠れる巨人ズシン》の召喚だーッ!』
「あーッ」
実況によって拡散されたことでジェイドは頭を抱える。……ここまでくると流石にどうしようもない。慰めのつもりだろうか、遊星はジェイドの肩に手をポンと置いた。
「マジかよ、あれって出すのどうやるんだっけ?」
『召喚条件はレベル1の通常モンスターを己のターンで10ターン生かし続けること! チーム太陽はレベル1のモンスター、《キーメイス》をここまでフィールドに残し続けている!』
「……うわっマジじゃん!?」
「さっきが7ターン目だ!」
『私の手元の資料では、これまで公式試合で《ズシン》を呼ぶことに成功した決闘者は1人もいない! これを呼び出すこと自体がデュエルモンスターズ界の奇跡だーッ!』
「見てえ……見てえよ、《ズシン》!」
「ここまでずっと耐えてきたけど流石に無理でしょ。もう耐えられるわけがないって……」
スタジアムはチーム太陽一色に……とまではならず、《ズシン》召喚の期待と、奇跡なんて起きないという諦めの混ざったものになっていた。
ただ、彼らにとってここがアウェイではなくなったのは確かだ。
「……まだ大丈夫そうかしら?」
「観客の感情など簡単に変わる。油断はできん」
甘い想定をしてはいけないとジャックはアキを窘める。チーム太陽の三人は明かされた衝撃の真実に冷や汗が止まらない。
「嘘だろ、じゃあチーム5D'sにはとっくにバレてたってのか!?」
「一体なんなんだ、あのジェイドって人は……」
チーム太陽から見たジェイド・アトラスとは怖い人だった。
見慣れた通常モンスターが骨だったり暗い色になっていて、しかも自分から破壊を繰り返す。エースモンスターは聞いたこともない名前かつレベル11の攻守5000で、とんでもないレアカードなのは間違いない。
不気味で、強くて、しかもこちらの戦術を予測できるほどの知識があるときた。わけがわからない。……都会はこんな人もいる場所なのか、と間違った知識を得つつある。
「俺のターン、ドロー……くそっ、せっかくジャックが隠してくれたってのにバレちまった!」
甚兵衛 SPC 0→1
クロウ SPC 2→3
焦りを見せるクロウがドローしたカードはこの状況を大きく変えられるものではなかった。
「流れが向こうに持っていかれ始めてるってのか……!? だとしてもこのまま突っ切る! 黒羽カウンターを取り除き、《ブラックフェザー・ドラゴン》の効果発動! 《手をつなぐ魔人》の攻撃力を700ダウンし、お前に700のダメージを与える! ブラック・バースト!」
《ブラックフェザー・ドラゴン》
攻2100→2800
黒羽カウンター 1→0
黒翼の竜は請け負った苦痛を相手へと返却し、染まった羽と攻撃力が元に戻る。
「うわああっ!?」
甚兵衛
LP 1000→300
竜から放たれた力の渦は魔人を弱らせつつ甚兵衛を巻き込みダメージを与える。
この効果により甚兵衛のライフポイントは《スピード・ワールド2》によるバーン効果で与えられる最低ダメージの800を下回り、いつ負けてもおかしくないラインに到達した。
「バトル! 《ブラックフェザー・ドラゴン》で《手をつなぐ魔人》へ攻撃!」
《アームズ・ウィング》で《手をつなぐ魔人》を攻撃すれば貫通ダメージ400を与えて倒せる。
だが、その攻撃で倒してしまうとラストホイーラーの太郎のフィールドへ《キーメイス》が残ってしまう。故にここは貫通効果を持たない《ブラックフェザー・ドラゴン》の攻撃力を元に戻してから攻撃するしかなかった。
「まだだ、まだ耐えられる! 手札からカードを1枚捨てて罠カード《老化の呪い》発動! ターン終了時まで相手モンスター全ての攻撃力と守備力は500ダウンする!」
《ブラックフェザー・ドラゴン》
攻2800→2300
《BF T-漆黒のホーク・ジョー》
攻2600→2100
《BF-アームズ・ウィング》
攻2300→1800
今度はクロウの全てのモンスターへの弱体化。罠の影響で羽に艶がなくなり衰えが見える竜の攻撃は魔人を倒せず、反射ダメージ100がクロウのライフポイントを削る。
クロウ
LP 1500→1400
「またかっ! くそ、俺はこれでターンエンド!」
「俺のターン、ドロー!」
甚兵衛 SPC 1→2
クロウ SPC 3→4
彼らのフィールドへと《キーメイス》が維持されてこれで8ターン。フィールドには《手をつなぐ魔人》と《コピックス》も残っている。
「もしかして……本当に耐え切れるのか、チーム太陽!?」
「たーいよう! たーいよう!」
「いいぞー、そのまま《ズシン》まで繋げてくれー!」
嫌われていた戦い方は今や誰も見たことがない《眠れる巨人ズシン》へと繋げる希望。これまでと違い罵声は一つも聞こえない。
「カードを1枚伏せてターンエンド!」
もうレアカードめ、なんて卑屈になることはない。皆がチーム太陽を認めようとしてくれている。後は誇りある決闘者として胸を張り、全てを出し切ってデュエルするだけだ。
「俺のターン、ドロー! ――来た!」
甚兵衛 SPC 2→3
クロウ SPC 4→5
クロウが引き当てたのは、この状況をひっくり返せる可能性を持つモンスター。ドローしたそのモンスターを相手に見せつけるようにした後、効果を使用する。
「手札の《BF-雪撃のチヌーク》を墓地に送り、《手をつなぐ魔人》を対象に効果発動! エクストラデッキの『
「効果無効!? それじゃあ!」
黒羽の効果で吹き下ろされる風に揉まれ、魔人が繋いでいた手は無理やりに離される。
《手をつなぐ魔人》
守2400→1600
「守備力が元に戻るだけじゃねえ、これで《手をつなぐ魔人》以外に攻撃が可能になった! ……どれだけの思いでお前達が《キーメイス》を繋いできたかはわかるが、デュエルは思いだけでどうこうできるほど甘くはない!」
一呼吸置き、クロウは宣言する。
「――バトル! 《アームズ・ウィング》で《キーメイス》に攻撃!」
「やめろー!」
「俺たちは《ズシン》が見たいんだよー!」
クロウはブーイングの嵐に揉まれるがこの攻撃を取りやめる気などさらさら無い。引き金は既に引かれている。
「――そんなこと、俺だってとっくの昔にわかってるさ! 罠カード、《絶体絶命》を発動! その攻撃は俺へのダイレクトアタックに変更される!」
甚兵衛はぐっとアクセルを踏み込んで伏せた罠カードを使用した。
その効果により銃撃はモンスターではなく、モンスターより前に出てきた決闘者へと突き刺さる。
「なっ……なにぃ!?」
甚兵衛
LP 300→0
彼のフィールドにも手札にも墓地にもダメージを軽減するようなカードは無い。甚兵衛は残っていたライフポイントを全て失い、ここで敗北した。
「待て、ダイレクトアタックでライフポイントが0になるってことは――」
「そうだ、お前はこれ以上の攻撃ができない!」
相手の敗北により強制的にクロウのターンが終わっていく。クロウのフィールドに残るモンスターによる追撃はできず、バトルフェイズが終わる。
エンドフェイズに《手をつなぐ魔人》の攻撃力と無効になった効果が元に戻り、守備力が1600から2400に上がる。
「自分を盾にしてモンスターを守りやがった……!」
敗北の白煙の中、甚兵衛は祈りを乗せて空に向かい吠える。
「俺はここまでだ……あとは任せたぞ、太郎――!」
チーム太陽のフィールドに《キーメイス》が残ったまま――ラストホイーラー、太郎へとバトンが繋がった!