石造りの心臓   作:ウボァー

48 / 53
クロウ LP2100 手札1枚
《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》星8/攻3200(黒羽カウンター2)
魔法・罠
伏せカード1枚

ハラルド LP4000 手札5枚
《極神皇トール》星10/攻3500
《極神皇ロキ》星10/攻3300


星々よ、彼方へ

「私の出番が来るのはラストホイーラーである不動遊星からだと思っていたのだがな……」

 

「俺らは前座で眼中にもありません、ってか?」

 

 不機嫌そうな声色でクロウが問いかける。

 

「いいや、そうではない。……これまでしてきたデュエルの中で、ラストホイーラーである私の最初の相手がセカンドホイーラーというのはそうなくてな。プロとしても十分に通用する腕だ」

 

 ハラルドの口から紡がれるのは称賛の言葉。予想だにしない反応にクロウは少し目を丸くする。

 

「だが、それだけでは足りない。この先に待ち受ける運命を乗り越えられるか――チーム5D's、イリアステルを倒すべく磨き上げた力の全てを見せてもらおう!」

 

「「デュエル!」」

 

「私のターン、ドロー!」

 

クロウ SPC 2→3

ハラルド SPC 5→6

 

 引き継がれた神々と共にハラルドはスピードの世界を疾走する。対するは進化して新たな力を得た襲撃の黒翼龍。何か動きを見せたのならばその羽に切り刻まれることだろう。……ならば。

 

「このまま攻め込むのが最善! バトルだ! 《極神皇ロキ》で《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》に攻撃! ヴァニティバレット!」

 

 クロウに動きはない。黒翼龍は天高く舞い上がり攻撃を避けようと抵抗していたが、軌道を気まぐれに変える神の弾丸から逃れることはできず翼を撃ち抜かれて墜落した。

 

クロウ

LP 2100→2000

 

 ああ、と観客席からは落胆の声が聞こえてくる。せっかくのシンクロモンスター、それも進化形態だというのにあっけなく倒されたことがショックのようだ。クロウは……これといって動揺を見せない。演技なのか、それとも。

 

「何も無し、か。《極神皇トール》でダイレクトアタック!」

 

 振り下ろされる神の一撃と決闘者との間へ、クロウの手から風が吹き込まれる。

 

「直接攻撃宣言時に手札から《BF-熱風のギブリ》を特殊召喚する!」

 

《BF-熱風のギブリ》

星3/守1600

 

「残る手札はダイレクトアタックへの対策だったか。ならばそのモンスターを破壊させてもらう!」

 

 六枚の翼を持つ黒羽の鳥は神の鉄槌を受けて破壊されたが、決闘者へのダメージはない。

 

『クロウは紙一重で攻撃を躱した! しかし《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》を失った今、逆転の目は残っているのか!?』

 

「カードを4枚伏せてターンエンド!」

 

 エースモンスターが戦闘破壊されたが一切動揺しなかった姿からするに、まだ隠し玉があるのは確定。クロウがわずかな手札で神々をどう切り抜けるのかをハラルドは用心深く見る。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

クロウ SPC 3→4

ハラルド SPC 6→7

 

「……墓地の《BF-南風のアウステル》を除外して効果発動! 相手の表側表示モンスター全てに楔カウンターを置く!」

 

 墓地から響く鳴き声と共に作られた二つの楔が発射。神々は己の体に突き刺さった小さな黒い楔を鬱陶しげに眺める。

 

《極神皇ロキ》

楔カウンター 0→1

 

《極神皇トール》

楔カウンター 0→1

 

「…………何?」

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 最後の手札を伏せ、クロウはシンクロ召喚せずにターンを終えた。

 

『カウンターを置いたもののそれ以上の目立った動きはなし! クロウは何を狙っているのかー!?』

 

 クロウのデッキで楔カウンターを利用するモンスターといえば《BF-アーマード・ウィング》。ターン終了時まで攻撃力と守備力を0にする効果を持つ。確かにそれならば神を倒せる可能性はある。

 あるのだが……恐らく違う、とハラルドは直感的に思った。

 

 彼のフィールドには伏せカードが2枚。片方は奪った《極神皇トール》を戦闘破壊から防ぐためのカードだったが結局使う機会がなく、《ゼピュロス》によって何度も手札に戻された……おそらく守備力を上げる効果の罠。

 となれば、もう一つの伏せられたカードはシンクロモンスターを出すための効果を持つのだろう。それが《BF-アーマード・ウィング》なのか、までは定かではないが、可能性は高い。

 

「私のターン、ドロー!」

 

クロウ SPC 4→5

ハラルド SPC 7→8

 

 ハラルドのメインフェイズになったがクロウは手を動かそうともしない。罠を使えるのは《極神皇ロキ》が攻撃するまでの間だというのに。

 

「……《極神皇ロキ》でダイレクトアタック!」

 

 誘われている。そう察していながらもハラルドは攻撃命令を下した。黒い弾丸は吸い込まれるように命中し、ブラックバードが大きく揺れる。

 

「ぐあああああぁーっ!!」

 

クロウ

LP 2000→0

 

『クロウ・ホーガン、惜しくもここで敗北!』

 

 敗北のしるしである白煙の中、クロウは痛みを堪えながら腕を動かす。

 

「っ……WRGPは負けた場合でもエンドフェイズまでデュエルは続く! エンドフェイズに《BF-ツインシャドウ》発動!」

 

 伏せカードが4枚もある相手のため、無効にされてしまう可能性はあった。よってこの効果が通るかどうかは一つの賭けだったが、何故だか心配する必要はないとクロウは確信していた。

 

「自分の墓地・除外状態の『BF』チューナー1体とチューナー以外の『BF』モンスター1体をデッキ・エクストラデッキに戻し、その2体のレベルの合計と同じレベルを持つ『BF』シンクロモンスターを呼び出すことができる! ――俺は除外されているレベル6のシンクロチューナー《BF-魔風のボレアース》と、レベル4の《BF-精鋭のゼピュロス》を戻す!」

 

「レベル10のシンクロモンスター、だと……!?」

 

 クロウの使うシンクロモンスターで一番高いレベルは8。レベル10のシンクロモンスターなど誰も見たことがない。

 誰もが目を丸くする中、クロウの眼前に明確に姿を視認できない二体の影が踊る。

 

「漆黒の旋風よ、天翔ける翼に宿りて戦場に凶嵐をもたらせ! ――来い! 《BF-フルアーマード・ウィング》!」

 

 円を描くように舞う二つの影が作った黒い竜巻の中へとそれは出現した。右手には剣を、左手には巨大な銃を。漆黒の重装甲に身を包み、紫の長髪が風に靡く。その単眼は赤く輝き、神にも劣らぬオーラを放つ。

 完全武装した黒羽の戦士は雄々しく参陣の声を上げた。

 

《BF-フルアーマード・ウィング》

星10/攻3000

 

「成程、《ブラックフェザー・ドラゴン》のみではなくこちらも進化を遂げていたのか!」

 

「できることは全部やりきった! 頼んだぜ、遊星!」

 

 クロウの敗北により、フィールドのカード――モンスターと伏せられているカードが遊星へと引き継がれる。

 相手の狙いがわかっていたにも関わらず後一歩が及ばなかったチーム太陽戦、そのリベンジを密かに胸に抱いていたクロウとしては満足のいく敗北……いや、彼にとってこれは勝利だった。

 

「っ、つぅっ……」

 

 デュエル中は耐えていたが、ピットに辿り着いた安心感で緊張の糸が切れたのかクロウが呻き声を漏らす。

 

「クロウ!」

 

「俺のデュエルは終わったんだ、こっちの心配するよりもさっさとあの野郎を倒してこい!」

 

 痛みを感じさせないような動きで肩のバトンを力強く渡され、遊星はもはや何も言うべきではないと悟った。激励に対して頷きを返し、ラストホイーラーの役目を果たすべくDホイールと共に駆ける。

 

「遊星。このデュエルの結末でルーンの瞳を持つ我々か、赤き竜の痣を持つ君達のどちらにこの世界の運命が託されるかが決まる。……覚悟はできているか?」

 

「覚悟はとうに終わっている。運命のロードの果てに何が起きようと、俺は仲間の絆と共に戦い続ける!」

 

「「デュエル!」」

 

『さあ、準決勝もクライマックス! 決着はエース同士の直接対決に持ち込まれた!』

 

「俺のターン、ドロー!」

 

遊星 SPC 5→6

ハラルド SPC 8→9

 

「――クロウ、使わせてもらうぞ!」

 

「ああ! やっちまえ遊星!」

 

「《BF-フルアーマード・ウィング》の効果! 1ターンに1度、相手フィールドの楔カウンターが置かれているモンスター1体のコントロールを得る! 俺が対象にするのは《極神皇トール》だ!」

 

 天高く掲げられた剣が楔と共鳴する。音に引き寄せられるように神はその身を移動させ、ハラルドから遊星の頭上へとその居場所を変えた。

 

「また神を奪うか……! それでこそ!」

 

 神に何度でも抗い、運命を振り解き勝機を掴まんとするチーム5D'sの姿勢は対戦相手であるハラルドをも高揚させるもの。

 

「自分フィールドにシンクロモンスターが存在するため、手札より《ジャンク・ドラゴンセント》を特殊召喚!」

 

《ジャンク・ドラゴンセント》

星5/守1800

 

 うねうねと無数にある長い首をもたげ、ジャンク仕掛けの多頭竜がシンクロモンスターの横に並ぶ。

 

「手札からカードを2枚墓地に送り、手札よりチューナーモンスター《ビッグ・イーター》を特殊召喚! そして《チューニング・サポーター》を通常召喚!」

 

《ビッグ・イーター》

星2/守0

 

《チューニング・サポーター》

星1/守300

 

 さらに巨大な仮面のような口へ2枚のカードを喰らいながら悪魔が出現。小さな機械は気合たっぷりの掛け声を発し、準備万端だと全身で主張する。

 遊星のフィールドにいるモンスターはこれで合計5体。その内シンクロモンスターではないモンスターは3体。

 

「レベルの合計は8……来るか!」

 

「レベル1の《チューニング・サポーター》、レベル5の《ジャンク・ドラゴンセント》にレベル2の《ビッグ・イーター》をチューニング!」

 

◎◎

⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎

1+
5+
2=
8

 

「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》!」

 

 翼を羽ばたかせるたびに地上へと星のきらめきが落ちる。天に座す星界の神々に対するは、赤き竜が竜の星より共に連れてきた星屑の守護竜。

 

《スターダスト・ドラゴン》

星8/攻2500

 

「シンクロ素材となった《チューニング・サポーター》の効果でデッキから1枚ドローする!」

 

 遊星のフィールドには己の、友の、そして対戦相手の使うシンクロモンスター。それぞれが異なる見た目で、異なる力を持ち、異なる決闘者のエース。

 

「バトルだ! 《極神皇トール》で《極神皇ロキ》に攻撃!」

 

 最初に火花を散らしたのは本来ならば起こるはずのない、仲間である神々同士による衝突。トリックスターは縦横無尽に弾丸を乱射したが、戦神は怯むことなく繊細かつ大胆に全てを弾き返し、無防備な腹へと一撃を叩き込んだ。

 

「くっ……!」

 

ハラルド

LP 4000→3800

 

「《スターダスト・ドラゴン》でダイレクトアタック! シューティングソニック!」

 

 ハラルドを守るモンスターはいない。竜のソニックブレスが正確に相手を打ち据える。

 

「ぐううぅっ……!」

 

ハラルド

LP 3800→1300

 

『《スターダスト・ドラゴン》の攻撃は直撃! そして遊星には攻撃可能なモンスターがあと1体残っている! 次のダイレクトアタックで勝利――』

 

「まだだ! 自分フィールドにモンスターが存在しないため《フリッグのリンゴ》を発動! このターン自分が受けた戦闘ダメージの数値分だけ自分のライフポイントを回復する。その後、自分フィールド上に回復した数値と同じステータスを持つ《邪精トークン》を特殊召喚する!」

 

《邪精トークン》

星1/守?→2500

 

ハラルド

LP 1300→3800

 

 実況の声を遮るように発動されたのは黄金色の林檎が描かれた罠カード。さらに黒や緑の混ざった不気味な色合いをした炎のようなモンスターが二人の決闘者の間、ハラルドの盾となるように出現した。

 

『――と思われたが、ここでハラルドが回復したことでライフポイントは3800に戻った! 更に攻撃を防ぐ壁となるトークンも展開されたぞ!』

 

「流石にこのターンでは倒し切れないか……! ならば、《BF-フルアーマード・ウィング》で《邪精トークン》に攻撃!」

 

 まずは遠距離からの牽制、そして隙を見ての近接戦。いくら剣と銃による見事なコンビネーションを魅せたとて、守備表示のモンスターを超えて相手にダメージを与えることはできない。

 

 遊星はバトルを終え、メインフェイズ2へと移行し――ハラルドは伏せられたカードを表にした。

 

「神を奪われたままターンを終えさせはしない! 《極星宝レーヴァテイン》発動! このターン戦闘によってモンスターを破壊した、フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する!」

 

「破壊効果だと? ならば《スターダスト・ドラゴン》の効果で――」

 

 己の信頼するモンスターの効果ならば止められる、そのはずだった。

 

「残念だが、《極星宝レーヴァテイン》の発動に対して魔法・罠・効果モンスターの効果を発動することはできない! 敵の手に落ちた神は、私自らの手で破壊させてもらう!」

 

 妖しく輝くのは害を成す魔の枝。ロプトル――《ロキ》と縁深い宝物の影響により、己を犠牲にすることで破壊を打ち消す星屑の竜は動けない。戦神はその剣により破壊されるのを当然の報いとして受け入れていた。

 

『これでエンドフェイズにハラルドのフィールドへと《極神皇トール》が蘇ることが確定した!』

 

「やはり、神を破壊するためのカードは伏せていたか。墓地の《ADチェンジャー》を除外し、その効果で《スターダスト・ドラゴン》を守備表示にする。カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

《スターダスト・ドラゴン》

攻2500→守2000

 

 ここまでの展開の中で影も形もなかった両手に色違いの旗を持つ戦士がその片腕を上げた。《ビッグ・イーター》に特殊召喚より手札から墓地に送られていたカードの一枚だ。攻撃表示のモンスターを減らすことで次のターンに受けるダメージを抑えるつもりなのだろう。

 

「守備表示にしたとて一時凌ぎにすらなりはしない! エンドフェイズに破壊された《極神皇トール》の効果発動!」

 

「させない! 手札の《D.D.クロウ》を捨て効果発動! お前の墓地から《極神皇トール》を除外する!」

 

 手札から飛び出した鴉が突如としてハラルドの墓地から一枚を掻っ攫っていく。ハラルドは鳥がそのまま次元の裂け目へと消えていくのを目で追うことしかできなかった。

 

『なな、なーんと! 二段構えで神の対策をしていた! 除外されてしまった場合、神はもう蘇ることはない!』

 

 使われたのはまさかのカード。アレがデッキに入っていると聞かされていなかった仲間たちはピットにてクロウを問い詰めていた。

 

「ちょっと、どういうことなの?」

 

「あれってクロウのカードじゃなかった!?」

 

 ピットで手当てはされたがデュエルで受けた痛みがすぐになくなるわけではない。いてて、とクロウは時々動きがぎこちなくなりながらも向きを変え、目を合わせて話す。

 

「神を不死身にしているあの効果はエキシビジョンでもう見たから、対策になるカードとして二人に分けたんだよ。ガキの頃にサテライトに捨てられていたやつを拾ってたから枚数は十分あるしな」

 

「確かに、《D.D.クロウ》は使いやすくて奇襲性もある。対策はしにくい」

 

「じゃあもしかしてジャックも入れてたの?」

 

 ブルーノはカードの採用理由に同意し、龍可は思いついた当然の問いをジャックに投げる。

 

「……ああ。オレは引けなかったがな」

 

 過去の再演、という決闘者の思いが引き起こした奇跡のせいかジャックはあのカードを引き当てることができなかった。

 話題の中心となるカードについて嫌なことを思い出したのか、はぁあ、とため息混じりにクロウは過去のデュエルの一部を語る。

 

「アレなぁ、ジェイドとのデュエルで一度えらい目にあったから一時期抜いてたんだよなー。こんなところでまた使うことになるとは思わなかったぜ」

 

「いやあ、《メメント・ボーン・バック》のあれは初見殺しみたいなものだから二度目はないし。……正直あの効果を使う時あるとはこっちも思ってなかったからちょっと驚いた」

 

 優先するべきは過去語りよりも今のデュエル。除外する、というこの時代よりも先の世界でも重宝されている効果は妨害されることなく通った。神の一柱を失ったハラルドは一気に不利な状況へと追い込まれた。

 

「これで今度こそ神は――」

 

 遊星の安堵混じりの言葉は、ハラルドによって遮られた。

 

「残念だが、それは通用しない! 元々の持ち主が自分であるモンスターが相手の効果によってゲームから除外されたことで《リバースディメンション》を発動。除外されたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する! 今度こそ戻れ、《極神皇トール》!」

 

 異なる次元を超え、神は帰還する。己の効果による特殊召喚ではないためか神が引き起こす雷の音はしない。

 

『繰り返される効果の攻防! しかしハラルドは遊星の策のさらに上を行く! 伏せられた罠により除外の対策を済ませていたーッ!』

 

「神への対抗策はこれで打ち止めと言ったところか。墓地の《極神皇ロキ》の効果を発動し特殊召喚。そして自身の効果で蘇ったことで更なる効果を発動し、墓地の《リバースディメンション》を手札に加える!」

 

 トールが連れ去られた異空間とは別の裂け目から、もう一柱の神がハラルドのフィールドへ姿を現した。しかも決闘者の手に再び除外への対策ができる罠を与えるオマケ付き。

 

「《BF-フルアーマード・ウィング》が存在する限り、相手フィールドのモンスターが効果を発動する度に、その相手の表側表示モンスターに楔カウンターを1つ置く! よって《極神皇ロキ》に楔カウンターを置かせてもらう!」

 

 動いたら撃つという警告を挟むことなく、躊躇なく弾丸の楔は発射された。破壊されて墓地を経由したため一度は外れた楔だったが、再び神の体に突き刺さる。

 

《極神皇ロキ》

楔カウンター 0→1

 

「私のターン、ドロー!」

 

遊星 SPC 6→7

ハラルド SPC 9→10

 

「無効にするならば《BF-フルアーマード・ウィング》……普通ならばそう考えるだろうな。だが、私は《極神皇トール》の効果を《スターダスト・ドラゴン》に対し発動する! エフェクトアブゾーバー!」

 

「ッ、また破壊効果を使うつもりか! だが、《BF-フルアーマード・ウィング》の効果により《極神皇トール》へ楔カウンターが置かれる!」

 

 白雷に縛られ星屑の竜はその効果を失い、神は同じ効果を得た。フィールド上で成された狼藉を黒羽の戦士は許すはずもなく、神へと楔の弾丸を撃ち込んだ。

 

《極神皇トール》

楔カウンター 0→1

 

「そのモンスターがこちらの攻撃力を下げる効果を持たないのは先程のバトルで分かった。いくら楔を打ち込まれようと問題はない。――チューナーモンスター、《極星天ヴァルキュリア》召喚!」

 

《極星天ヴァルキュリア》

星2/守800

 

「《極星天ヴァルキュリア》が召喚に成功した時効果発動。手札2枚を捨て、私のフィールドに《エインヘリアル・トークン》を2体特殊召喚する!」

 

「《BF-フルアーマード・ウィング》の効果により、楔カウンターが《極星天ヴァルキュリア》に置かれる!」

 

《極星天ヴァルキュリア》

楔カウンター 0→1

 

《エインヘリアル・トークン》

星4/守1000

 

《エインヘリアル・トークン》

星4/守1000

 

 天使に導かれて地上に姿を見せたのは真白い二人の戦士の魂。天使へと黒羽の楔が突き刺さるも、それはハラルドの望みを妨害することはない。

 ハラルドの神――そのシンクロ召喚の準備がこれで完了した。

 

「レベル4の《エインヘリアル・トークン》2体にレベル2の《極星天ヴァルキュリア》をチューニング!」

 

◎◎

⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎

4+
4+
2=
10

 

「北辰の空にありて全知全能を司る皇よ! 今こそ星界の神々を束ね、その威光を示せ! シンクロ召喚! 天地神明を統べよ! 最高神――《極神聖帝オーディン》!」

 

 シンクロ召喚のエフェクトである緑の光の輪が天使を中心に広がり、二人の戦士が光の中へと溶け込んでいく。そうして全ての星々が一つになり……眩い光となって世界を照らす。

 姿を見せたのは二柱の神よりもさらに巨大な存在。隻眼と槍、北欧神話にてその特徴を持つのは全知全能である最高神ただ一人。遥かな高みより下界を見下ろし、そこにいる二人の決闘者を見る。

 

《極神聖帝オーディン》

星10/攻4000

 

「これが……お前の持つ神のカード……!」

 

『チーム5D'sからの数多の妨害を乗り越え――今ここに、星界の三極神が全て揃った!』

 

 一体のみでも突破困難だった神がラストホイーラーのフィールドに三体。モンスターを引き継げるルールだからこそ可能な奇跡の盤面は観客に瞬きを忘れさせる。

 

「星界の三極神は全て揃ってこそ真価を発揮する! 《極神聖帝オーディン》の効果発動! エンドフェイズまで神々に対する魔法・罠カードの効果を無効にする事ができる! インフルエンス・オブ・ルーン!」

 

 神は手に持つ槍を掲げ、己が習得したルーンの力を使用し魔術による守りを施す。それは己の許したもの以外の影響を排する絶対的なもの。

 

「神全てを守る効果か……! だが、効果を発動したことで《極神聖帝オーディン》に楔カウンターを撃ち込む! さらに罠カード《D2シールド》を発動し、《スターダスト・ドラゴン》の守備力を倍の4000にする!」

 

《極神聖帝オーディン》

楔カウンター 0→1

 

《スターダスト・ドラゴン》

守2000→4000

 

 守りの要となる竜の守備を高めるのはクロウが遊星へと残した伏せカードの効果。神の中で最も高い攻撃力を持つ《極神聖帝オーディン》と同じ数値となったことで戦闘破壊はされない。

 

「守備力4000……その程度で神の攻撃を凌げはしない! スピードカウンターが8つ以上あるため、《Sp(スピードスペル)-ファイナル・アタック》を発動! 《極神聖帝オーディン》の攻撃力を倍にする!」

 

《極神聖帝オーディン》

攻4000→8000

 

「――! 《BF-フルアーマード・ウィング》をコストに《シンクロ・バリアー》発動!」

 

 《BF-フルアーマード・ウィング》は他のカードの効果を受けない、という自身の耐性で効果によりステータスを変化させることはできず、決闘者によるサポートも受けられない。しかし、他のカードの効果を受けないモンスターであってもコストに使うことはできる。

 ハラルドは遊星のフィールドにて唯一攻撃表示のままであったモンスターを狙い、攻撃力を倍にした神の一撃で倒そうとしていたが……それは回避された。

 

「《シンクロ・バリアー》の効果により、このターン俺はダメージを受けない!」

 

「ほう、そう来るか……《スピード・ワールド2》の効果発動。スピードカウンターを7つ取り除き、1枚ドローする」

 

ハラルド SPC 10→3

 

「では行こうか――バトルだ! 《極神聖帝オーディン》で《スターダスト・ドラゴン》に攻撃! ヘヴンズジャッジメント!」

 

「墓地の《スターダスト・ファントム》を除外し効果発動! このターン、守備力を800下げて戦闘破壊されない効果を《スターダスト・ドラゴン》に与える!」

 

《スターダスト・ドラゴン》

守4000→3200

 

 神から放たれた光の槍を竜は己を削ることで受け止める。

 

「《ビッグ・イーター》の特殊召喚のために墓地へと送られたカードのもう片方の正体はそれか……このターンで破壊はできずとも守備力は削らせてもらおう。《ロキ》と《トール》で攻撃!」

 

《スターダスト・ドラゴン》

守3200→2400→1600

 

 雷を纏う鉄槌と虚無の弾丸。神々の攻撃を一身に受け止め、ギュオオオと竜は苦しげに唸る。

 

「すまない、《スターダスト・ドラゴン》……」

 

「安堵するのはまだ早いぞ! 罠カード《ハイレート・ドロー》発動! 自分フィールド上に存在するモンスターを全て破壊して墓地に送り、破壊したモンスター2体につき1枚カードをドローする!」

 

「ッ!?」

 

 最高神の施した守りはどの魔法・罠を許すか決闘者が選ぶもの。ハラルドは己のモンスター全てを破壊する罠を許した。神々が全て壊れて消えていくが……それは一時的なものだというのは誰もが分かっていた。

 

『普通ならばディスアドバンテージの大きい罠カードだが、破壊されることによりその真価を発揮する神であれば圧倒的なアドバンテージをもたらす! しかも《スターダスト・ドラゴン》の効果は無効になっているため、遊星はこの発動を止めることはできない!』

 

 実況による解説が否定できず、星屑の竜は悔しいのか小さく唸る。

 

「カードを1枚伏せる。そしてエンドフェイズ、墓地の《オーディン》を自身の効果で特殊召喚し――同時に墓地の《ギャラルホルン》が発動する!」

 

「なっ、墓地から罠だと!?」

 

 墓地から起動したのはハラルドがここまでのデュエルで使用していない罠カード。《極星天ヴァルキュリア》の効果で墓地に捨てられていたのだろう。

 罠のエフェクトか空に人影が浮かぶ。神々とは違い人間と同じ身長だ。

 

「これは墓地からでのみしか発動できない。その代わりに効果は強烈無比――私のターンの3度目のエンドフェイズに自分フィールドにいる全てのモンスターの攻撃力の合計のダメージを相手に与えた後、この罠カードと私のモンスターを全て除外する」

 

 角笛を手にした彼はアースガルドの番人ヘルムダル。そして、彼の持つ角笛こそラグナロクの到来を告げる《ギャラルホルン》。

 

「《オーディン》の効果でデッキから1枚ドロー。そして墓地に眠る二柱の神々も蘇る! 《トール》の雷は《シンクロ・バリアー》によって防がれてしまうため使用しない。《ロキ》の効果で墓地の《極星宝レーヴァテイン》を手札に加える」

 

 蘇った戦神の肩に乗ったヘルムダルによって角笛が吹き鳴らされる。ひとつ、光が灯る。

 

 

 ――《ギャラルホルン》、カウント1。

 

 

 目に見える終末へのカウントダウン。鳴り響く角笛の音の中、龍亞は必死に考える。

 

「えっと、ハラルドのモンスターがエンドフェイズまで残ってたらダメージを受けるってことは、つまり……それまでに倒しちゃえば問題ないってことだ!」

 

『確かにそれも解決策の一つではある。だが、あそこまで神を駆使する相手が許すと思うか? 発動されたあの《ギャラルホルン》をまた破壊するか、効果ダメージの対策をする方がまだ楽だ』

 

 アルターエゴが別の対策を上げる横で誰にも聞こえないようにぽそぽそとジェイドは呟く。

 

「……これ、もしかして《オーディンの眼》を使わない?」

 

 アニメではクロウとブレイブは同時にライフポイントが0になったし、ハラルドはここまで罠を駆使して暴れていなかった。……あと手札を余らせていたし、それ【極星】で使う時あるの? と視聴者が疑問を抱くような罠を持っていた。

 

「ハラルドはこっちを強敵として認めている。《オーディンの眼》は下手に使うと神の効果が失われる隙があるから、そもそも使う気がない……?」

 

 それとも相手の隠している想いを見ることなく、ただ一人の決闘者として相手をしたいのか……答えは男の中に秘められたまま、二人のデュエルは続いていく。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

遊星 SPC 7→8

ハラルド SPC 3→4

 

「スピードカウンターが2つ以上あるため《Sp(スピードスペル)-エンジェルバトン》を発動。2枚ドローし、手札を1枚墓地へ! ――《スターダスト・ドラゴン》が存在するため、墓地の《スターダスト・シャオロン》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

《スターダスト・シャオロン》

星1/攻100

 

「チューナーモンスター、《エフェクト・ヴェーラー》召喚!」

 

《エフェクト・ヴェーラー》

星1/守0

 

 遊星がフィールドに出したのは墓地から特殊召喚可能な小さな竜と、大きな羽衣を翼のように広げる魔法使い。

 

「レベル1の《スターダスト・シャオロン》にレベル1の《エフェクト・ヴェーラー》をチューニング!」

 

⚪︎

1+
1=
2

 

「集いし願いが新たな速度の地平へ誘う。光さす道となれ! シンクロ召喚! 希望の力、シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

《フォーミュラ・シンクロン》

星2/守1500

 

 アクセルシンクロに欠かせないシンクロチューナーは荒ぶる闘志のままギュルル、とタイヤを回転させる。

 

「《フォーミュラ・シンクロン》の効果で1枚ドロー!」

 

 呼吸を整える。心から恐れと迷いを捨て、体を風と一つにする。

 相対するのが神であろうと、辿り着いた境地を揺るがすには値しない。

 

「――クリアマインド! レベル8シンクロモンスター《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

 

◎◎

⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎

8+
2=
10

 

「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く! 光さす道となれ! アクセルシンクロ!」

 

 ルーンの瞳でも追いきれぬ速度で遊星は疾走する。風の中へ、光の先へと迷うことなく突き進み、そして。

 

「消えた……!?」

 

「生来せよ! 《シューティング・スター・ドラゴン》!」

 

《シューティング・スター・ドラゴン》

星10/攻3300

 

 ハラルドの背後より現れるのは不動遊星がチーム太陽のデュエルで見せた新たなる力、アクセルシンクロモンスター。赤き竜に頼らず、人の力で成し遂げた進化の象徴。

 

「《シューティング・スター・ドラゴン》の効果発動! 自分のデッキの上からカードを5枚確認し、その中のチューナーの数だけ相手モンスターに攻撃する事ができる!」

 

「つまりチューナーモンスターがいなければ連続攻撃そのものができなくなるというわけだ。不確定な未来に身を投じるか!」

 

 遊星はデッキトップから5枚を一気に引き、広げ、表にする。

 

「――確認したカードの中にチューナーは3枚。よって3回攻撃が可能となった! いくぞ! 《シューティング・スター・ドラゴン》で《極神聖帝オーディン》に攻撃!」

 

 龍は手足を折り畳み攻撃態勢へと移る。全知全能の神は狙われているのが自分と分かったために槍を構えた。

 

「《シューティング・スター・ドラゴン》は《オーディン》よりも攻撃力が下! この差をどう覆すつもりだ!」

 

「攻撃宣言時に墓地の《ジャンク・ドラゴンセント》を除外し効果発動! ターン終了時まで《シューティング・スター・ドラゴン》の攻撃力は800上がり4100となる!」

 

《シューティング・スター・ドラゴン》

攻3300→4100

 

 最高神は手に持つ槍……あらゆるものを貫けるグングニルで応戦しようとしたが、その穂先は流星龍を捉えることのないまま大地に落ちていった。神の攻撃が届くより先に流星龍の攻撃が神を打ち破ったゆえに。

 

ハラルド

LP 3800→3700

 

「《シューティング・スター・ドラゴン》はあと2回攻撃できる! 《トール》と《ロキ》に攻撃! シューティング・ミラージュ!」

 

ハラルド

LP 3700→3100→2300

 

 本体と同じ攻撃力を持つ幻影と共に、流星は神々を全て屠る。

 

「これで俺はターンエンド!」

 

「三極神全てを1ターンで倒す偉業を成し遂げたとしても――何度でも神は蘇る!」

 

 空が、大地が、海が揺れる。不死身の神が再び現世に舞い戻る。

 

「《極星宝レーヴァテイン》がセットされる前であり、《ギャラルホルン》のタイムリミットが来る前でもあるこのターンで可能な限りダメージを与えておきたかったのだろうが、神の破壊は私の利となる行為! 墓地に眠りし神々の効果を発動! 蘇りし三極神――《オーディン》の叡智により1枚ドローし、《トール》の雷撃でダメージを与え、《ロキ》の狡知で墓地より《フリッグのリンゴ》を手札に加える!」

 

「ぐああっ!」

 

遊星

LP 4000→3200

 

 何度も攻撃とダメージを避け続けていた遊星だったが、ついにこのデュエルで初のダメージを受ける。現実となったダメージによりピシッと音を立てバイザーにヒビが入った。

 

「私のターン、ドロー!」

 

遊星 SPC 8→9

ハラルド SPC 4→5

 

「《極神皇トール》の効果発動! エフェクトアブゾーバー!」

 

「《シューティング・スター・ドラゴン》を除外し効果発動! 相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

 

 神の手から逃げ去ることに成功したので流星龍の効果は奪われないが、そのせいで遊星のフィールドはガラ空きになってしまった。

 

「《オーディン》の効果発動! インフルエンス・オブ・ルーン!」

 

 守護の光が神々を包む。遊星の持つ1枚は《フォーミュラ・シンクロン》によるドローで得た未知のカード。手札から発動可能な罠である可能性も考えるハラルドは効果の使用を忘れることはなかった。

 

「バトル! 《極神聖帝オーディン》でダイレクトアタックだ!」

 

「手札より《速攻のかかし》を捨てバトルフェイズを終了する!」

 

 遊星の手札から飛び出したのはブースター付きの改造かかし。遊星はモンスターの効果により神々の攻撃を全て止めた。このターンは無傷でやり過ごせそうだ……そんな心を見抜いたのかハラルドは手札からある魔法を発動した。

 

「スピードカウンターが4つ以上あるため、《Sp(スピードスペル)-ソニック・バスター》発動! 自分フィールド上のモンスター1体の攻撃力の半分のダメージを相手プレイヤーに与える。 さあ、《オーディン》の攻撃力の半分――2000ダメージを受けてもらおうか!」

 

「がっ、ぐああああああーーっ!!」

 

遊星

LP 3200→1200

 

 鋭く突き刺さる風は初期ライフポイントの半分を削るほどの大ダメージ。砂利や小石混じりの突風は決闘者とDホイールに無数の傷をつける。

 

「念には念を入れさせてもらう! メインフェイズ2に移行! 私のフィールドに神がいることにより、手札から相手フィールドへ《極星邪狼フェンリル》と《極星邪龍ヨルムンガンド》を特殊召喚!」

 

《極星邪狼フェンリル》

星10/守4000

 

《極星邪龍ヨルムンガンド》

星8/守3000

 

「ぐっ……これは一体!?」

 

 毒々しい色の邪龍は遊星を逃さぬようにその長い身体でぐるりと円を描き、隙間を作らぬよう尾を噛む。邪狼は飢えているのか、早く喰わせろとガチガチと何度も歯を鳴らす。

 

「この2体は神に牙を向いた存在であるが故に、扱う者にも牙を向く。《極星邪狼フェンリル》はバトルフェイズに入ると全てのモンスターを攻撃表示にし、《極星邪龍ヨルムンガンド》は攻撃表示になった時プレイヤーへ3000のダメージを与える。――神々は多大な犠牲を出しながら討伐したが、君はこの窮地をどう乗り越えるのか見せてもらおう! カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

 

 ――《ギャラルホルン》、カウント2。

 

 

 遊星のデッキにはレベル8や10のモンスターをそのままシンクロ素材として使えるような高レベルのシンクロモンスターは入っていない。そのため、この2体はアドバンス召喚や効果によるリリースでしか除去することができない。そこに手を割けば当然、神を倒すために必要なカードは揃わないだろう。

 

 今、遊星の手札は0。

 ターン開始のドローと、《スピード・ワールド2》の効果によるドローの2枚に全てがかかっている。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

遊星 SPC 9→10

ハラルド SPC 5→6

 

「《スピード・ワールド2》の効果! スピードカウンターを7つ取り除いて1枚ドロー!」

 

遊星 SPC 10→3

 

 遊星の運命を決める2枚目のドロー。それを確認し……彼は笑った。

 

「《極星邪龍ヨルムンガンド》をリリースして手札から《スターダスト・シンクロン》を特殊召喚!」

 

《スターダスト・シンクロン》

星4/守1000

 

 禍々しい龍を消し去ったのは星屑竜そっくりの機械仕掛けなシンクロン。星の瞬きに似た淡い光を胸部のコアから放ち、星をより強く輝かせるためのカードを引き寄せる。

 

「特殊召喚した《スターダスト・シンクロン》の効果でデッキから《セイヴァー・ミラージュ》を手札に加える。――魔法・罠ゾーンにある《ギャラルホルン》を破壊し、手札から《カード・ブレイカー》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

《カード・ブレイカー》

星2/攻100

 

「何だと!」

 

 戦士は拳骨が突き刺さっている杖を永続罠に突き刺して破壊。依代となくカードを失ったヘイムダルは消え、終末を告げる角笛の音は強制的に絶たれた。

 

「レベル2の《カード・ブレイカー》にレベル4の《スターダスト・シンクロン》をチューニング!」

 

◎◎◎◎

⚪︎⚪︎

2+
4=
6

 

「星雨を束ねし聖翼よ、魂を風に乗せ世界を巡れ! シンクロ召喚! 出でよ、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》!」

 

《スターダスト・チャージ・ウォリアー》

星6/守1300

 

 風に導かれたのは色合い、装飾共に星屑の竜を模した装備をしている戦士。口上にもあったように、竜の翼とよく似た腰鎧がよく目立つ。

 

「シンクロ召喚した《スターダスト・チャージ・ウォリアー》の効果発動! デッキから1枚ドローする!」

 

 遊星の場にあるカードではこれ以上手札補充効果を重ねることはできない。よって、これがこのターン正真正銘最後のドローとなる。

 引き当てたそれを、遊星はフィールドへと出した。

 

「《極星邪狼フェンリル》をリリースし、《ジャンク・コレクター》をアドバンス召喚!」

 

《ジャンク・コレクター》

星5/守2200

 

 邪狼が消えた後に立つのはハンマーとペンチを合体させた大きな工具を左手に持つ、ボロ切れのような服を着た戦士。背中には拾い集めたのだろうジャンク品を詰め込んだリュック。

 

 これで、遊星はできることを全てやり切った。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

 遊星のフィールドには守備表示のモンスターが3体。北欧の邪狼と邪龍がいた痕跡も、終末の気配も、このフィールドには存在しない。

 

「そんな馬鹿な! 《ギャラルホルン》が途絶えるなど!」

 

「《ヨルムンガンド》と《フェンリル》、どっちも利用しやがった……!」

 

 ドラガンとブレイブは目の前で起きたことが信じられないでいる。ただ、ハラルドだけは笑っていた。

 

「デッキからわずかな可能性を引き当て、定められた終末の運命を回避したか――面白い! そう来なくてはな!」

 

 初めて会ったあの時、ハラルドの目には遊星と密接に絡む破滅の運命が見えていた。擬似的な世界の終わりと呼べる《ギャラルホルン》を乗り越えた戦士の戦いぶりは、ルーンの瞳で見えた破滅すらも置き去りにしてどこまでも進んでいけるだろう。

 彼に忍び寄っていた不穏な運命を心配する必要はもはやない。

 

「私のターン、ドロー!」

 

遊星 SPC 3→4

ハラルド SPC 6→7

 

 遊星は相手が神の効果を使えるメインフェイズに入るよりも先に動いた。

 

「フィールドの《ジャンク・コレクター》と墓地の《シンクロ・バリアー》を除外し、《ジャンク・コレクター》の効果発動! 《シンクロ・バリアー》の効果を適用する!」

 

 ボロボロの戦士は自分の全てを使い切って墓地から拾い上げた通常罠の効果を再現する。それはコストを支払わない効果のみの複製。シンクロモンスターをリリースせず使われたその効果は。

 

「俺はこのターンのエンドフェイズまで、ダメージを受けない!」

 

『ここでまたまたダメージを防ぐカードの効果が遊星を守る! ハラルド、あと1200のライフポイントが削れない!』

 

 神であろうと手を出せない障壁が遊星をDホイールごと包み込む。

 

「だが、ダメージは受けずともモンスターの破壊は可能! 《トール》で《シューティング・スター・ドラゴン》に攻撃!」

 

「《シューティング・スター・ドラゴン》の効果発動! 自身を除外し、相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

 

 ハラルドが最も倒したかったモンスターは星の光だけ残して己の効果で次元の彼方へと消えた。神は振り上げた鉄槌を下す先を見つけられないでいる。

 

「ならば《オーディン》で《スターダスト・チャージ・ウォリアー》に攻撃! ヘヴンズジャッジメント!」

 

 星の守りは一度だけ、もう遊星のモンスターを守る効果はない。神の光槍が戦士の胴体を貫く。込められたエネルギーに耐えきれずモンスターは即座に爆発、戦闘破壊された。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

「エンドフェイズ、自身の効果で除外された《シューティング・スター・ドラゴン》が俺のフィールドに帰ってくる!」

 

《シューティング・スター・ドラゴン》

攻3300

 

 流星は星界の神々を相手に輝きを損なうことなく、己を操る決闘者と共に風の中を疾る。ただ一人の力では絶対に太刀打ちできない相手だとしても、彼の掲げる絆の力がある限り龍は飛翔し続ける。

 

「終末は訪れず、神はこの世に残った! チームニューワールドと戦いたいというのならば運命を乗り越えた神を倒してみせろ! 不動遊星!」

 

 ハラルドの手札の増減からするに、相手のフィールドには《極星宝レーヴァテイン》が伏せられている。このターン、一撃で神ごとハラルドを倒しきれなければ《極星宝レーヴァテイン》により《シューティング・スター・ドラゴン》は破壊され、不死身の神々が遊星を討つべく動くだろう。

 

「――俺のターン、ドロー!」

 

遊星 SPC 4→5

ハラルド SPC 7→8

 

 遊星の手札はターン開始のドローの1枚だけ。

 この1枚から逆転しなければならない。

 

「《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

《ジャンク・シンクロン》

星3/守500

 

 召喚されたのはずっと遊星のデュエルを支えてきた頼れるチューナーモンスター。

 

「《ジャンク・シンクロン》の効果で墓地より《チューニング・サポーター》を効果を無効にし守備表示で特殊召喚!」

 

《チューニング・サポーター》

星1/守300

 

 墓地から仲間を引っ張り上げれば、行われるのは当然。

 

「レベル1の《チューニング・サポーター》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

◎◎◎

⚪︎

1+
3=
4

 

「シンクロ召喚! 《アームズ・エイド》!」

 

《アームズ・エイド》

星4/守1200

 

 遊星がエクストラデッキから呼んだのは足りない攻撃力を補うべく作られた漆黒の機械腕。

 

 ……ハラルドが伏せていると思われる罠カードはある程度予想できる。

 トリックスターの効果で回収してきた《極星宝レーヴァテイン》、《リバースディメンション》、《フリッグのリンゴ》――そして未知の2枚。

 相手の伏せカードを突破できるかどうかは、《チューニング・サポーター》の効果によるラストドローに全てが掛かっている。

 

「シンクロ素材になった《チューニング・サポーター》の効果で1枚ドロー……!?」

 

 普段ならばデッキからすぐにドローしているのだが……腕の痣が熱を帯びて光り始めたため遊星は思わず動きを止めた。

 

「これは……!」

 

 シグナー達はこの現象に覚えがある。地縛神を相手にした時のこと、ジャックと遊星があのモンスターを出す前にあった現象だ。

 腕から痣が消え、デュエルをする遊星へと全ての痣が集まり――その背中に赤き竜の姿を形作る。

 

「赤き竜……!」

 

 声はしない。その姿は見えない。だが、確かにこの場所にいる。

 

「――俺は、《チューニング・サポーター》の効果で1枚ドローする!」

 

 遊星は改めて手に力を込め、デッキからカードを引いた。

 

「――ドローした時、このカードを相手に見せることで効果発動! 《想い集いし竜》を手札から特殊召喚する!」

 

《想い集いし竜》

星1/守0

 

 赤き竜と似た鋭い赤竜は硬質な翼を地面と水平に広げ、流星龍と同じ高さへと舞い上がる。そのチューナーモンスターの身体は小さいがとてつもない力が秘められている。

 

「赤き竜の化身……!」

 

 ハラルドのルーンの瞳には、《想い集いし竜》に覆い被さるようにして空を舞う赤き竜の姿が見えていた。

 ……世界を作り直して全ての悲劇を無かったことにしようとしたレクス・ゴドウィンの究極の神の力よりも、絆の力を胸に脅威を乗り越えた不動遊星たちに未来の可能性を見出した神の姿が。

 

「《想い集いし竜》はフィールド・墓地にいる間《救世竜 セイヴァー・ドラゴン》として扱う! ――俺はレベル10の《シューティング・スター・ドラゴン》に、レベル1の《想い集いし竜(救世竜 セイヴァー・ドラゴン)》をチューニング!」

 

⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎

10+
1=
11

 

「集いし想いが輝く奇跡を呼び起こす! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 光来せよ、《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》!」

 

 シンクロ召喚のエフェクトである光柱が消えるその瞬間にそのモンスターは飛び出し、真っ直ぐに上を目指す。

 ドラガンが神を呼び出してからずっとコース上空に立ち込めていた暗雲へと突入し――それが突如として消え去った。人の力と神の力、その二つを合わせてさらに進化させたシンクロモンスターが振り払ったのだ。

 

《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》

星11/攻4000

 

『な、な、なんと――! これは、このモンスターはいったい……!?』

 

 流星の白と救世の蒼の光が鋭く、また力強く輝き世界を照らす。実況も観客も、あまりに神々しいモンスターの姿に言葉を失っている。

 

「アクセルシンクロモンスターを使って、新たなシンクロモンスターを出すだと……!? だが、攻撃を封じてしまえば問題ない! 永続罠《闇の呪縛》を《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》を対象に発動! 対象の攻撃を封じ、攻撃力を700ダウンする!」

 

 ハラルドが表にしたカードから無数の純黒の鎖が龍を縛りつけんと飛び出す。

 

「相手が効果を発動した時、《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》の効果発動! このカードをエンドフェイズまで除外し、その発動を無効にし除外する!」

 

 龍は光と共に空高く飛翔して闇を振り払い、誰の手にも触れない場所へと呪縛を消し去る。その代償としてフィールドから一時的に姿をくらませたが、遊星は呼び戻す方法をすでに知っている。

 

「《スターダスト・ドラゴン》のカード名が記されたシンクロモンスター、《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》がフィールドから離れたため――永続罠《セイヴァー・ミラージュ》を発動!」

 

 それは《スターダスト・シンクロン》によって手札に加えた後に伏せられたカード。

 

「その効果で、《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》を特殊召喚する!

 

 救世の幻影ではなく、現実の存在として龍は舞い戻る。このターンで神を倒すために。

 

「《アームズ・エイド》の効果により、このモンスターを《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》に装備! 《アームズ・エイド》を装備したモンスターは攻撃力が1000アップする!」

 

 白い龍に装着されたことで黒の機械腕はより一層目立つ。人と神、そこに被造物である機械の力を加えたことにより、元より強靭な力を持つ龍は更に力を増す。

 

《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》

攻4000→5000

 

『ハラルドの妨害を退け、遊星の出した新たなエースモンスターが《オーディン》の攻撃力4000を……超えた!』

 

 誰もが息を呑んでいる。このターンで全てが決まると分かっている。

 Dホイールの走行音と風の音だけが響く世界の中で遊星は宣言した。

 

「バトルだ! 《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》で《極神聖帝オーディン》に攻撃!」

 

 龍は螺旋を描きながらの突進で真正面からグングニルとぶつかり合う。一瞬にも永遠にも思えるような激突の中で勝利したのは――。

 

「シューティング・ブラスター・ミラージュ!」

 

 機械腕にてグングニルを破壊し、速度を落とすことなく神の体に風穴を開けた救世の流星。

 

ハラルド

LP 2300→1300

 

「ぐうっ、うおおあああぁーっ!」

 

 ハラルドの残る未知の伏せカード、最後の1枚は《ミョルニルの魔槌》。神に2回攻撃を付与し、この罠を受けた神が相手モンスターを戦闘破壊した場合に1000ダメージを与える効果を持つ罠カード。

 

 ハラルドのターンが来たのならば、この効果により遊星を倒せていた。

 だが、そのターンはもはや来ることはない。

 

「《アームズ・エイド》を装備したモンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地に送った時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

 闇を振り払った救世の流星。一人では成し遂げられぬ偉業。

 

「《極神聖帝オーディン》の攻撃力は4000! よって、4000のダメージを受けてもらう!」

 

「――見事」

 

 ルーンの瞳を持つ男は、崩れゆく神と共に穏やかな顔でその敗北を受け入れた。

 

ハラルド

LP 1300→0

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