LP 7500
《機皇帝グランエル
《グランエル
遊星 手札1枚
LP 4000
《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》星12/攻3500→4500
《ブラックフェザー・ドラゴン》星8/攻2800
《シューティング・スター・ドラゴン》星10/攻3300→1650
伏せカード2枚
残されたDホイールも主人の後を追うかのように合体し、主人に相応しい躯体へと変貌した。三首の竜のようにも見えるDホイール――その名は
両足を揃え、腰鎧が展開。そこから伸びる夥しい数のコードが決闘者とDホイールを接続。合体前のルチアーノが装備していたDチューブはアポリアの背で緑の光を放ち、機械仕掛けの翼として広がる。
「お前達は、いやお前は一体何なんだ……!?」
急激な変化の連続を目の当たりにし、さすがに遊星も戸惑いを隠せない。
「我が名はアポリア。絶望の番人。我ら三人は元々一人。これこそが私本来の姿だ」
ホセの時とは比べ物にならないほどの異常を見てざわつく観客、治療を受けつつも中継を見ているジャックとクロウ……皆が抱く疑問に対してこれ以上の説明は不要とばかりに正体についての会話を切り上げる。アポリアは上機嫌に対戦相手を褒め称え始めた。
「流石は英雄不動遊星。予定通り機皇帝を倒したことでサーキットは完成へと大きく近付いた」
「何を言っている!」
「今を生きる者にわかるはずのないことだ。ジェイド・アトラスという例外はいるようだがな。――私のターン、ドロー!」
遊星 SPC 4→5
アポリア SPC 11→12
「自分用スピードカウンターが12個あり、相手用スピードカウンターが12個でないため、手札にある《
手札にある同じ魔法カード2枚を見せるようにして使い、ドロー。アポリアの手札は5枚となった。
「スピードカウンターを10取り除き《スピード・ワールド2》の効果発動! 伏せカードを破壊する」
疾風が遊星のフィールドを切り裂く。遊星の伏せた2枚のカードのうち、砕けたのは罠カード《セイヴァー・ミラージュ》。
「その永続罠を伏せていた、ということは《シューティング・スター・ドラゴン》の効果無効を解除する手立てがあるようだが……無駄に終わったな。――私は《機皇帝グランエル
「馬鹿な、リリースだと!?」
相手チームの合体の次は突然のアドバンス召喚に目を奪われる。……アドバンス召喚はフィールドのモンスターをリリースし、レベル5以上のモンスターを通常召喚するために行うもの。しかも2体のリリースを要するのはレベル7以上のモンスターだ。
機皇帝とそれらを構成する基礎パーツはレベル1。パーツはレベルが上がれば効果もより良くなっていくが、コアとなる機皇帝もリリースしてアドバンス召喚、なんてするはずがない。
「愚かな人間どもよ。刮目せよ、これこそが最強の力! 《機皇神マシニクル∞³》をアドバンス召喚!」
《機皇神マシニクル∞³》
星12/攻4000
三つの無限を重ね、白き絶望が顕現する。
胸の中心には赤を、両肩と胴体には緑の光を。帝を超えた存在として神を名乗る機械の持つエネルギーは現実へも影響を及ぼし、溢れ出た力は雷鳴となって街に響く。ビルに、道路に、会場に落ちていく。
眼前で起きる破壊から逃げようとパニックになる観客。これ以上の大会続行は無理だと諦めて避難を開始するスタッフ。実況席に一人残るMC。
チーム5D'sとイリアステルのデュエルの行く末を見守っていたチームラグナロクだったが、観客の避難誘導の手助けをしていた。
「……この場で神の力を使えば確実にネオドミノシティを破壊から守れる。が、本当に使わなくていいんだな? ハラルド」
ブレイブがハラルドに問いかける。それは疑問ではなく確認の意味合いが大きかった。
「ああ。この後にある戦いの舞台へ……彼らをあの地へと送り届けるのは我々の役目だ。その際に疲弊したので失敗、などという可能性はあってはならない」
ジェイド・アトラスの所持する神は戦闘を得意とするが、道を作ることには向いていない。飛ぶことは可能なため空に浮かぶ建造物まで飛翔することは可能だ。……が、実体化して決闘者を運ぶという作業は神と人間、どちらにも負担をかける。
チーム5D's側に消耗がないようにするには、ジェイド・アトラスの記憶通り《虹の橋 ビフレスト》を実体化して送り届ける必要がある。
「俺たちを倒したチーム5D'sが勝つ、それを信じるだけだ」
ドラガンは祈りではなく信頼を告げる。彼らはスタジアムの外に出る観客へ不安を与えぬよう、いつも通りの表情で人々を守るという務めを果たしていた。
「《機皇神マシニクル∞³》の効果発動! 《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》を吸収する!」
「そのモンスターもシンクロキラーとしての力を持っているか。だがそうはいかない! 《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》の効果発動!」
「無駄だ。《機皇神マシニクル∞³》のさらなる効果! 手札の機皇帝のパーツを墓地へ送る事でその効果を得る。私は手札の《グランエル
不気味に赤い光が揺らめく。機皇神が腕を向ける。
「1ターンに1度、相手モンスターの効果を無効にする! 《機皇神マシニクル∞³》の糧となれ、《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》!」
炎となってフィールドから消えようとしていた灼熱の魔龍の力は力の波動により掻き消え、動きが止まった隙に無数の光紐で機皇神のコアの内部へと収納される。
《機皇神マシニクル∞³》
攻4000→7500
『狙いを定めた相手は何度でも餌食とする、まさに執念! シンクロキラーここに有り! ……中継スタッフは撤収してしまったが、私も不動遊星もこのままでは終わらない! 中継は続行します!』
「思い知るがいい不動遊星。私の味わった絶望を」
背後から迫るDホイールの圧がより焦燥感を掻き立ててくる。冷や汗をかく遊星へ向けアポリアは言葉を重ねる。
「私はその絶望に抗うために三つの身に分かれ、この時代にやってきた」
「どういうことだ!?」
絶望に抗うため。それはまるで、イリアステルこそが世界を救おうとしている存在だとでも言うかのようではないか。遊星はイリアステルがしてきたことを思い出し……そんなはずはない、と頭を振る。
確かにアポリアから見せられた未来は避けねばならないが、奴らが起こした事件とその犠牲を認めるなんて許されるはずがない。
「教えてやろう。なぜ私がホセ、ルチアーノ、プラシドに分かれイリアステルの三皇帝になったのかを――」
アポリアの額の緑玉が光り、チーム5D'sが召集されたのは合体直後のアポリアが過去を見せたあの異空間。またここか、とジャックが悪態をつく。
――崩れ落ちそうなドームの中、灰色だけが満ちた廃墟を孤独な老人が行く。どこまで歩もうと自分以外の生命見つけられない現実に限界が訪れたのか、世界を呪うかの如く何故と叫んでいた。
そんな彼の前に世界最後の生き残りとして現れたのはたった三人。しかし、差し伸べられた手は確かに老人の心を救ったのだ。
そうして始まったのは破滅した世界と人類を再生するための方法の模索。……だが、彼らの残り時間はあまりにも短すぎた。一人、また一人と命を落とす中アポリアは友に頼んだ。己の心にある三つの絶望を分けてしもべとせよ、と。
――そして作られた三皇帝は、約束を果たすべくある組織を作った。これこそがイリアステルのはじまり。
「未来の滅亡を防ぐため、ネオドミノシティを歴史から抹殺する! モーメントの根源を消滅させ未来を救う! それが我らの計画だ」
「ふざけるな! そんなことをさせるものか!」
「あの未来を見てなお我々の邪魔をすると? さすが英雄、といったところか。勝った後で絶望することになるがな」
絶望なんてしない、そう言い返そうとしたとその時。雷がコースを破壊し、ライディングデュエル用ではない公道へと二人とも落ちていった。遊星はなんとか事故を起こさぬよう回避できたが、アポリアは周囲の建物や外に出ている人間のことなどお構い無しに直進していく。
「《機皇神マシニクル∞³》で《シューティング・スター・ドラゴン》に攻撃!」
狙いを定めたのは効果が無効になっているためフィールドから逃れられず、しかも攻撃表示のままという絶好の獲物。この攻撃を受けてしまったら遊星のライフポイントは尽きる。
「俺のモンスターが攻撃対象に選択された時、墓地の《ガード・マスター》の効果を発動! このカードを除外し、攻撃対象となったモンスター1体の表示形式を守備表示に変更する。また、この効果の対象になったモンスターはこのターン戦闘では破壊されない!」
半透明のビジョンとして現れた師範を真似て流星龍は功夫の構えをとり、迫る砲撃をその身一つで街に被害がでない方向へ受け流すという神業をやってのけた。
このままデュエルを続けるのは危険すぎる。アポリアのDホイールは幅が大きすぎるため普通に走行するだけで周囲に被害が出てしまう。そう考えた遊星はDホイールを傾け、ある場所に向かって走らせる。
「ついて来い!」
脇道へと入り、目指すのは人通りの少ない旧BADエリア――サテライト。
「……このデュエルが終わればネオドミノシティは全て滅ぶと言うのに無駄なことを。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
アポリアは遊星が何を狙っているのかはすぐに読めた。
今起きていることはアーククレイドルの落下で起こす大破壊に比べれば些細なものであるのに、と思考しつつもアポリアは遊星の誘いに乗った。黒羽の竜へとちらりと目をやったのち、ターンエンドを宣言する。
「エンドフェイズ、《機皇神マシニクル∞³》を対象に罠カード《エターナル・カオス》を発動! デッキから攻撃力0の闇属性モンスター《ネクロ・ディフェンダー》と、攻撃力500の光属性モンスター《チューニング・サポーター》を墓地へ送る!」
アポリアのターンが完全に終わる前に遊星は罠カードを使用。攻撃を防ぐ効果を持つ新たなモンスターと、この状況で素引きしたくないモンスターを共に墓地へと送る。
「俺のターン、ドロー!」
遊星 SPC 5→6
アポリア SPC 2→3
「《
《アサルト・シンクロン》
星2/守0
黒い機体の可愛らしいチューナーが手札から出てきたことで発せられる熱風が遊星にかかる前に黒羽の竜が動く。
「その後、700ダメージを受ける――が、俺への効果ダメージは《ブラックフェザー・ドラゴン》が受け止め黒羽カウンターに変換する! そして黒羽カウンターを取り除いて《ブラックフェザー・ドラゴン》の効果発動! 《機皇神マシニクル∞³》の攻撃力を700ダウンし、お前に700のダメージを与える! ブラック・バースト!」
アポリア
LP 7500→6800
《機皇神マシニクル∞³》
攻7500→6800
「レベル8の《ブラックフェザー・ドラゴン》にレベル2の《アサルト・シンクロン》をチューニング!」
「集いし夢が彼方へ繋がる軌跡となる! 光射す道となれ! シンクロ召喚! 出でよ、《サテライト・ウォリアー》!」
《サテライト・ウォリアー》
星10/攻2500
シンクロ召喚のエフェクトである光柱から現れたのは白と金の装甲を纏い、太陽光パネル製の四枚の羽を背負った戦士。この地――サテライトと同じ名前を持つシンクロモンスター。
「シンクロ召喚した《サテライト・ウォリアー》の効果! 自分の墓地のシンクロモンスターの数まで相手フィールドのカードを破壊し、攻撃力を破壊したカードの数×1000アップする! 俺の墓地にはシンクロモンスターが3体! よって3枚のカードを破壊させてもらう!」
空に飛び上がり、戦士は羽に光を集める。衛星が地上にいる対象へと照射した光が伏せカード2枚を貫き、さらに無限の内側に囚われた灼熱の魔龍を破壊という形で開放する。
「破壊した伏せカードは……《神風のバリア -エア・フォース-》に《
遊星は危機が表面化する前に乗り越えられたことに対し安堵する。どちらも迂闊に攻撃すればただでは済まない効果のある罠だからだ。
「カード3枚の破壊に成功したことで《サテライト・ウォリアー》の攻撃力は3000アップする!」
《サテライト・ウォリアー》
攻2500→5500
『《機皇神マシニクル∞³》は《ブラックフェザー・ドラゴン》の効果による弱体化と吸収していたシンクロモンスターを失ったことで攻撃力は3300になっている! シンクロキラーの力を《サテライト・ウォリアー》が上回ったぞーッ!』
「スピードカウンターが4以上のため《
《サテライト・ウォリアー》
攻5500→6500
「そして《シューティング・スター・ドラゴン》が除外されたことで墓地の《アサルト・シンクロン》の効果を発動! このカードを除外し、除外状態の《シューティング・スター・ドラゴン》を特殊召喚する!」
《シューティング・スター・ドラゴン》
星10/攻3300
ジェット機のエンジン音が除外されたドラゴンを戦場へと導く。効果が無効になっていない、十全に力を発揮できる状態に戻った流星龍は吠える。
「《サテライト・ウォリアー》で《機皇神マシニクル∞³》に攻撃!」
「《機皇神マシニクル∞³》は墓地の機皇帝パーツを除外することで破壊を無効にすることができる!」
アポリア
LP 6800→3600
戦士の突撃を受けダメージは発生したもののシンクロキラーは健在。備え付けのテレビで戦況を見守っていたクロウが悔しげに拳でテーブルを叩く。
「くそっ、ここまできてあのデカブツを破壊できないのか!」
「……いや、《サテライト・ウォリアー》の効果で《マシニクル》を直接狙っていない時点で破壊が通用しない可能性はすでに考えていたはずだ」
ライフポイントを0にしなければデュエルには勝てない。相手モンスターを破壊できず、吸収されたシンクロモンスターもそのまま、よって攻撃力は大きく下がらず結果として戦闘によるダメージを与えられない……というのが遊星としては一番避けたい展開だった。
『攻撃力は同じ3300。追撃は不可能……ところでジェイド、何故そう落ち込んでいる』
アルターエゴが口数の少なくなったジェイドの様子を伺う。
「《マシニクル》が特殊召喚モンスターじゃなかったのが衝撃すぎて……なんで覚えてなかったんだろうって」
『思い上がるな馬鹿者。お前自身はただの人間だ。完全記憶能力など求めてはいない』
口にしたのはそれだけだったが、悩んでいるのはその件だけではない。
アポリアがもたらすネオドミノシティの崩壊、遊星が負ける万が一の可能性、アーククレイドルの出現によるパニック――色々と考えた結果、これ以上のアニメからの逸脱を防ぐため何もしなかった。その責任をどう取るべきか、なんてこともこの時間に考えていたのだろう。
『はあ、まったく……それとお前はつい先ほど怪我人になった弟とその友を遊星の応援のためだからとDホイールで行かせるような人間か?』
「安静第一、って言ってベッドから出た瞬間に連れ戻すタイプだよね」
ジェイドに向けられた質問だったがブルーノが答える。アルターエゴがいた画面が切り替わり、映し出されたのはベッドからいそいそと出ようとするジャックとクロウ。包帯は巻かれたままなのでカーリーや牛尾らが引き止めようとしているが長くはもたないだろう。
……それらを見たジェイドは無言で席を立つ。
『良し。これであいつらの対応に追われるから余計なことは考えんだろう』
いい仕事をした、なんて顔になっているアルターエゴ。本当に良かった……のかなあ? と首を傾げた龍可と龍亞だったが、デュエルの攻防に集中するアキにならって観戦と応援に戻る。
「俺はこれでターンエンドだ。エンドフェイズに《
強化された機皇帝と違い、効果の対象に取れるならば《シューティング・スター・ドラゴン》による攻撃の無効化は通用する。だが、《機皇神マシニクル∞³》により機皇帝パーツの効果を使われ効果を無効にされてしまえば意味がない。
……よって、遊星は二段構えの防御策が強いられる。《ネクロ・ディフェンダー》を墓地に用意したのはそのためだ。
「私のターン、ドロー」
遊星 SPC 6→7
アポリア SPC 3→4
「《機皇神マシニクル∞³》の効果を発動し、《サテライト・ウォリアー》を吸収する!」
《機皇神マシニクル∞³》
攻3300→5800
逃れる術を持たない戦士はシンクロキラーの魔の手に囚われる。
「バトル! 《機皇神マシニクル∞³》で《シューティング・スター・ドラゴン》に攻撃!」
「墓地の《ネクロ・ディフェンダー》を《シューティング・スター・ドラゴン》を対象に発動! 対象となったモンスターは戦闘では破壊されず、ダメージは0になる!」
バトルが行われようとしている……が、アポリアの手札2枚はどちらも使われる様子はない。シンクロキラーによる攻撃は防がれ、破壊もダメージも発生しない。
「カードを1枚伏せる。……これで終わりだとでも思ったか? エンドフェイズに《機皇神マシニクル∞³》の効果発動!」
安堵の息すら許さぬとばかりにアポリアは新たな効果を開示し遊星へと畳み掛ける。
「吸収している《サテライト・ウォリアー》を墓地に送り、そのモンスターの元々の攻撃力分――つまり、2500のダメージを貴様に与える!」
遊星
LP 4000→1500
「があああぁっ!」
これまでは効果ダメージを受け止める《ブラックフェザー・ドラゴン》の存在が抑止力となっていた。だがシンクロ素材として遊星の墓地に消えた今、機皇神の効果を咎めるものは何もない。
現実となった衝撃が遊星のライフポイントを削り、彼の車体をよろめかせる。
「ぐっ……俺の……ターン!」
遊星 SPC 7→8
アポリア SPC 4→5
「スピードカウンターを7つ取り除き、《スピード・ワールド2》の効果発動! デッキから1枚ドロー!」
遊星 SPC 8→1
遊星の背に熱が――シグナー達の痣を全て揃えた状態の赤き竜の痣が灯る。
「ドローした時、《想い集いし竜》を相手に見せることで効果発動! 手札から特殊召喚する!」
《想い集いし竜》
星1/守0
『この組み合わせは間違いなく、チームラグナロクを倒したあのシンクロモンスターの出番だ!』
「《想い集いし竜》はフィールド・墓地にいる間《救世竜 セイヴァー・ドラゴン》として扱う! 俺はレベル10の《シューティング・スター・ドラゴン》に、レベル1の《
「集いし想いが輝く奇跡を呼び起こす! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 光来せよ、《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》!」
《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》
星11/攻4000
シンクロキラーと相対するのはシンクロ召喚の可能性をさらに発展させた先にいるドラゴン。
《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》にはモンスターの効果を無効にできる効果と連続攻撃を可能とする効果がある。これで機皇神を倒す準備は整った。
「ついに来たか、そのシンクロモンスターが! 私は永続罠《超古代生物の墓場》を発動! 特殊召喚したレベル6以上のモンスターは攻撃できず、効果の発動もできない!」
「ここで《超古代生物の墓場》の発動だと……!? 俺は《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》の効果を発動!」
このタイミングで発動したならば、《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》の効果で対応されるのは当然。
……防がれるとわかっていて効果を使うなら狙いは決まっている。本命の効果を通したいからだ。
くつりと笑ったアポリアは手札1枚を手に持ち機皇神の効果を使用する。
「《機皇神マシニクル∞³》の効果! 手札の《グランエル
《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》の効果による無効は自身の除外と同時に行われる。そのため、自身の効果で除外できなかった場合は無効にはできない。《超古代生物の墓場》がアポリアの場に開かれたまま、遊星のエースモンスターは機皇神の中へと吸収されてしまった。
《機皇神マシニクル∞³》
攻3300→7300
「《マシニクル》はアドバンス召喚したモンスターだから《超古代生物の墓場》による影響を受けない……本当の狙いはコレか……!」
特殊召喚したレベル6以上のモンスターは攻撃できず、効果の発動もできない――その効力は絶大だ。シンクロモンスターを主軸とした戦法では突破がほぼ不可能となる。
あの永続罠を破壊すれば通常通りモンスターの力を使えるが、光と熱が失せた背中に再び赤き竜の姿を呼び戻せるか……それはわからない。
「もしかしたらと可能性を見たか? 希望を抱いたか? 諦めろ不動遊星、これが絶望だ! その大きく揺れ動く感情はサーキットの完成の一助となる! 私のターン、ドロー!」
遊星 SPC 1→2
アポリア SPC 5→6
不動遊星の手札は残り1枚。ジェイド・アトラスにより未来のカード、またはイリアステルすら知らない未知のカードが使われる可能性がある。
その中には当然、手札から使用可能なカードもあるだろう――アポリアの脳裏によぎるのはアーククレイドルにて吉報を待つ友が使用したことのある罠、《女教皇の錫杖》。
「《機皇神マシニクル∞³》の効果。手札の《ワイゼル
確実に屠るため、機皇神はその一撃を研ぎ澄ませる。
「《機皇神マシニクル∞³》でダイレクトアタック!」
「手札の《速攻のかかし》を捨て、バトルフェイズを終了する!」
何度も攻撃を防がれてきたが問題ない。これで遊星の手は尽き、ライフポイントはここで全て消し飛ぶ。
「成程、最後の手札はそのカードだったか。だがこれで我が絶望に抗う手立ては全て無くなった! これが真の終わりだ不動遊星! 《機皇神マシニクル∞³》の効果発動――」
吸収されている《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》の攻撃力は4000、よって発生する効果ダメージも4000。
遊星の手札は0、そしてフィールドにはカードが無い。もうだめだ、と龍亞は思わず目を覆う。
誰もが遊星の敗北を疑わない。
ただひとり、不動遊星を除いて。
「ああ。俺の力では届かない。……なら、お前の力を使わせてもらうまでだ!」
「――なんだと?」
現在、遊星の手札は0枚。フィールドにはモンスターはいない。
では墓地はどうか。明らかになっていない未知のカード……つまりコストになったカードは何がある?
墓地の《ジェット・シンクロン》を効果で特殊召喚するためのコストになったのはデュエルの流れからして《ガード・マスター》で確定。
では、《
それこそ、遊星が最後に仕込んでいた逆転の切り札。
「その効果の発動にチェーンだ! 墓地の《トランザクション・ロールバック》を除外し、ライフポイントを半分払い、俺の墓地の通常罠カードを対象に効果発動!」
遊星
LP 1500→750
「《トランザクション・ロールバック》のこの効果は、対象とした通常罠カード発動時の効果と同じになる! 俺がコピーするのは墓地の《
「ここで……融合だと? …………ッ!!」
アポリアは気付いた。気付いてしまった。
もう詰んでいる、ということに。
「俺はドラゴン族シンクロモンスターの《スターダスト・ドラゴン》と戦士族モンスターの《サテライト・ウォリアー》を除外し――《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》を融合召喚する!」
《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》
星10/攻3200
融合の渦の中、異なる二つが混ざり合い新たな一つへと変化する。現れたのは青い鎧を身に纏い、長大な馬上槍を右手に持つ竜騎士。硬質な翼を広げてフィールドに舞い降りる。
「その、モンスターはッ!」
不動遊星がシンクロキラーである機皇帝の対策として考えた一つ。だが、クリアマインドの習得によりイリアステルとの戦いでは使用することのなかったモンスター。……シンクロを憎むが故に、見落としていた。
「さあ、俺の《トランザクション・ロールバック》の効果処理は終わった。《機皇神マシニクル∞³》の効果処理を行え!」
「がっ……ぐっ……! 吸収している《シューティング・セイヴァー・スター・ドラゴン》を墓地に送り、そのモンスターの元々の攻撃力のダメージを与える……!」
「《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》が持つ
永続効果は発動しない効果のため、《超古代生物の墓場》による効果の発動不可、という妨害は効かない。
竜騎士は襲いかかってきたエネルギーを槍で誘導し、相手へと向かわせる。流星のように煌めく波動は救世の龍の姿とよく似ていた。
「これでトドメだ! 絶望を退けろ! ウェーブ・フォース!」
遊星が受けようとしているのは4000のダメージ。その反射になるのだから、アポリアに降りかかるのは当然4000のダメージ。
そして、アポリアの残りライフポイントは――。
アポリア
LP 3600→0
煌めく終わりの中、アポリアは怨嗟の声を絞り出す。
「ジェイド・アトラス……これも、貴様のシナリオ通りとでも言う訳か……ッ!」
――ルチアーノとの接触時、ジェイド・アトラスはアーククレイドルの出現を否定しなかった。シグナーへと本格的に力を貸す様子は見せても、アーククレイドルが出現するより早くにイリアステルを全力で潰そうとはしなかった。
つまり、アーククレイドルの出現は奴にとっても必要であり、それ即ち彼の地で更なるデュエルがある……と、奴の知る未来を曝け出しているも同然。
その後にある戦いに使うため、この場では機皇の神龍たちを使わなかった。
WRGPではルールの都合上倒せるのは3人まで。ここで勝利してアーククレイドルを顕現させたところで、残るシグナーは落下を止めるべく向かってくるだろう。
そうして残る決闘者を友と共に迎え撃ち、完膚なきまでに叩きのめす。シンクロの加速の旗印となるシグナー達をアーククレイドルの落下に巻き込んでまとめて葬ってしまえば破滅の未来は訪れない。
そして、その未来を共に迎える仲間は――。
縋るように伸ばした手の先には誰もいない。
――ああ、パラドックス。君は今、どこに。
制御を失い、ブレーキが効かぬまま海へと着水……沈んでいく。
デュエルに負け、海中に沈むアポリアを観測する者は
一人はアーククレイドルに座す最後の一人。
では、もう一人は――。
「これで漸くアーククレイドルが出現するか」
金と紫の髪をなびかせ、異空間にて男はため息を吐いた。超常の存在により機能を制限されてしまったDホイールの通信画面を切り、変わり映えのしない黄色の異空間を眺める。
「
彼の傍にいるのは時空の狭間にいる巨大な黄色の邪竜。これまでは男を隠すべく窮屈そうに翼を折りたたんでいたが、もうその必要がないとわかったのか上機嫌だ。
「結局は奴の描いたシナリオ通り、か? ……まあいい。あの力があれば、我が友を。そして未来を救うことができる。来るがいいジェイド・アトラス。――それが、お前の最期だ」