ジェイドが真正面から遊星の死を否定する言動をしたからか、遊星は自分一人で突入しようとする無茶は見せなかった。
……クラッシュタウンでの一件を知っているため、命を粗末にするような無謀な突撃がジェイドの逆鱗に触れてしまうと簡単に予想できたからかもしれないが。
自分のことを思ってくれる人がいる。その事実を受け止めた遊星は拳を胸に当て口を開く。
「これが正真正銘、最後の戦いになる。この街を守るために力を貸してくれ、皆!」
それは死を覚悟している男の顔ではない。決意をもって希望を掴もうとする男の顔をしていた。
「勝手に行こうとするならばオレ達も勝手に助けに向かうつもりだったがな。お前が死ぬ未来など、現実にはさせん!」
「ここまで一緒に戦ってきたってのに、最後の最後で抜けるヤツがこのチームにいるはずないだろ」
「そうだそうだ! 俺も世界一のチームの一員なんだ、こんなところでビビってなんかいられないよ!」
「私も龍亞と同じよ。遊星が死んじゃうなんて言われて放っておけないもの!」
「ええ、私たちチーム5D'sの力で未来は変えてみせる!」
「……改めて言うことはないよ。『不動遊星』は死なせない。それが全てだ」
「ボクも全力でサポートさせてもらうよ」
チーム5D'sは各々の決意表明により絆の強さと硬さを再確認し、協力者も含めてこれから成すべきことを整理する。
ほぼ全てのモーメントが停止したネオドミノシティにて空に向かう方法はただ一つ。Dホイールを用いてダイダロスブリッジから飛翔した伝説のDホイーラー――レクス・ゴドウィンの偉業を再現すること。
シティからサテライトと、シティからアーククレイドル。伝説よりも距離の問題があるが、それはチームラグナロクの持つ三極神の力でマイナスのモーメントを制御し、イリアステルの居城であるアーククレイドルへ続く道を作ることで解決可能だ。
そして最も大切な事だが、これらはモーメントを動かすことのできる者しか参加できないため、特殊な力を持たないミゾグチは主人であるシェリーの元へ向かうことができない。共に向かうことができない事実を悔やむミゾグチは《Z-ONE》のカードをクロウに託し、必ずシェリーに渡すと約束を交わす。
「では、我々は旧モーメントへと行く。頼んだぞ、チーム5D's!」
ヴァルハランダーと旧モーメントを接続するため、機材を積み込んだカートにメカニックのブルーノも乗せてチームラグナロクは出発。残るチーム5D'sの7人はダイダロスブリッジに向かい橋が架かるのを待つ。
それからしばらくして三極神が姿を見せ、力を放ち――未完成だった橋の先からアーククレイドルに向けて光の道が繋がる。
「行くぞ!」
掛け声と共にアクセルを踏み、チーム5D'sは最終決戦の地へと出発した。
避難する人々の中には暗雲を裂くように奔る光に気付いた者もいただろう。その上を駆ける決闘者の存在を知るのはチーム5D'sと深い関わりを持つ者だけ。
彼らは空を見上げ、人知れず戦いを始めようとする決闘者の無事を祈った。
「私も共に戦おう!」
殿を務めていたジェイドは諸々の準備を終えて追いついたブルーノ、もとい謎のDホイーラーと並走する。
旧モーメントからダイダロスブリッジまで急いで飛ばしてきた彼にセッティングお疲れ様、の意を込めて右手で作ったこぶしで左手の甲を軽く二度叩く。手話のお疲れ様のサインだ。
ブルーノが手話のことを知っていたのかはわからないが、ジェイドが自分を労ってくれているという感情が伝わったのか軽く微笑む。
「あの人って、遊星にアクセルシンクロを教えてくれた人よね」
「何故ここまで着いてきた?」
「君達の力となりたいのは当然だが、私の失われた記憶の答えがあの場所にある……そんな気がしてな」
アーククレイドルの影響を受けていながら問題なくモーメントを動かせている時点で特殊な事情があるのは間違いない。謎の多い彼が参戦する理由として皆は納得したようだった。
「ブルーノから話は聞いた。チームラグナロクの負担を考えるとこの橋がいつまで保つかはわからない。スリップストリームで後に続いてくれ!」
未来製のためこの中で一番性能のいいDホイールがチーム全体のさらなる加速を狙うため先頭を走る遊星と合流する。
「……じゃあアルターエゴ、後は話した通りにお願いね」
『了解した』
これで誰もジェイドの横にはいない。つまりジェイドの呟きを盗み聞きできる人がいなくなった。
彼の言葉を合図としてアルターエゴは通信回線を辿り謎のDホイーラーのDホイール――デルタ・イーグルへと移動、潜入する。
アーククレイドルにてこれから始まるデュエルとその結末がアニメ通りならば、シェリーはアキが発揮したサイコパワーにより守られ、アポリアはデュエルフィールドの崩壊による落下で損傷するもののZ-ONEがいる場所まで辿り着けている。彼の友とのデュエルさえなければ修理でなんとかできるだろう。
しかし、アンチノミーがライディングデュエルを行う特殊な空間だけはどうしようもできない。あの場所ではデュエルをした二人のうちどちらかが必ず死を迎える仕掛けが施されていて、しかも解除できるかは不明。
だからこそ、電子の世界で自在に動けるアルターエゴを頼るしかない。オカルトではなく人が積み重ねたテクノロジーで構成されたアーククレイドルならば、ハッキングで仕掛けを解除できる……はずだ。それが無理なら出口を開く時間の延長や、ブラックホールの発生を妨害できないか、敗者の判定のごまかしなどを試してもらう。
……どれも確実に成功する保証はない。ハラルドとオーディンが用意してくれたルーン石の効力と組み合わさってうまく運命を変えられますように、と祈ることしかできない。ジェイドはぐっとハンドルを握りなおす。
「変えるさ、必ず」
――きっと、そのために私はここにいる。
ダイダロスブリッジから延びる、天まで届く虹の橋。
遠目から見れば幻想的な光景だが実際にその橋を使用する者たちからすれば、もしハンドル操作を誤ったらという恐怖が常に伴う危険な道だ。
この街を救う使命感に突き動かされ、前だけを見て進む彼らは通り過ぎた背後に気を向けはしない――故に、ぐにゃりと空間が歪んでいたことに気付けるものはいなかった。
「――この時をずっと待っていた!」
歪みより突如として現れたのは黄金の邪竜。それに騎乗する謎の決闘者。
もしジェイドのレストインピースの中にアルターエゴがまだいたならば『異空間で見た黄色の大きなものはこいつだ』と伝えられただろうが……それはもはや意味のないことだ。
「誰!?」
「お前は何者だ……!?」
チーム5D'sが後ろを振り向けば、金と紫の髪をたなびかせる男――パラドックスがそこにいた。
チーム5D'sからすれば、状況的に恐らくイリアステルの一人だということしかわからない未知の存在。
だが、ジェイドからすれば待ち望んでいた存在。
男の鋭い目はシグナー達や協力者である謎のDホイーラーへと向けられ……最終的にジェイド・アトラスただ一人へと固定される。
歴戦の決闘者が集う時空を超えた舞台ではなく、最終決戦の地へ向かう彼らを食い止めるために男は行動を開始する。
「待たせてすまないZ-ONE! 私はここで、新たな仮説を現実のものとする!」
巨大なエネルギー反応を検知しこの状況を確認しているだろう友へと必要最低限の報告を済ませ、パラドックスは戦闘態勢へと移行する。
「ここで仕掛けてくるとかっ、探す手間が省けてよかったけどさあ!」
アーククレイドル内部のどこかに隠れていたためアニメと違ってイリアステル側がタッグになるところがあります、が起きてもおかしくなかったのでこの場所で姿を見せてくれたのはジェイドとしては助かる……が、今の最優先は全員でアーククレイドルへと無事に辿り着くことだ。
この虹の橋はチームラグナロクが三極神の力を合わせて実体化したもの。《Sin トゥルース・ドラゴン》の巨体による衝撃が加われば容易く壊れるだろう。
そうなれば皆は戦えないまま脱落。
アーククレイドルが落ちてネオドミノシティは滅びました。
未来人からの警告はそもそも届きませんでした。
よってこの先に待つのは破滅の未来のままです。
おしまい……で、誰も幸せになれない。
「ここは――」
遊星を守るという使命を根幹に持つ謎のDホイーラーが乱入者と戦おうとしている姿を見て、このままでは不味いとジェイドは宣言する。
「皆は先に行って! 彼は私が相手をする!」
相対するべきはアーククレイドルではなくパラドックス。ターンバックを行い皆の進行方向とは真逆にDホイールの頭を向ける。
「ジェイド!?」
驚きの声のみではジェイドの行為を止めることはできない。レストインピースはバック走をしていたがだんだんと速度を緩め……必然的にアーククレイドルに向かう仲間達との間に距離ができる。
パラドックスはチーム5D'sを追おうとはせず、ジェイド一人に狙いを定めている。足止めとして十分な役割を果たすジェイドへパラドックスは問いを投げかけた。
「ほう? チームの一員ではないあの男をここへ置いていくかと思ったが」
「よく言うよ、彼がアンチノミーだってわかってるくせに」
「フン」
イリアステルの仲間同士による潰し合い回避のためZ-ONEにより謎のDホイーラーはアンチノミーとしての記憶を取り戻し、結果として遊星は2対1のデュエルをすることになりました……な最悪の未来が瞬間的に頭に浮かんだのだ。ジェイドに迷う暇などなかった。
「いくぞパラドックス!」
「フ――もとより、そのつもりだ!」
ドラゴンが嘶くと歪みは大きく広がり、二人を飲み込んで別の場所へと連れ去っていった。ジェイドが危惧したような物理的被害はない。
謎の決闘者が放つ圧やドラゴンの気配が消えたと同時に遊星のスピードが落ち始めたことに気付いた謎のDホイーラーが叱責する。
「立ち止まるな! 何故ジェイドがあいつの相手を引き受けたのかを忘れるな!」
「っ……ああ、そうだな。すまない」
それ以降大きなトラブルはなく、アーククレイドルへと辿り着いたチーム5D'sは内部へと招かれることとなる――。
「う、ぬぐぐっ」
ジェイドが連れ去られた異空間は目に悪い黄色で埋め尽くされた世界。モーメントエクスプレス開発機構にて起きたことをしっかりと覚えたなら、ここがどこなのかわかったのだろうが……背景よりも「シャトルの中に隠れるのよ!」「閉じ込められた!」「罠か……」のイメージしかないため思い出せないままであった。
「目がまわっつあぁ!?」
どこに連れ去られたのか、どの方向が地面となるのかもわからないまま、乱気流に巻き込まれたようにぐるぐると視界が回る。Dホイールのハンドルを離さずにはいたが、進むことも止まることもできない。
「フィールド展開」
龍に騎乗したままのパラドックスが何かのカードを使用したことで重力と足場が生まれる。重力が発生したのはジェイドを基準としての真下ではなかったのでガシャンとDホイールと共に倒れるように落ちたが、特に怪我も傷もつかなかった。
「ここは……」
自分の足で立てるようになって改めて周囲を確認してみれば、どうやら自分とパラドックスは半球型のドームで区切られた内側にいることがわかった。
それにしても黄色単色の世界に追加したのが紫や緑が混ざった不気味な色合いというのはどうにかならなかったのか、とぐるりと見渡す。障害物は何もない。よく言えばさっぱりとした、悪く言えば殺風景な場所だ。
「ここは我々が別の時間へと移動する際に経由するだけの空間……その筈だった」
ここがどこなのか、という疑問への回答を語るのは竜の背から降りたパラドックス。その側に控えるようにして《Sin トゥルース・ドラゴン》は首を垂れる。
「だが、私の仮説を実証するべく過去へ遡ろうとした時に貴様が……冥骸王が私の仮説を否定したうえでここに閉じ込めた」
パラドックスとしては事実の再確認をしているだけだったが、ジェイドは初耳の事実に目を丸くする。
「私が? え、なにそれ……知らない……ペガサスさん襲撃以前にそもそもタイムトラベル中に捕まってって……どうして?」
「なっ…………巫山戯るな! 私が破滅の未来を変えようとしていたのを知った上で阻止し、その挙句に忘れるだと!?」
頭にハテナを何個も浮かべ本当に何も知らない表情をしている男に面食らったようだったが、その後すぐに怒りの感情が噴き出す。主人に呼応するように竜もジェイドへ牙を見せつける。
「貴様……一方的に押し付けるのならば、当然利用される覚悟は持っているのだろうな!」
パラドックスはジェイドに、いや、彼本人ではなく彼の内側にいる存在に向けて指さす。その目つきは相手を視線のみで射殺せるほどに鋭く尖っていた。
「貴様を倒してその力を手に入れ、私がZ-ONEを、未来を救う! 時を越えることのできる神の力、それがあればさらなる仮説の実証が可能になるのだ!」
「私も未来を変えたいのは一緒だけど、できれば利用じゃなくて協力して…………うん、このままだと駄目そうだな」
ジェイドと神の間で十分な情報共有がされていないために起きた悲しい事故をきっかけに話はすれ違ってしまった。これでは神本人が出てきて説明しても誤解を解くどころか火に油を注ぐだけだ。
……私ではないわたしの声が頭の中であわあわおろおろしている。繰り返す中で詳しく教えておくのうっかり忘れてたってどういう事なのか問い詰めたいが……それはこの状況では無理そうだ。こちら側の話をきちんと聞いてもらうにはデュエルで勝つしかない。
互いに望むのは互いの力。未来を救いたい思いは一致するが過程は全く違うため、その道が交わることはない。
「覚悟はできているか」
パラドックスは飛行能力を有する白いDホイールを呼び出さず、腕に取り付けたデュエルディスクを展開する。彼のエースモンスターであるドラゴンもカードに戻りデッキの中に入る。
「スタンディングのデュエルで?」
「当然だ。我々のデッキならばライディングデュエルよりもこちらの方が得意だろう? 敗北したとしても全力ではなかったなど言い訳ができず、力の差を確実に認める事ができる」
お互いに全力を出せるスタンディングデュエルだからこそ賭けが成立するのだと告げる。ジェイドはDホイールからデュエルディスクを取り外し、前へ数歩だけ進み出る。
かたや正史には存在しない転生者。
かたや本来ならば既に退場している滅四星。
あり得るはずのない決闘が始まろうとしていた。
「「デュエル!」」
――先攻はパラドックス。
「私のターン、ドロー。罪深き世界《Sin World》を発動!」
フィールド魔法が反映されたが、周囲の風景に特に変わった様子は見られない。先ほどパラドックスがこの空間を固定するために使ったカードが《Sin World》だったのだろう。イメージとしてはZEXALの《異次元の古戦場-サルガッソ》が近いのかもしれない。
「《Sin パラドクスギア》を召喚」
《Sin パラドクスギア》
星1/攻0
無数の歯車を組み合わせた機械がフィールドに出現。カタカタと規則正しく動く歯車はすぐにその姿を変えることになる。
「フィールド魔法カードが表側表示で存在するため《Sin パラドクスギア》をリリースして効果発動。デッキより《Sin パラレルギア》を特殊召喚し、手札に《Sin スターダスト・ドラゴン》を加える」
《Sin パラレルギア》
星2/守0
矛盾は変化し、対応する並行存在になると同時に罪に染まったドラゴンを手札に招く。
「エクストラデッキの《スターダスト・ドラゴン》を墓地に送り、手札の《Sin スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚!」
《Sin スターダスト・ドラゴン》
星8/守2000
パラドックスの手札から呼び出されたのは白黒の鎧を装着させられた星屑の竜。
「除外じゃなくて墓地に……というか持ってるのか《スターダスト・ドラゴン》」
偽ジャックの件で特別なカードであってもコピーカードを作れることは知っている。が、特殊召喚するための行動が少し引っかかった。
『Sin』モンスターを手札から特殊召喚するためのコストは墓地の《Sin パラドクスギア》を代わりに除外することでも代替可能なのだが、それは『除外』して特殊召喚するモンスターのみで可能なこと。アニメとOCGではほとんどの『Sin』モンスターの効果が変化しているためだ。
先ほど、パラドックスは『墓地』に送りモンスターを展開した。つまり使ったのはアニメ効果の方。
そして現在、フィールドにて黄色の歯車を回しているモンスターはチューナー。そこへパラドックスはモンスターを増やしたことでフィールドの合計レベルは10になった。
普通ならばフィールドのモンスターを使ってシンクロ召喚をすることになるが……。
「
「次元の裂け目から生まれし闇よ、時を越えた舞台に破滅の幕を引け! シンクロ召喚! 《Sin パラドクス・ドラゴン》!」
通常のシンクロ召喚と違い、チューナーは黒の輪に変化し直列に並んだ星と重なる。黒の体に白の骨格を被せたような、主人と似通った見目をした竜は翼を広げてフィールドに降り立つ。
《Sin パラドクス・ドラゴン》
星10/守4000
「今度は手札のモンスターを素材にシンクロ……!」
《Sin パラレルギア》と手札の『Sin』モンスター1体によるシンクロ召喚はOCG版のみで可能なことだ。間違いない。パラドックスのデッキにはアニメ効果とOCG効果のカードが混ざっている。
「《Sin パラドクス・ドラゴン》はシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地に存在するシンクロモンスター1体を召喚条件を無視して自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。……蘇るがいい、《スターダスト・ドラゴン》!」
《スターダスト・ドラゴン》
星8/守2000
コピーカードのためどこか色の違う星屑の竜が翼を丸めてパラドックスのしもべとして蘇らされる。
「《Sin パラドクス・ドラゴン》の持つ効果により、自身以外の自分フィールドに存在するシンクロモンスターの攻撃力の合計分、相手モンスターの攻撃力はダウンする。よって現在、お前のモンスターの攻撃力は2500ダウンすることになる」
ジェイドのエースモンスターは攻守5000とデュエルモンスターズにおいて最大のステータスを誇る。大幅な攻撃力ダウンにより殴り合いの火力勝負、その土俵に立ってきた……と、ジェイドが考えているのを察した男はその思考を鼻で笑う。
「フ、真正面から戦うと思っているようだが現実を見せよう。ライフポイントを2000払い魔法カード《天声の服従》を発動。宣言するのは当然、《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》だ」
パラドックス
LP 4000→2000
「………………え?」
使われたカードや宣言されたカード名は耳に入ったが、まさかすぎるカードに思わず呆けた声が漏れる。
「さあ、デッキを確認しろジェイド・アトラス」
「っ……《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》は、デッキに存在する……!」
デッキの中から自動的に排出された1枚、それを手に取り相手に見せる。相手が掲げるカードを確認したパラドックスは満足そうに口元を歪める。
「その後の効果について選択するのは貴様だ。そのモンスターを私の手札に加えるか、それとも私のしもべにするか。選ぶがいい」
「……召喚条件を無視し攻撃表示で特殊召喚する効果を選択する!」
もしパラドックスの手札に加えたとしても、《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》を墓地に送ってくれる保証などない。エースモンスターが相手の手札にずっと抱えられて取り戻せないより、突破が困難であってもフィールドに出てくれる方が圧倒的にマシだった。
「ではその通りにさせてもらう。さあ、我がしもべとなれ! 《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》!」
《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》
星11/攻5000
ジェイドの元から光と共に転送されたカードはパラドックスのフィールドへ。カードとなっている以上、神であっても逃れられない強制力の前にモンスターは屈した。
――これまでずっと後ろ姿を見てきた頼れるエースモンスターが、自分の目の前で奪われ、しかも敵として戦わされている。映画でこれとほとんど同じ光景を見せられた遊星はいったいどんな心境だったのか、それをジェイドは己の身で体感することとなった。
「カードを1枚伏せてターンエンド。エースモンスターを奪われた貴様がどう足掻くのか、見せてもらおう」