石造りの心臓   作:ウボァー

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今回のデュエルはメメント新規使おうと突貫工事で作ったものです。なのでミスがあるかもしれない……。

というかまーたこの時代にない種族が増えてる〜!幻竜族ってこと明かしてない中で幻想魔族追加は流石に早すぎるので新規融合モンスターの出番はまだ後です。ごめんね。


2/3大テノールとの邂逅

 Dホイーラーが狙われるゴースト事件。それは、新たな敵との戦いが始まると明らかになる合図。万が一はあるから気をつけろとジャックから忠告を受けたものの、遊星の手により解決するのを知っているため危機感はそこまでなかった。

 だからこそ、出会ってしまったのかもしれない。

 

「…………る、ルチ――」

 

「ああそれ以上言わなくていいから。へーえ、本当にホセの言った通りじゃん」

 

 デュエルアカデミアの臨時講師を始めてから二ヶ月ほど過ぎたころ、帰り道に彼は現れた。

 きしし、と男子にしては高めの声で笑う。長い赤髪をオールバックに、邪魔にならないよう後ろへ纏められており気の強そうな目がよく見える。

 

 ジェイドの目の前にいるのは間違いなくイリアステルの三皇帝、ルチアーノだ。

 

「なんでその格好で?」

 

「この時代に馴染む格好じゃないと怪しまれるからだよ」

 

 現在ルチアーノが着ているのはデュエルアカデミアの制服。イリアステルだと主張するような無限の模様がついた金属眼帯や真っ白なマントなどの目立つ格好ではない。いつもと異なる姿だがジェイドは原作知識から一目見てルチアーノだとすぐに分かった。

 ……その事実は変装をしても意味がないぞ、という意味として受け取られたようでルチアーノからの警戒は強まった。

 

「ま、自己紹介が省けるのはいいや。知っているだけ、なのかそれ以上かは……そのデュエルディスクは下ろしなよ。戦う気はない。オハナシしたいだけだからさ」

 

 ジェイドが戦闘態勢に入ろうとしたのを止める。ルチアーノに搭載された観測機器は彼の周囲にエネルギーによる空間の歪みが発生しつつあるのを捉えた。

 

 ――カードの精霊。赤き竜と等しい力を持つソレは、何をどう気に入ったのか破滅の未来を知る可能性が高い人間に力を貸している。

 相反する神の力を宿したレクス・ゴドウィンのように、扱う人間の思考を誘導して利用できれば良かったのだがそれは無理だろう。カードのくせに己の意思をはっきりと持っているようで、主人の害になるカタチでちょっかいをかければ大惨事待ったなしだ。

 

『――、――――!!』

 

 ごく僅かな空気の揺れを感知。こちらが何を考えているのか察したのだろうか、精霊が文句を言っているようだが無視。余計なことを言いだして脱線させたくなかった。

 

「話、ですか」

 

 デュエルディスクをゆっくりと下げ、ジェイドはルチアーノに問い返す。

 

「そ。単刀直入に言うけどさ、コッチにつく気はない?」

 

 ルチアーノが言い終わるより先にジェイドは後ろに数歩下がり、逃走が行動の上位になったとわかりやすく示す。

 

「誘拐とかそーゆーのじゃなくて、協力しないか? ってコト。サーキットの事も知ってるんだろ?」

 

「……私の力が無くても世界はちゃんと救われますよ。というかDホイールの免許ありませんので」

 

 一切の迷いなく、彼は断言した。

 

「うっわ、気付いてないのかコイツ…………まあいいや」

 

 監視対象である彼の周囲で起きていることはある程度把握している。だからこそサーキット完成の手助けは可能だと誘ってみたのだが拒否されてしまった。

 変なところで発揮される鈍感さを目の当たりにして肩の力が抜けたのか、ルチアーノはもういいやと諦めた。はぁ、とため息を吐く。

 

「…………あの、よかったらこれを」

 

 子供がしょんぼりする姿に何か思うところがあったのか、ジェイドは何かを取り出して渡す。そこにはピンク色の個包装がされたいちご味キャンディがひとつ。

 

「はぁ? 何コレ。これを僕に食べろって言うのかい?」

 

 いちご味は嫌いなのかルチアーノは顔をしかめる。

 

「え、ルチアーノいちご嫌いなのかしまった……あ、えと、プラシドは確かいちごが好きな筈でしたので!」

 

 ジェイドの前世の記憶の中ではタッグフォースについてもふわふわだが、プラシドといちごが描かれたファンアートを見たのはハッキリと覚えている。ルチアーノとホセは食べ物ではなく、カモメやクマのぬいぐるみを持ったファンアートが多かったはず。

 元は同一人物だし好物も同じじゃないか? と軽率な思いつきでやらかしてしまったのをなんとかリカバリーする。

 

「なんで会ったことのない奴の好物知ってんだよ気持ち悪……まあ、からかうネタとしてはちょうどいいか。それならありがたく貰っておくよ」

 

 しっかり引かれた。リカバリーはあまりできてないかもしれない。

 痕跡を残さず、人混みの中に紛れるようにして未来からの使者は消えていく。互いに何も言わなければバレることのない邂逅はこうして終わった。

 

「ただいま、ぁ?」

 

 特に寄り道をする事もなく帰宅。制作中のDホイールに対し集中していたのかこちらへ背を向けていた三人だが、ジェイドの声に反応してガタガタッ! と騒がしく立ち上がる。

 

「お、あとちょっとで完成しそう」

 

「…………ああ!」

 

 謎の間を置いて遊星が力強く答える。気合いたっぷりだ。最後まで手を抜かないという決意表明だろう。

 

 目立つのは黒いボディ。クロウが乗るブラックバードとは違い、漆塗りのような艶のある黒だ。グリップの一部やマフラー、カウルの縁を彩るように宝石のような装飾が施されている。

 背もたれが特徴的な形をしており、横から見ると三日月のようにぐるりと曲線を描きモノホイールのように見えなくもない……こうしてじっくり見るとどことなくホイール・オブ・フォーチュンっぽさを感じる。

 

 お金持ちなジャックのファンが頼んだのだろう、モノホイール特有の視界の悪さを回避しながらも形を似せようとする努力。ロマンがあっていいね……。

 うんうん、と頷いた後ジェイドは自分の部屋へ荷物を置きに足を向ける。

 

「……安心しろ、まだバレてない」

 

「嘘だろ? ここまで出来上がっても気付かないのは流石にねえって」

 

「誰宛なのか分かっていたらはっきり態度で遠慮を示すぞ。アイツはそういう男だ」

 

 顔を突き合わせて何かの相談。邪魔をしては悪いので足早に階段を駆け上がる。

 

「よし、と」

 

 二階の居間のテーブル上にデュエルアカデミアで使用している教科書を広げる。

 これから始めるのは生徒の皆が詰まっていた箇所をよりわかりやすく、噛み砕いた表現にする作業。臨時講師として苦手をなくす方向での講義をメインにし、授業についていけない子を減らすようにしているからだ。

 

 カリカリとボールペンの走る音が響く。

 ああでもないこうでもない、わかりやすいイラストを添えるのはどうか、板書の見栄えなどを考えつつ試し書きをして……気が付けばノートの最後のページまで使い切っていた。

 

「あ……まあ買うのは明日でもいいか」

 

 適当なチラシの裏にメモ書きを残し、清書は新しいノートを買ってからにしようと区切りをつけた。

 

 

 

 …………今日も朝から元気もりもりメメント・モリ!(現実逃避)

 

「ジェイド・アトラスだな」

 

 ジェイドといまからデュエルをしようとしているのは目元を隠した赤い帽子に赤ジャケット、ゲームですごく見覚えがある決闘者。

 買い物は明日の朝にしよう、と後回しにしたのが良くなかったのだろうか。昨日のルチアーノとの接触が宜しくないものを運んできたのだろうか。周囲になぜか人がいない道の真ん中で待ち構えていた彼こそ、有名なコナミくん――、

 

「オレは計画の邪魔になり得るものを放置する馬鹿二人とは違う。神という称号など機皇帝の前には意味が無いと教えてやろう」

 

「……ん?」

 

 ――がしないようなプライドに満ち溢れた言動。コナミくんは確か無口キャラだったような。それに機皇帝……?

 

「も、もしかしてプラシド!?」

 

「あいつらにバレないよう動くために旧式のデュエルロイドを使っているだけだ」

 

 リモートで動かしている、ということか。つまりゴーストと同じ。コナミくん本人ではない。ヨシ!

 ヨシじゃないぞ落ち着け自分。敵視されている理由がわからない。ホセとルチアーノから何か言われてイラッときて八つ当たりとか? ……自分、何かしたっけ?

 

「シンクロキラーの恐ろしさ、その身を持って知るがいい!」

 

 シンクロキラーかぁ。うん。【メメント】デッキにシンクロモンスター入ってないんだけどなー。その辺は聞いてないのかなー。

 デュエルをしないという選択肢は頭の中に無かった。互いに睨み合い、高らかに宣言する。

 

 

「「デュエル!」」

 

 

「私の先攻! ドロー……おぅ?」

 

 マズイ手札にモンスターが1枚しかない。というか初動札が無い。

 つまり――手札事故だ! というかこんなモンスター入れてたっけ? まああの押し掛け冥界神ならモンスターを増やすぐらいはできるか。

 

「モンスターをセット。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

 ジェイドの消極的な動きを見て、コナミ……いや、プラシドは嘲笑う。

 

「フン、どうやら満足に動けんようだな……ならばそのまま引導を渡してやろう! オレのターン、ドロー! 《ワイズ・コア》を守備表示で召喚!」

 

《ワイズ・コア》

星1/守0

 

 レベル1、攻撃力守備力共に0。卵のような外殻を上下に分け、その中心に青い光を宿した機械が現れる。

 

「デッキからレベル1の機械族モンスター3体を墓地に送り、魔法カード《カオス・ブラスト》を発動! フィールド上に表側表示で存在するレベル4以下のモンスター1体を選択して破壊する。オレが破壊するのは当然《ワイズ・コア》だ!」

 

「効果破壊のためのカードをもう持って……!」

 

 コアが効果により破壊され――機皇帝が起動する。

 

「ほう、知っているか。ならばその目にしかと機皇帝の力を焼き付けるがいい! 破壊された《ワイズ・コア》の効果発動! このカードがカードの効果によって破壊されたとき、自分フィールドのモンスター全てを破壊し、手札・墓地・デッキから《機皇帝ワイゼル(インフィニティ)》、《ワイゼルT(トップ)》、《ワイゼルA(アタック)》、《ワイゼルG(ガード)》、《ワイゼルC(キャリア)》を特殊召喚する!」

 

《機皇帝ワイゼル(インフィニティ)

星1/攻0

 

《ワイゼルT(トップ)

星1/攻500

 

《ワイゼルA(アタック)

星1/攻1200

 

《ワイゼルG(ガード)

星1/守1200

 

《ワイゼルC(キャリア)

星1/攻800

 

 プラシドのデッキから飛び出す5体のモンスター。それは機皇帝を構成するパーツであり、合体により真の力を発揮する。

 プラシドが操るのは(スカイ)(グラン)(ワイズ)のうち、人を司る機皇帝。

 

「合体せよ、《機皇帝ワイゼル》!」

 

 プラシドの号令に合わせて《機皇帝ワイゼル(インフィニティ)》を中心にパーツ達が変形し、1体のモンスターとして組み上がってゆく。

 胸部の無限の穴の奥に蠢く青白い光。シンクロモンスターを捕獲吸収可能という恐ろしき力を秘めた、破滅の未来から来た絶望。

 

「《機皇帝ワイゼル(インフィニティ)》の攻撃力と守備力は自分フィールドに存在する『ワイゼル』『スキエル』『グランエル』と名のついたカードの合計となる!」

 

《機皇帝ワイゼル(インフィニティ)

攻0→2500

 

 ワイゼルパーツ達のステータスが中核となる《機皇帝ワイゼル(インフィニティ)》1体に集約される。世にも珍しき合体モンスターを目の当たりにしたジェイドが考えているのは――これアニメ版なのかタッグフォース版なのかどっちなんだろう? と危機感に欠けたものだった。

 

 アニメ版は《機皇帝ワイゼル(インフィニティ)》しか攻撃できない縛りになっていたが、タッグフォース版はそれが無い。アニメ準拠の世界だからアニメ効果だと思うが、原作にいない自分がいることでイリアステルへ影響が出て変わっているかもしれない……。

 

「呆けている暇はないぞ! バトルだ! 《ワイゼル(インフィニティ)》、そのセットモンスターを粉砕しろ!」

 

 ジェイドの思考を断つかのように絶望の振るう剣がカードを貫いた。メェエ、と羊の苦しそうな鳴き声がセットモンスター――《メメント・スリーピィ》の破壊と同時に聞こえてくる。

 

「これで少し動ける! 戦闘で破壊された《メメント・スリーピィ》の効果で《メメント・ウラモン》をデッキから墓地に送る! 『メメント』モンスターの効果により墓地に送られた《ウラモン》を自身の効果で特殊召喚、そして特殊召喚に成功したことで《ウラモン》の効果発動! 墓地の《スリーピィ》を手札に加える!」

 

『モンモン〜ッ!』

 

《メメント・ウラモン》

星2/守400

 

 やる気満々な毛玉悪魔がデッキから墓地へフィールドへ。さらに墓地のカードを回収する。

 

「チッ……戦闘破壊を利用してくるとはな……! カードを2枚セットしてターンエンドだ!」

 

 守備力400の《ウラモン》に対して追撃は無し。つまりアニメ版! ヨシ!

 相手エンドフェイズ、ジェイドの手が動く。

 

「自分フィールドに『メメント』モンスターが存在するため、罠カード《メメント・フラクチャー・ダンス》発動! 左側のセットカードを破壊する!」

 

「何!? 貴様、よくも……!」

 

 破壊したのは《ゴースト・コンバート》。記憶にあんまり残ってないからアニメオリジナルのカードかな。えーと効果は……機械族1体を墓地から除外して相手の効果発動を無効にし破壊、再びセット? なんか強いことしか書いてないぞこの罠。破壊できてよかった。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 ……モンスターが! 来ない! どうして。

 

 手札の《スリーピィ》から動けるから大丈夫だと思われているのだろうか。あまり出番のなかった融合モンスターのメメントが使って欲しいと駄々を捏ねているのかもしれない。

 ……なら、その希望に応えてあげねば!

 

「フィールド魔法《冥骸府-メメントラン》を発動!」

 

 ソリッドビジョンにより、フィールド魔法のイラストが決闘者達のいる空間を覆うように反映される。

 そこは暗い暗い地の底。数多の篝火で照らされる王無き玉座の周囲には骨と宝石が敷き詰められている。

 

「ここは……」

 

『モ! モンモン!』

 

 《メメント・ウラモン》が小さな両手を上げてぴょこぴょこと喜ぶ。

 

「ここはメメント達の王が住まう場所。……それと折角のシンクロキラーを見せてもらって悪いけど、このデッキにシンクロモンスターは入ってないんだよね。代わりに、と言えるかわからないけど見せてあげようか! 《メメント・スリーピィ》を召喚!」

 

《メメント・スリーピィ》

星3/攻800

 

 先程ワイゼルにより戦闘破壊された羊が召喚される。

 

「召喚に成功した《メメント・スリーピィ》の効果発動! 手札・フィールドのモンスターを融合素材にし『メメント』の融合召喚を行う!」

 

「融合、だと!?」

 

 驚くのは当然だろう。魔法カードの使用に制限がかかるライディングデュエルの普及により、融合召喚は扱いにくく古臭いものとなっている。未来のシンクロ全盛期の時代を知るプラシドなら尚更だ。

 魔法カードを使わない、モンスター効果による融合。ライディングデュエルでも問題なく使える一手が男の目の前で披露される。

 

「召喚条件は『メメント』2体。フィールドの《スリーピィ》と《ウラモン》で融合召喚! 来い、《メメント・ツイン・ドラゴン》!」

 

《メメント・ツイン・ドラゴン》

星7/攻2800

 

 殆どが骨のため厳つく見える頭には帯電する角、背中には黄色と緑色の宝石で囲われたもう一つの口。ある2体の通常モンスターの要素を持つ雷族が融合召喚の渦から現れた。

 

「《メメント・ツイン・ドラゴン》の効果! 『メメント』モンスター――自身を破壊し、デッキから《メメント・シーホース》と《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》を手札に加える。鉱腔雷来(こうこうらいらい)!」

 

 背中の口から放電し、自身の体を雷で焼く。融合のメメントは己の存在を対価に、ジェイドの手へ新たなメメントを連れてきた。

 

 この効果破壊により《冥骸府-メメントラン》や《メメント・ツイン・ドラゴン》の効果で更に特殊召喚が可能になるが……やめておく。

 世界に1枚しかない《レッド・デーモンズ・ドラゴン》を3枚複製できる技術力の持ち主を前にして情報を出しすぎるとマズイ気がする。【メメント】で大暴れした結果、偽ジャック騒動が偽ジェイド騒動になる可能性はゼロではない。

 

「自分フィールドに表側表示モンスターが存在しないため、《メメント・シーホース》を自身の効果で特殊召喚し効果発動! 《シーホース》を破壊してデッキから《メメント・エンウィッチ》と《メメント・ゴブリン》、《メメント・メイス》を墓地に送る」

 

 これで墓地にメメントモンスターは7種類。準備は整った。

 

「墓地の『メメント』モンスター5種類をデッキに戻し、手札から《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》を特殊召喚する――!」

 

《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》

星11/攻5000

 

 各メメントの宝石の光がフィールドを照らす。手札から勢いよく飛び出した幻竜が体に纏った宝石が光を反射し、幻想的な風景を作り出す。

 ……召喚口上は? まだ? って目で訴えかけている。やめなさい。

 

「自分フィールドに他のモンスターが存在しない場合、《冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ》は相手モンスター全てに1回ずつ攻撃ができる。さあ、バトルだ! 《ワイゼルT(トップ)》に攻撃!」

 

 召喚口上やっぱり無いのか、としょんぼりしたのはほんの数秒。攻撃の指示に従い、両腕を構えてエネルギーを溜め始める。

 

「ならばその攻撃宣言時に罠カード《ツイン・ボルテックス》を……ッ馬鹿な、発動しないだと!?」

 

「《冥骸府-メメントラン》がある限り、『メメント』モンスターが戦闘を行う場合、ダメージステップ終了まで相手は魔法・罠カードを発動できない! 穿て《テクトリカ》!」

 

「《ワイゼルG(ガード)》の効果発動! 相手モンスターの攻撃対象をこのカードに変更する!」

 

 機皇帝は腕を上げて構え、攻撃を受け止める。圧倒的なステータスの差により片腕は消し飛んだが、他のパーツとプラシドは無傷。

 

「《ワイゼルG(ガード)》は守備表示のためダメージは発生しない……。けどまだ攻撃は可能!」

 

 全てのモンスターに攻撃できるため、攻撃誘導効果は結果としては意味のない行動だ。だが……最後まで効果を使うその姿勢は決闘者として尊敬できるもの。

 

「《ワイゼルC(キャリア)》に攻撃! ――オーバーウェルミング・ボーンフォース――!」

 

 ようやく得た攻撃の口上にテンションが上がったのか、竜はその腕に砲撃のための力を溜め込んだままワイゼルの脚部を殴りつけ――盛大な爆発が起きた。

 

「ぐああああぁぁあああーーーーっっ!!!!」

 

プラシド

LP4000→0

 

 一撃でライフポイントを削り取る、とてつもない威力の攻撃。それが巻き起こした爆風により、対戦相手とそのモンスターが見えなくなる。神と呼ばれるほどの力を持つモンスターの全力を受けたプラシドの無事が確認できないまま、デュエル終了のブザーと叫びが響く。

 

「《テクトリカ》! これは流石にやりすぎで……ッ!」

 

「ぐ、うおおっ……! 覚えたぞ、ジェイド・アトラス! 貴様も必ず、オレが、倒す……!」

 

 攻撃の衝撃で回路が破損したのかコナミくん(プラシド)の全身がバチバチと漏電する。駆動部を無理やりに動かしてこちらを指差した状態になり……ブツン、と一際大きな音が鳴り響く。操るものがいなくなった機械はその場に崩れ落ちた。

 

「え、あ、どうしよこれ……? わぁ消えた」

 

 過去の世界に未来の技術を残さないように転送された、のだろうか。それにあれだけの大きな音を出したデュエルなのに観客は一人も来なかった。

 

「……そう、か。もう始まるんだ……」

 

 現実味がないことを続けて目の当たりにしたことで、これまでの日常が終わる実感がようやくジェイドに湧いてきた。

 

「………………私はDホイール持ってないからセーフのはず、多分!」

 

 これからやってくるライディングデュエルの大会は流石に参加できないだろうし、原作にこれ以上関わることはないはず。

 その思いが破壊されるまであと数日であることをまだジェイドは知らなかった。




オーバーウェルミング・ボーンフォースという攻撃名はもちろんジャックの魂であるドラゴンの攻撃名を意識しています。
英語で書くならoverwhelming born force、で圧倒的な生まれ持った力という意味に……え?圧倒的な骨の力だと思ってた?
……そっちでもまあ特に変わらないのでヨシ!
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