レイヴンの火と呼ばれる大災害があった。惑星ルビコン3を襲ったその大災害はルビコンの大半を焼き尽くし、アイビスの火と呼ばれた以前の大災害と同等か、それ以上の被害をもたらした。レイヴンの火は一人の独立傭兵、レイヴンによって引き起こされ、ルビコンにとどまらず、全宇宙から犯罪者として追われる身となったその独立傭兵の行方は誰も知らない。
★★★
「生命活動が行われている惑星を検知 オートパイロットを解除 強化人間 C4-621 覚醒しました」
宇宙を漂う一機のACがある。ブースターも隕石などを回避するとき以外は沈黙している、まさに漂流していたそのACのカメラアイに光が点る。
「………」
コックピットでCOMボイスに呼応するように身じろぎする人型の物体。声すら出せない、ほとんどの機能が停止している……強化人間C4-621が起動した。頭に刺さったコードには赤い粒子が流れ、生命活動を再開したことを表している。
『何かあったのか』
ほとんどの機能が停止しているとはいえそれは感情、外部への表現手段や、外部から摂取するものに限る。思考回路は正常どころか常人以上に早く、正確だ。さもなければ621はレイヴンを名乗る前に死んでいる。
『生命活動のある惑星か。漂流期間は…ざっと百年と少しといったところ。自分を受け入れてくれればいいが、駄目だったらまた眠れば良い』
旧式の強化人間である621はコーラルさえあれば栄養補給、生命維持を行える。ルビコンのコーラルは焼き払ったとはいえ、621のジェネレーターは技研製のコーラルジェネレーターを採用しており、ただ生きるだけであれば半永久的に生命活動が可能となる。脳などの生体部品も冬眠状態になれば長期保管が可能だ。
『人生を買い戻す、普通の人生、ウォルターからの最後の命令…』
自分をゴミ山から救いだし、意味を与えてくれたハンドラー・ウォルター。しかし彼はもういない。飼い犬の621が拠り所としているのは常日頃から言われ続け、自分が居なくなったときはこれが最後の命令だとして刷り込まれた命令。
『機体に異常は無し。まずは着陸か』
忘れかけていた重力に身を任せ、落下する。惑星封鎖機構の衛星砲が脳裏をよぎるが、見渡す限りそのようなものがないことは確認済みだ。
『ここで起動』
上昇推力に優れたブースターから鮮やかで真っ赤な炎を吹き出し、落下速度を下げ
ズン…
静かに着陸した。場所は狙いどおり身を隠しやすい豊かな森の中。すぐさまスキャンを実行。小動物は検知したがその他の反応はない。
『着陸成功。機体に異常は無し』
カーゴランチャーでお星さまになった経験もある621にとって、ただ宇宙空間から自由落下からの着陸は容易すぎた。
『探索開始。この惑星の知的生命体と接触しよう』
もし621が新世代の強化人間であったなら、豊かな緑や小動物に感動したかもしれない。しかし、あいにく脳を焼かれた621にはただ生命力豊かな惑星だという認識しかない。だが621は知らない。ここが惑星地球であることを。621は知らない。木星戦争の頃と現在とではあまりにも時が経っており、ルビコンでまれに聞く地球とはかけ離れた、半ば異世界と化していることを。621は知らない。
「宇宙からの来訪者、ラプラスに報告かな」
人知を越えた、人によく似た人ならざる存在が跋扈しており、既に捕捉されていることを。
★★★
holoXのアジト side
「と、いうわけなのだけど」
普段はのほほんとした雰囲気の会議室に緊張が満ちていた。ぽえぽえ言って真面目に話すらしない掃除屋がまともに会議をしていることからも緊急性が伺える。
「私の見立てだと、この宇宙からの来訪者の危険度は最大。というのも今までも何度か宇宙からの来訪者はいました。でもそれらはいずれも宇宙船や単身で地球にたどり着いた者です。しかし、今回は違う。明らかに戦うための形をした人型ロボット、兵器ということです」
ホワイトボードには彼女が捕捉し、書き上げたイラストが貼られており、ロボットの右腕には明らかにライフルと思われる武装が握られている。
「話し合うのはただ一つ。この来訪者と接触するか否か。我々のアジトに近い森に着陸したことや、武装していることを考えるとholoX以外の組織に接触され、万が一holoXと敵対すればどうなるか分からない。今ならどこよりも早くholoXが接触できる。どうする?」
「ラプラスが決めてよ総帥でしょー」
「こよもそれでいいかな」
「ラプ殿、決めてください」
そしてholoXの総帥が出した結論は
「分かった。接触してみよう。ただ何があるか分からない、実際に行くのは我輩と新人と侍、幹部は監視役、博士はアジトでバックアップを頼む。こういうときは組織のトップが行かねばな」
★★★
621 side
『スキャンに感あり、まっすぐ向かってくる。既に捕捉されている』
歴戦の勘が偶然ではなく捕捉されていることを察する。間髪入れず
「メインシステム 戦闘モード起動」
愛機のモードを戦闘モードに。命の価値が紙より軽く、クソ傭兵がぶっ殺してやる!が蔓延っていたルビコンで生きてきた621の反応は当然といえよう。
『ミサイル、ロックオン。一応まだ撃たないでおくか』
何せ第一村人というやつだ。これがルビコンなら挨拶代わりにミサイルをぶちこんだところだが、すんでのところで思いとどまる。そうしていれば相手の姿が見え…
『ACではない?生身の人間…いや、角が生えている者と、さっきから定期的に超音波を飛ばしてくる者と、ブレードを構えて一切軸がぶれていない者。普通じゃないな』
自分の知る人間とかけ離れた姿に警戒を強める。下手をすればこのACとも互角に戦うかもしれない。見た目で判断してはいけないことは地下で放電攻撃を行ってきたMTで勉強済みだ。
お互いがお互いを視認できる距離になったところで沈黙を破ったのは
「おまえは何だと聞きたいが、まずはこちらが名乗るべきだろうな、宇宙からの来訪者よ!」
一番チビの癖に威圧感だけは誰よりも強い。直感的に彼女がリーダーだと判断、ミサイルのロックオンを済ませランセツを構える。それに応じるようにブレード(後に刀と呼ばれるものだと知る)とナイフが向けられる。ナイフに至っては強化人間の動体視力でなければ見失うほどに扱いが上手い。そんな張りつめた空気でも角の彼女は一切表情を変えず
「刮目せよ!我輩が秘密結社holoXの総帥、ラプラス・ダークネスだ!単刀直入に言おう!お前をholoXの一員にしてやろう!」
幼げな声とは裏腹にその圧は強い。まるで氷原の化物を見ているような感覚。
「黙っていては分からんぞ!返事を聞こう!」
だが621の返事はない。ただ黙ってランセツを降ろし、ミサイルのロックを外す。
「どういうことだ?それを降ろすということは敵対はしないということで良いのだな?」
621は動かない。喋らない。しかしその内心は焦っていた。
『まずい、もうエアもウォルターもいない。意志疎通はどうすればいいんだ…』
知的生命体との接触を目指していた621はさっそく分厚い壁に直面した。
相対性理論によれば遠すぎる旅と年月と速度が合わさるとタイムスリップが味わえるそうです(ガバガバ解釈)
本作C4-621のアセンブル
初期フレーム一式
右腕:ランセツRF
左腕:必殺ぶったぎり
右肩:6連ミサ
左肩:パルスキャノン
ブースター:グリッドウォーカー
FCS:WLT 001(技研製全距離FCS)
ジェネレーター:NGI 000(大コーラルジェネ)
アサルトアーマー
このアセンでどすこいエアちゃん号の撃破を確認済みです。
筆者は最近ホロライブを知ったにわかのにわかです。ホロメンの一人称とか口調とか違和感あるかもですがその場合は指摘していただけると幸いです。