秘密結社とワタリガラス   作:ガチタン愛好者

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1人でも読んでくれる人がいる。それだけで満足です。素敵だぁ。


第2話~契約そして会合~

621は意志疎通を行うことができない。今まではウォルターが代わりに依頼主に意思表示をしたり、エアがハッキングで意思表示をしたりしていたが、もうそれは望めない。だが彼女らは聡明だった。

 

「意志疎通ができない?喋れない?それとも人間は乗っていなくて無人?…」

 

武装を降ろしたことで張りつめた空気は霧散したが、その代わりになんとも言えない微妙な空気が漂う。そのとき

 

『みんな!聞こえる!?とりあえず役立ちそうなものを送るね!』

 

その声と共に不思議な機械が2つ、突然出現した。時空を越える薬すらも作成可能な博士にとって物質転送装置の作成は朝飯前といったところか。

 

『光学迷彩装置とホログラムキーボード装置!これで意志疎通と隠蔽ができるはず!』

 

ヴンと機械が唸れば621のACの前にその巨体でも使用できるサイズのホログラムキーボードが現れる。彼女らをすっぽりと覆う光の膜は光学迷彩か。とりあえずは交渉の場が整った。恐る恐るACを動かしてキーボードを触れば

 

『これでいいのか?こちらの意思は通じているか?』

 

文字が投影される。幸い言語は通じるようだ。

 

「ああ、見えている。返事を聞こうか」

 

『まずはこちらも名乗ろう。強化人間C4-621。それが名だ。独立傭兵を……していた。今は宇宙を長く漂流した末にここにいる』

 

「強化人間C4-621か。聞く限りだとお前は人間なんだな?」

 

『ほとんどの機能は停止しているが、生物学上は人間に分類されるだろう』

 

「では、名乗りも済んだところで返事を…」

 

『あいにく自分には飼い主がいない。以前まではウォルターの指示のもと独立傭兵をしていたが、もうウォルターはいない。自分としてもどうしていいか分からない。最後の命令は人生を買い戻して普通の人生を送れ、だった』

 

「独立傭兵といったか、であればそちらの流儀に合わせるとしよう」

 

621の前に投影されたのは契約書のホログラム。雑に作られてはいるが

 

 

 

契約者:秘密結社holoX 総帥 ラプラス・ダークネス

 

契約内容:holoXの護衛及び支援

 

期間:好きなだけ

 

報酬:出来高払い、可能な範囲での要望に対する対応

 

 

 

「急拵えのホログラムですまない。後で文書として渡そう。あいにくこちらはお前の能力を知らない。だからこその出来高払いだ。要望に対する対応というのは我々にできる範囲でお前の望みを叶えてやろうということだ。傭兵というのは契約が大事なのだろう?返事を聞こう」

 

思考する621。契約内容も報酬も詳細は不明。はっきり言ってルビコンなら断っている。だが頼れる者が誰もいない。そして長い旅の末の出会い。結論は既に決まっていた。

 

『分かった。契約成立だ』

 

期間は好きなだけ。早い話が騙して悪いが案件だったなら逃げればいいだけのこと。今までも怪しい依頼を受けては騙し騙され、騙されれば力で踏み倒してきた621にとって、怪しい依頼はむしろどんと来いであった。

 

「よし!お前をholoXの傭兵として雇おう。まずは場所を変えるとしよう。いつまでも森の中では安心できない。博士!」

 

『なに~』

 

「このロボットが入るガレージのようなものはあったか?」

 

『あるよ~』

 

「あるの!?」

 

『昔ラプちゃんがガ○ダム欲しいって言ったじゃん。そのときに本体は資金的にも無理だったけど地下ガレージだけは作ったんだよ。おっきな作業場として活用してるけど物をどかせば立派なガレージだよ』

 

「よし!そこに行こう!着いてこい傭兵!」

 

契約成立した途端に雰囲気が180度入れ替わった。見ればさっきまで刀とナイフを向けていた二人はぽやぽやした雰囲気で喋りながら歩いているし、ラプラス・ダークネスも先ほどまでの圧は成りを潜め、見た目相応の幼子のような振る舞いをしている。だからこそ621は警戒する。

 

切り替えができる相手は強い

 

脳裏に浮かぶのは一人の女傑。研究者でエンジニアの癖に笑えるACに乗って戦う彼女はまさしく強者だった。もっとも彼女の場合は切り替えというより達観に起因するものだったかもしれないが。

 

 

 

★★★

 

 

 

holoXのアジト side

 

ひとまずACを搬入したことで一息つく。ガレージのクレーンで慎重に武装を外せば一通りの作業は完了だ。

 

「ようやくゆっくりと話せるな。まずは降りてきてくれるか?我々は傭兵の顔も知らない」

 

『分かった。だが先にいくつか言っておく必要がある』

 

そうして621が話したのは

 

・身体の機能のほとんどが停止しているため、ACを降りると目も見えないし声も聞こえない

 

・移動も床を這いずる程度しかできない

 

・当然ホログラムキーボードも使用できない

 

ということだった。想像以上の状態にholoXの面々も戸惑いを隠せないが、いつまでもこうしているわけにもいかない。

 

「その程度なら安心してくれ。こより!」

 

「はいはーい!1時間程度あれば何とかするよ!」

 

「助かる。ありがとう」

 

きっかり1時間後にこよりが持ってきたのはゴテゴテした車椅子。カメラやマイクがテープでくっついているそれはお世辞にも綺麗とは言いがたい。

 

「有り合わせで作ったから汚くてごめんね。後でもっとカッコいいやつ作るから!」

 

「ではさっそく傭兵を降ろそう。聞いた限りだと自力ではほぼ動けないらしい。風真!沙花叉!二人で傭兵を降ろしてやってくれ!」

 

「はいはーい」

 

「了解でござる」

 

ゴンドラでコックピットが開いたコアへ向かう。コックピットを覗き込んだ二人は

 

「「っ!」」

 

だが流石は用心棒と掃除屋、頭に刺さったケーブルを引っこ抜き、てきぱきと引っ張り出す。車椅子に乗せれてやれば

 

『助かった。!?、素晴らしい。会話ができるのか』

 

車椅子のスピーカーから合成音声が聞こえる。脳波を読み取り、移動から会話までこなすそれは今の621にとってなくてはならない代物だった。

 

「これラプラスに見せて大丈夫?結構ショッキングだけど」

 

「多分大丈夫でござる。ラプ殿はラプラス・ダークネスでござるからな」

 

ゴンドラを降ろし、holoXの面々と対面する621。その姿は

 

 

半透明のテープでぐるぐる巻きにされたミノムシのような外見。かろうじて僅かに動く四肢が人間であることを主張しているが、脳波読み取り器具も相まってそれはまさに

 

 

『見ての通り、ACを動かすための生体部品。それが自分だ』

 

 

 

★★★

 

 

 

「その…確認だが我輩の声は聞こえているな?」

 

『ああ、きちんと聞こえている』

 

「体にどこか不調はあるか?」

 

『不調が出るようなパーツは存在していない』

 

「……」

 

流石のラプラス・ダークネスといえど笑えない冗談に面食らう。

 

「自己紹介とか、我々の目的とか色々話したいことは山積みだ。だがひとまずはあのロボット、ACといったか?あれがなくても生活できるようにはなってもらいたい。見ての通りあれで我々を護衛するには不便が過ぎる」

 

『具体的には?』

 

「自力で移動して、見て、聞いて、生活できるようになってもらいたい。我々に介護をする暇はないからな」

 

『分かった。では今からどうすればいい?』

 

「博士のラボに行ってくれ。何から何まで博士頼みだが博士にできないことは……ほとんどないからな。博士」

 

「はいはーい。じゃあ一緒に行こっか」

 

621とこよりがラボへ向かったのを見て改めて話し合いを始める。

 

「ノリと勢いでやってしまったがどうだろうか?」

 

「お仕事おーしまい、沙花叉は寝るねー」

 

「新人!おい!……まああいつはいつものこととして幹部と風真はどう思う?」

 

「私としてはもう少し様子見かな。何せあの傭兵の経歴とか実力とか不明だもの。しかもACとかコーラルとか知らない単語を喋ってたし」

 

「かざまもルイ姉に賛成でござる。ただああいった者は契約はしっかりと守るはずでござる。こちらが不義理をしなければ裏切る心配はないかと」

 

「とにもかくにもアイツがまともに動けるようになってからだな。ん?」

 

[ごめん!だいぶ手こずりそう。流石の私でも最低限生活できるようにするために1ヶ月は欲しいかな。未知が多すぎるんだよ。ちゃんと休みは取るから心配しないで。何かあったら連絡するね!]

 

「博士ですら手こずるとは。一体何なんだ、あいつは」

 

だが見るものが見れば腰を抜かすだろう。旧式の強化人間の焼き付きを中和する技術は、ルビコンでさえ確立するまでに多くの時間と犠牲を払った。それを基礎知識ゼロから1ヶ月でやって見せると豪語する彼女はまさしくholoXの頭脳と呼ぶにふさわしいだろう。

 




調べると頭を抱えるのはルビコンの建物のサイズよ。てかグリッドとか物理法則に真っ向から喧嘩売るのやめてもろて。

ご都合主義の申し子、博衣こより博士、愛してます(執筆する側として)
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