秘密結社とワタリガラス   作:ガチタン愛好者

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誤字脱字報告感謝です。自分じゃ気がつかないもんですなぁ。何度も確認したのに。

あ、更新が一気に遅くなったのは、VRChatにハマったり、ホロライブの過去のアーカイブとか切り抜きを見たりしてるからです。何で数年前から見なかったのやら(伝説のドラゴンを見ながら)


第6話~食事~

新しい体を手に入れた621だが、当の本人はあまり喜びなどを感じてないように見える。何せ今までも機械の補助があれば自由に生活できていた。それでもholoXの皆は、621が唯一の望みである普通の人生を、今この瞬間から歩み始めたことに喜ぶと共に、あらゆることに無関心な621の興味を引くべく様々なアプローチを図った。

 

「傭兵、体の具合はどうだ?何かやってみたいことはあるか?」

 

「特にない」

 

「そう言わずに…そうだ!食事とか今までやったことないだろ?」

 

「この体も食事は不要だ。エネルギーもコーラルジェネレーターが供給している」

 

「でも食事は可能だろ?一般的に普通と言われる生活に食事は付き物だ!ルイに頼めば大抵のものは作ってくれるぞ!な!」

 

「ラプ、私にもできないことはあるんだよ?」

 

「そうだな…」

 

621の記憶に食事に関する記憶、知識はほとんどない。ウォルターも食事は一人で行っていたし、他の人間との関わりがほとんどなかったために、食べたいものと言われても思い浮かばない。そもそもどんな食べ物があるのかも想像がつかない。そんな中、唯一思い浮かんだ食べ物と言えば

 

「味気ないレーションを食い、泥水のようなフィーカを啜る。うんざりするが、それこそが人間だ」

 

「?」

 

「以前、とある任務で戦った相手が言っていた。そのときは決着が付く前にお互いに撤退したが」

 

その名はアーキバス・コーポレーションの強化人間部隊、ヴェスパーの第3隊長オキーフ。ろくでもない人間が多すぎるルビコンにおいて、数少ない(地球視点で)常識人だ。

 

「ルイ、フィーカって?」

 

「一般的にはスウェーデン語で甘いものとコーヒーを飲んで休憩すること。カフェの語源とも言われてる。ただ、今の話を聞いた限りだと休憩というより不味いコーヒーそのものを指してるみたい」

 

「自分もよく分からない。だが食べ物の記憶と言えばこれくらいだ。可能か?」

 

「どうしたらいいかな~。作ろうと思えば美味しいのを作れるけど、多分その人が言ったレーションとフィーカはお世辞にも美味しいとは言えないものだろうし…」

 

恐らく、ただ食べ物の話をしたというより、何か人間としてのあり方を伝えたかったのだと考えた鷹嶺ルイ。そんな彼女が作ったのは

 

 

 

「なぁ、ルイ。我輩の知ってるコーヒーの香りじゃないんだが。というかその謎の塊は?」

 

「そりゃあ色々混ぜ物をしてかさ増ししたコーヒーだからね。レーションはholoXのアジトにずっと置いてあった非常用のやつ。どうせ食べる機会は来ないから」

 

「何でそんなものを傭兵に食わせるんだ?あいつにとって生まれて始めての食事だぞ?」

 

「多分ね、621にとってはこの食事が合ってるんじゃないかな。色んな意味で」

 

 

 

鷹嶺ルイがレーションとフィーカを持ってくる。それを受け取った621は僅かに顔をしかめた。

 

「これが匂いというものか。どんな匂いが良い匂いと定義されるのか分からない。だが、これが良い匂いでないことは分かる」

 

レーションを一口、しかめっ面は変わらない。

 

フィーカを一口、苦い泥水の味に更に顔が歪む。

 

それらを飲み込んだ621は

 

「…不味い」

 

言葉とは裏腹にしかめっ面の顔は泣きっ面に。どこか懐かしむ顔で

 

「ああ、うんざりする。これは」

 

そう呟いた621の顔はどこか爽やかな顔へ変わっていた。

 

 

 

★★★

 

 

 

差し出されたフィーカを嗅いだ621

 

(ひどい匂いだ。匂いの定義は分からない。でも良い匂いでないことは分かる)

 

そしてフィーカを一口飲んだ621は

 

(不味い、顔が歪むのが分かる。ああ、こういうことか)

 

脳裏に過るのは、稀にガレージへ湯気の立つ黒い汁の入ったカップ、恐らくフィーカを片手にやってくるウォルター。そういうときは決まって思い詰めてどうしようもなくなったとき。気分転換のためかガレージの柵に寄りかかってフィーカを飲む。飲む度に顔をしかめるが、暫く経つと少し顔色を良くして去っていく。そんな記憶を思い出す。

 

(ウォルターも飲んでいたのだろうか)

 

次にレーションへ手を伸ばす。薄茶色のそれは食欲を誘う色とは言い難い。

 

(無味だ。フィーカは苦い味があったがこれは無味だ。感触だけはある)

 

だが確実に腹に貯まっていく感覚。もそもそとした、フィーカと混ざって名状しがたい味が広がる。それらをようやく飲み込めば

 

(なるほど、確かにこれは、うんざりする。だが…)

 

控えめに言って悪い気分。だが吐き出す気にはなれず、それどころかどこか懐かしい感覚に襲われる。

 

(ルビコンでも、こんなだったな。出撃すればうんざりすることしかない)

 

会えば悪態のG5、会えば嫌味の第2隊長、会えば殺し合いのMT共

 

(だが、不思議と悪くない気がする。悪いことばかりだったのに)

 

湧き出る様々な思い出。他愛もない会話、holoXや社長にも言っていない雑多な思い出。

 

(うんざりするが、それこそが人間か。正しいことを言っていたんだな)

 

確かに嫌な記憶は残りやすい。だが良い記憶が残りにくいわけではない。むしろ嫌な記憶があるからこそ良い記憶が引き立つ。

 

(感動?涙?よく分からない。だが、悪くないな)

 

一通り感傷に浸る621。そして

 

(これまでは振り返った。ならば、これからどうするか)

 

そう考えたときに浮かんだ言葉があった。621がウォルターの次くらいにはお世話になった人物の口癖のようなもの。

 

(生きているなら笑え…か。ならばこれからは…)

 

621は決断した。




レイヴンの火ルートでもアーキバスと戦う機会は何度かあるので、その時にオキーフと戦っているという設定です。あの人はどこでもああいうこと言ってそうですよね。
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