秘密結社とワタリガラス   作:ガチタン愛好者

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第8話~新生の傭兵~

家政婦仕事がすっかり板についたロニーは久しぶりにこよりのラボを訪れていた。頼んでいたものが出来上がったということで受取に来たのだ。

 

「はい、頼まれてたもの、出来上がってるよ」

 

「ありがとうこより」

 

コーラルの中和は未だに出来そうにもない。技術的な問題ではなく成功率という意味でだ。一歩間違えれば良くて重篤な障害、悪ければ死亡してしまう脳の手術は今のところ凍結されている。コーラル関連の研究が一段落したところでこよりに依頼したものというのが

 

「武器が欲しい…ね。確かにその体でも丸腰じゃ厳しいよね」

 

当然こよりもロニーのあれこれは熟知している。既に用心棒と掃除屋がいるholoXにおいて、無理にロニーに武装させる意味はない。だがそれでも存在意義と精神安定剤として武装は必要不可欠だった。

 

「作った方が言うのもなんだけど…それでよかったの?設計図はあったから製作そのものは簡単だったけどさ」

 

「こより、火力はね、全てを解決するんだよ。力こそパワー、God is Force」

 

ロニーの右手にはアサルトライフル、至って普通の市販品、普通は両手で扱うそれを片手で持っているのは良いとして、問題は左手に装着された、背丈の半分は優に越える長さの…杭だった。

 

「理想を言うなら破壊天使砲も欲しかったけど…」

 

「あんなものロニーのジェネレーターで使えるわけないでしょ!それこそ外付けの巨大なジェネレーターが必要になって動けなくなるよ!」

 

「そんなときのための…車椅子」

 

「ロニーの体をすげ替えた時点でバラしたよ!」

 

「残念…」

 

「だいたい君のACが使えない閉所での戦闘のための武装なんだからあんなでっかい射撃武器は不適切だよ」

 

「まあ、これで我慢しよう。これで今日から私はとっつきらー」

 

「うちに攻めてくる相手に同情しそう」

 

一般的にはパイルバンカーと呼ばれる、所謂杭打ち機というもの。一撃必殺を体現するそれはロマンと実用性を兼ね備えた素晴らしいものだった。使いやすさに目を瞑ればだが。

 

「でもholoXに攻めてくる相手はいるの?暫く経つけど一度もそういうの無いよ?」

 

「あはは…最近は来ないね。どこかで力を蓄えてるのかも」

 

真っ赤な嘘である。ロニーが来た時点でアジトの警報装置は切ってある。それでもアジトに侵入者がいれば用心棒と掃除屋はすぐに察知して排除に向かっている。それはロニーに戦闘をさせないための工夫だった。

 

「ホントにありがとう。武装があるだけで心が落ち着く。最近は家政婦仕事に慣れたせいで余計なことを考えがちだった」

 

「…」

 

「腕も鈍ってそうだしどこか体を動かせる場所はある?」

 

「一応訓練場はあるよ。いろはちゃんしか使ってないけど」

 

「ありがとう!」

 

ウキウキで訓練場へ向かうロニーを複雑な表情で見送るこより。理想を言うなら武装など作らない方が良いだろう。それでもロニーのあの表情を見ると作らないという選択肢は無かった。

 

「あの顔は生き甲斐を失った人の顔だよ。生きながらに死んでる、そういう顔」

 

最初は忙しさで考える暇もなかったが、慣れれば余裕が生まれる。余裕が生まれれば余計なことを考える。アシスト要員である以上一定以上の仕事は振り分けられず、いつかは避けられない結末だった。

 

 

 

★★★

 

 

 

ドガン!

 

「やっぱ鈍ってる」

 

最初は訓練用の人形を使っていたが、粉微塵になってしまうために訓練用のホログラムに切り替えて訓練をする。打ち出された杭は顔面より微妙にずれていた。

 

「生当ては当たる。チャージが当たらない。もっと練習しないと…」

 

今まではABで加速し、慣性とターゲットアシストを効かせて打ち込んでいたが、ACではなく生身?の今では小さなブースターでほんの少しだけ踏み込むことしかできない。

 

「追加の戦闘用ブースターもお願いしようかな?」

 

そう呟いたロニーに通信が入った。その主は

 

 

 

★★★

 

 

 

「護衛?」

 

「ああ、ロニーも普通に動けるようになったし、一度YAGOOやロボ子さん以外のメンバーとも顔合わせをしておくべきだろう?」

 

ラプラスだった。確かに他のホロメンからすれば得体の知れない者がholoX、ひいてはホロライブに所属したということで、当然少なからず不安がある。普段の仕事も慣れてきた今がちょうど良い。

 

「我輩とロニーで行く。護衛対象は少ない方がいいだろう?お手並み拝見といこう」

 

「…了解、メインシステム 戦闘モード起動」

 

「今のは?」

 

「切り替えだ。今までは戦闘前にいつもこの言葉を聞いていた。この体も戦闘モードに移行している」

 

一瞬で雰囲気が変わるのは流石と言えよう。体から発せられる熱が増えていることからも家政婦から星を焼き払った歴戦の傭兵へと変貌したことが分かる。それを見て表情が歪むもすぐさまいつもの顔へ戻したラプラスは

 

「その…なんだ。あまり張り詰めなくていいからな?この辺は平和だからな?」

 

「警戒しすぎて困ることはない」

 

「お、おう」

 

荒事にはある程度慣れていたつもりのラプラスだが、今までに見たことのないロニーの姿に面食らう。と同時に

 

(他のホロメンと触れあって少しでも良い方へ向かえば良いんだがな)

 

その思考は奇しくもかつてのロニーの飼い主と酷似していた。




とっつき:杭打ち機、パイルバンカーのこと。正式名称である射突型ブレードをとっつき型と読み間違えた事が由来。当てにくいが、当たれば一撃必殺のロマン武器。チャージ攻撃にはFCSのブレードホーミングが効かないため初心者は当てることさえも困難。

とっつきらー:とっつきをメイン武装とする廃人のこと。熟練者ともなれば音速越えであろうともすれ違いざまに一撃で仕留められる。
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