やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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2500字くらいでこまめに投稿したいんですが上手くいきません。ダレカタスケテ

2024/03/12 文面修正
縛りの内容に「必ず呪力をもたせること」が抜けていたので追記しました。


第十話 五条先生の「なぜなに呪術高専 縛り編」

「呪詛師…ですか。そんなにきっぱり決めつけられますかね。」

 

言葉に詰まる。

精々が実家の勢力争いが激化する程度の問題、そう思って相談を持ち掛けたが話が予想外に大きくなってしまった。

 

「悪いけど確実に、だね。」

 

先生は俺の絶望を後押しする。

 

「証拠隠滅がここまで完璧でなければ違う可能性もあっただろうけどね。例えば、上層部の子飼いの暗殺者になれる可能性もあったと思う。だけどここまでの隠蔽能力があるとなると、使う連中もいつ裏切られて自分が殺されるかわからないと考えるだろう。なにしろ誰と接触したのかも誤魔化せるからね。」

 

「まあ、僕が上層部を全く信用していないから多少の色眼鏡は入っているのは否定できない。けれどもそこまで用心するべきだというのが僕の意見だ。どうかな?」

 

どうしよう。

事態の重大さにとっくに隆景の頭のキャパは飽和してしまっている。

術式に異常があるのは分かっていた。大抵は幼少期に自覚するものを青年といっても差し支えない年齢で自覚したこと。反転術式と同時に習得したこと。そして順転が反転術式を前提とした仕様であること。

 

隆景は呪術界の情報を知り尽くしているわけではない。それでもこれだけの異常が重なれば事態が尋常でなくなることは分かっていたつもりだった。

 

だが自分が呪術界にとって悪と断じられるほどとは思っていなかった。

 

だったら決断が必要だ。

 

「先生、お願いがあります。」

 

「言ってごらん。」

 

そして続きを口にする。

 

「俺を庇護してください。具体的にはこの術式について他言せず、いざとなったら俺を五条家で匿ってください。それから、極秘で鍛錬できる環境を下さい。代わりに俺は自分の生殺与奪を差し出します。先生のために身をささげる私兵になります。そういう縛りを結ばせてください。」

 

先生は渋面を作る。

 

「縛りなんか結ばなくても僕が生徒を差し出すわけ無いでしょ。隆景は僕のこと結構信頼してくれていると思ってたのにな~。」

 

ショックだよー、と先生は溢しながら岩場に腰を下ろす。

 

「そんなに周囲を信用できなくなった?ちょっと言い方を考えた方がよかったかな~。」

 

誤解を解くために真意を説明する。

 

「縛りは自分を律するためです。情けないですけど、土壇場になっても術式を悪用しないっていう自信が持てないんです。自分に縛りを作ったとしても、状況を言い訳にして踏み留まれないかもしれない。呪術界や社会に基準を作っても同じことだと思います。」

 

呪術規定を順守する、一般社会に害をもたらさない、そういった相対的なものを基準にすればいくらでも抜け道は出来てしまう。だったら何事にも揺るがない最強を指針にしたい。

 

「だけど先生を基準にすれば判断は揺るがないと思うんです。先生に命令できる人は居ませんし、社会の敵にもならないと思うんです。だって先生にその気があるならとっくに世界を自分のものに出来ているでしょう?」

 

先生は少しだけ驚いた表情を見せてから言葉を返した。

 

「なるほど。自分の行動を縛り、なおかつ他者にも悪用されないようにか。でも性急すぎじゃないかな。いきなりそこまでの縛りを作っていいのかい?」

 

即断を心配してか念押しの確認をされる。

 

「もし、僕が乱心すれば君はその手先になるんだよ?」

 

問いかけに対しての回答は簡単だった。

 

「そうなれば運が悪かったと諦めてせこせこと働きますよ。」

 

少しだけ先生の心情を想像して言葉を選ぶ。

 

「少なくとも先生は夏油さんの思想には反対なんですよね?なりゆきですが、僕はあの人の思想を否定しました。その責任として対の立場にいるべきだと思うんです。」

 

呪術師は死に様を選べない。だけどそれは生き方まで諦める理由にはならない。俺はやっと見つけた願望に命をかけてみたくなったのだ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「術式を使えるようになったとき、隆景は蓋が外れたような感覚って言っていたね。」

 

先生と縛りを結んだあと、話題は賀﨑の特異体質が天与呪縛もしくは縛りのどちらかについての内容に移っていた。

ちなみに縛りの内容は五条先生にはメリットが皆無といっていい。俺程度の手駒などいなくとも先生にとっては微塵も影響がない。それでも縛りに同意してくれたのは、最強ゆえの余裕と生徒思いの一面のためだろう。

 

意外と忘れられがち、というか学生ら高専関係者からも軽視されがちだが、先生はかなり生徒思いだ。

御三家の一つ、五条家の当主でありながら高専の教員をやっていること。

この事実一つで呪術界の健全化に努めているのがわかるだろう。しかし、この行動も現体制に逆らっているだけだと捉えられがちだ。

 

だが、先生が横暴に振舞ってでも上層部と対立している理由の一つは、現在の呪術界の歪さ、とりわけ高専の学生術師の高い死亡率とそれをさして問題視しない御三家を中心とする上層部の構造、これらを改革するためだ。

 

「こないだ賀﨑の家に直接行ってきてね。歴代の術師の情報をまとめて教えてもらったんだ。内緒で僕だけに、って言ったのが利いたらしくてね。僕に貸しが作れると思ったのか張り切って情報を提供してくれたよ。」

 

だから、こうして裏から手を回して情報を手に入れてくれることもある。

 

「今までの記録で賀﨑に反転術式を習得した術師は居なかった。これだけ歴史が長い家なのに一人もいないってのはまあかなり珍しい。無くはないってレベルだけどこうなると、前の仮説をもう一度考えてみてもいいと思うんだ。」

 

前の仮説とは、賀﨑の一族は術式を持てないのではなく、持ってはいるが何らかの事情で使えないのではないかという先生の考えだ。

 

「反転術式を使えるようになったのが術式発現のトリガーになったということですか?」

 

「うん。それはほぼ確定だと思う。前にも言ったけど、術式の代わりに呪力を全員が獲得するというのは天与呪縛としては恩恵が少なすぎる。だから僕は賀﨑のご先祖が縛りを結んだっていうのが真相だと思ってる。」

 

賀﨑の先祖といえば「華咲」と呼ばれた術師のことだ。

 

「意図的に結んだとなると目的がよくわかりませんね。子孫に残すにしてはちょっと不便過ぎですよ。現代まで家が残ったのは政治での立ち回りが大きいわけですから。」

 

先祖の「華咲」は宿儺に敗れはしたものの、その功績自体は当時の呪術界でも評価された術師だ。何でも治療技術で幾らかの生存者を出したそうだが…。

 

そこまで思考したところであることに気づく。

 

「隆景も気づいた?記録によるとご先祖様は反転術式を使えた上に他者にも治療を施せたみたいだ。今の隆景も同じことが出来るよね。」

 

他人への治療はまだ試したことがないが、正のエネルギーを体外へ放出できる以上不可能ではない筈だ。

 

「おそらく賀﨑の始祖は特異体質で隆景と同じ、順転の時点で反転術式を必須とする術式を持っていたんだと思う。それでも当時の宿儺には勝てなかった。そして死に際に子孫まで生贄にするような縛りを結んだとしたら?」

 

内容は無茶苦茶だ。だが、状況の一致と何より五条先生が語っていることが信憑性を持たせる。

 

「それが今の今まで受け継がれていると…。いくら優れた術師だとしてもそこまで広範な縛りを結べるんですか?」

 

どれだけ優秀な術師ならそんな無茶が罷り通るのだろうか。

 

「縛りの対象を広げること自体は不可能ではないよ。それがバランスを間違えたものならなおさらね。縛りってのは釣り合いを誤ったものほどその悪影響は広がりやすい。そして定めた条件が成立しない上に恩恵も僅かになる。こうなるともはや縛りではなく呪いに近しい。」

 

先生の推理は続く。

 

「何がそう決断させたかはわからないが、賀﨑の始祖は何かに備えたかったんだろう。だけど結果は千年もの間、子孫に不釣り合いな縛りを強制させることになってしまった。」

 

つまり賀﨑の始祖は意図せずに、呪いを子孫に残してしまったということか。

 

「実家の連中には聞かせられませんね。卒倒する奴が大勢出そうです。」

 

だってそうだろう。崇めていた先祖がその実、自分たちを苦しめてた元凶だと知ればこれまでの積み重ねが途端に馬鹿らしくなるに違いない。

 

「ご先祖がしくじった縛りはどんな内容だったんでしょうね。」

 

縛りをすり抜けられた自分にはもはや関係のないことだが、興味は湧いてしまうものだ。

 

「こっからは完全に予測だけどね。恐らく賀﨑の始祖は自分と同じ術式を子孫に受け継がせたかったんじゃないかな。自身が負けた以上、宿儺を倒すためには同じ力を持つ強力な術師が大勢必要だと焦ってしまったとか。」

 

自分の代で叶わないならと力を受け継がせて、子孫に宿儺討伐の望みを託した。

 

「自分の術式とそれを扱うために必要な呪力を必ず一族に受け継がせる。その代わり反転術式を習得しない限り、その術式は使用どころか知覚も出来ない。縛りの条件はそんなところかな。だけど、反転術式が必須なのはこの術式のそもそもの仕様だ。」

 

この推定は隆景が反転術式の習得をきっかけに術式を使えるようになったことから分かる。

 

「だから縛りとして十分に機能せず、逆に反転術式が修得出来なくなるというというデメリットが追加で生まれてしまった。これが賀﨑に反転使いが居なかった理由だと思う。その上、子孫は使用不可の術式を持っているせいで他の術式も持てなくなった。多くを望みすぎた反動としては有り得る話だ。」

 

差し出すものが足りなければより多くのものを失うことになるということか。

 

「賀﨑の始祖は一般人の家系に生まれた突然変異タイプの術師だったのかも知れない。術師の出身でないにも関わらず、呪術師としては一線級の能力を持っていた。術師として教育された責任感もないのに天から授かった力を世に役立てようと宿儺の討伐に参加するような善人。そんな人間が呪術を碌に学ばずに死の間際でとっさに縛りを結んだ結果、賀﨑の特殊体質が出来上がった。」

 

僕の推理はこんなところだ、と先生は言葉を区切る。

賀﨑の人間は封印された術式を持った上にそれを解除するための反転術式も習得できない。

故に、いくら代を重ねても術式持ちは現れず、呪術師の家としての家格も向上しない。

 

なんと因果なことだろう。

賀﨑家では始祖の「華咲」は神聖視されている。

華咲のお陰で今の我々がある、華咲の勇名に恥じぬ術師となるべく鍛錬に励む。

家の結束の中心には必ずかの術師の存在があった。

 

それが実のところは、その祖先こそが賀﨑の発展を妨げてきた元凶だったとしたら。

 

事実はわからない。だが、この推測は家を分裂させるだけの爆弾になり得る。

五条先生に鞍替えした自分だが、生家が醜く滅んでいくのは忍びない。

 

「先生、これは縛りではないんですけど、出来れば今の話は内密にして頂けないでしょうか。」

 

「それがいいだろうね。血筋、伝統は好きになれないけど、だからってどこかの家が滅ぶことを喜ぶほどじゃない。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「さっきの話を踏まえると、僕が術式を使えるようになったのは、正規ではない方法で反転術式を修得したからですか?」

 

「うん、本来反転術式は呪力を体内で掛け合わせて正のエネルギーとするものだ。だけど隆景の場合は、偶々身に付けた呪力を変質させる能力で呪力を正のエネルギーに変質させている。正規の手順を踏んでいないおかげで、反転術式を習得できないペナルティをすり抜けられたんだろう。」

 

隆景は今後の動きについて質問する。

 

「反転術式も隠した方がいいでしょうか。正直、反転術式は任務でも使えるなら使いたいです。」

 

「そうだねぇー。うーん…。」

 

先生は顎に手を当て思案するしぐさを見せる。

 

「事情に詳しい奴なら、賀﨑が反転術式を使えるってだけで先手を打ってくるかもしれない。だから別のものに偽装しよう。ちょうどナルトに医療忍術が出てくるでしょ。呪力変質でそれが出来ることにして誤魔化そう。」

 

確かに傍から見れば傷が治っているのは同じだ。詳しくない者なら区別は付かないかもしれない。

 

「念のため、人前での使用は可能な限り避けること。硝子にだけは気づいても黙っておくよう頼んでおくよ。」

 

家入先生は反転術式のプロフェッショナルだ。偽装に気づくとしたらそのレベルの人達だろう。

 

「分かりました。家入先生の件もありがとうございます。」

 

「このくらいなんてことないさ。それよりも課題を出そうか。」

 

課題、急に何だろうか。

 

「領域展開をマスターして。習得だけじゃだめだよ。使いこなせるようにまで修練すること。これが最初の指令ね。」

 

五条家の訓練場は自由に使えるようにしておくから~、と五条先生は何でもないように告げたのち、午後の出張のために高専へ瞬間移動で戻っていった。

 

「領域…展開?」

 

昨日術式を覚えた隆景にとっては無謀といえる課題が先生からの最初のお題だった。

 




ようやく術式と縛りの内容を出せました。
続きを早く書けるように頑張ります。
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