やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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芥見先生!高専は3年制だって話、無かったことに出来ませんかっ!(二次創作者にあるまじき傲慢)


第二十四話 呪詛師狩りと相棒

「阿弥陀流 真空仏陀斬り!」

 

「ギャアーッ!」

 

 

「阿弥陀流 後光刃!」

 

「イヤーッ!」

 

 

「阿弥陀流 大後光刃!」

 

「グワーッ!」

 

 

高専を追われる身となった呪詛師、賀﨑隆景はここ最近は毎日の様に襲撃してくる輩を退治していた。

 

今日は彼が何故これほどまでに身柄を襲われる様になったのか、いや、何故毎日の様にこんな輩に襲われ、むしろ積極的に懲らしめるようになったのか、その話をしたいと思う。

 

 

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2018年10月

 

 

今年の呪術界は荒れに荒れていた。

 

 

昨年…2017年の年末には夏油傑が主犯の百鬼夜行という未曽有の呪術テロが発生し、呪詛師業界の盛り上がりはそこがピークになるかに思えた。

 

 

だがその予想は裏切られた。

 

両面宿儺。史上最悪の術師が復活するという噂が呪詛師達の間で急速に広がり、それに当てられたかのように彼らの活動も活発化していたのだ。

 

 

そしてその噂を流して呪詛師達を誘き出しているのが彼らだった。

 

 

『賀﨑。新しいお客さんだ。今回は二人組だから用心しろよ。』

 

 

「了解。身柄はいつもの所に転がして置くからしっかり回収よろしく。」

 

 

『出来るだけ死体でコッチに渡してくれよ。目覚めて暴れられたら手に負えなくなっちまう。』

 

 

「生け捕りの方が報酬は高いだろ?四肢の腱と呼吸系の筋肉もズタズタにしといてやるから、死なない様に頑張って運んでやれよな。」

 

 

通話の相手は孔時雨という元刑事の男。

 

現在は殺しや誘拐など所謂裏の仕事を斡旋するブローカーだ。

 

刑事時代の人脈を活かして今の仕事をしているのかも知れないが、詳しい事情は聞いてない。公権力の薄ら暗い話はゴシップで聞く程度で充分だと思っている。リアルな話を聞くと気が参りそうだ。

 

 

元刑事の事情はさておき、隆景は彼を通して宿儺復活の噂を流し、それに釣られて活発に活動しだした呪詛師を襲撃する活動をしているのであった。

 

 

何故孔が隆景と組んで仕事をしているのかと言うと、話は数ヶ月前に遡る。

 

 

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キンキンキン!

 

 

放たれた銃弾を事も無げに弾き、隆景は男に歩み寄る。

 

 

「クソガキがっ!」

 

 

男は尚も拳銃の引き金を引くが、既に弾倉に残弾は無く弾切れを示す金属音が鳴るばかりであった。仕方無く男は拳銃を投げ捨て、懐からナイフを取り出す。

 

 

「お前だな。呪詛師のネットワークに俺の情報をしつこくリークしてやがったのは。」

 

 

「お前がヤツらの間で人気者だからだよ。お陰で手数料だけでもそこそこ儲けさせて貰ったがな。」

 

 

刃物を構えてはいるが、男は自分の命運を悟ったのか半ば自棄気味に悪態をつく。

 

 

「最初から妙に割の良い仕事だったんだ。思えばあの時点で手を引くべきだったな…。」

 

 

「儲け話には裏がある。何故なら本当に儲かるならその情報は独占して借金をしてでも儲けを独占した方が得だ。アンタみたいな生業なら常識だろ?引き際を間違えたな。ネタ元について口を割る気はあるか?」

 

 

「無ぇな。吐いちまったらどの道先は無い。」

 

 

秘密を漏らす。そうやって信用を失った情報屋の末路は悲惨だ。新規の仕事は無くなり、おまけに口封じを目的に生涯追われる身になることだろう。

 

 

「そうか。道理だな。」

 

 

男の返事を聞いて、隆景は首を刎ねるために構える。

 

 

「そこそこ稼いだんだろう?あの世で優雅に暮らせると良いな。」

 

 

 

金属の塊が振り下ろされると同時に男はあの世へ旅立つ…筈だった。

 

 

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意識を取り戻した孔は手足を縛られた感触からどうやらここは死後の世界ではないことに気付く。そして眼前には先ほど自分を殺そうとした呪詛師が何か棒状のものを持って端末を操作していた。

 

 

呪詛師、賀﨑隆景。孔を始末しに来た男は意地の悪い笑みを浮かべながらこう告げた。

 

 

「あんたと組んで仕事をする事にした。これから条件を話すから受けるかどうか決めてくれ。」

 

 

孔は内心で嘆息した。長年の経験で身につけた勘が告げているのだ。これは幸運ではない。むしろ最悪の役回りを引いてしまったのだと。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

隆景は情報屋の男、孔時雨を殺す寸前にあることを思い付いた。こいつを処分してもこれからも呪詛師達から命を狙われ続けることに変わりは無い。だったら逆にこの男を使って情報を制御すれば、呪詛師を効率よく始末することが出来るのではないかと。

 

 

ただ、この男が素直に協力してくれる保証はない。却って罠に嵌められる事になるかも知れない。

 

 

「だけどなぁ。こいつが術師かどうかなんてわからないし、術師じゃないなら「縛り」を結んだところで大した意味はないかも知れないしなぁ。」

 

 

思案を続けている内に隆景はあることを思い付いた。

 

 

「良い事思い付いた。これなら術師、非術師に関わらず契約を結べるな。」

 

 

云うやいなや刀を抜き放ち、意識を失っている男に近づく。

 

 

「麻酔も無いし、ちゃっちゃとやるか。」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

隆景は目覚めた男、孔に対して話を進める。

 

 

「アンタにはこれからも俺を狙っている呪詛師に対して情報を売り続けて欲しい。ただし、取引の内容は全て俺にも伝えること。俺はその情報を元に呪詛師を返り討ちにする。その後の身柄はアンタに引き渡すから表と裏、どちらのルートでも良いから金に換えてくれ。俺はその金額の一部を分け前として受け取る。どうだ?」

 

 

「断ったらどうせこのまま殺すんだろ?…分配の取り決めは?」

 

 

「分け前は…そうだな、俺が10%で残りはアンタ。俺と組んでる事がバレたらアンタが真っ先に殺される。だから分け前は多くしておかないと引き受けてくれないだろう?」

 

 

「ダメだ、それでも割に合わねえよ。テメエの取り分が5%でギリだ。それでもここでくたばった方がマシだがな。どうせ、断れないようにもう細工は仕掛けてあるんだろ?こんなもん交渉でも何でもねぇ。銃口を突き付けられながらノー言えるかっての。仕掛けの内容も分かんねえしな。」

 

 

「いや、そのことなら今から教える。仕事はスムーズにやりたいからな。アンタが寝ている間に、大腿骨を俺の術式で作った物と交換しておいた。これから結ぶ契約事項をアンタが破ったら、骨代わりのソイツが棘だらけの凶器に変形する。太ももの内側がズタズタになるってのは我ながらいい脅しだと思うんだ。まず無事じゃ済まないだろ?ほら、これが抜き取ったアンタの骨。外科手術で元に戻されるのも厄介だから預かっておくよ。」

 

 

「骨を抜いた!?…最悪だ。こんな悪趣味な奴と関わる羽目になるなんて。」

 

 

「こっちの業界に来て学んだ事はとにかく気の休まる時なんて無いって事だ。だからしっかり保険も掛けておくのさ。それから、契約期間についてなんだが、俺への報酬が一億に達するまでの間ってことでひとまずどうだ?アンタは自由を得るためにひたすら俺に仕事を回す。俺はそれを片っ端から片付ける。お互い得のある関係だと思わないか?」

 

 

「どこがだ…。もう良い。引き受けるから好きにしてくれ。」

 

 

こうして隆景と孔は呪詛師ぶっ殺し同盟の契約を交わすことになったのだ。

 

 

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隆景は狩り場に足を踏み入れた今日の獲物をスコープで視認していた。

 

二人組と言うことだったが、片方は老婆、もう片方はのっぽの男という組み合わせだ。

 

 

(とっとと始末するか。術式の発動前に潰すのが上策だがどっちの方が厄介そうかだな。)

 

 

すると老婆の方から呪力が立ち上っているのが見える。隆景は隠蔽を解除し最速で老婆へ接近し斬りかかる。

 

 

ところがその刃はのっぽの男の方に防がれる。まるで始めから老婆を命がけで守ることが前提であるかのような淀みの無さだ。

 

続けざまに刀を振るうが、男は辛うじて内蔵へのダメージを避けながら老婆と隆景の直線上に入り、攻撃を受け続ける。初撃こそ呪力での防御が間に合っていたが、次第にそれも追いつかなくなり、男の体は傷だらけ、右手に至っては肘から先が欠損している有様だ。

 

 

(反転術式でも中々直せないほどの重傷。それを負ってでもババアを守り続けるということは…。)

 

 

「孫、もうええぞ。」

 

 

「わかったよ。婆ちゃん。」

 

 

二人は会話を交わし、男が何かを飲み込むと同時に老婆がある人名を唱える。

 

 

「禪院甚衛(じんえい)

 

 

すると瞬く間に男の容貌が変化していき、これまでに負わせた傷さえも消えて五体満足へと回帰していく。

 

 

 

(やっぱりベテランの方がやっかいな術式を持っているな。)

 

 

男の変容が終わると、そこには初老頃の別人の男性が立っていた。

 

男は影絵の様に両手を組むとこう唱えた。

 

 

「『脱兎』」

 

 

唱えると同時に男の足下の影が広がり、そこから大量の兎型の式神が飛び出し周囲を埋め尽くす。

 

兎が消え、視界が回復したときには老婆の姿は確認出来なかった。式神に紛れて姿を隠したのだろう。老婆の術式は恐らく降霊術に類するものだ。降霊術は相場として召喚者自体を叩けば呼び出したものも併せて排除出来るが、老婆を見失ったとなれば一先ず目の前の術師を倒すしかない。

 

 

(「禪院」の名前、それから両手で作る手印と『脱兎』の詠唱。『十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)』とこんなところでお目見え出来るとはな。)

 

 

これまでの呪詛師とは格の違う術式と相対し、隆景はギアを一気に引き上げる。

 

 

「『二段拡張 退魔の巨剣(スピリット オブ ソード)』」

 

 

隆景には現代で唯一の『十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)』保持者である伏黒恵と対峙した経験と五条家の資料から得た知識がある。

 

問題は呼び出された術師がどれだけ禪院家相伝のあの術式を使いこなせるのかだ。記録上、あの『魔虚羅』を調伏した術者は存在しない。だが、あの化け物には奥の手としての使い道もあると聞く。予断は許されない。何しろ『十種影法術(とくさのかげほうじゅつ)』は『魔虚羅』以外にも強力な式神を十種も有している。(本来はその十種の式神の方が術式の主なのだが、『魔虚羅』の特異性からどうしても軽視されがちである。)

 

 

(下手に追い詰めると『魔虚羅』を自爆覚悟で出される。追い詰め過ぎずに術者の油断を突く!)

 

 

御三家でも最強格の術式を相手取る戦闘が始まった。




禪院甚衛(じんえい)さんは勝手に考えた名前です。十種持ちなら伏黒の血筋の方が妥当かなと思い、父親の甚爾と叔父の甚壱に共通する「甚」の付く名前を調べて付けました。るろ剣の刃衛とは無関係です。
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