やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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短いです。許してヒヤシンス!

2024/05/25
時系列が盛大にガバっていたので、修正を加えました。
・五条封印の情報を「縛り」の繋がりからの察知ではなく、孔時雨からの情報提供に変更。
・渋谷への到着時刻を遅らせる。


第二十八話 遅れ馳せ参じて、渋谷事変①

「おやすみ、五条悟。新しい世界でまた会おう。」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

10月31日 21時××分

栃木県内某所

 

SNS上では本来ならハロウィンで賑わっている筈の渋谷区を中心とした交通機関の停止による混乱がトレンドを賑わせていた。

 

「渋谷の騒ぎはマジっぽいね。ライブ配信してたアカウントも一斉に回線落ちしてるみたいだし。」

 

SNSを巡回していた綺羅羅がそう告げる。

隆景の方は呪詛師の情報網から事態を探っていたが、こちらには不自然な程何も情報が引っ掛からない。孔さんに頼んで情報を探ってもらっているがそちらもまだ収穫は無い。

 

「こっちは駄目だな。まるで手がかりが無い。アングラの情報を完全に抑えきるなんて考えられないが…。」

 

有り得るとすれば情報を知る者をすべて始末してしまうこと。そこまでのネットワークと力を持つ勢力が今回の騒ぎの黒幕だとすれば五条先生の言っていた「嫌な予感」と無関係とは考えにくい。

 

「一先ず俺は陸路で渋谷に行く。何か分かったら連絡するからそん時はバックアップを頼む。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

22時××分

 

渋谷へ急行しようとした隆景だったが、首都の交通網の麻痺が次第に伝播してきたのか車の進みが鈍くなってきていた。

(ちなみに隆景は追われる身分のため運転免許は取得できておらず、偽装免許状しか持っていない。つまり絶賛無免許運転中である。)

 

(どうする?いっそ車を捨てて…)

 

そこに孔からの情報が入る。

内容は驚愕すべきものだったが、信憑性を勘案した隆景は即座に秤達に連絡を入れる。

 

 

「秤、綺羅羅。マズいことになった。」

 

通話機越しに続きを促す2人に最悪の事態を告げる。

 

「五条先生がやられた。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

『ハァ!?ありえねーだろ!』

 

驚愕する2人に説明を続ける。

 

「東京の仕事仲間が高専の補助監督から買った情報だ。不真面目な奴だが信用は出来る。一応命も握っているしな。死んだはずの夏油傑が呪霊と組んでこの騒ぎを起こしたらしい。情報では先生は「死亡」じゃなくて「封印」らしい。先生がいなくなるだけでも呪術界はお先真っ暗だ。その上それを実行した奴らはまだ渋谷で暴れまわっているって話だ。」

 

2人は実感が無い分、あの五条悟が敵に遅れを取ったことが未だ信じられないようだ。

 

「とにかく俺は渋谷に急ぐ。まずは事態を把握しないと。向こうに着いたらすぐに知らせる。」

 

『向こうに行くったってどうやって行くの?道路も鉄道も止まり始めてるみたいだし…。』

 

「足が無いなら自力でいくさ。非常時だから呪術の露呈も見逃してもらえるだろ。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

埼玉県上空

 

賀﨑隆景は麻痺しつつある交通網を避けて移動するために自力で飛行して渋谷を目指していた。

高度はおよそ地上550m。その速度は時速にして600kmに達し、航空機で比すると前大戦中の軍用プロペラ機にも匹敵する程の高速であった。

およそ人間が生身で達成しえない速度で飛行している隆景であったが、その乗り心地(?)は最悪のものであった。

 

「ッッッッッ~~~~!!」

 

背部に順転『成形(せいぎょう)』により形成した二本の筒を背負った隆景はその内部に火遁忍術によって超高温の熱源を生成・維持し、風遁忍術でそこに大気を取り込み加圧、圧縮した空気を筒の後方から放出するというジェットエンジンを真似た機構により無理矢理、栃木県から東京へ向かっての空路を飛行…もとい水平に落下し続けていた。

 

成形(せいぎょう)』により航空機の翼を模した物体を形成してはいるものの、人類の英知の結晶である航空力学を学んだわけではない隆景が作れるのは翼もどきに過ぎない。

当然大した空力効果を発揮することも無く、尋常ではない衝撃とそれによる墜落を防ぐための姿勢制御に隆景の脳と体は悲鳴を上げていた。

高速飛行中の彼が声を発することはもちろん出来ないが。

 

(夏油さん、やっぱり術師なんて大した生き物じゃないよ。人間の知恵はこんな苦しみを数万円払えば誰でも安全・快適に体験出来る「空の旅」にまで最適化しているんだから…!)

 

あまりの苦行にそんな埒もない言葉が脳裏をよぎる。

 

愛用のコートを土遁忍術による「硬化」で強化し空気抵抗の衝撃を受け流し、飛行に適していない人体という飛翔物を風遁忍術による姿勢制御で何とか支える。

 

賀﨑隆景は人生で最大の苦痛を耐えながら目的地まで急行していた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

およそ20分。

栃木・埼玉・東京という距離にして150kmの道のりを驚異的な速度で踏破した隆景は渋谷上空に到達していた。

一刻も早く状況に加わらなければならない。

落下速度を殺しつつも、肉体が耐えられる限界の速度で上空から急降下し、隆景は渋谷の地に到着した。

 

周囲を調査するまでも無く現地の異常を察する。本来なら人がごった返すお祭り騒ぎが起きているはずの日本最大規模の繁華街、渋谷。

だが、今の渋谷は人通りも無く静まりかえっている。

異常の原因はこの「帳」だろう。当初の目論見ではより人の集まっている中心地に降下するつもりだったが、恐らくJR渋谷駅を中心として展開されているこの巨大な「帳」とそれによる電波障害を懸念して、降下地点をズラさざるを得なかった。

事前の打ち合わせ通り、一旦現地の状況を秤と綺羅羅に報告する。分かっていることはまだ少ないが「未知の事態」が起きていることを伝えるだけでも重要な情報になるはずだ。

 

現地の術師や補助監督を探して情報を得るのも手だが、話の通じる人間が相手とも限らない。こんな非常時にとも思うが最悪を想定すれば、高専勢力との安易な接触はリスクが高い。

 

秤達に、帳を「突破」して状況に介入することを伝えた後、隆景は右手で掌印を結び、しならせるように大地を指す。『降魔印(ごうまいん)』と呼ばれる掌印と共に隆景はこう唱えた。

 

「『領域展開』」

 




航空関係の記載はWikiって何とか書きました。お見苦しい点はご容赦を…。
(許しを請うばかりの無能。)
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