やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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第三話 落第忍者

「物足りないね。」

 

俺が呪力特性による水遁忍術で岩を砕いたのを見た時の先生の感想だ。

 

「いや、マジでナルトの忍術を真似しだした時は笑い死にしそうになったし、それで本当に術が発動したのは驚いたよ?呪力性質だけでここまでの現象を起こせるのはかなり希少だしね。」

 

でも、と先生は続ける。

 

「今のままじゃ威力不足だ。水遁はサポートとしてシン陰を本命にするっていうのは現実的だけど、それだけじゃ準一級くらいの等級で頭打ちになるかも知れない。せっかくの特性なんだから、もっとできることを増やしていこう。それこそナルトに出てくる水遁系の術は全部身に着けるくらいのつもりでいこうよ。僕の生徒達には並みの特級呪霊程度は軽く祓えるようになってほしいからね。」

 

さらっととんでもない課題を出されたが数種類の水遁忍術を習得しただけで強くなった気になっていたのは確かに問題だ。

岩を砕くことなど一級術師なら術式を使わずに呪力強化だけで行える。

今の水遁では一級呪霊を祓うことはできないだろう。

 

実家では術式まがいのことができるというだけで神童扱いだったため認識が甘くなっていた。

一応、寮に持ち込んでいたNARUTOの単行本でイメージを掴みなおす必要があるだろう。

当面の目標は高効率で破壊力が出せる技の習得だ。

二代目火影のウォーターカッターのような術であれば大量の水を生み出さなくてもよいため、水の無いところであっても安定して火力を出せるかもしれない。

 

東京高専に来たことは俺にとって大きな成長のきっかけとなった。

政治的な意図でここにきたが、ここの環境は自由な発想で能力を磨くのに向いていそうだ。

 

実のところ、京都では漫画の真似をして戦う俺に対して周囲から冷ややかな目がなかったわけではない。

真剣に術を使う姿を爆笑されたことに腹は立ったが、俺に対して成長の余地を見出してくれるのは五条先生のいる東京高専だけであろう。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

それからは呪力特性を見直す日々が続いた。

 

幸い、幼少期に死の淵で垣間見た他の世界のことは、漫画という形で知ることができた。

ナルト風の能力を身に着けたのも漫画を参考にできたからだ。

(毎度「NARUTO)と表記するのが大変なので今後はカタカナ表記に省略させてもらう。)

ちなみにこの世界を題材としたような作品は見つけられなかった。

あれば未来を知ることができるので大変ありがたかったのだがこれは仕方あるまい。

 

まず行ったのは変質できる特性の整理と確認だった。

ナルトの忍術でいえば火遁、風遁、雷遁、土遁、水遁の五大性質変化の中で最も適性が高いのはやはり水遁忍術だった。

 

他の性質変化を行えないわけではないが実用には難点があった。

 

まず、火遁と雷遁についてだ。

この二つについては、周囲に用意した火や電気を操作する形であれば実用できる威力は出せた。

だが、自分の呪力を変化させて使用しようとすると問題が生じた。

体内から放出したり、体表に纏わせたりする時に自分の体にも火傷や裂傷などの傷を付けてしまうのだ。呪力で体の方を強化すれば使えないことはないが、そのためには攻撃と身体の保護の両方に呪力を使う必要がある。時間単位ごとに出力できる呪力量に限界がある以上、この方法は効率よく破壊力を出すという目的にはそぐわない。

 

次に土遁だ。

土遁を自分の呪力から発生させることは比較的上手くいった。

特に体表面に纏わせることで防御力を高める方法はとっさの防御に役立つ見込みがあったので継続して訓練していくことにした。

水遁のように口から放出することについては、水遁を磨くことを優先した方が良いという結論に至った。土遁では固体を発射するため威力は増すが速度と連射性が犠牲になってしまうのだ。

 

土砂のように一部を水遁の中に混ぜる方式も試したが、複数の性質変化の同時発動は難しく実現できなかった。さすが原作でも貴重であった血継限界である。

貴重なのには理屈があるのだと妙に納得してしまった。思わぬきっかけで原作理解度が増してしまった。

 

関係ないが、木遁が使えれば非常に便利だったと思う。

あれは土遁と水遁に更に陽遁を加えた血継淘汰であるとの説も小説版では出ていたくらいだ。真似をするのはさらに至難の業だろう。

あれを使いこなす初代火影はこの世界で例えるのなら五条先生レベルの理不尽な強さを誇るに違いない。

 

土遁に話を戻すと、環境利用タイプの土遁の運用は扱う地質による呪力効率、威力のムラが大きく自爆しかねないことが分かった。

自然の土を操作する程度なら悪影響は少なかったが、コンクリート、アスファルトなどの人工物が絡むと術があらぬ方向へ向かうなどの失敗が多発した。

都市部ではこれに加えて、土中の配管や地下構造物、トンネルなどの空洞も影響してくる。

下手に術を使うととんでもない大損害を生み出しかねないため、絶体絶命の危機に地中に隠れる程度にしか用途を思いつけなかった。(地中に潜ったとしても呼吸はどうするかという問題もある。)

 

周囲の建物諸共、術式で破壊することもある五条先生はメンタル的にも異次元の怪物である。

俺では巻き込むリスクの方が先に頭を過るだろう。

…根本的に自分が術師に向いていない気がしてきて自信を喪失しそうなので次に移ろう。

 

風遁は非常に難航しており、未だにまともな成果が出ていない。

何というか風は風なのだ。

呪力を風に変えることもできるし、周囲の空気に呪力を散らして大風を吹かせることもできる。

だがそれに鉄を断つような鋭さを持たせることができない。

 

今は方向を変えて、高専制服を改造してつけたマントに当たる空気を制御して主に空中での姿勢制御を補助する手法を研究している。

空中で身動きが取れれば敵に晒す隙を減らせると見込んでいる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

こうして任務で呪霊を祓いながら呪力特性の応用を実践する日々が続いた。

 

当初は4級術師である俺が強力な呪霊との戦闘が予想される任務に割り当てられることは無く、上級術師の補助兼勉強として任務に同伴することが多かったが、入学からひと月も経つと事情が変わり始めた。

 

呪霊発生の多い呪術界の繁忙期になったことに乗じて上層部が嫌がらせを始めたようで危険度の高い任務が割り当てられることが多くなったのだ。

さすがに単独での任務はないが、明らかに戦闘担当ではない補助系の術師と組んで任務に当たることが格段に増えた。

 

俺が等級違いの任務で命を落とせば五条先生の逆鱗に触れるかもしれない。

連中はそう考えていたのか、入学当初は先生を刺激することを恐れて手出しや妨害はしてこなかった。

だが、この繁忙期なら人手不足ゆえの不幸な事故だとして乗り切れるとでも思ったのだろう。

俺が先生と親交を深める前に処分しておきたいとの目算もあったのかもしれない。

 

ちなみに我が実家の賀﨑家はもしも、こうした嫌がらせで俺が死んだとしても特にリアクションは取らないだろう。一人を生贄にして五条悟に多少でも近づけたのであればそれでよし程度に考える筈だ。

 

そもそも今の俺は賀﨑家を出奔して勝手に東京高専に逃げ込んだことになっている。

あくまで五条悟に接近しているのは俺個人であり家全体の総意ではない。そういうことにしておいた方が反五条派からの非難も弱まる。

そういうことにしておいた方が反五条派からの非難も弱まる。

もちろん俺は家の指示で東京に来たわけだが、表向きは個人の暴走ということになっているのだ。

 

そういう訳で、家を抜け出した俺が死のうが賀﨑の本家は別段抗議もしなければ、現体制と距離を取るようなこともない。一族では天才扱いでも所詮は落伍者の中で多少出来が良いだけの話。

東京で活躍して五条悟に近づければ良し。死んだとしても五条一派にダメージを与えたとして上層部の覚えが良くなるだろうという算段だ

生きていても死んでいても家の役に立つように俺の命は効率よく使われるだろう。

我が家はそういう処世術というにはあまりに狡猾な手段に長けた一族なのだ。

事実、そこで育った俺もこのことに大した感情は持っていない。

 

そして当の五条先生はどう捉えているかというと、

 

「隆景のシン・陰流の腕前は一人前なんだから問題ないでしょ?むしろ等級の高い案件をバンバン捌いて実力を磨くチャンスなんじゃない。」

 

と全然心配していなかった。

 

事実、2級程度までの呪霊なら実家に居たころから相手にしてきた。

ほぼ毎日全力の戦闘を行う経験はこれまではなかったが今のところ命の危機には瀕していない。

東京高専では家入術師による治療を受けられることも大きかった。毎度毎度、家入先生に治療してもらうのは(彼女の目元の隈が日々深さを増していくのを見ると)申し訳無いが、前日の負傷が翌日の任務に支障をきたすことは殆どない。

 

こうして俺の学生生活は夏に突入していった。

 

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