やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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第三十三話 野暮用と急用


第三十三話 野暮用と急用

「やぁやぁどうもどうも。」

 

「……自ら首を差し出しに来るとは愚昧極まったな、賀﨑の恥さらしよ。」

 

「もともと軽んじていた癖に今更でしょう。」

 

秤と別れた後、隆景は単身で呪術界の中枢、先の五条悟を渋谷事変の共同正犯とし夜蛾正道に死刑を命じた総監部本部を訪れていた。

 

「どうやってここまで立ち入ったか……愚問か。お主はこれまで幾度も結界を破っておる。」

 

「そのタネも教えてもらっているんじゃないですか?」

 

隆景は内通者を釣り出そうと一気に核心に迫る質問を飛ばす。

 

「……何の話だ。」

 

そして総監部の老人5人から同じ気配を感じ取ったことで心底落胆した。

 

「夏油傑、加茂憲倫、いや本当の名前を教えてもらっているのかな。ソイツとグルだってことはもう見当ついているんですよ。何か言い訳はありますか?」

 

「無礼であるぞ!」

 

総監部の一人が激高して立ち上がる。顔を隠していた衝立からその身の一部が露になる。服装や装飾品から考えて加茂の人間だろうか。

 

「おや、もしかして加茂家の方ですか? 渋谷の主犯も昔は加茂にいただけはある。100年単位で呪詛師と通じているなんて流石は歴史ある術師の大家だ。」

 

「貴様ァ!」

 

挑発を真に受けた男は呪力を滾らせ臨戦態勢を取る。

一触即発の状況だが、比較的冷静さを保っていた別の男が口を開く。

 

「戯れも結構だが、そろそろ目的を話してもらおうか。今まで尻尾も掴ませずに隠れ続けていた貴様が突如我らの前に現れた。用件を話せ。」

 

「冷静な方がいて幸いです。私のお願いは単純です。今回の渋谷事変に関する通達、あれを取り下げてください。あぁ、夏油傑の死刑は除いてね。中身はどうあれガワは夏油傑本人である以上、あれへの処刑命令を取り下げるのは誤解を招く。」

 

「ふざけたことを。先ほどから中身がどうだのと訳の分からんことを言っておるが、夏油が今回の首謀者であることは間違いない。であれば、その夏油を殺したはずの五条が敵に通じていることは明らかであろう。」

 

「奴らは学生時代からの旧知の仲。その担任を務めておった夜蛾もだ。」

 

あくまでシラを切るつもりか。予想していたとはいえ、こんな連中が呪術界を牛耳り、その横暴によって多くの理不尽が罷り通って来たということの真実味が増していく。

間違いであって欲しかった。だが連中が言葉を発する度に疑惑は限りなく確信に近づいていき、隆景の胸中に暗い感情が満ちていく。

 

「その五条先生は夏油の名を騙る輩の手で封印されているんですよ。おまけに通達ではその封印を解除することすら禁ずると来た。それでこの二人が共謀していたなんてよくもまあそんなでたらめな口が利ける。」

 

「封印を解除すれば無下限を持つ五条の処刑は不可能になる。だから解除を禁じた。五条の封印を維持することこそが事実上の奴への死刑執行なのだ。」

 

やはり譲らないか。覚悟はしていたが事態は最悪。こうなれば総監部の説得は絶望的か。

 

「救いようがないな。」

 

総監部の連中に向けて歩を進める。

 

「貴様! 止まらんか!」

 

「怯えなくても大丈夫ですよ。言ったでしょう? お願いを聞いてもらうと。」

 

──────────────────────────────────────────―

 

「肉体の情報から魂の情報を複製するんですよ。」

 

パンダを解放するために高専敷地を訪れた夜蛾正道は総監部からの刺客である楽巌寺嘉伸(がくがんじよしのぶ)との戦闘で致命傷を負った中で、これまで黙秘を貫いていた突然変異呪骸「パンダ」の製造方法を明かし始めた。

 

「何故……今更話した。何故もっとはやく、何故生き延びなんだ……!」

 

それは呪術界で最も重要とされる情報、特級案件の情報だった。通常の呪骸は稼働する間は術者が呪力を供給し続ける必要がある。だが、パンダは違った。

起動時の呪力さえ与えれば後は人間と同様に呪力の自己生成・自己補完を行う完全自立型呪骸。一度起動すれば半永久的に稼働し続けるソレは量産すれば国家を揺るがすほどの軍事力たり得る。

 

国家を揺るがすその技術は一人の術師が独占するには危険すぎると判断され、作成者である夜蛾正道はこれまで何度もその製造方法を追求されてきたが、パンダの誕生はあくまで突然変異……偶然によるものであると頑として主張してきた。

 

その夜蛾が生命の危機に瀕して突如パンダの製造方法について明かし始めたことに楽巌寺(がくがんじ)は動揺と共に真意を問う。

 

「私からあなたへの呪いですよ。」

 

──────────────────────────────────────────―

 

夜蛾正道の処刑人として京都高専学長楽巌寺嘉伸(がくがんじよしのぶ)が任命されたことを知った隆景は夜蛾と楽巌寺(がくがんじ)の戦闘を止めようと敷地内を駆け回っていた。夜蛾は拘留中のパンダを救出するためにここの留置場に来るはずだ。そう当たりを付けた隆景は留置場への入り口へと向かっていた。

 

道中、総監部の遣いらしき覆面の男と出くわしたのですれ違いざまに斬り捨てたが、この手の輩がいるということは夜蛾と楽巌寺(がくがんじ)の両学長が既に接触している可能性が高い。男の足跡を辿って捜索範囲を絞って現地に到着したときには事態は致命的な状況に至っていた。

 

──────────────────────────────────────────―

 

攻撃の気配を察知した楽巌寺(がくがんじ)は咄嗟にその場を飛び退いた。見ると先ほどまで自分のいた場所に水の刃が突き立っていた。

 

(!? いつの間に!)

 

攻撃の後の瞬く間に男が夜蛾の傍らに跪いていた。

 

──────────────────────────────────────────―

 

眼前の夜蛾正道の命は風前の灯火だ。反転術式で肉体の損傷を修復出来たとしても本人の生命力が保たないかもしれない。おまけに歴戦の術師である楽巌寺嘉伸(がくがんじよしのぶ)の妨害も気にしなければならない。

 

(こうなりゃ、やむを得ん! 間に合ってくれ!)

 

迫る後輩の気配を感じとったことで隆景は術式を起動する。

 

(拡張術式『剥形(はくぎょう)』!)

 

正のエネルギーを凝固させる凝固呪法のイメージを拡張して他者を正のエネルギーでコーティングし状態を固定する拡張術式『剥形(はくぎょう)』。

本来は著しく実力差のある相手でなければ発動できないため、適当な道具が無いときに非術師の拘束を行う時くらいにしか使っていない持て余し気味の技だが、夜蛾の生命力が極端に弱っていることで皮肉にも使い道が出来てしまった。

辛うじて「死んでいない」状態に固定した夜蛾を愛刀顕明連(けんみょうれん)と共に間近に迫ってきていた後輩に預ける。

 

「パンダ! 夜蛾さんを頼む! 家入先生のところへ連れていけ!」

 

「お、おう!」

 

「その刀も一緒に持って行け! そいつがあれば反転が効きやすくなるかもしれん!」

 

夜蛾の体と顕明連(けんみょうれん)を受け取ったパンダは一目散に現場から離脱する。

その姿を見て追うかどうか逡巡する様子を見せる楽巌寺(がくがんじ)を遮るように隆景が立ちはだかる。

 

「追わせませんよ。」

 

「賀﨑のか。久しいな。」

 

「ええ、ご無沙汰しています。」

 

互いに臨戦態勢のまま二人は言葉を交わす。

顔を合わせるのは昨年の「百鬼夜行」事件以来、およそ1年ぶり。隆景が呪術界を追放される切っ掛けとなった事件の現場責任者が楽巌寺嘉伸(がくがんじよしのぶ)であった。

 

「お主、何故疑惑を晴らさずに逃げたのだ。」

 

「敵前逃亡は濡れ衣です。あの時は蜚蠊(ゴキブリ)の呪霊の襲撃で主戦場を離れざるを得ませんでした。ですが、術式の秘匿は事実です。もっとも、その呪霊に襲われるまで隠蔽結界無しで術式を使ったことはありません。その呪霊との戦闘も一対一でしたから他に目撃者はいないはず。それにも関わらず自分の罪状はいつの間にか「敵前逃亡」から「術式隠蔽」にすり替わっていました。」

 

隆景はパンダ逃亡の時間稼ぎのために昔話を続ける。

 

「俺は百鬼夜行の半年ほど前からある活動を行っていました。体内に呪物を埋め込まれて昏倒している被呪者の解呪です。同様の事件は分かっている限りでも4年前から発生していました。しかも件数は50件以上。そんな重大事が御三家当主の五条先生の耳に入らないように手回しされていた。」

 

得物である刀を手放したため、このままでは素手で楽巌寺(がくがんじ)と戦わなければならないという事実に動揺を隠しつつ言葉を続ける。

 

「その時点で総監部、少なくとも上層部に敵の手が入り込んでいることは明確でした。だから、百鬼夜行の後に拘束されたときもこのままじゃ審議なしで処刑されると直感して逃亡したって訳です。」

 

事情を話し終えた隆景に対し楽巌寺(がくがんじ)が言葉を返す。

 

「無実を訴え出る機会もないと諦めたわけか。」

 

「状況証拠だけかもしれませんが、呪術師に物証は大した意味は無いでしょう。これでもまだ総監部に従いますか?」

 

問いかけに対し、楽巌寺(がくがんじ)は拳を構えることで答える。

 

「やっぱりこうなりますか。」

 

対する隆景も徒手空拳の構えを取る。先ほど夜蛾に施した拡張術式『剥形(はくぎょう)』は、無理な術式効果を成立させるための反動として使用後の術式仕様が困難になる。そのため、順転『成形(せいぎょう)』で代用品の武器を作ることも出来ない。

会話中も術式の発動を試みていたが結果は芳しくない。どうやらこの戦闘は徒手で凌ぐ羽目になりそうだ。

 

「どちらにしろお主を見逃すわけにはいかん。」

 

「俺もおとなしく捕まるつもりはありません。」

 

言葉を交わした刹那、楽巌寺(がくがんじ)の右拳が隆景の胴に向かって放たれる。初手から急所を狙わないあたりに彼の堅実さが表れている。

左腕で拳の軌道を逸らしながら、隆景は反撃のフックを放つ。こちらは始めからこめかみを狙っている。楽巌寺(がくがんじ)は既に楽器の役割を放棄し木片となったギターのネックに呪力を流して盾とする。隆景の拳はネックを砕くに留まり楽巌寺(がくがんじ)には届かない。

 

ネックが破裂したことで二者の距離が僅かに開く。両者が打撃を蹴りに切り換えたのは同時だった。

互いの右足が交差し、衝撃が走る。威力は隆景が上回っていたが、楽巌寺(がくがんじ)は相殺しきれない威力を体の回転に活かして後ろ回し蹴りを隆景の顔面に見舞う。

予想外の威力で放たれた回し蹴りに対して隆景は両腕で顔をガードするが、鋭く突き上げるような楽巌寺(がくがんじ)の蹴り上げはガードのために構えた両腕をかちあげ、防御姿勢を崩す。

 

慌てて態勢を立て直すが、既に楽巌寺(がくがんじ)は次撃の体勢を整えていた。

繰り出される鋭く重いラッシュ。急所を守るために腕を上げて頭部を守るが空いた胴に連打が浴びせられる。

連続する胴体への強打に耐えかね思わずガードの腕が下がったのを楽巌寺(がくがんじ)は見逃さなかった。

すかさず左フックを放ち隆景の左側頭部を捉える。急所へのダメージで隆景のガードが解けたところへ楽巌寺(がくがんじ)の本命右ストレートが突き刺さる。

 

黒閃

 

楽巌寺(がくがんじ)会心の一撃が黒い火花という形で隆景の肉体を襲う。桁違いに増したダメージは呪力によるガードを容易く貫き隆景の体を大きく吹き飛ばす。

 

転がる勢いに任せて距離を取りつつ体を起こすが、楽巌寺(がくがんじ)は既に眼前で追撃の体勢に入っていた。反転術式による治療を諦め、再び格闘戦に移るが黒閃によってゾーン状態に入った楽巌寺(がくがんじ)は基礎の呪力操作から繰り出す攻撃に至るまで、黒閃以前とは次元の異なるキレを見せる。

 

肉体は全盛期を過ぎていても、長い年月を掛けて磨き抜かれた呪力操作が体力の衰えをも凌駕して術師としての全盛期の能力を維持する術師が存在する。楽巌寺嘉伸(がくがんじよしのぶ)は正にそういった術師の典型であった。

 

(流石、楽巌寺(がくがんじ)学長。堅実に攻めてきた上で黒閃までキメてきたっ。)

 

やむを得なかったとはいえ初手で忍術を見せたことが隆景にとって不利に働いていた。過去の交流会で楽巌寺(がくがんじ)は忍術の発動には印を結ぶことが必要だと知っている。それゆえに距離を取る事を許さずに常に格闘戦の距離を保つことで印を結ぶ隙を潰してくる。

 

印を省略して無理に忍術を使えばその先に待つのは呪力切れによるジリ貧だ。互いに連戦の身とはいえ『フツノミタマ』による呪力増強を使えない今、呪力の大量消費は悪手であった。

 

勢いと鋭さを増した楽巌寺(がくがんじ)に対し隆景はブロッキングの要領で殴打の軌道をずらし続けるがダメージは蓄積していく。このまま消耗戦になれば、楽巌寺(がくがんじ)優位の展開は崩れない。そのことを嫌った隆景は賭けに出る。

 

(シン・陰流 簡易領域 『抜刀』!)

 

二本の足で大地を強く踏みしめ簡易領域を発動させる。隆景はこの簡易領域に京都高専2年三輪霞と同様に「両足が展開時の(ポイント)から離れない限り、領域内に侵入したものを“全自動(フルオート)”反射で迎撃する」というプログラムを仕込んでいた。

だが、抜刀術の代わりに拳打を組み込んだのは土壇場での思いつきであり、初めての試みであった。動作としては抜刀術の代わりに拳打を行い、肉眼での認識以上の格闘戦に対応する。鞘滑りなどの技法が使えない以上、当然正規の『抜刀』よりも迎撃の速度は落ちるが、それでもこの距離での肉弾戦では効力があった。

楽巌寺(がくがんじ)がこちらの忍術を潰すために格闘戦の間合いを保つならそのまま打ち合いを挑み、距離を取るようであれば簡易領域を解除して忍術で攻める。

 

近接格闘を続けるか、一度間合いを取るかという二択に対し、楽巌寺(がくがんじ)は正面からの殴り合いを選んだ。

簡易領域によりレスポンスが上がったことで、これまで対応できていなかった楽巌寺(がくがんじ)の殴打と渡り合えるようになる。

 

互いの拳が徐々にボディを捉えだすが両者の応酬は止まらない。両者とも得物を失い術式も満足に使えない以上、殴り合いによる持久戦になるのは必然と云えた。だが、あくまで足場の固定による回避動作の制限という制約によって現在のスペックを発揮している隆景に対して両足を自由に使える楽巌寺は当然優位に立つ。背後に回り込むことこそ隆景の攻撃で阻まれているが楽巌寺は身を捩るだけでなく半身を引くなどの今の隆景が取れない選択肢を持っている。

 

加えて黒閃による120%の能力発揮。簡易領域の維持と格闘戦に呪力運用を集中している隆景は反転術式による回復を行う暇がない。この戦いの勝敗はどちらが先に相手を削り切るかに懸かっていた。そしてそのダメージレースで優位に立っているのは楽巌寺(がくがんじ)であった。

 

じわじわと敗北に追い込まれつつある隆景だったが、彼の拳には楽巌寺(がくがんじ)の黒閃が炸裂する前から握りこみ続けているものがあった。

 

(っ! 粉!? 術式か!)

 

拳の応酬の中で隆景は放ちかけていた拳を突然開いて血まみれの粉末を撒いた。楽巌寺(がくがんじ)は隆景の術式の詳細を知らない。そのためこの粉末が術式に関するものかも知れないと警戒し、拳の一発を降りかかる粉末を払うために使った。

 

粉末の正体は粉々になった木片であった。戦闘の最初で楽巌寺(がくがんじ)が攻撃を受け止めるのに使ったギターネック。攻撃が防がれたときに隆景は砕けたこの破片の一部を拳に握りこみ続けていた。はじめはどこかで刺突に使うつもりだったがその機会は訪れないまま、戦闘が進む内に木片は拳の中で次第に形を失い粉微塵になっていた。握った当初は打撃を振るう度に手の内を傷つけていた木片だったが、次第にその痛みが薄れていくことで握った破片がどんどんと細かい粉末になっていっていることを隆景は知覚していた。

 

ばら撒いた粉末はブラフ。だが楽巌寺(がくがんじ)は攻撃よりも粉末の排除を優先した。この一撃の隙に隆景が取った行動は攻撃ではなかった。“巳の印”。土遁系の基本となるこの印を一つだけ結ぶ。発動した術は……

 

(『土遁 硬化術』)

 

土遁の基礎である“物の硬度の操作”。『硬化術』の効果はこれだけであるが、単純な殴り合いをしているこの状況ではその価値は下手な呪術よりも高かった。

 

(拳撃の威力が急に増した! 撒いた粉はブラフか! 何かしおったな!)

 

硬度の上昇は拳撃の威力上昇に直結し、先程までは拮抗していた拳の打ち合いに変化が現れる。隆景の拳が楽巌寺(がくがんじ)の拳を弾き、次々と有効打を浴びせていく。

ダメージを負い体勢を崩した楽巌寺(がくがんじ)が視線を戻した時に目にしたのは、簡易領域を解除し、半身かつ腰だめに拳を構える男の姿。

 

黒閃

 

今度は隆景の拳が黒い火花とともに楽巌寺(がくがんじ)の腹部を打ち抜く。楽巌寺(がくがんじ)はその場で踏み堪えるが、内臓へのダメージ口から血が溢れる。

そこへ更に追撃の拳を叩き込むことで楽巌寺(がくがんじ)の体が吹き飛ばされる。

 

距離が空いた隙に隆景は反転術式で傷を癒やす。黒閃を受けた部分は完全では無いが、それ以外の部分は治療を完了させた。

 

戦いの趨勢は決まった。

互いに連戦で得物を失い術式も満足に使えないが故の純粋な格闘戦。両者とも黒閃を出してダメージを重ねていっていたが、後手で黒閃を発動させた隆景はその黒閃で生まれた隙を使い反転術式で負傷を癒やしつつある。

 

残りの呪力に大差は無いが、肉体のダメージには差が付いた。そして楽巌寺(がくがんじ)に反転術式という手段が無い以上、このダメージ差が覆ることは無い。

 

「これで詰みです。」

 

隆景の回し蹴りが楽巌寺(がくがんじ)の側頭部に直撃する。黒閃を受けた直後の楽巌寺(がくがんじ)には回避する術は無かった。

 

──────────────────────────────────────────―

 

意識を失った楽巌寺(がくがんじ)に隆景は反転術式による治療を施す。

彼ならば直に目を覚ますであろう。

 

「あのクズどもよりはマシだと期待させてもらいますよ。」

 

独り呟いた隆景は五条派との合流場所へと踵を向け立ち去った。

 




後 楽巌寺(がくがんじ)に読み仮名振るのダルすぎなので次回からはやめようと思います。普通に読める名前に何故読み仮名を付けていたんだ儂は…
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