やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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本作では五条は生徒の手前、天元を様付けで呼んでいますが本心では敬ってはいないという設定です。


第三十五話 作戦会議

「あれ?こんな感じ?」

 

未だ『獄門疆(ごくもんきょう)「裏」』に拘束された状態だが、およそ9日ぶりに現世に現れた五条悟は気の抜けた調子であった。

自身が封印された際にも、後の事態は教え子達が何とか対処するだろうと考えていた五条だったが、こんな中途半端な形で封印が解かれるのは予想外だったようだった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「なるほど。大体の状況はつかめたよ。」

 

乙骨が『獄門疆(ごくもんきょう)「裏」』の拘束を破壊しようと躍起になって刀を振り回している横で五条は秤と隆景から自身が封印されている間に起きたことの説明を受けていた。

 

「やっぱり先生でも封印は壊せないですか?」

 

「駄目だね。相変わらず呪力も作れないし体の力も入らない。完全に解除するためにはその“天使”って奴の術式が必要になるんじゃ無いかな。憂太が探しに行った黒縄は空振りだったし、天逆鉾は僕が『茈』で壊しちゃったし。」

 

五条の姿が示すとおり、隆景の術式では五条の封印を一時的かつ不完全にしか解除出来ない。

やはり『獄門疆(ごくもんきょう)』は他の呪物とは異なり、「源信」という術師の肉体が部分的に残っているようだ。そのため、人間に適用出来ない隆景の“浄の力”では『獄門疆(ごくもんきょう)「裏」』の一部分しか解除することが出来ず、現在も残った肉体の部分が損傷した箇所を自己修復しようとしている。隆景が“浄の力”を注ぎ込み続けなければ五条は再び封印されてしまうだろう。

 

「情報共有はこれぐらいかな。脳味噌野郎の素性も知れたし、僕が伝えられることも残ってないしね。またこの中に戻ると思うと気が重いけど、隆景もいつまでもこのクソ箱を開け続けられないでしょ?」

 

「目一杯頑張ってあと30分くらいですね。それ以上は流石に呪力が持ちません。」

 

五条の指摘通り、隆景もこの封印をいつまでも開けていられる訳では無い。この後死滅回游に参加することを考えれば呪力の消耗は少なくした方が賢明だ。

 

「近次と綺羅羅も手伝ってくれて助かるよ。京都の件は悪かったね。」

 

「別に良いっすよ。ムカついたからバックレた。そんだけっす。事情もコイツから色々聞いてるッスから。」

 

秤はそう言って隆景の方を握りこぶしに親指で指す。

 

「お?どうした?ちょっと大人になったじゃん。何かあった?」

 

「何かあったのはそっちのほうだろ…。素直に話して損したぜ。」

 

からかう五条に対し、秤が青筋を立てながら噛みつく。そんな光景を目にして隆景も顔が綻ぶ。

 

「それじゃあ開けっぱなしもしんどいんでコレも閉じますね。緊急の用件があればまた伝えますから。先生はのんびり待ってて下さい。」

 

「のんびりは嫌かなぁ。結構しんどいんだよ?この中。精神的にクルね。 …ああそれと隆景、ちょっと良いかい?」

 

「何でしょう?」

 

「天元様と喧嘩しないようにね。君、いま結界がらみで天元様のこと疑ってるでしょ。」

 

図星を突かれてひるむ隆景に五条は続ける。

 

「実物の結界(コロニー)は見ていないけど、いくらあの脳味噌が結界術が得意だろうとこれだけの規模の結界を独力で構築、維持するのは無理がある。そうなると考えられるのは既存の結界…要するに天元様が作った基本結界、浄界にタダ乗りする形で結界を構築してるんだろう。」

 

最強の術師は伝え聞いたのみの情報から限りなく真実に近い推測を導き出していく。

 

「ぶっちゃけ浄界を破壊すればその上に成り立っている死滅回游も一緒にぶっ壊せる。でも、それをやっちゃうと今後は『帳』も下ろせなくなるし全国の結界もまとめて弱体化する。今の状況でやれば回游が終わっても事態は沈静化しないよ。」

 

人々の不安が増大して呪霊が激増している今、天元の築いた基礎結界が無くなれば呪霊退治がままならなくなり、それが更なる呪霊増加に繋がる負のスパイラルが発生する。

死滅回游の発動を許した時点で術師の勝ち筋は「天元の守護=羂索の殺害」しかない。五条が伝えているのはそういう内容だ。その言葉は天元への疑念から他の術師との協調を絶ってでも独自に行動を起こすべきではないかとも考えていた隆景に冷静さを取り戻させる。

 

「本来は天元様がちゃんと隠さずに説明するのが筋だと思うよ。よっぽどの人間不信なのか人との接し方を忘れてしまったのか、僕らへの言葉が足りないのは同意するよ。それでもアレに人類への害意は無いよ。ほとんどシステムと言っても良い。」

 

だから天元への不信を理由に無理な行動をするのはやめておけ。五条に暗にそう諭された隆景は最後にいくらか言葉を交わして『獄門疆(ごくもんきょう)「裏」』を閉じたのであった。

 

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再び封印が施された『獄門疆(ごくもんきょう)「裏」』を持って天元の結界に戻った乙骨、秤、隆景らは真希や伏黒らと今後の方針を決めることになった。

まず、死滅回游と天元の結界の関係について情報の共有と確認が行われた。天元は疑念を持たせたことを詫びた上で事実を認めた。

九十九は天元を散々罵倒していたが、それを余所にそれぞれが担当する結界(コロニー)や追加を目指すルールを決める運びとなった。

まず、東京第2結界(コロニー)にいるという“天使”を探すためには当該結界(コロニー)への参加が必須である。それと並行して泳者(プレイヤー)救出のためのルール追加のために(ポイント)を稼ぐ必要がある。

 

(ポイント)については(ポイント)譲渡のルールを追加するのはどうかという意見が出た。これが叶えば仲間内で(ポイント)を譲渡し合うことで術式剥奪ルールの脅威を引き下げることが出来る。回游に積極的でない泳者(プレイヤー)の中からも協力者が募りやすくなるかも知れない。

 

だが、どんな方針を取ろうと付きまとうのはまずは100(ポイント)を獲得するには、術師なら20人、非術師なら100人の泳者(プレイヤー)を殺害しなければルールの追加が叶わないという点だ。

 

これについては結界(コロニー)の平定も兼ねて、まずは随一の戦闘力を誇る特級術師乙骨が単独で結界(コロニー)に突入して(ポイント)稼ぎをすることになった。突入する結界は仙台結界(コロニー)に決まった。

 

“天使”がいると思われる東京第2結界(コロニー)を避けたのは、結界(コロニー)内の泳者(プレイヤー)が少ない場合にルール追加も叶わずに詰んでしまうリスクがあるからだ。泳者(プレイヤー)数が少なく、肝心の“天使”を殺さなければならなくなってしまえば本末転倒である。だから始めに突入する結界(コロニー)は東京第2以外の結界(コロニー)である必要があった。

 

(ポイント)譲渡に関連して、他の泳者(プレイヤー)の情報を閲覧出来るルールの追加も提案された。既に大量の(ポイント)を得ている泳者(プレイヤー)から(ポイント)を譲り受けることが出来れば、以降の(ポイント)集めが楽になるが、この件については一旦譲渡ルールの追加まで棚上げすることになった。

 

次に話し合われたのは泳者(プレイヤー)保護のためのルール追加についてだった。

伏黒からは代わりの泳者(プレイヤー)を準備することで結界(コロニー)内の泳者(プレイヤー)が離脱出来るようにするという案が出た。

一方で、隆景が提案したのは泳者(プレイヤー)を一つの結界(コロニー)に集めて管理するという案だった。

残りの結界(コロニー)にその分のエネルギーが分配され強固になる代わりに結界(コロニー)の解体を可能にするルールと、滞留する結界(コロニー)が消失した場合に残存する結界(コロニー)のいずれかに転送されるという2つのルールを追加するプランだ。

 

伏黒案では追加ルール自体が回游の永続を妨げると判断される可能性があるがルールの追加は1回で良いという利点があり、即効性が高い。

隆景案ではルールの追加が2回必要だが、追加するルール自体は回游の永続と競争の激化を後押しするもののため、ルール追加が却下される見込みは低い。

好戦的でない泳者(プレイヤー)さえ保護できれば、他の泳者(プレイヤー)同士の潰し合いも期待できる上に五条の封印解除が叶えば、最後の一つの結界(コロニー)に五条を投入することで全泳者(プレイヤー)を事実上制圧できる。

五条による結界(コロニー)制圧は追加するルール条文には含まれないため、回游側が拒否することも出来ない。

 

最終的には隆景も他のメンバーに先駆けて回游に参加し、情報収集しつつ追加するルールを検討することになった。これは隆景の能力を把握している乙骨による推薦で彼の能力ならば結界(コロニー)の自由離脱が可能であると踏んでの判断だった。宿儺に情報を与えないために理由は共有されなかったが乙骨を信用してこのプランが採用された。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

11月10日

大阪結界(コロニー)

 

「俺の名前は、宝満(ほうまん) 空袋(くうたい)!世界一の金持ちを目指す男だ!死にたくなけりゃ有り金全部渡しな!」

 

大量に連ねられた壱万円札をラ○ボーよろしく体に巻き付けた痩せぎすの男が唾を撒き散らして叫びかけてくる。

 

(いきなりキャラ濃いなぁ…。)

 

死滅回游に参加した隆景はいきなり戦闘を仕掛けられていた。

 




自分が書くと五条がまともな大人のような発言をしてしまうのが目下の悩みです。
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