やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件 作:へーれ
「やっぱり金の力は偉大だァ!本職の術師様が手も足も出ねェとはなァ!」
一方、追い立てられている側の隆景は
“覚醒タイプ”であれば仲間に引き込みたいと考えていたが…
(ここまで破壊と巻き添えに躊躇がない所を見るに仲間に引き入れるのは難しいか…?)
男はこれまで戦闘で周囲を破壊することを厭わずに行動している。“覚醒タイプ”だろうとここまで倫理観が欠如しているのなら説得は期待出来ないが、殺す前に一応確認はしておくことにした。
「てめェ、いつの間に!?」
“特殊な歩法”で背後に瞬時に回り込んだ隆景の方へ
「お前、“羂索”って名前か、額に縫い目のある男に覚えはあるか?」
「情報をタダでくれてやるとでも?その腰の刀と交換なら考えてやってもいいがな。」
多少は物の価値が分かるらしい。
だがこの呪具をその程度の価値と見誤る辺り恐らくコイツは現代人、つまり“覚醒タイプ”だ。
「いや断る。じゃあ次は価値のない質問にしよう。お前…何人殺した?」
「笑わせるな。それこそタダで答えるかよ。」
「その口ぶりだともう何人も殺っているな。」
【『
凝固呪法の最大の欠点。それは術式単体では人間を殺傷できないこと。だから硬度と鋭利さを兼ね備えた刀を形成して物理的に殺傷する。
抜き放った自慢の呪具『
「宮本武蔵か。俺は前田慶次派だが付き合ってやるよ。」
そう言うと
(前田慶次…「花の慶次」のか?……こいつもギャンブラーか。)
二者の斬り合いが始まった。
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羂索の無為転変により術式に目覚めるまでは踏み倒してきた借金の
だが、術式『
彼の術式『
殺害した男から金品を奪った彼はそれを使って他の追っ手も次々と殺害していく。その中で彼は己の術式についての理解を深め、当然の帰結として、金品を得れば得るだけ自身が力を得ることを理解した。
その後の彼の行動は早かった。始めはコンビニのレジ機やATMを襲い金を奪って力を蓄えた。次に宝石店や質屋、金ショップで金品を奪うなど行動がエスカレートし、銀行を襲撃して建物から丸ごと金品を略奪するようになるまで時間は掛からなかった。
呪霊被害の頻発で治安機関の手が回らなくなっていたことも事態に拍車を掛けた。警察が事態を把握した頃には、既に通常兵器では既に手が付けられないほど彼の力は強大化しており、自衛隊の装備ですら制圧は難しくなっていた。
その後、彼は死滅回游による術式の剥奪を逃れるために大阪
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そして隆景は
恐らく術式によってパワーを外付けしているのであろう。奴はこれまで貨幣を相応のエネルギーに変えて武器にしてきていた。今もそうだ。万札の束が変じた奴の刀は下手に呪力強化した刀を圧倒する威力を発揮している。数打ちの刀では容易に砕かれていただろう。
だとしても疑問が残る。物を変じさせる術式なら体に何かしらの装備を身につけて身体を強化するのが道理だろう。だが奴は裸の上半身に鎖で連ねた壱万円札を巻き付けているだけだ。下半身はボロボロのカーゴズボンに上半身と同じく万札を巻き付けている。
変形させていないものでも効力を発揮する術式なのか。その疑問に思考を割く暇を与えぬ勢いで
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頭上に1m大の物体が降って来る。
咄嗟に躱すが物体は着弾した瞬間、大爆発を起こす。
(危ねぇ!金庫を丸ごと爆弾にしやがったな!)
肝を冷やしているその間にも大小様々な金庫が次々と降ってくる。
刀での格闘戦が有効で無いと見た
中身が見えない以上、金庫にどれだけの金額が仕舞ってあるかは分からない。呪力量で推し量ろうにも「中身を封じる・隠す」という金庫の性質が働いているのか見かけの呪力と爆発の規模が一致しない。
『領域』なら対処出来るが、
よってそのひとつ前の手段を取ることにした。
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投げ込んでいた金庫が半透明の巨剣に斬り裂かれる。
斬られた金庫は隆景の
隆景は空中を“滑り”ながら剣を背後に構えを取る。
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『阿弥陀流
作中では瞬く間に数多の斬撃を浴びせる技として描写されているのみでどのような変化をしたのかは描かれていない。
それ故に隆景はオリジナルの剣技に『
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「『阿弥陀流
剣が背に回るほど目一杯に振りかぶって放たれた一撃は常人どころか術師でも視認することは難しい程の高速であった。だが
隆景が訝しんでいた異常なまでの身体能力。少し前までは非術師であった彼がこれほどの力を操れるのは術式の恩恵だ。彼の術式『
そもそも貨幣に価値があるというのは「信用」によるものであり、硬貨や紙幣それ自体に価値があると考えるのは一種の宗教的な集団認識によるものともいえる。
例えば、「神」が実在し「神に許しを請う」ために礼拝を行うという行為はキリスト教信者であれば当然であるが、その宗教を信仰していない人間にとってはそもそも「神」の実在自体が疑わしく思うこともある。
同じように、とまで言うと乱暴な物言いになるが、貨幣経済を取り入れていない民族に対して労働や物資の対価として貨幣を渡すと持ちかけても応じることは少ないだろう。それを受け取っても彼らの生活圏では価値を有さないからだ。
話が脱線したが、
だが、一つだけ例外がある。それは暗号資産からエネルギーを引き出す場合だ。
【『
だが、その認識のおかげで奪い取った物品に含まれていた暗号資産のアカウントデータ内の資産は「よく分からないもの」として
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迫り来る巨剣。
以前の
剣を背に隠すことで攻撃の出所を隠すことを狙ったようだが無駄なことだ。
彼の視覚は敵術師の巨剣のサイズを既に見切っている。
際どいタイミングだがこの攻撃は躱せる。最低限の動きで躱し、相手が体勢を直す前に必殺の反撃を叩き込んでやる。
スパッ!
そう息巻く
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隆景の『阿弥陀流
技に入る前に
こうすることで相手に間合いを錯覚させ、回避したつもりの攻撃を相手に命中させる。
それが隆景の『
胴体こそ外したものの伸ばした刃は
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強化した身体能力で隆景の奇襲に反応した
だが、
「『
蓄えていた硬貨を腕の形に変形させ、即座に戦闘力を取り戻す。
拳を受け止めたために隆景は追撃を諦めざるを得ない。
それに対し隆景は技術で迎撃する。
(シン・影流 『簡易領域 正眼
そのデメリットを踏み倒すために隆景は再度“特殊な歩法”、『
そこからは二人の追走劇が始まる。大阪の市街を破壊しながら
攻撃の応酬を続ける中、隆景は反撃の機会を待っていた。
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「指紋認証はクリア。後は認証アプリのコードを入力…………送金完了っと♡」
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(何だ!?力が抜けていく!?)
身体を強化していた呪力が失われたことに気を取られた
(術式が使えなくなった訳じゃない。残高を取られたってのか!?)
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隆景は大阪
同行を依頼した理由は領域『
実験の結果、
(回游の参加者になってしまったら、という条件で隆景が追加で支払う予定だった手当が出ないことについて冥冥は残念がっていたが。)
隆景と冥冥の間には利害関係があった。
隆景は積んだ金次第で実験参加を引き受けてくれる人間が必要だったし、冥冥にとっても
そうして大阪
彼の術式の影響下にある財産は奪えなかったが無造作に放っていた端末は別だった。
端末のロックと暗号資産の管理サイトの二段階認証を突破できれば、資産送金も思うままだ。
厄介というか当然というか端末には指紋認証が掛けられていたが、冥冥は隆景が切断した
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(動きが鈍くなった!冥冥さんか?)
理由は分からないが敵の動きは素人同然にまで鈍くなっている。こちらを誘い込むためのブラフかも知れないが構わず仕掛ける。
連撃
「俺の金盗りやがったな、クソ野郎ぉ!」
咄嗟に弾いた隆景だったがこの攻撃は一瞬の隙を作るためのもの。
「これでくたばりやがれ!『金庫室キャノン』!」
砲の口径は成人男性の身の丈ほどもある。大砲の常識からすればあり得ない構造だが呪術の世界であれば別だ。
爆音
眼前で火を噴いた砲身から巨弾が迫る。
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迫る砲弾を前に思考する。
眼前の危機にどう対処するか。
斬る。 剣を振り切った今の体勢からでは着弾までに刀を返すのが間に合わない。
忍術。 印を放棄したとしても呪力の変質が間に合わない。
回避。 相手は自爆覚悟で撃って来た。であれば爆破範囲から逃げ切る前に起爆させるだろう。
いずれも着弾までには間に合わない。では残る手段は?
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隆景は砲弾へ向けて“左手”をかざす。
唱えた言葉は、
「術式反転」
呪力の形を崩す呪詩。
「『
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砲弾に手を触れた瞬間に『
『
だが爆発寸前の砲弾であれば事情は異なる。
砲弾の向こう側を意識して『
ピシリと亀裂が走った直後、一帯を丸ごと吹き飛ばす筈だった球体は放った術者本人に向けて内包するエネルギー全てを放出した。