やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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筆者もリボ払いで死にかけたことがあるので、お金関係の術式に特別心惹かれるのかも知れないです。


第三十六話 リボ払いはやめておけ

 

「やっぱり金の力は偉大だァ!本職の術師様が手も足も出ねェとはなァ!」

 

宝満(ほうまん)は狩りの獲物を追い回すように結界(コロニー)に新規参加してきた術師目掛けて銃撃を浴びせていた。術師はこれまでの敵とは異なり、すばしっこく逃げ回っているが時間の問題だろう。今までこの攻撃を耐えきった者などいないのだから。

 

一方、追い立てられている側の隆景は宝満(ほうまん)を名乗る男が“受肉タイプ”、“覚醒タイプ”のいずれなのかを推察していた。

“覚醒タイプ”であれば仲間に引き込みたいと考えていたが…

 

(ここまで破壊と巻き添えに躊躇がない所を見るに仲間に引き入れるのは難しいか…?)

 

男はこれまで戦闘で周囲を破壊することを厭わずに行動している。“覚醒タイプ”だろうとここまで倫理観が欠如しているのなら説得は期待出来ないが、殺す前に一応確認はしておくことにした。

 

「てめェ、いつの間に!?」

 

“特殊な歩法”で背後に瞬時に回り込んだ隆景の方へ宝満(ほうまん)は慌てて向き直る。戦い慣れしていない立ち振る舞いを見るに“受肉タイプ”には見えないが…。

 

「お前、“羂索”って名前か、額に縫い目のある男に覚えはあるか?」

 

「情報をタダでくれてやるとでも?その腰の刀と交換なら考えてやってもいいがな。」

 

多少は物の価値が分かるらしい。宝満(ほうまん)は隆景の『顕明連(けんみょうれん)』を指差して取引を持ちかけて来る。応じる気は更々無いが。

だがこの呪具をその程度の価値と見誤る辺り恐らくコイツは現代人、つまり“覚醒タイプ”だ。

 

「いや断る。じゃあ次は価値のない質問にしよう。お前…何人殺した?」

 

「笑わせるな。それこそタダで答えるかよ。」

 

「その口ぶりだともう何人も殺っているな。」

 

【『成形(せいぎょう) 太刀拵え』】

 

凝固呪法の最大の欠点。それは術式単体では人間を殺傷できないこと。だから硬度と鋭利さを兼ね備えた刀を形成して物理的に殺傷する。

抜き放った自慢の呪具『顕明連(けんみょうれん)』と『成形(せいぎょう)』で象った刀の二刀を構える。

 

「宮本武蔵か。俺は前田慶次派だが付き合ってやるよ。」

 

そう言うと宝満(ほうまん)は取り出した札束から刀を作り出す。

 

(前田慶次…「花の慶次」のか?……こいつもギャンブラーか。)

 

二者の斬り合いが始まった。

 

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宝満(ほうまん)空袋(くうたい)は“覚醒タイプ”の泳者(プレイヤー)。元は生粋のギャンブラーだったが「儲けられない」タイプの浪費家だった。

羂索の無為転変により術式に目覚めるまでは踏み倒してきた借金の回収業者(半グレ)から逃げ回る日々を過ごしてきた。

 

だが、術式『銭闘民族(ファイトマネー)』に覚醒したことにより彼の人生は一変する。回収業者に追い詰められリンチ待ったなしのところで彼は咄嗟に握っていたパチンコ玉を投げつけることで追っ手を殺害する。

彼の術式『銭闘民族(ファイトマネー)』は術者が価値があると認識する貨幣などからその価値に応じた威力を生み出す。4円パチンコを打っている途中、回収業者に見つかった彼は逃走する際に偶々握りしめていた残り玉を凶器として追っ手を殺害したのだ。彼にとって命に等しいその出玉は人を殺すのに十分な価値を持っていた。

殺害した男から金品を奪った彼はそれを使って他の追っ手も次々と殺害していく。その中で彼は己の術式についての理解を深め、当然の帰結として、金品を得れば得るだけ自身が力を得ることを理解した。

 

その後の彼の行動は早かった。始めはコンビニのレジ機やATMを襲い金を奪って力を蓄えた。次に宝石店や質屋、金ショップで金品を奪うなど行動がエスカレートし、銀行を襲撃して建物から丸ごと金品を略奪するようになるまで時間は掛からなかった。

呪霊被害の頻発で治安機関の手が回らなくなっていたことも事態に拍車を掛けた。警察が事態を把握した頃には、既に通常兵器では既に手が付けられないほど彼の力は強大化しており、自衛隊の装備ですら制圧は難しくなっていた。

 

その後、彼は死滅回游による術式の剥奪を逃れるために大阪結界(コロニー)泳者(プレイヤー)として参加する。動機は自身の死を恐れたからではない。彼は術式の剥奪が自身の命と繋がっていると懸念するほど物事を深く考えてはいなかった。“この力があればこれまで手に入れられなかった金が手に入れ放題だ。”手にした超常の力を失うことを惜しんで回游に参加したのである。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

宝満(ほうまん)の攻撃は苛烈を極めた。ただ刀を振り回すだけの素人剣術にも関わらず、その道の達人である隆景が攻めあぐねるほどである。

そして隆景は宝満(ほうまん)の実力を測りかねていた。稚拙な剣捌きを補って余りある莫大な呪力、その根源が分からない。呪力操作が緻密な訳ではない。寧ろ有り余る出力が大雑把極まりないそれを補っているに過ぎない。そして呪力量の割には乙骨が放っているような異質な気配も感じられない。

 

恐らく術式によってパワーを外付けしているのであろう。奴はこれまで貨幣を相応のエネルギーに変えて武器にしてきていた。今もそうだ。万札の束が変じた奴の刀は下手に呪力強化した刀を圧倒する威力を発揮している。数打ちの刀では容易に砕かれていただろう。

だとしても疑問が残る。物を変じさせる術式なら体に何かしらの装備を身につけて身体を強化するのが道理だろう。だが奴は裸の上半身に鎖で連ねた壱万円札を巻き付けているだけだ。下半身はボロボロのカーゴズボンに上半身と同じく万札を巻き付けている。

変形させていないものでも効力を発揮する術式なのか。その疑問に思考を割く暇を与えぬ勢いで宝満(ほうまん)の攻撃は続く。

 

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頭上に1m大の物体が降って来る。

咄嗟に躱すが物体は着弾した瞬間、大爆発を起こす。

 

(危ねぇ!金庫を丸ごと爆弾にしやがったな!)

 

肝を冷やしているその間にも大小様々な金庫が次々と降ってくる。

刀での格闘戦が有効で無いと見た宝満(ほうまん)は攻撃の手口を変えたようだ。

中身が見えない以上、金庫にどれだけの金額が仕舞ってあるかは分からない。呪力量で推し量ろうにも「中身を封じる・隠す」という金庫の性質が働いているのか見かけの呪力と爆発の規模が一致しない。

『領域』なら対処出来るが、結界(コロニー)突入時に既に一度使用している以上これ消耗するのは上手くない。

よってそのひとつ前の手段を取ることにした。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

投げ込んでいた金庫が半透明の巨剣に斬り裂かれる。

斬られた金庫は隆景の退魔の巨剣(スピリット オブ ソード)により術式効果を中和・相殺され、爆発すること無く落下していく。

宝満(ほうまん)は最初に爆弾を投げ込んだ地点に向けて爆弾金庫を投げ続けるが、致命傷にならないものを除いて切断・無効化され、辺りを埋め尽くす噴煙の中から巨剣の主が飛び出して来る。

 

隆景は空中を“滑り”ながら剣を背後に構えを取る。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

『阿弥陀流 大後光刃(だいごこうじん)』は漫画「シャーマンキング」に登場する剣技だが、作中描写ではどのような技なのかはあまり明確に描写されてはいない。原型となったのは阿弥陀丸という侍が独自に編み出した『如来』という構えから二刀で放つ『後光刃』という抜刀術で、作中では阿弥陀丸と『憑依合体』した麻倉葉によって振るわれた技だ。使い手がO.S(オーバー・ソウル)を会得してからは『大後光刃(だいごこうじん)』という技に進化したが、麻倉葉のO.S(オーバー・ソウル)には鞘が無く、また、一刀での戦闘スタイルのため腰後ろから二刀を引き抜く『如来』の特徴的な構えも無くなっている。

 

作中では瞬く間に数多の斬撃を浴びせる技として描写されているのみでどのような変化をしたのかは描かれていない。

 

それ故に隆景はオリジナルの剣技に『大後光刃(だいごこうじん)』の名を使っていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「『阿弥陀流 大後光刃(だいごこうじん)』!」

 

剣が背に回るほど目一杯に振りかぶって放たれた一撃は常人どころか術師でも視認することは難しい程の高速であった。だが宝満(ほうまん)はそれを視認出来ていた。

 

隆景が訝しんでいた異常なまでの身体能力。少し前までは非術師であった彼がこれほどの力を操れるのは術式の恩恵だ。彼の術式『銭闘民族(ファイトマネー)』は金銭価値を元に物質を変形させ力を引き出す。

 

そもそも貨幣に価値があるというのは「信用」によるものであり、硬貨や紙幣それ自体に価値があると考えるのは一種の宗教的な集団認識によるものともいえる。

例えば、「神」が実在し「神に許しを請う」ために礼拝を行うという行為はキリスト教信者であれば当然であるが、その宗教を信仰していない人間にとってはそもそも「神」の実在自体が疑わしく思うこともある。

同じように、とまで言うと乱暴な物言いになるが、貨幣経済を取り入れていない民族に対して労働や物資の対価として貨幣を渡すと持ちかけても応じることは少ないだろう。それを受け取っても彼らの生活圏では価値を有さないからだ。

 

話が脱線したが、宝満(ほうまん)の術式『銭闘民族(ファイトマネー)』における威力の算出は宝満(ほうまん)自身の価値基準に基づいており、物的な貨幣や株券などは物理的なエネルギーに変換される。預金通帳は印鑑か暗証番号とATMとセットで無ければ彼は価値を見い出せず、通帳のみではただの紙束と認識する。『銭闘民族(ファイトマネー)』は基本的には術者の認識に基づき物質から爆発や熱などのエネルギーを引き出す能力なのである。

だが、一つだけ例外がある。それは暗号資産からエネルギーを引き出す場合だ。

 

【『暗号資産エナジー(クリプト』)

 

宝満(ほうまん)が略奪したものの中には暗号資産も含まれており、その総額は200万ドル相当に及んでいた。呪霊被害により日本経済が崩壊しつつある現在、円を他の貨幣に替える動きが加速し、円の価値は1ドル360円まで下落。固定相場制時代並みの円安状態にあった。この情勢下では暗号資産も円を替える有力候補の一つでありその価値は鰻登りとなっていた。

 

宝満(ほうまん)は暗号資産の仕組みは知らず、「なんだか分からないが金になるもの」としか認識していなかった。

だが、その認識のおかげで奪い取った物品に含まれていた暗号資産のアカウントデータ内の資産は「よく分からないもの」として宝満(ほうまん)の身体を強化する「呪力」と化していた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

迫り来る巨剣。

 

以前の宝満(ほうまん)であれば認識する間もなく体を両断していたであろう一撃だったが、術式により強化された彼の身体は巨剣の軌道をその目に捉えていた。

 

剣を背に隠すことで攻撃の出所を隠すことを狙ったようだが無駄なことだ。

彼の視覚は敵術師の巨剣のサイズを既に見切っている。

際どいタイミングだがこの攻撃は躱せる。最低限の動きで躱し、相手が体勢を直す前に必殺の反撃を叩き込んでやる。

 

スパッ!

 

そう息巻く宝満(ほうまん)だったが、躱したはずの斬撃は彼の左腕を切断していた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

隆景の『阿弥陀流 大後光刃(だいごこうじん)』の肝は“目の錯覚”を利用することにある。

 

技に入る前に退魔の巨剣(スピリット オブ ソード)を徐々に縮めておき、その上で振りかぶる動作で剣を背に隠す。そして背に隠した剣を気付かれないように元の大きさよりも長く延伸する。

こうすることで相手に間合いを錯覚させ、回避したつもりの攻撃を相手に命中させる。

 

それが隆景の『大後光刃(だいごこうじん)』。

 

胴体こそ外したものの伸ばした刃は宝満(ほうまん)の左腕を切り裂いていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

強化した身体能力で隆景の奇襲に反応した宝満(ほうまん)だったが、間合いを見誤ったことにより斬撃を受けてしまう。

だが、宝満(ほうまん)は戦意を消失しない。

 

「『繰越(キャリーオーバー)』!」

 

蓄えていた硬貨を腕の形に変形させ、即座に戦闘力を取り戻す。宝満(ほうまん)は反転術式は使えないが術式によって得た腕は振るうだけで1級呪具相当の威力を周囲に撒き散らす。

拳を受け止めたために隆景は追撃を諦めざるを得ない。

 

宝満(ほうまん)は銃弾化した大量の硬貨を隆景目掛けてばらまく。

それに対し隆景は技術で迎撃する。

 

(シン・影流 『簡易領域 正眼 別滝(わかれだき)』!)

 

宝満(ほうまん)は硬貨をばらまきつつ距離を取ろうとするため隆景はそれを追わなければならない。ただし銃撃を防ぐためには簡易領域を展開し続ける必要がある。隆景の簡易領域『別滝(わかれだき)』は両足を発動時の形から動かすと解除される。

そのデメリットを踏み倒すために隆景は再度“特殊な歩法”、『飛廉脚(ひれんきゃく)』で足下に作った霊子に乗って宝満(ほうまん)を追う。

 

そこからは二人の追走劇が始まる。大阪の市街を破壊しながら宝満(ほうまん)は逃げ続ける。破壊した残骸に金品があればそれをも吸収していく宝満(ほうまん)は呪力切れする気配を見せない。このままではアクシデントや呪力切れで隆景の方が先に膝を付くかも知れない。

攻撃の応酬を続ける中、隆景は反撃の機会を待っていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「指紋認証はクリア。後は認証アプリのコードを入力…………送金完了っと♡」

 

 

 

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(何だ!?力が抜けていく!?)

 

身体を強化していた呪力が失われたことに気を取られた宝満(ほうまん)は右肘から先を切り飛ばされる。慌てて『繰越(キャリーオーバー)』で代わりの体を構築するが脳内には疑念が渦巻いたままだ。

 

(術式が使えなくなった訳じゃない。残高を取られたってのか!?)

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

隆景は大阪結界(コロニー)への突入にあたり、冥冥1級術師に同行を依頼していた。もちろん多額の謝金と共に。

 

同行を依頼した理由は領域『彼此隔界(ひしがくかい)』展開中に発動出来る『無無明亦無(むむみょうやくむ)』で結界(コロニー)の全体、ないしは一部分を解体出来るかどうかを実験し、それによって生じた穴から結界(コロニー)に入った者が回游の参加者になるのかを検証するためだった。

 

実験の結果、結界(コロニー)は一部しか解体出来ず直径数メートル程度の穴を開けることしか出来なかったが、そこから結界(コロニー)内に立ち入った冥冥は死滅回游の参加者になることは無く結界(コロニー)突入時のランダムな座標転送が発生することも無かった。

(回游の参加者になってしまったら、という条件で隆景が追加で支払う予定だった手当が出ないことについて冥冥は残念がっていたが。)

 

隆景と冥冥の間には利害関係があった。

隆景は積んだ金次第で実験参加を引き受けてくれる人間が必要だったし、冥冥にとっても結界(コロニー)内の持ち主不在となった金品・財産をネコババしても目を瞑る術師は隆景の他に心当たりが無かった。

 

そうして大阪結界(コロニー)に入った冥冥は金品の物色をする中で、隆景との戦闘に気を取られている宝満(ほうまん)の財産に目を付けた。

 

彼の術式の影響下にある財産は奪えなかったが無造作に放っていた端末は別だった。

端末のロックと暗号資産の管理サイトの二段階認証を突破できれば、資産送金も思うままだ。

 

厄介というか当然というか端末には指紋認証が掛けられていたが、冥冥は隆景が切断した宝満(ほうまん)の腕を回収してこれをクリアした。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

(動きが鈍くなった!冥冥さんか?)

 

理由は分からないが敵の動きは素人同然にまで鈍くなっている。こちらを誘い込むためのブラフかも知れないが構わず仕掛ける。

 

連撃

 

宝満(ほうまん)の体に幾つもの傷が生じる。武器を盾にして致命傷は防ごうとしているがこのままなら失血死は免れないだろう。

 

「俺の金盗りやがったな、クソ野郎ぉ!」

 

宝満(ほうまん)が金属と化した自分の右腕を切り離してロケットパンチよろしく隆景目掛けて発射した。

咄嗟に弾いた隆景だったがこの攻撃は一瞬の隙を作るためのもの。宝満(ほうまん)は左腕を地面に突き込み本命を仕掛ける。

 

「これでくたばりやがれ!『金庫室キャノン』!」

 

宝満(ほうまん)の切り札、メガバンクの支店地下にあった金庫室を丸ごと使用した大口径砲が隆景の目の前に顕現する。

砲の口径は成人男性の身の丈ほどもある。大砲の常識からすればあり得ない構造だが呪術の世界であれば別だ。

 

爆音

 

眼前で火を噴いた砲身から巨弾が迫る。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

迫る砲弾を前に思考する。

眼前の危機にどう対処するか。

 

斬る。 剣を振り切った今の体勢からでは着弾までに刀を返すのが間に合わない。

 

忍術。 印を放棄したとしても呪力の変質が間に合わない。

 

回避。 相手は自爆覚悟で撃って来た。であれば爆破範囲から逃げ切る前に起爆させるだろう。

 

いずれも着弾までには間に合わない。では残る手段は?

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

隆景は砲弾へ向けて“左手”をかざす。

唱えた言葉は、

 

 

「術式反転」

 

 

呪力の形を崩す呪詩。

 

 

「『崩形(ほうぎょう)』」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

砲弾に手を触れた瞬間に『崩形(ほうぎょう)』が発動する。

崩形(ほうぎょう)』は呪力で構成された物質や結界を崩壊させられるが、術式効果が完遂するまでには時間を要する。格闘戦では実用的な速度ではない。

だが爆発寸前の砲弾であれば事情は異なる。

砲弾の向こう側を意識して『崩形(ほうぎょう)』を発動させる。

 

ピシリと亀裂が走った直後、一帯を丸ごと吹き飛ばす筈だった球体は放った術者本人に向けて内包するエネルギー全てを放出した。

 

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