やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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書き始める前は二十話位で書き終わると思っていましたがいつの間にやら四十話到達です。


第四十話 総則(ルール)追加

「よっと。」

 

背に人を背負った状態で隆景は足下の瓦礫を避けながら地上に出る。

 

「大分壊したけど崩れはしなかったな。」

 

「流石は御三家秘蔵の蔵ってところだな。」

 

破壊した忌庫から戻るに当たって、取りあえずの瓦礫撤去を行ってから隆景と真希の二人は禪院家本邸に戻った。

本調子ならば土遁術で修復を行うところだが衰弱した今の隆景にはその余力は無く、人を抱えて通れる程度に瓦礫を片付けた上で真依と扇の遺体を真希と隆景がそれぞれ抱えて忌庫を出ることになった。

隆景の体調を気遣って扇の遺体も自分が運ぶと真希は申し出たが経緯が経緯だけに無理をしてでも隆景が扇の遺体を背負うことにした。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして翌日。

 

「今はちゃんと弔ってやれないのが心残りだが…。」

 

「仕方ないだろ。真依も分かってくれるさ。」

 

真依の弔いを行った隆景と真希は言葉を交わす。

有事の最中のため、正式な葬儀は後日執り行うこととして二人は回游への対応に戻ることになった。

 

真希は東京へ向かうことになった。呪力を一切持たない現在の彼女の身体は呪術的には無機物と同列に扱われる。そして呪術において無機物は結界の対象とならず、その結界の効果や制約を受けることがないことが確認出来たからだ。

 

彼女には東京第一と第二結界(コロニー)内の秤達への連絡役と増援を務めてもらう。今の彼女なら結界(コロニー)からの脱出を禁じる結界の制約を無視して自由に出入りすることが出来る。それを活かして二つの結界(コロニー)間の連携も含めて動いてもらうことになった。

 

京都から東京までの道のりは長い。いくら完全なフィジカルギフテッドに覚醒したとはいえ京都から東京まで脚力のみで走破するとなれば馬鹿にならない時間が掛かるが、そこは憂憂に協力してもらうことで解決できた。

彼には今後真希のサポートとして行動を共にしてもらうところまで話を付けることが出来た。

報酬には禪院忌庫内の呪具を割り当てる予定だ。直哉達は簡単には承服しないだろうが、忌庫番の扇が職務を放棄した上に死人も出したのだ。その点を徹底的に責め立てれば拒否は出来ないだろう。磨り減った禪院家の財産の穴埋めは戦後に考えることにしている。問題の先送りとも言う。

 

後は総則(ルール)の追加だ。

 

現在の隆景の所持(ポイント)はちょうど100(ポイント)。このままでは総則(ルール)の追加は1回しか出来ない。だが、味方の術師達の(ポイント)を確認したところ、譲渡を受ければ200(ポイント)まで届くことが確認出来た。

電話連絡が付くのは禪院系の泳者(プレイヤー)のみだがこうした事態に備えて秤達とは事前にある取り決めをしてある。

 

それは高専側術師の誰かがある総則(ルール)の追加に成功した場合、他の術師は所持(ポイント)をその泳者(プレイヤー)に譲渡し集約するというもの。

隆景が追加する予定の総則(ルール)は、「滞在する結界(コロニー)が消滅した場合、泳者(プレイヤー)はランダムで選ばれた別の結界(コロニー)に強制的に転送される。」というものだ。

 

ちなみに伏黒が提案した死滅回游からの離脱が可能となる「離脱ルール」案についても並行して進めており、東京組で(ポイント)が集まればそちらのプランを優先することになっている。

 

「転送ルール」について話を戻そう。

結界(コロニー)の消滅が叶ったとしても結界(コロニー)内の完全な制圧が出来ていなければ消滅させた結界(コロニー)内部から危険な術師が野に放たれることになる。結界(コロニー)内にのみ泳者(プレイヤー)が存在する現在の状態は結界(コロニー)外に限っては民間人が守られている状態でもあるのだ。

 

結界(コロニー)を消滅させるプランにはこの問題への対策が不可欠であり、それがこの「転送ルール」を追加する理由であった。

結界(コロニー)を消滅させるルールの追加についてはその可否について意見が分かれたところである。そもそも死滅回游のルール追加に関しては「死滅回游の永続に著しく障らないこと」が前提となっている。

 

天元曰く、ルール追加の承認の是非は羂索ではなく、死滅回游のルールそのものが判断するだろうとのことであった。これだけの数の泳者(プレイヤー)に絶命も含めた制約を強制する以上は、羂索自身も総則(ルール)に縛られるという『縛り』を用いなければ術式を成立させられないだろうという予測だ。

 

このことから回游の活性化に繋がる条件を付け加えれば回游から抜けたい泳者(プレイヤー)を救うためのルール追加も可能だろうという結論に至った。

 

「離脱ルール」であれば離脱する泳者(プレイヤー)に代わって回游に参加する人間を用意して泳者(プレイヤー)総数を維持するのであれば回游の停滞を招くとは解釈されない可能性がある。結界の消滅を目指す時に付帯させる「転送ルール」も、結界(コロニー)の数は減るが残る結界(コロニー)内部の泳者(プレイヤー)密度が増すことで回游は活発化すると解釈されることも考えられる。

 

このようにルール追加が可能かどうかは出たとこ勝負である上に、結界(コロニー)間の連絡が確立していない状況ではお互いのルール追加の試行状況も共有できない。

そういった事情を勘案した結果、ルール追加に成功した側に(ポイント)を集約するという方針で事前に合意している。

 

「コガネ、総則(ルール)追加だ。『泳者(プレイヤー)は滞在する結界(コロニー)が消滅した場合、残存する別の結界(コロニー)に強制的に転送される。転送先の結界(コロニー)はランダムで選択・決定される。』」

 

暫くの沈黙の後、コガネが回答を発する。

 

総則(ルール)追加が承認されました。『泳者(プレイヤー)は滞在する結界(コロニー)が消滅した場合、残存する別の結界(コロニー)に強制的に転送される。転送先の結界(コロニー)はランダムで選択・決定される。』」

 

総則(ルール)の追加が叶うと他の泳者(プレイヤー)から続々と(ポイント)が集まってくる。一番大きいのは乙骨の50(ポイント)。仙台結界(コロニー)での戦闘は順調に進んでいるようだ。

 

その中で。

 

≪リンゴン!リンゴン!リンゴン!リンゴン!リンゴン!リンゴン!≫

 

コガネから新たな総則(ルール)追加を示す音声を鳴る。

 

泳者(プレイヤー)による総則(ルール)が追加されました。青森結界(コロニー)と桜島結界(コロニー)を除く結界(コロニー)に対して泳者(プレイヤー)は1000点を消費することでそれを消滅させる事が出来る。≫

 

「なんだと!?」

 

まるでこちらの行動を先読みしていたかのようなタイミングでのルール追加。

そして追加される総則(ルール)はひとつでは無かった。

 

泳者(プレイヤー)による総則(ルール)が追加されました。青森結界(コロニー)と桜島結界(コロニー)は今後如何なる総則(ルール)が追加されたとしても結界(コロニー)消滅の対象とならない。≫

 

突如追加された2つの総則(ルール)

 

(一体誰の仕業だ!?プレイヤーの中で俺たちの他に100点以上を持っている泳者(プレイヤー)がいないことは確認したはずだ!)

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

≪リンゴン!リンゴン!リンゴン!リンゴン!リンゴン!リンゴン!≫

 

泳者(プレイヤー)による総則(ルール)が追加されました。泳者(プレイヤー)は滞在する結界(コロニー)が消滅した場合、残存する別の結界(コロニー)に強制的に転送される。転送先の結界(コロニー)はランダムで選択・決定される。≫

 

「やはりね。君ならそう来ると思っていたよ。」

 

ルール追加を告げるコガネの音声を聞きながら、青森結界(コロニー)の結界外に拠点を構えていた羂索は行動を開始する。

 

≪よお、俺はコガネ!!≫

 

結界の境界ぎりぎりで待機していた羂索は結界に歩み寄り回游への参加を表明する。

 

≪夏油傑が死滅回游へ参加しました。≫

 

回游へ参加すると同時に羂索は拘束していた術師46名を手持ちの呪霊に命じて殺害する。

 

≪5点を獲得しました。≫≪5点を獲得しました。≫≪5点を獲得しました。≫≪5点を獲得しました。≫≪5点を獲得しました。≫≪5点を獲得しました。≫≪5点を獲得しました。≫≪5点を獲得しました。≫≪5点を≪5点を≪5点を≪5点を………………

 

結界(コロニー)に入らずとも(ポイント)を獲得する方法は存在する。結界外での殺害でも(ポイント)は加算されるのだ。それは仙台から東京へ移動する途中に(ポイント)を獲得していた日車寛見が証明している。

後はギリギリまで回游に参加せずに然るべきタイミングまで潜伏していれば良い。

 

「さて。彼はどう動くかな。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

契闊(けいかつ)

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

呪いの王、宿儺は賭けに出た。

 

死滅回游の攻略が虎杖達高専術師の思惑通りに進んでいる中で恐らく羂索が仕掛けたであろう妨害策。

未知の第三者による介入に虎杖と伏黒が共に動揺しているこのタイミングを逃せば虎杖悠仁から伏黒恵へと身体を乗り換える隙は今後ないだろう。

 

天使の受肉体と合流が叶ったことで五条悟の封印解放の目処が立ち、死滅回游も解決目前のこの状況。

戦力として自身がもう必要ないと判断すれば今の虎杖悠仁は天使の術式による自死を選ぶだろう。

 

賭けざるを得なかったのは2点。

ひとつは伏黒恵の精神が健在の状態でその肉体を乗っ取ることが出来るかどうか。

もうひとつは虎杖悠仁との間に結んだ「身体を明け渡している間は誰にも危害を加えない」という『縛り』の対象に虎杖が自身を含んでいるかどうか。

 

天運は呪いの王に微笑んだ。

 

宿儺の魂を虎杖の指先に集めて引き千切る。ここまでしても『縛り』によるペナルティは発生しなかった。

そしてそれを伏黒恵に無理矢理飲み込ませ肉体を乗っ取ることにも成功した。

 

呪いの王は『十種の影法術』を手に現代に復活した。

 

 

 

 

「覚えているか?」

 

 

 

「面白いものが見れると言ったろう。」

 

 

 

「小僧。」

 

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