やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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第四十五話 人と怪物③

五条の右腕を斬り飛ばした魔虚羅の一撃は宿儺の術式『御厨子(みずし)』の一部である『解』を模倣したものではなかった。

その本質は“術式対象の拡張”。術式対象を世界そのものにまで拡張することで、五条の纏う『無限』さえも無視して丸ごと切断したのだった。

 

宿儺は魔虚羅の放ったこの技を模倣し習得したが本来、その斬撃を放つためには両手で閻魔天の掌印を結ぶことが必要だった。だが、片腕が欠損している状態ではそれは叶わない。

受肉の再開による肉体の回復を行ったとしても、掌印を結ぶ段階で五条は危険を察知し発動を許さないであろう。

そう判断した宿儺は“以降、世界を断つ斬撃を発動するには「掌印」、「呪詩の詠唱」、「手掌での指向性の指定」の三つの条件を必須とする縛り”を科すことで五条に対しての一度きりの使用に限ってノーモーションでの“世界を断つ斬撃”の発動を成功させていた。

 

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本来であればここで放たれた“世界を断つ斬撃”によって五条悟はその生涯を終えていたのかもしれない。

だがここには常日頃から“世界”を認識している奇特な人間が混じっていた。

 

臨死体験により歪んだ世界を見てきた術師、賀﨑隆景。

 

彼の刀は防御不可能な筈の斬撃を弾き、五条を庇うように宿儺の前に立ち塞がっていた。

 

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「隆景!何で出て…き……た………。」

 

突然現れた隆景に詰め寄ろうとした五条だが糸が切れたように崩れ落ちる。隆景は慌てて駆け寄り体を支える。

 

(五条先生が倒れる!? 先生は自己補完…肉体が時間経過に合わせて生み出す呪力の範疇で常に反転術式を回し続けているはず…。ならこれは栄養失調による一時的な失神? 常に術式を使っていた上に今日は脳の破壊と再生なんて無茶もしている。栄養失調で失神なんて普通は考えられないが…。)

 

先生ならそれも有り得るのかもしれない、なんて考えていたところに、

 

「“竜鱗 反発 番いの流星”」

 

再び“世界を断つ斬撃”が迫る。だが今度はより早く克明に斬撃を察知して対処出来た。何故か今回は呪詩を唱えて宿儺は斬撃を放った。それを耳にしていたから当然ではあるのだが、それだけではなく“何を斬ろうとしているのか”、それがはっきりと知覚出来た気がした。

 

(!! 今度は弾いたのではなく俺の斬撃を正確に“捉えた”か。)

 

宿儺は自分と五条の勝負に割り入ったこの男に対して本来ならば怒りと殺意を抱いていただろう。だが今はむしろ隆景に対して興味を持っていた。そして気付く。

 

「五条悟と同じ…いや少し違うか? 面白い。」

 

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突如五条と宿儺の間に割り込むように現れた隆景の姿をモニター上で視認した一同は驚く。彼は宿儺の放った何らかの攻撃から五条を庇ったらしい。そして五条は力なくその体を彼に預けている。

 

「オイ、なんで隆景があそこにいやがる!?」

 

秤が声を上げる。事前の作戦では五条にとって足手纏いになりかねない他の術師はここで待機するはずだった。

それに隆景はこの部屋から出ていない筈だ。ついさっきも彼の姿をこのモニタールームで視認したはずだ。

そう思い隆景がいる筈の方向へ視線を向けたところ、そこには外套を着せられた丸太が鎮座していた。

 

「本当に漫画みたいな身代わりをする奴があるかっ!っていうかいつから入れ変わってたんだ!?」

 

「あの野郎、舐めやがって!」

 

室内は騒然となる。特に渋々ながらも宿儺との戦いを一旦五条に譲った鹿紫雲は約定が破られたことに激怒し、自身もモニタールームを飛び出し戦場へ向かう。

 

「おい、鹿紫雲!」

 

秤が呼び止めるが電速で飛び去った鹿紫雲の姿は既に消えてしまっていた。

一人の暴走を引き金に事前の想定は崩れ去り、高専術師達は次善の策の検討を迫られる。

 

「あ~、くそっ!しょうがねぇ。星!憂憂!五条は一旦下がらせる。最優先でここに連れ帰ってこい。前線要員は予定を繰り上げて出撃だ。何もかも想定とは違うがアドリブでやるしかねぇ。秤はおかっぱ女が出てきたら足止めに回れ。禪院と乙骨は待機だ。」

 

万一、五条が敗れた時に備えて準備していたプラン。入念に計画はしたが本当に実行することになる可能性は考えないようにしていたことは否定しきれない。加えて五条のリタイヤというまさかの事態。彼にスタミナ切れという事態が起きるとは考えもしなかったが、運が良ければ戦線復帰も可能かもしれない。そのためには何としても宿儺を抑え、まずは五条を引き上げさせる。

 

(羂索が出てこない以上、乙骨は動かせねぇ。乙骨の領域とセットで投入する予定の禪院もだ。残りの1級そこそこの面子であの宿儺とやりあうのは死にに行くようなもんだがこうなりゃ腹を括るしかねぇか。)

 

冥冥は戦況把握の役割がある以上は戦線には出せない。残る1級である自分が前線に出張るしかないと日下部は覚悟を決めるしかなくなった。高専術師達は戦場へと駆け出す。嬉しい誤算があるとすれば…。

 

(賀﨑の奴が土壇場で何か化けやがった。痩せ細って京都から帰ってきたときはどうなることかと思ったが、宿儺の前に出ても即死しないどころか逆に警戒させてやがる。)

 

鹿紫雲の術式は時限式だと聞いている以上は彼にあわせて日車と虎杖のプランに賭けるしかない。裏梅とかいう奴が出てこなければ秤も宿儺戦に回せるが、可能性は低いだろう。あのレベルの化け物に自由に動かれれば何人喰われるか分からない。領域を使い倒せる秤には裏梅と宿儺を物理的に引き離す役が任されている。

 

モニターで最後に確認したのは鹿紫雲が宿儺の元へ到達した姿だった。

 

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遠方から高速で接近する気配を察知するが、目の前の宿儺から意識を外すことを隆景はしなかった。自身を通り過ぎて宿儺と戦闘を始めたのは鹿紫雲とかいう受肉した過去の術師だったようだ。宿儺と戦うために羂索との契約を飲んだというバトルジャンキーであり、通り過ぎるときにこちらへの殺意を感じたのは先に宿儺と戦おうとしたことへの怒りとこれから先は手を出すなという威嚇だろう。

 

家入先生に先生を引き渡してからでなければ宿儺とやり合うなんて出来そうにもないので相手を変わってくれるのは正直助かるところだ。向こうにそんなつもりはなくとも。そう考えていたところに声を掛けられ目線だけをそちらに向ける。

 

「隆ちゃん、先生をこっちに!」

 

そこにいたのは綺羅羅と憂憂の二名。先生を一旦休憩と治療に回すのは日下部先生たちも考えていたようだ。家入先生の治療と甘井君の糖分譲渡、どちらも今の先生には必要なことだ。もし領域が使えるようになるまで回復出来ればかなりこちらに有利になる。

 

「助かった! 先生を頼む。俺じゃ病状も分からないから家入先生たちの所へ連れて行って欲しい。」

 

了承の返事とともに綺羅羅が五条を抱えたところで術式の気配を察知した隆景は領域を展開して二人を庇って攻撃を受け止める。

 

「増援が来たみたいだ。お前達には手を出させないから離脱してくれ。」

 

「分かったよ。…やられないでね。」

 

そう言い残して綺羅羅と憂憂が離脱する。一方で隆景は襲撃者の方へ向き直る。宿儺の方は鹿紫雲が十分に引きつけてくれているようだ。

 

「今のが“極の番”『うずまき』か。初手から使うとは随分と必死じゃないか。」

 

この新宿で奴の相手をするのは正直なところキツいが、奴らの方もなりふり構う余裕がないいということだろう。

 

「なぁ、羂索。」

 

ここで宿儺と羂索、どちらも始末出来れば面倒事も色々解決する。

 

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「余所の結界(コロニー)泳者(プレイヤー)狩りをしていても良かったんだがね。ここで君を殺せば、禪院は内部崩壊する。そうすれば各結界(コロニー)に君が配備した術師達を始末する手間も省ける。面倒ごとは少ないほうが良いだろう?」

 

いつもの五条袈裟姿で軽口を叩く羂索に対し隆景は皮肉を返す。

 

「強がるなよ。お前なら禪院も泳者(プレイヤー)も手間は変わらん。保険の宿儺が殺されることが怖くなったんだろう? 一億人呪霊もそうだ。重複同化が成功しても俺の能力ならどんなデカい呪霊でも消し飛ばせる“かもしれない”。丹精込めて作ったおもちゃを壊されたくないなんて可愛らしいじゃないか。」

 

「自己評価が過大なようだね。打ち切り漫画の真似事ごときで随分な自信だ。漫画の読みすぎで呪術の勉強はあまりしてこなかったのかな。」

 

更に言葉を接ごうとした羂索だが、ある異変に気付き続く言葉を止める。

 

(眼球全体が紫色に変色している。渦のような紋様も。六眼ではない。私の知識の中にあんな“眼”は無かった。)

 

「どうした? こんな眼を見るのは初めてか? だったら喜べよ。お前の大好きな“未知”が目の前にあるんだぞ?」

 

そういうのを追い求めてせこせこと千年生きてきたんだろう、と隆景は嘲笑の笑みを浮かべる。思えば高専1年の頃からこいつとは因縁があったのだ。

 

「ああ、その通りだね。君を殺した後でじっくりと調べさせてもらうとしよう。」

 




ストックが出来たらまた投稿したいと思います。ここから原作改変を頑張ります。
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