やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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エタりかけました。


第四十六話 人と怪物④

隆景と羂索が戦闘を開始した頃、宿儺の元に平安の受肉術師裏梅が氷塊とともに現れる。氷塊の中には羂索が調達した秘蔵の呪具が格納されている。主と慕う宿儺にその呪具を届けるべく現れた裏梅だったがそれを阻むように上空からひとりの術師が現れる。

 

「約束なもんでね。悪ぃがいかせねえよ。」

 

「知らんな、何もかも。」

 

「そりゃそうだ。」

 

秤の領域が裏梅を捉えるも、氷塊は巻き込まれることなく宿儺の元に到達する。

 

「この程度の出来では五条悟には通用しないだろうが…」

 

氷塊から取り出した刀剣状の呪具の調子を確かめるように軽く振るい、鹿紫雲の攻撃を受け止める。

 

「…だが有象無象の相手にはちょうど良いやも知れぬな。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

羂索の放った呪霊は隆景に到達する前に領域『彼此隔界(ひしがくかい)』によって消滅する。半ば固形化した正のエネルギーで全身を防護している今の隆景の呪的な防御は鉄壁に近く、低級の呪霊では触れる前に消滅する。

 

「存外詰まらん男だな。小手調べから入るとは。」

 

「浅学な君とは違ってね。心得ているんだよ、作法というものを。」

 

そう言って羂索は袖口から刀と手甲を取り出す。

 

「その服どうなっているんだ?四次元ポケットじゃあるまいし。」

 

「特殊な呪霊を飼っていてね。その中に色々と仕舞っておけるんだ。」

 

左手に手甲、右手に刀という出で立ちは奇しくも今の隆景の姿と似通っている。

 

「年の功と言う奴かな。あまり好みじゃないが武術の類にもそれなりに造詣が深いんだ。それに今の身体はフィジカルも優秀でね。」

 

羂索の姿が掻き消える。

 

放った呪霊で自らと隆景の間に壁を作り、視界を塞ぐ。

そして隆景の背後に瞬時に回り込み、

 

「こういうことも出来るのさ。」

 

左の肩口から最速で刀を振り下ろす。

その刃はガードに構えた隆景の左手を『彼此隔界(ひしがくかい)』の手甲ごと切り裂いた。

 

「っ!?」

 

手甲ごと領域を破壊される。恐らく先の刀の能力によるものだろう。『彼此隔界(ひしがくかい)』の寄る辺にしている簡易領域を破壊された隆景の領域は形状を保てずに霧散していく。背後に迫るのは先程羂索が放った呪霊の大群。隆景は群れに飲み込まれてしまう。

 

「宿儺に渡した『金剛宝杵(こんごうほうしょ)』とこの『天魔反戈(あまのまがえしのほこ)』。等級で言えば特級には及ばないが『天逆鉾(あまのさかほこ)』に似た効果を持つことから、かの神具の別名を与えられた私のとっておきさ。五条悟の『無下限呪術』には力負けするだろうから使わなかったが、君程度の出力なら容易く無力化出来る。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

鹿紫雲は術式『幻獣琥珀』によって『電気』という自らの呪力特性を最大限に活かす形に自身の身体を変容させる。

出力の増した電磁波攻撃。雷撃を飛ばすことにより間合いを増した肉弾戦。

宿儺は敢えて中断していた受肉を再開することで肉体の欠損箇所を修復するとともに平安時代当時と同じ二対の腕と頭部と腹部の二箇所の口という異形へと回帰する。この姿は呪詩の詠唱と掌印を片方の口と腕に担わせても、残りの腕と口は戦闘に回せるという意味で呪術戦において大きなアドバンテージを持つ。

事実、鹿紫雲の放った攻撃を『金剛宝杵(こんごうほうしょ)』で無効化しながらもう一対の口と腕で宿儺は新たな奥義を発動させる。

 

「“竜鱗 反発 番いの流星”」

 

放たれた“世界を断つ斬撃”を躱し切れず鹿紫雲は右腕を肩の根元から失う。そこに宿儺の凶刃が追い討ちをかける。

 

「がッ!」

 

背部から鹿紫雲の胸を貫いた『金剛宝杵(こんごうほうしょ)』は致命傷を与えるだけでなく、『幻獣琥珀』の術式効果も停止させる。肉体の変成を中断させられた鹿紫雲は術式が解けても尚、宿儺に電撃を浴びせる。

 

呪具で無効化せずにまともに電撃を浴びた宿儺だったが、その身体に大きな負傷は見られない。

 

(呪力防御! …ここまで違うのかッ…!)

 

「惜しかったな。 “今の”俺なら、領域があれば届いたかも知れんが。貴様の術式では修練の機会も限られる。安心しろ、トドメは刺してやる。」

 

多少の誉れはくれてやろうと術式を構えた宿儺の上空で、老け顔金髪の術師が先ほど展開した領域が砕け新たに2名の術師が降下してくる。

 

次に宿儺に挑む術師は、死滅回游で呪術に目覚めた覚醒型泳者(プレイヤー)の日車寛見と…

 

「来たか。」

 

“元”宿儺の器、虎杖悠仁。

 

 

「小僧、貴様に何が出来る。」

 

 

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【シン・陰流 簡易領域】

 

【渦桜】!

 

竜巻のごとく身を回転させながら群がる呪霊を切り裂く。『渦桜』は『抜刀』の上位技術。『抜刀』用に展開した簡易領域内に3つ以上の発動点を設定し、一つ目の『抜刀』を振り切る前に更に刃を振るう。これを繰り返すことで『抜刀』のスピードを維持したままでの高速回転切りを実現する高等技法。実現するためには簡易領域内に複数のプログラムを組み込む技量が必要とされるも、シン・陰流自体は居合いによる一撃必殺を主眼に置いた技術体系であるため習得しても使用頻度が低い技であった。隆景も実戦で使用したのはこれが初めてだが、纏わり付く呪霊の群れを見事に切り伏せる。

 

【術式反転『崩形(ほうぎょう)』】

餓鬼道(がきどう)

 

宿儺の斬撃を受け止めたのが契機となったのか、自身の眼は恐らく『輪廻眼』に変質していると隆景は考えている。「恐らく」としたのは刃に映った鏡像としてしか視認していないためだ。しかし、全体が紫色で渦のような模様と言えば他に思い当たらないし、禪院扇の事件の時に『輪廻天生の術』を発動させようとしたこともその予測に行き着いた要因だった。

 

見た目がキモいのはまだ良いとして、今問題なのはこの『輪廻眼』はオンオフが切り替え出来ないことだ。そのため発現以降、少なくない量の呪力を消費し続けている。このままでは遠くないうちに呪力切れを起こす可能性があるため、ぶっつけ本番で【餓鬼道】での呪力吸収を試みたのだ。

 

しかし呪霊の呪力をそのまま取り込めば人体には毒になるため、取り込む前に『崩形(ほうぎょう)』で分解し出来る限り呪力から呪霊の性質を薄める必要があった。そうして“ニュートラル”な状態に近づけてから【餓鬼道(がきどう)】の能力で呪力を対内に取り込んだ。

完全には毒性を消せなかったようで身体が拒絶反応を起こすが、羂索に悟られぬよう平静を装う。

 

「輪廻眼の餓鬼道か。六道の術の内いくら再現できるのかな。」

 

(一目で『輪廻眼』と把握するとは「ナルト」も知識の内か。『白鵠(びゃっこう)』のことも知っている様だしフィクション関係の知識の有無で不意を突くのは難しいかも知れないな…。)

 

この世界にあわせて調整されたのか元々異世界の異能にも対応するポテンシャルを持っていたのか分からないが、この輪廻眼は呪力も吸収の対象内らしい。チャクラしか吸収出来なかったら六道の術の内の一つが早くも使えないことになるところだった。

 

いきなり発現したため性能の把握も出来ずに実戦で使う羽目になったのは正直心許ないが、『彼此隔界(ひしがくかい)』を破る手段を相手が持っている以上は『輪廻眼』でこの場は何とかするしかない。

 

「心配せずとも出し惜しみはしないさ。まぁ全部見せるまでお前が生きてられたらの話だがな。」

 

挑発の表情の下に内心の動揺を隠して余裕を装う。相手は千年を生きてきた術師。心理面での優位を渡すことなどはしない。絶対に俺が勝つ。

 

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