やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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第四十八話 人と怪物⑥

輪廻眼の開眼者は開眼と同時に固有能力を得る。

隆景が獲得したのは『三千世界』。うちはマダラの『輪墓(リンボ)・辺獄』やうちはサスケの『天手力(アメノテジカラ)』とは異なり埒外の能力は持たない。有する能力は“360°全天周の視界”。白眼と同種の能力だが仮にもこちらは輪廻眼。有効視界は半径150mに及ぶ。

 

超常的な視覚を突如得たことは開眼者である隆景に少なからず混乱を齎した。広がった視界の中で何に注目するべきなのか。急速に広がった視野は慣れるまでに時間を要するだろうが、身体の周囲に拡げていた呪力によってその攻撃は感知することが出来た。

 

(順転 『成形(せいぎょう)』!)

 

 

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命中を確信したその一撃は隆景の背部から飛び出た光の刃によって切り裂かれる。

消失反応で消え去る前に『うずまき』に込められていた呪力を【餓鬼道】で吸収し終えた隆景はすかさず羂索に煽りを入れる。

 

「差し入れご苦労、と言いたいが呪力量からすると費やしたのは2級呪霊おおよそ30体分程度。随分少ないな。手持ちが足りなくなってきたか?」

 

「君の呪力出力はさほど高くない。虚を突けばその程度で突き崩せる。」

 

言葉を交わしながら斬り結ぶ。隆景は達人と呼べるほどに剣術の修練を積んできたが、羂索の技量はそれに匹敵するほどだ。恐らく専門でない分野で並ばれている状況は隆景にとって喜ばしくないものだ。

 

(宿儺との戦闘まで温存しておきたかったが止むを得ないか。)

 

そう思考して隆景は手札を一つ切ることを決断する。

それは呪具の本来の性能、その一端を引き出すための所作。

隆景の愛刀『顕明連(けんみょうれん)』は半ば神話の人物である『坂上田村麻呂』と鬼種『鈴鹿御前』の逸話に登場する武具。その神秘は平安時代よりも古きに遡る。

所有者に飛行自在の力と万里にわたる視野、一説には空間跳躍能力さえ齎したと言われるこの呪具が現状では正のエネルギーの増幅器と限定的な透視能力程度の機能しか発揮しないのは偏に使用者の能力不足が原因であった。

 

両面宿儺、その全盛期すら軽く上回るであろう御伽噺の人物達。彼らと隆景とでは残酷なまでに能力に隔たりがあった。

方や真正の鬼種や魔獣を数多屠ってきた神話の英雄。対して隆景は呪術師と云えど現代の人間に過ぎない。操る神秘や異能には比べるのも烏滸がましいほどの隔絶が存在している。

所詮は只の人間に過ぎない隆景がかの呪具の全能力を行使することは土台無理な話であった。

 

だから“縛った”。

 

所作と呪詩を定め、使用する能力を限定した。

刀を目線の高さで水平に構え、刃を地面に対して垂直に立てる。

自身の瞳を刀身に映し、“解号”を唱える。

 

 

 

「見渡せ、『顕明連(けんみょうれん)』。」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

珍妙な動作。まるで自分を漫画の登場人物であると錯誤しているような言動。

だが羂索は知っている。この年若い術師はそんな怪しい行動を繰り返し“漫画の世界の出来事”を現実に引っ張ってきた実績があることを。

 

防御のためにこれまで使用を控えてきた『呪霊操術』で防壁代わりの呪霊を展開する。視界を妨げないように視覚を共有することも忘れない。

 

どんな怪現象が起きようとも対応してこの術師を仕留める。そう構えた羂索に対して術師が取った行動は拍子抜けともいえる安易なものであった。

 

 

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【土遁 土流壁】

【土遁 山土の術】

【土遁 土龍弾】

【土遁 開土昇掘】

 

土遁系の忍術が立て続けに発動し大量の瓦礫が羂索の元へ殺到する。四方を囲まれたことに対して、羂索は『反重力機構(アンチグラビティシステム)』の術式反転『加算重力機構(エンパワーグラビティシステム)』ではなく、『天魔反戈(あまのまがえしのほこ)』による突破を選択する。重力力場の発生は強力だが一度使えば再使用までにインターバルが必要であり、その隙を嫌って羂索は連続使用に制限がない呪具による対処を選択した。

呪具と身代わりの呪霊の併用で直撃する攻撃を凌いでいくが、その最中であることに気付く。

 

(規模の割に致命打になる攻撃が少ない。これはむしろ…。)

 

羂索の読み通り、攻撃の半数は互いに相殺し合っており有効打となりうる数は規模に反して少なかった。

 

(これは…瓦礫による目隠し!ならば次に来るのは…!)

 

瓦礫の隙間を縫って呪力の『糸』が着弾する。位置は刀の間合いから外れたところ。その『糸』を辿って“龍”が迫る。

 

(『火遁 龍火の術』!)

 

(術式反転『加算重力機構(エンパワーグラビティシステム)』!)

 

呪力で編んだ『糸』をつたって炎が瓦礫の障壁の内側を満たす。その爆炎に身を焼かれぬように術式反転で生み出した重力によって炎を消し飛ばした直後、羂索は自分の背に誰かが手を触れていることに気付く。

 

(瓦礫と炎。一箇所に追い詰めたいという狙いは分かっていた。だから私はその中を常に移動していた。呪力探知にどれだけ優れていようとも位置はともかく正確な向きまでは掴めないはず。)

 

事実、派手に術を使ったために隆景は自分の呪力が邪魔をして羂索の呪力を感知出来ていなかった。それでもその居場所だけでなく体勢までも正確に把握できたのは単純に“見えて”いたから。

 

(透視能力!さっきの解号は『顕明連(けんみょうれん)』の能力を引き出すための…)

 

羂索の思考が完結する前に隆景の術が発動する。

 

【畜生道】!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

羂索の読みは正しく、隆景が『顕明連(けんみょうれん)』から解放した能力は“透視能力”。

輪廻眼による360°の視界に透視能力が加わったことにより、今や隆景は戦闘距離のほぼ全ての情報を把握できるようになった。

その能力を活かすために土遁忍術で瓦礫をばらまいて視覚を潰し、同時にチャクラに変じた呪力を火遁忍術で撒き散らして呪力探知を妨げた。振りまいた呪力は隆景自身の呪力探知も鈍らせたが視覚は別だ。土遁で地中を進み容易く羂索の背後を取りその背に手を触れる。

 

発動するのは輪廻眼により得た六道の術の一つ。『口寄せの術』に特化した【畜生道】。

 

しかし、術は発動せずに羂索の反撃を躱すために隆景は飛び退く。

 

「逆口寄せの術。口寄せの術は契約対象がいない場合、発動した術者自身が口寄せ動物の里へ迷い込むことがある。逆口寄せで同じことをやれば対象者を異空間に跳ばせると考えたようだね。」

 

羂索の言うとおり『逆口寄せの術』は契約した忍獣や武器を呼び出す『口寄せの術』とは反対に術者自身を契約先へと転送する忍術。これまでの呪力変質によって再現した忍術では『口寄せの術』を始めとする時空間忍術を操ることが出来なかった。だが輪廻眼を得たことでこうした術の行使も可能となった。

羂索が語った“対象の異空間への強制転移”。『ナルト』作中で少年期の自雷也が口寄せ契約を結ばずに術を行使した際に、忍獣を呼び寄せるのではなく逆に自雷也自身が忍び蛙の里「妙木山」に迷い込む描写があった。

転送先を設定せずに人間を転送しようとすればどこでもない空間に飛ばされ、事実上戦場から排除することが可能。隆景の狙いをそう看破した羂索は自身を睨みつける隆景を満足げに見下ろしながら続ける。

 

「直接手を触れたのに【人間道】を使わなかった。問いかけが必要な【地獄道】はともかく魂を吸い取る【人間道】なら少なくとも私の拘束はできたはずだ。なのにわざわざ結果が不確定な【畜生道】の『口寄せ』を使った。何故か?」

 

羂索はそこで言葉を区切り、人差し指を立てる。

 

「答えは簡単。君は六道の術を【餓鬼道】しか“使え”ない。」

 

 

 

 




勝手に羂索の術式に名前を足しました。許して。
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