やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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完結まで書いてから一括投稿するつもりが全然仕上がらないので初投稿です


第六十四話 君の銀河はきっと輝く

 

「コレ、五条先生からの預かりものです。」

 

隠遁先の南国から日本に戻る船旅の途中、伏黒は自身の影から取り出した大小二本の刀を隆景に手渡す。

一つは小振りの太刀程度の大きさ。もう一つは脇差程度の大きさ。二刀で振るうにあたって不便の生じないように配慮されたバランスだ。

だが、その造りよりも別種の感慨を隆景はその刀達から感じていた。

 

「これは…宿儺に折られた『顕明連(けんみょうれん)』か?」

 

「はい。賀﨑先輩が日本に置いていったものを先生が手配して打ち直ししたんです。元の形には戻せなかったんで二本になったみたいですがそこは我慢してくれ、とのことです。」

 

「…ちなみにお代は?」

 

「先生が立て替えていた分の未払いの代金に追加だそうです。お仕事頑張ってください。」

 

「マジか~。億単位の残額にさらにプラス…。代わりの得物も準備できてないからしょうがないか…。もう名前は付けてあるの、これ?」

 

「一応仮の名前を先生が付けています。伝承にちなんで『大通連(だいとうれん)』と『小通連(しょうとうれん)』。改名しますか?」

 

「いやいや、相応しい名前だ。これからは二刀流でやっていくしかないか。」

 

そう言いながら重さや握り具合を確かめる隆景。その様子を眺めていた伏黒は以前から抱えていた疑問をふと漏らす。

 

「得物が変わるのって大丈夫なんですか? 先輩の術式って刀が核になっていますよね。大きさも本数も変わったらだいぶ調整が要ると思うんですけど。」

 

「そうだな〜。俺の術式と呪力変質はイメージが肝だから確かに白鵠(びゃっこう)…『彼此隔界(ひしがくかい)』の方は組み直しが要るね。でもそれ以外はあんまり影響ないよ?賀﨑のモットーは“死ぬまで戦え”、腕が取れても足がもげても次の術師が来るまでほんの少しでも時間を稼ぐように鍛えられている。武器がなくなれば棒切れでもなんでも振り回す。だから一応刀二本の立ち回りも訓練してはいるんだ。」

 

「え?じゃあ何で宿儺を黒い結界に閉じ込めるときに刀しか持ち込まなかったんですか? 爆弾とは言わずとも銃とか使えばかなり有利じゃないですか。」

 

…………………………………………………………………………。

 

「伏黒君、言葉が人を殺すことだってあるんだよ? 君みたいな天才を基準にしたら凡人は泣くしかないよ!」

 

腰をひねりながらゲッツ!と両手で指さすポーズを取る隆景。呆気にとられる伏黒に続ける。

 

「えぇ!?」

 

「というのはまぁ置いといて。実をいうと『流形(るぎょう)』は未完成の技。それまでは碌に訓練も出来なかったから、まともに使ったのはあの新宿が初めてだ。それまでは…そうだな、実際に見せた方が早いか。」

 

言いながら隆景は中に球上の空間を作るように両手の指先を合わせ、術式を起動する。

 

術式 順転・反転 同時起動

 

空転 流形(るぎょう)

 

現れたのは宿儺戦時に作り出した黒い結界の手のひらサイズ版。

 

「素の実力じゃこのサイズでしか展開できない。だから戦闘に使うつもりすらなかった。呪霊操術の暴走と完全体の宿儺を相手取るためにアドリブでキツイ縛りを何個も積んでやっと展開したのが新宿でのあれだ。そうでもしなけりゃ相手の呪力すら全部無意味化するなんて離れ業は俺には出来ないよ。」

 

そう言って少し自嘲の表情を混ぜて語る隆景。

 

「事前に武器の準備が出来なかったのはそういう理由だよ。土遁術で持ってこれるコンテナにも銃器のレパートリーは無かったし、俺はあの結界で時間を稼げれば十分だと思っていた。五条先生はともかく乙骨君は復帰すると思っていたから、俺が粘っている間に伏黒君と合流してくれれば御の字って算段。ま、結末は違ったけどね。」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

東京都渋谷区 渋谷駅跡地

 

呪霊贄術の術者、新枝川(にえかわ)は眼前の光景に呆然としていた。

自身が操る呪霊が次々と祓われていることにではない。それを為している襲撃者の異様さにだ。

襲撃者が高専のトップ戦力、虎杖悠仁や伏黒恵であれば理解はできた。そもそも襲撃者が彼らであれば新枝川(にえかわ)は戦闘を試みることなく逃走に全力を費やしている。

だが、そうではないことを偵察用の術式を持った呪霊を通して彼は把握していた。地下構造を破壊するためのおそらく通常兵器による派手な初撃。そんな凡庸な手を取ってきたことも襲撃者を確認したことで腑に落ちた。

 

賀﨑隆景

 

元は高専生だったが、夏油傑による百鬼夜行の直後に高専を離反。一時は呪詛師として活動していたが、死滅回游が始まった頃に高専に復帰。新宿決戦にも参加していたものの目立った戦績はなく、その際に後遺症を負ったのか表舞台から姿を消した術師。乙骨ら特級術師とは比べるもなく、日下部や冥冥ら1級トップ層にも及ばない程度の実力。情報ではその筈だった。

 

(なのになんだ、あの動きは!?生贄で強化した特級だぞ!それが拳の一振りで!)

 

隆景の全身からは煌めく赤いエネルギーが立ち昇っている。あれは只の呪力ではなくおそらく何らかの形で強化された正のエネルギー。そのエネルギーによって一挙手一投足が必殺の一撃と化している。

 

(奴の評判は聞いている。呪詛師の頃の異名は『共喰い』。決して高専術師の命は奪わず、呪詛師のみを狙う変わり種。高専のスパイとも、実績をアピールして高額なスカウトを待っていたとも噂されていた、逃走と隠密能力に優れたタイプだった筈だ。だから逃走ではなく生け捕りにしての情報入手を狙ったというのに!)

 

通常兵器による大規模爆破で渋谷駅跡の地下構造を破壊。その後に中心地に術師を投入して渋谷の外苑に呪詛師を追い立て、逃げ出した呪詛師を待ち構えた本命の戦力が各個撃破する。それが新枝川(にえかわ)の予測した高専側の作戦だった。

 

(特級クラスのいない方面を尋問で聞き出して、逃走の成功率を上げる。その前提がご破算だ!クソ、どうすればいい!?)

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

簡易領域と独自の『浄の力』を組み合わせた疑似領域『彼此隔界(ひしがくかい)』は完成度の高い術式であった。領域内の必中命令を受け付けず、呪霊に対して特攻となる正のエネルギーを効率良く放出する。

事実、死滅回游では重傷を負うこともなく呪霊はもちろん呪詛師の制圧まで問題なくこなしてきた。

 

だが限界があった。

 

新宿での決戦。そこで思い知ったのは宿儺や羂索レベルの相手には『彼此隔界(ひしがくかい)』では致命打にならないということだった。

ではどうするか。

元々が縛りの抜け道によって得た高威力の反転術式。これ以上の出力向上は望めない。加えて術式の核である『顕明連(けんみょうれん)』の破損。隆景の呪力変質はイメージの強固さが出力に直結する。折れて二刀に打ち直された刀では以前よりも『白鵠(びゃっこう)』のイメージは脆くなる。

隆景には新しい力の表現形が必要だった。

 

前提から自分の能力と向かいあった。

 

(回せ。)

 

呪力は感情から生み出すエネルギー。正のエネルギーはそれを掛け合わせて生み出す。だが、別の方法を編み出せれば? これまでは負の感情から生み出した呪力を正のエネルギーに変質させてきた。ならば、より直接的に正のエネルギーを作り出す機構を作ることが出来れば。

 

(回せ!回し続けろ!!)

 

術式空転『流形(るぎょう)』。

順転の『成形(せいぎょう)』と反転の『崩形(ほうぎょう)』を同時に発動し、呪力を流体として操る。これまでは相手諸共呪力を使用不可にする効果にしか着目せず、「流体を操る」という性質に他の意義を見出していなかった。

だがあるではないか。「流れる」という現象には「移動」が伴う。そうだ、流せばいいのだ。隠遁していた島に張った循環型の結界のように絶えず流し”続け“る。そしてその流れに反応して力を生む”機構”を作る。

体内領域に取り込んだ二刀、『大通連(だいとうれん)』と『小通連(しょうとうれん)』。これを機構の柱としてその周囲を流体が8の字型に運動して加速し続ける。

 

(体内の小宇宙。その中で天体を運営しろ。星の光を胸に灯せ。)

 

その様は陰陽道における太極図の様でありながら巨大な粒子加速器の様でもある。しかし、その本質は∞。加速を極めた流体は2つの円の交差点で衝突し、分子の融合反応にも似た現象を起こす。あるべき姿を失った流体は莫大なエネルギーと化して体外へ溢れる。

 

 

 

後はモチーフだ。“∞の機構”で何を生み出すか。決まっていた。リビドーという生物の本能すなわち性的欲求を示す概念。人の感情の最も苛烈な側面。その複雑な感情を眩い青春の輝きに例えた物語を隆景は愛していた。

 

凝固呪法 極の番 『銀河美少年(スタードライバー)』。

 

青春の輝き。そんな夢物語を信じられる程度には隆景はまだこの世界を愛していた。

 

 

 

 




Q.アプリポワゼってナニ?
    『STARDRIVER 輝きのタクト』という激オモロロボアニメに出てくる用語です。終盤だけなのでタグに入れるか悩ましいですね。
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