やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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キルケーの魔女でνガンダムっぽいシルエットが見えた瞬間、思わず自分の首を絞めてしまった。村瀬修功は俺たちを殺す気で映画を作っている。


第六十五話 呪霊贄術

「数が減ってきたなァ!最初の威勢はどうしたァ!?」

 

『呪霊贄術(しじゅつ)』とやらの使い手が放った中には領域を持つ呪霊もいたが、全身にリビドー(強化された正のエネルギー)を纏った隆景には届かない。この形態は必中命令ではなく「呪力」そのものの肉体への到達を防ぐ。『彼此隔界(ひしがくかい)』では対応出来ない『無量空処』に対してもこの形態ならば対抗できる。

 

(今のでイラついて術者が出てきてくれたら楽だったんだけどな。)

 

態々戦闘前に顔を出してきた言動から、術式の性能にプライドを持っているタイプだと予測していたがどうやらあの行動は術式の開示のための戦略だったらしい。

 

今の隆景は展開範囲を体内に限定する縛りにより『流形(るぎょう)』を長時間かつ体内全域に展開できる。そして体内で起こした呪力の融合反応によって得た莫大なリビドー(強化された正のエネルギー)。それを体外に垂れ流し続けることで戦闘力を強化することが『銀河美少年』の能力。

 

顕明連(けんみょうれん)』の損壊により性能低下を免れない『疑似領域 彼此隔界(ひしがくかい)』の代わりとして構築したのがこの新たな拡張術式『銀河美少年(スタードライバー)』である。

その性能は以前の『彼此隔界(ひしがくかい)』をも大きく上回る。

 

(4フレ。4フレ。7フレ。デカブツには15フレ!)

 

そして莫大な運動エネルギーを扱うこの新術式を使いこなすために編み出したもう一つの新術式が『関係形成(アプリポワゼ)』。自身の肉体を人形に見立て、輪廻眼による精密な呪力操作で肉体を操る。増大し過ぎたパワーで自滅しないように開発した制御方法だったが、自身を「眼」で俯瞰して操作する方式は副産物として1秒を60に分割して動作を設定するという『投射呪法』にも似た高速動作を術者にもたらした。

対象に動作を強制し、それを破れば1秒硬直させる効果こそないものの設定する動作の細かさは『投射呪法』を上回り、有り余るエネルギーは物理的限界を超えた超高速戦闘をも可能にした。

現在も周囲を埋め尽くす数の呪霊に対して格ゲーばりの攻撃モーションを割り当て、驚異的な速度で雲霞の如き敵を蹴散らし続けている。その速度は渋谷駅地下で五条悟が改造人間1000体を全滅させたときに見せたそれをも上回る。

 

(とはいえこの状況は上手くないな。現代でも呪詛師をやっているような連中だが、敵さんは思った程馬鹿じゃないみたいだ。多分、逃げの算段を立てているな。)

 

単独で軍隊を所持するのに近しい価値を持つ『呪霊操術』。その亜種と思しき術式の使い手はこの渋谷跡地で恐らく最上位の実力者だ。ここで取り逃がせば近辺を包囲している味方と戦うことになる。彼らが敗れることはないだろうがこれだけの物量があれば包囲を抜け出すことは可能かもしれない。

そうなれば任務の査定とそれに伴うお家騒動の収拾に差し障ることは勿論、特級クラスの潜在能力(ポテンシャル)を持つ呪詛師が野に放たれることになる。今はその様子はないが、徒党を組めば大量の呪霊を集めることも可能になる。これだけの脅威に今の日本で自由に活躍するチャンスを与えれば第二の夏油傑が生まれかねない。

 

(この術式、いや、こいつだけは絶対にここで仕留める!)

 

術式のギアを更に上げる。

 

「スターソード!!」

 

胸の輝きに右の握りこぶしを叩きつけ、柄を引き抜くかのように腕を振るう。

 

「エムロード!!」

 

その手には鮮やかな緑に輝く輝剣が握られていた。

 

続けざまに左の拳で今度は眩い青の剣を引き抜く。

 

「サフィール!!」

 

顕明連(けんみょうれん)から打ち直され『大通連(だいとうれん)』と『小通連(しょうとうれん)』になったことで本格的に取り入れた二刀流。新しい術式のモチーフとしてサイバディ・タウバーン(『STARDRIVER 輝きのタクト』の主役メカ)を選んだのは、負の感情から生まれる呪力を正のエネルギーに変質させる題材として適していたからだけではない。隆景の中で最も流麗な二刀流剣術のイメージがこの形だった。

発現させた光の二刀は実体を持たず、振るうにあたって重さによる制限を受けない。それが故に超速の剣捌きを可能とする。そして使用者のリビドー(強化された正のエネルギー)に応じて輝きを増すその刃には生半可な防御など通用しない。

 

「よっ!」

 

左の剣を振るう。たちまちに太刀筋の十数倍はあろうかという距離の軌道にいた呪霊が軒並み消失し包囲網に扇形の空白が生まれる。

 

「パイル!」

 

間髪入れずに隆景は背面の万能兵装を起動させる。鉄板の裏に放熱フィンが並んだような形状のそれは普段は高速移動するための推進機として機能している。だがこれはビーム砲としての機能も備えており思念誘導によって操作する遠隔兵装として自在に空を駆けることも可能だ。

 

二刀の剣で並居る呪霊を祓い飛ばしながら、四基のパイルも各個に周辺を飛び回り低級の呪霊を仕留めていく。武装が増えたことにより隆景に接近できる呪霊は皆無となり戦場の支配権は決定的となっている。

 

ヒュオッ!

 

その劣勢の中、細長い影が呪霊の消失反応に紛れながら隆景の足元に迫る。

 

ギャォッ!

 

丸太程の太さを誇る大蛇型の呪霊。敏捷性に優れており、他の呪霊を目くらましにしながら牙を突き立てる。この戦闘が始まってから初めて隆景の至近に脅威が迫る。

 

「お、威勢がいいな。」

 

しかし、死角にも関わらず隆景の輪廻眼はそれを捉えている。

 

「まぁ、だから何だって話だけど。」

 

無情にもそこに踵落としを決める隆景だが、続く反応に違和感を覚える。

 

(消失反応が遅い?いや、これは…蛇の呪霊をガワにして無理やり何かを詰め込んで!?)

 

一見大蛇の呪霊に見えるが蛇の姿は中身を隠すための偽装に過ぎなかった。呪霊であるが故の体内の空洞に膨大な数のミミズ呪霊がはち切れんばかりに詰め込まれており、それが幾層もの防壁になって一度に消失することを防いでいる。加えて。

 

(今の俺の膂力を引き留められるほどの出力。山ほどのミミズ全部に絶命の縛りを科してドーピングしているのか。)

 

縛りにより底上げした呪力で消失を幾許か耐え、文字通り束となることで隆景が足を引き抜くことを許さずその場に縫い留める。出力を上げれば数秒のうちに祓うことはできるが、この包囲の中でそれをすれば他の部位を呪霊の攻撃に晒すことになる。反転術式で即座に治療可能だろうが、纏わりついた呪霊を吹き飛ばすことも含めれば数秒の猶予を相手に与えることになる。

 

(この準備の周到さ。次の攻撃も算段を付けているだろう。このまま相手の手番で進めさせたくないな。)

 

だったら、と周囲を攻撃させていたパイルを背面に戻し、X字状の推進機とする。

 

我流

 

背面のパイルは四方八方に推進力となるエネルギーを放射し、その中心の隆景はそれに従って高速の錐もみ回転を始める。

 

天満月(あまみつつき)

 

その最中も間断なくエムロードとサフィールの双剣を振るい続ける。一振りで刀身の十数倍の距離を切り裂く光の剣で、縦横無尽、360度全方向を絶え間なくに斬り続ける。

斬撃は半径10メートルにも及ぶ殺戮天球を現出させる。

 

呪霊の密集地に空白が生まれる。それは瞬く間に新たな呪霊によって埋められるだろうが、隆景は既に目的を達していた。

細工された蛇型呪霊が襲来してきた方角という情報だけでは決め手に欠けたが、一時的にでも呪霊を祓いクリアになった視界ならば『視える』。

 

「さぁ!アゲて行こうか!」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

術師の素養を持ちながらも一般家庭に生まれたために、その異能に対して周囲から理解を得られない。呪詛師の多くはそうした迫害がきっかけで道を外れたという経緯を持つものが多い。

新枝川(にえかわ)もまたそうした一般家庭に生まれた術師の素養を持つ人間であった。

 

彼は幼少期に自身の呪力と術式『呪霊贄術(しじゅつ)』を知覚した。知覚してから暫くは良かった。彼は自分の能力を人知れず人助けをするために与えられたものだと思っていたからだ。

 

人の営みに悪さを働きそうな呪霊を見つけては、祓うか、もしくは術式の支配下にしていった。力の育ちきらぬうちは、彼にとっての呪術とは世を忍んで人を助けるためのスーパーパワーだった。

持ち前の要領の良さによるものか、自分の力は人に明かさぬほうが良いものだと悟っていたたことも彼の悲劇だった。

 

13歳の頃、その日は訪れた。

 

術式で取り込んだ呪霊が、彼の家族、両親と祖父母、兄妹を喰い殺したのだ。

 

原因は彼が自身の術式の詳細を知らなかったこと。

肉体の成長と共に術師として力も伸び、彼は三級呪霊なら調伏なしで御せるようになっていた。

そんな中で遭遇してしまった特級呪霊。彼は彼我の力量差を見極めることに長けており、力を知覚した頃から強力な呪霊と相対した時は戦闘を避ける判断が出来ていた。

 

だが、人格と術師、両面での成長が彼に“物量での圧倒”という自身の術式の真骨頂を知覚させていた。

 

格上の敵との戦闘を制して術式に取り込むという成果を挙げて帰宅し就寝した夜、ついに“それ”は起きた。

 

彼は知らなかった。自身の術式『呪霊贄術(しじゅつ)』の仕様を。

 

高専基準で1等級以上の差がある呪霊に対しては、餌として日頃より多量の生物を食わせなければならない。これを破れば取り込んだ呪霊は代わりに術師と血の近い存在を贄として貪る。

 

や、やめてっ、それは食べちゃダメッ

 

制止は通じず、温度をなくしていく家族を茫然と眺めるしかなかった。

その日、少年の世界から光が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

左手のエムロードをテニスのバックハンドよろしく身体に巻き付けるかのように振りかぶる。引き絞られた左腕にはミシミシと音を立てながら運動エネルギーが蓄積する。

 

「おりゃッ!」

 

肉体の自壊も構わずに溜めたエネルギーを全て乗せて剣を投擲する。

回転しながら飛ぶ光剣はその軌道にいた呪霊を祓い飛ばしながら突き進み、その後には一本の道が残る。

 

シン陰流 簡易領域

 

“両足を発動時の状態で固定することで領域に侵入したものに対してフルオートで斬撃を放つ”。その縛りのもとで簡易領域を展開する。足を止めて迎撃に専念する為の戦闘技術を隆景は力技で別物に作り変える。

 

両足を固定した状態で背面の推進機によるエネルギー噴射で身体を押し出し、地面を割りながら投擲した剣が作った軌道を進む。

激しく砕ける大地を見なければ、その様は氷上を滑るかのように見えただろう。

 

一連の動作は瞬く間に行われたが、驚異の物量を誇る呪霊は何とか隆景を食い止めようと追い縋り、立ち塞がる。

 

抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀

抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀

抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀

抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀

抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀 抜刀

 

 

術者の成長により、隆景の『抜刀』は縛りをある程度緩くしても発動可能となった。今回であれば、“移動をしない”という縛りを除いた“足を動かさない”という条件のみでフルオート迎撃を可能とした。

 

(日下部さんには及ばないけど、今の俺ならここまでは出来る!)

 

間合いに入った呪霊は一刀のもと核を断ち切られ、『主人』を守ることも叶わずに消えていく。

 

そして。

 

(見つけた!)

 

戦闘の始めに術式の開示を行って以降、巧みに姿と呪力を隠していた『呪霊贄術(しじゅつ)』とやらの術者をついに発見した。

 

抜刀

 

一閃。横薙ぎに振るわれた渾身の一刀が呪詛師新枝川の胴を両断した。

 




書いていた分はここまでなので次はしばらくかかります。
あと鞘がないので抜刀ではないんですが、既存の名前で行きたかったのでこのかたちです。
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