やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件 作:へーれ
ちなみに地方住みなので東京~京都間の夜行バスが出ているのかは知りません。
無知っ知の知~
「あぁ~疲れた~」
夏油傑、そして夏油が残していった呪霊との連戦を終えた隆景は東京への帰路に就いていた。
元々調査のために京都に残る必要があったので、帰りについては東京高専一行とは別にしてもらっていた。
もっとも、今後の任務に影響が出ないように延泊はせずに夜行バスで帰ることにしていたので、呪霊と戦った疲労困憊の体で何とか移動し、ようやく座席に着いたところである。
学生がボロボロの学生服で歩き回ると、(職務に勤勉でありがたいことだが)警察のお世話になり兼ねないため、途中コンビニでスウェットを調達するなどしていたら発車直前の駆け込みになってしまった。
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一連の戦闘を咄嗟のアドリブで切り抜けられたのはいいものの、あまりに無我夢中だったため、ようやく今回の事件について思考を纏めることが出来る。
今回は今際の際で反転術式を身に着けたおかげで命拾いをした。
だが、俺が身に着けたものは通常のそれとは異なる過程で呪力を生み出している。
本来の反転術式は負の呪力同士を掛け合わせることで正のエネルギーとする。このエネルギーには肉体の治癒や呪力の中和といった効果の他に、術式に新しい効果をもたらすといった効果がある。
欠点を挙げるとすれば2つの呪力を掛け合わせて生み出すという性質上、必然的に呪力消費が通常の2倍となることだろう。
俺の反転術式は呪力を掛け合わせる形ではなく、日頃から行っていた呪力特性の変質という形で正のエネルギーを生み出している。
この呪力が本物の正のエネルギーかどうかは東京に戻ってから五条先生に相談しよう。
(相談といえば術式の方が問題かもしれない。)
反転術式と同時に突如自覚した術式『凝固呪法』。
平安から現代まで術式持ちが生まれなかった賀﨑家出身の隆景にとって、この情報は安易に扱えるものではない。下手をすれば、術式をめぐって血が流れてもおかしくない。
今回の件も非常事態として報告すれば、旅程の変更も出来ただろうが、そうなると術式のことも発覚するかもしれない。よって今回のトラブルが発覚しないように独力で当初の予定を守っているのだ。
(しっかし、反転術式で動かしているのに「順転」かぁ。どう考えても訳ありっぽい術式だよなぁ。)
反転術式を使える術師が使う術式には稀に特殊な使用法が生まれる場合がある。
それが「術式反転」だ。
術式反転については、隆景は実家から学んだ御三家の情報でしか知らず実物を見たことは無い。
学んだ内容はこうだ。
そもそも術式とは生得術式を負の呪力で動かすものであり、正確には言うとこれは「術式順転」と呼ばれるものだ。
殆どの術師が使う術式はこの範疇に収まるためにわざわざ「術式順転」の名前が使われることは少ない。
拡張術式なども順転のバリエーションの1つであり、この範疇を飛び出たものではない。
一方で、術式反転は使用する術師はごく僅かである。
術式と反転術式のどちらをも身に着けた術師であっても、術式反転にまで至る者は少ない。
俺の知る限りではこの地点に至ったのは五条先生だけだ。
術式反転では、生得術式に反転術式で生み出した正のエネルギーを流し込むことで、通常の術式から逆転した効果を生み出すらしい。
教えられた情報が正しければ、五条先生は順転では無限の収縮による圧縮を、反転であれば無限の発散である放出を操るそうだ。
しかし、今回の戦闘で反転術式と共に身に着けた術式『凝固呪法』は(暫定)正のエネルギーをもって順転の術式を発動するものだ。
術式を持つ術師はある程度の年齢に達すると自分の術式と基本的な使用法を自然と認識するらしい。
生まれたときから脳に知識が備わっているという訳だ(幼さゆえに扱い方を間違える事故も起きるらしいが)。
『凝固呪法』も自覚と同時に使い方を認識したためにあの場で呪霊を祓うことが出来た。
順転『成形』では、正のエネルギーを体外へ放出し固形化し武器として扱うことが出来る。
この固形化したエネルギーは呪霊を分解して無力化することが出来る。
一方で俺は術式反転の効果も知覚している。
今回の事件現場に夏油や俺の残穢を残したままにしておくと、いずれ事態が露見すると考えて念のために反転の方の術式を使用して残穢を削除してきた。
そう、『凝固呪法』では正のエネルギーで順転を使うことを前提としているためか、術式反転の使い方も初めから認識しているのだ。これは術式としては破格の使い勝手と言えるだろう。初めから順転と反転の両方が使えるのだ。
世には領域展開が初めから備わっている術式があるそうだが、これはそれに勝るとも劣らない仕様に違いない。
故に隆景は自身の術式についての取り扱いを最も信用がおける五条悟にまず相談することに決めたのである。