数人一組で牢に入れられている。牢は無数にあり総数は不明だ。逃げ出しても連れ戻せる自信でもあるのか縄は解かれている。
俺は男だけ6人入っている牢へと突き飛ばされた。
俺はそのまま地べたに座り込んだまま、
――何かの間違いではないか。
俺はあいつらに協力してあの緑の奴らを、蹴散らして村の連中を助けたのに、その後の対応は冷や水でも
本来なら礼があっていいはずじゃないか!
救った礼も無く奴隷として売り払うとか、どう考えても頭がおかしい!
そう思うと、沸々と怒りが湧き上がってきて、砂の地面に何度も、何度も何度も何度も! 拳を――打ち付けた!
「くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ」
――手の皮が擦り切れ砂の粒子が肌に食い込んで振り上げた勢いでまき散らされる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
頭の傷のせいもあるだろうが、ふらつく……。痛みで、手を止めるが、暗くて、血が出てるのか……分からなかった……。
頭から盛大に流血していたが、根性で耐えればどうにかなるのだ。向こうでは少しの傷で大げさに喚きたてていたが、それが俺には全く理解できなかった。今思えばそれが周囲との溝を作っていたのかもしれない。何故かふと教師だった父親のことを思い出した。
地面に
そして、手の下で小さき何者かの
試しに
背後にあるので逆へ向き直る訳だが、その時に同じ牢の中にいる男たちが目に入った。
俺へ目を向けている者は何の感情も籠らないような、表情筋の壊死し尽くしたかのような顔をして、これが無の境地のサンプルです。とでもいった不幸でべた塗された、のっぺらぼう達がそこには陳列されていたのだ。
よく見ると、
村の連中は全員耳が長かった。そして言葉が通じなかった。
ここの奴らの服装はどれも粗末で目の粗い生地で、俺の着ているようなあっちの世界の物では無さそうだ。
さっき俺が喋った際には気付かなかったが、もしかして俺の言葉が分かる人間がいるかもしれない。俺と同じようにこの世界へ突然やってきて、似たような
もしそうであるなら、服装からして奴隷にされて短くない可能性がある。
コイツらに日本語で話しかけてみる事にした。話すにしても何が良いだろう。hi! do you speak Japanese? とか? 同郷の可能性を考えるとムヤミにテンションが上がってしまう。
「ええと、……もしかして、日本の人? でしょうか……?」
「……」
返事が無いな。年齢は20代……かな? 実の無い話には喰いつきが悪いのか。
……たばこ……は、どうだろうか……? 喫煙者はマイノリティだろうから望み薄。
コンドーム。この状況下、どうやってコレを材料に料理したらいいんだ。
ほかには……栄養剤はクリティカルなのでは? 見るからに栄養足りてなさそうだし。塩もあるし。……水が無いので塩はやめておこうか。
……結構残ってるが全部出すには身の危険を感じ過ぎる。この場で取り出すと明らかに目立つので、見てないところで取り出したいが……今は無理だそうだ。
情報はどうだろう。
これまでのことを、詳細に話せばなにか有用な情報があるかもしれない。
しかし自分のことをいきなり話始める奴とか怖すぎないだろうか?
俺、異世界で超速で奴隷ですけど……意味不明すぎる。もっと分かりやすく――
「……ここにいるのは大体日本人だ」
「――え?」
業を煮やしたのか、とうとう向こうから話しかけてきた。やはり日本人だったのだ!
「やっぱり、捕まったんですか?」
「俺は町までやってきて捕からまった……それから、鉱山で働かされて……こいつらは全員元鉱夫だ。たぶん閉山になったんだろう……それでまた奴隷商に売られたんだろうな」
「鉱山……」
「運が良かったのか……本来は死ぬまで働かされるそうだ。はぁ……」
話すだけで疲れてしまうのだろう。返事が無かったのは気力も体力も無さ過ぎて、答えられなかったのかもしれない。
俺はこの同郷人たちが哀れになって、なにかしてやりたくなった。
栄養剤は惜しいが振る舞うことに決めた。
「あの、これ。よかったら、どうぞ」
「……お菓子か? (そんな量じゃな……でも無いよりかはマシか)いただきます……ラムネ? ――いや! 違う! 栄養剤だ!」
暗すぎて判別できなかったのだろう。それに、労務で目が衰えている可能性も考えられる。
――栄養剤というパワーワードに数人がこちらへ注目する。すぐに振り向いた人間もいれば、周りに釣られて目を送った者。興味なさげになんとなく様子を伺っている同郷者など、思ったよりも淡白な注目のされ方だ。しかし猛烈に喰いついてくる奴の圧がすごい。
「俺にもくれ!」
「俺も」
「じゃぁ、俺も」
この錠剤は2個で1日分の栄養素が全て取れると書いてある奴だ。全員に2個づつ配った。
「なんだ! ケチるなよ!」
勢いで栄養剤を配る決断をしてしまったが、やはり過大な要求をしてきたか。
「この錠剤は2個で1日分の栄養素なんで、3つ以上食べても無駄に、なりますよ。一度に食べないで、ください」
残りの錠剤は 43-6*2=31だから 31/7の端数切捨ては4だ。4個づつ配ればいいだろう。
全員に配る頃には、最初に渡した2個は既に喰ってしまった後だった。それぞれ口の中で味わう様に食べている者から、余分に渡した錠剤まで食べてしまう人までいた。
「ああ……美味ものじゃないけど、染みわたる感じだ……病人のものって、バカにしてたよ」
「体が軽くなったような……そんな訳ないか、はは。でも楽になった気がする」
「全部喰っちまった……」
まぁ……少ないしな。
「鉱山じゃ、碌なもん出なかったよな
「ああ、痛んだジャガイモに……あと何が入ってるのかわからない粥とか。みるみるうちに痩せてくんだ」
「何日も太陽を拝めないのが辛かった」
「うっ……」
感極まったのか、泣き出す男まで現れた。尤も涙は出ないようだが。
「俺たちは運がよかったんだ……それに、こんなものまで食べれて。……本当にありがとう」
最初に話した人は、居住まいを正して頭を下げて、それぞれが自己紹介を行った。
「あ、いや。いいんです。喜んでもらえて、俺もよかった、です」
格式ばった話し方? は苦手だ。
「お礼ってほどじゃないが、ひとつ話を聞いてくれないか……」
そして男はなにやらもったい付けて話始めた――
装備:服 0.5kg
装備:上着 0.5kg
装備:ズボン 0.5kg
装備:インナー
装備:ボクサーブリーフ
装備:靴下
装備:靴 0.5kg
スマホ -
小銭 ¥361
タバコ 3本
¥100ライター
コンドーム
プラスチック袋{栄養剤 43錠-40}
ビニール袋{岩塩 -}
カギ