祐一郎 は異世界で亜人に奴隷として売られてしまう。
同郷の奴隷達から、人間だけの理想郷の噂を聞かされるが、拳銃を突き付けるダークエルフの女イーレシスンに買われ、盾を渡される。
そして因縁の青髪と赤スカーフの二人と思いがけず遭遇。イーレシスンの魔法でお互い大したけがもなく事なきを得るが、ほとぼりが冷めるまで国を離れることに。
0012〜0013の一週間の出来事を細かく描写します。地の文中心です。
裕一郎はイーレシスンの事が少し分かったような気になります。
其の二
眠れないと色々と考えてしまう。
同じ奴隷で転移者だった槻山さん達は、何かしら記憶の欠落があると言っていたが俺には心当たりがない。尤もそれすら忘れていたら思い当たりようも無いのだが。
俺にも何かしら記憶の欠落があるのか、それとも俺だけが特別なのか……。このステータス加速の能力と何らかの因果関係があるのか……いくら考えても答えのでない問に意味はないな。
……そうだステータス考察でもしようか。
『ステータスオープン』
世界はスローモーションになったはずだが、動く物が無いので違いが分からない。目の前で腕を動かしてスローになったことを確認した。
さて。
これが今のステータス……。
そもそもこのステータスを何処まで信用していいのか。
この部分。
これは総荷重だろう。試しにリュックを持ってみると……
括弧内が所持物の総重量でその前が体重だろう。
荷物を置くと元の3kgに戻るのは服の総重量だろうが、おかしい。
服の重さは3kgも感じ無い。そしてピッタリ3kgというのもオカシイ。正確に測ってみないと分からないがピッタリ3kgになる偶然はそうそう起こらない。
表示の感じだと下二桁までなので誤差は10gより小さいだろう。
数字についてはあまり鵜呑みにでき無さそうだ。少なくとも重量計測に使うことは出来ない。
他は――!?
ヤシンタ!? 何だコレ!?
属性とか……状態を表すものだろうか。前は無かったよな。だとしたら地名じゃないな……。
身に着けてるものでもないし……
視界にあるものを表示してるとか? その場で一回転してみるが変化は無かった。
なんだ、ヤシンタって……。
ヤシンタ、ヤシンタ……野心太? 名前か……?
は!? 表示が変わった! ヤシンタって名前だったのか! 野心太って何だよ!
というかコレって、つまり。イーレシスンのステータスってことか!? 今ここにいるのは俺と彼女だけだ。ただし地面の下にこのヤシンタって人(?)が埋まっているのかもしれないが(笑)……まぁ、無いか。
念のためその場から10m位離れてみると……
消えたけど。イーレシスンがヤシンタではない根拠にはならない……
もう考えるのがめんどくさい。イーレシスンがヤシンタだとした方が自然だな。
だとするとイーレシスンは偽名で、ヤシンタが本名だったのか……。両方とも変な名前だけども、ヤシンタのほうがしっくりくる。ヤシンタって顔してるしな。(意味不明)
でおれのステータスと比較すると。
力は俺91でヤシンタが120。ヤシンタのほうが多い。いや俺が低いのか……? ちょいショックっす。
敏捷は118でヤシンタが160。ヤシンタのほうがかなり多い。
知力は119でヤシンタが140。ヤシンタのほうが多い。まぁ、うん……そうかぁ。そうだよな……
生命力は115でヤシンタが112。俺のほうがやや多い。
魅力は86でヤシンタが160。ヤシンタのほうが圧倒的に多い。納得できないんだが! 2倍近くあるぞ。昔は肥えてたほうが美人だったっていう話だし。醜美の感覚がちがうってことか? ……わからん。
俺の二倍って……アイドル並みってことか? それとも俺の魅力がうんこ並みって可能性もある。うんこの二倍魅力的ってことだ。うん、この考えはどうかと思う。
……これ以上ふんばっても出てきそうにないので次だ。
魔力は39でヤシンタが30……俺のほうが多い! マジ!? ……いや、チートとしては微妙な差か……。とはいえイーレシスンがあれだけ魔法を使ってたなら俺はそれ以上に使えてもおかしくないって事だ! っていうかそれ以外見るところが無いって……俺、バリバリの前衛系かなって思ってたけども。違うのかー
総括すると、俺からステータス加速を取ったらクソザコってことか――
取り敢えず、ヤシンタ呼びはよした方がいいだろうな。今まで通りイーレシスンにしようか。
――その後、結局一睡もできずに夜を明かした。
キャンプを片付ける。
ロープの畳み方が分からず蛇腹に織り込んで端で堅結びにして、荷物に括った。
そして干し肉を喰って出発した。既に傷み始めていて味変している。
普通に不味い。一品で二度不味い。お得だ。うん、この俺は何を言っているのだろう。きっと傷んだ干し肉には混乱効果が生えるのだろう。
基本は森の中の行進になるが、ちょくちょく茂みに行く手を遮られた。
そう言った場合大抵沼があって、茂みのを抜ける獣道を辿ってゆくと水辺へ出ることが出来た。目を凝らすと森の奥に木々の切れ間が見える。暗い林床の世界に遠くの光が水の気配を教えてくれていた。
水の補給は十分にあるため必要無かった。イーレシスンは顔や手など体を洗ったりしていたので、俺も荷物を降ろして顔を洗った。
森の中では太陽の方角が分から無かったが、沼は開けた場所なので朝日の方向から西へ向かっていることが分かった。
沼の一角には草地があり泥の地面が露出していた。西側なので太陽に照らされて泥の水気が蒸発し表面から水蒸気が立ち昇って、白煙の影が斜めに差し込み幻想的に見える。朝晩の冷え込みの差で生じた朝霧だろう。
太陽のような草の匂いが鼻を突いた。
急激に気温が上がるにつれて、大気中の飽和水蒸気量が上がり湿度が低下するせいだろうか。過ごしやすく感じる。昨日の午後とは大違いだ。俺がそう思っているだけで本当は違うのかもしれないが……
蓮の花が水面に漂う。歪な沼の形に関係しているのだろう、蓮は縁の一部と中央からやや寄った位置で群落を作っていて、それが水面の模様にメリハリを与えていた。
蓮は沼の底に根を張っているはずなので、深い場所では生えないのだろう。おそらく中央に比較的浅い場所があるのだ。
水面が対岸の木立を深く写し取り、たまに跳ねる魚がさざ波を作っていた。反射した透明な波が干渉しあい複雑な模様を描いている。
足元までやって来た波は巻き上げられた砂と混ざってミルクティのような水質が朝日を透過していた。
ここら辺だけは赤土は見られなかったが、泥の上の足跡に少し赤土が混じっているように見えた。茶褐色なのは表層だけなのだろう。
ふと、対岸で黒く蠢く小山が目に入った。表面がテカテカして光を反射している。
「あれ、なんすか?」
俺は向こうの黒くて丸い謎の物体を指さしてイーレシスンに問いかけた。
「あれはダンゴムシだ。こっちから仕掛けなければ無害な益獣だ」
ダンゴムシ!? 体高60cmはあるぞ! オームか!
「腐葉土とかを喰ってるらしい。多分な、以前解体したとき腐った葉っぱらしき破片が大量に出てきたな……」
「解体? 素材とかを売るんすか?」
「いや、喰うものが無い時の非常食だ。不味いんだアレ」
「マジかー」
こちらの会話が聞こえたのか、オームはそそくさと森の奥へ消えていった。
「――
「……ん?」
言ってしまった……そして、やっぱり伝わらなかった渾身のギャグ!
そして始まる地獄の沈黙……言わなきゃよかった! 何で言った俺! ていうか段々キャラ崩壊してないか、俺……。
「……ああ、そういうことか。突然なに言い出すのかと思ったら、そういうことか。普段冗談言わない奴がギャグを披露し始めるとか、唐突過ぎて面食らったぞ」
なんか、今までとは違った距離感を感じる……。
俺の異世界ハイは遅れてやってくるらしい。
その日は夕方までスケルトンやダンゴムシに遭遇することも無く進めた。
それは1時間前のこと。急に生暖かい風が樹冠を揺らし始めた。
「風が出てきたな……」
イーレシスンは近くに生えていた巨大なフキの葉のようなものを幾つかもぎった。
「イモの葉だ。丁度いいから雨よけに取っておけ」
「イモ? 食べられるんすか?」
「いや、毒だそうだ」
「はー、毒っすか。雨よけって雨降るんすか?」
「もう直に降り出すだろうな」
それから彼女の言う通り、雨が降り始めた。
雨というよりスコールだろう。激しい雨脚は頼りないイモの葉だけでは防ぎきれなかった。もうすでに大分濡れ始めている。
イーレシスンはというと、シダの木の根元にイモの葉を被って佇んでいる。荷物は足元で枝を組んで上に置いていた。
俺もそれに
立ち位置を変えて幹の周りをまわっていい場所を探す。
幹は傾いているのか、幹を伝って雨が滝のように流れ落ちている。時折蛇口を全開にしたかのような太い水の柱が落ちてくるのは幹の傾斜によるものだろう。傾きの真下にならないように移動するが、水柱が落下してくる位置は一定しておらずランダムに襲い掛かってくるように見えた。
よくよく観察すると、幹は捻じれているため滝が錐揉みし、降雨量の関係で落下位置が刻々変化しているらしかった。
俺は木を変えることにした。もっとまっすぐな木であるなら落下位置は変化しないはずだ。
適当な木を見繕って素早く移動した。
やっと落ち着ける場所を見つけて足元の木の根の上に荷物を下ろした。勿論そのあと枝を敷いた。葉の上では完全に濡れてしまい水をたっぷり含んだ背嚢を背負うことになるだろう。荷の重みで葉が皿のように雨水を集めて水没してしまう。
荷物の上に巨大なイモの葉を被せたが、若干裂けていた。触った感じ葉は柔らかく嫌な予感はしていたのだが、イーレシスンの言葉をそのまま鵜呑みにしたのが悪かったらしい。もっと丁寧に扱えばよかったが後の祭りである。これ以外持ってこなかった。
しばし雨の中立ち尽くすが、足元が濡れていることに気づいた。雨が地面に跳ねて濡らしていたのだ。どうやらびしょ濡れは避けられないらしい。
――スコールは日が暮れても降り続け、その日はその場でハンモックを作り休んだが、雨の残り水が頭上の葉に残っていたし、服の濡れ具合もありとても眠れる具合では無かった。
目が粗いのでそこまで濡れた感じをしっかり感じないのが逆に救いとなっているのだが、こんなコスプレめいた服装でも違和感を感じなくなってしまうのはどうなんだろうか。
たしかこの世界に来てまだ5日で、この服装になってから2日目のはずだ。
まぁ、慣れる以外に選択肢は無いのだろうが……
その後も道なき道を進んで行くのだが、偶に遭遇する川と交差し10〜20m下る坂があってようやく川へとたどり着いた。その時木々の隙間から右手方向。つまり北に山が見えることがあった。
「そろそろ村が見えてくるはずだ」
そろそろといっても一向に人の痕跡すら見られない。
「ホントにあるんすかね」
「峠を越えて人里だ」
「……」
それは、そろそろって言わないと思う……。
おそらくは旅人の距離感覚と現代人の距離感覚の違いによって起こった齟齬だろうが……
休憩で干し団子を取り出した。干し肉は既に食べつくしていた。
おそらく雑穀をすりつぶして練って固めたものを天日干ししたものだろう。色は全体的に黄みがかった薄い茶色で穀物の殻と思われる粒状のものが見られた。
しかし、それはあくまで最後に見た時の印象だ――
「うわ!」
「なんだ」
干し団子が、カラフル団子に突然変異した!
いや……黴ていたのだ!
「荷物を濡らしたからだ。気を付けろ。カビた部分は削って食え」
「上品で滑らかな口当たり……味の無い粘土みたいだ……! ナンダコレ!?」
「チ、酒と合わせて喰え。少しはマシになるだろ」
「うぇぇ……」
こんな世界であるから飲酒の年齢制限などあったとしても守られることなど無いだろう。それに破ったところで真面目に取り締まる者などいると思えない。飲酒制限は存在したとしても有形無実だ。
未成年飲酒のデメリットを示すためのエビデンスを得るためのコストを支払う者などいないだろう。仮に示せたとしても、他に
つまり飲酒制限は無いほうが自然だ。
……。
……今何かが俺の中に降りてきたようだ……誰?
――その後、悪心を感じたが下痢することも無く山を登ってゆく。とはいえ腹の調子がオカシイのでペースは落ちるし、上り坂のせいか既に腹が減り始めていた。
やがて曲がりくねる上り坂を進むと、岩が目立ち始め切り株を発見した。人の痕跡だ。
「あそこの岩の上に登れば村が見えるぞ。行くか?」
「いえ……ムリっす……」
なんとなく簡単に登れるように言ったが、岩の高さは100mはあるんじゃないかという高さで頭上に
「まぁ、いいか。行くぞ」
イーレシスン、登りたかったのか……? 何故か残念そうに見えるのは気のせいだ
岩に挟まれた
なにか臭いが変わった気がした。
装備:服 1kg
装備:ズボン 1kg
装備:インナー 0.5kg
装備:靴下
装備:靴 0.5kg
装備:円形盾 4kg
装備:円形盾 3.5kg
リュック20L 10kg{
水袋 4L 0.5kg{
水3kg
}
水袋 4L 0.5kg{
水3kg
}
小麻袋 1L{
干し肉0.3kg
}
小麻袋 1L{
干団子0.5kg
}
陶器の瓶0.75L 1kg{
穀物酒0.7kg
}
小型ナイフ0.5kg
包帯1kg
小袋 0.2L{
木の小物入{
裁縫道具
}
}
小袋 0.2L{
火口 0.04kg
火打石 0.2kg
}
布
ロープ 10kg
}
Total:41.74kg
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