「キィ」
「チュチュチュ」
ゴソ……ゴソゴソゴソ……
ネズミが気になってまったく考えに集中できない! 学校の雑音に比べれば大したことは無いのに、異常に気になるのは死体を貪ってることを、無意識に感じてしまってるからなのか?
槍でネズミを追い払いたくても、死体をつつく事になってしまうから、やりたくない訳だが、……いったん距離を取ろう。
――聞こえなくなるまで十分距離を取ると結構離れてしまった。この意味不明な状況に神経質になってるのか、自分の事なのに俺には分らなかった。
とりあえずどうすべきか……。
俺は上着に入れていた栄養剤を一錠噛み砕いた。
そう言えは、ペットボトルが無い。落としてきたのだろうか。ついでに岩塩をかじった。疲労感が薄れる感じがするので、いつからか持ち歩くようになった物だ。岩塩は持ち歩きやすいので、パックできるビニールの小袋に突っ込んでいる。
あー、ヤニが吸いたい。ここじゃ、匂いが目立ちそうだし、ココがどこかも解らないんじゃ下手な行動は控えたいので吸うに吸えないわけだ。それが余計イライラする。このタバコはお袋からちょろまかしたヤツだ。
穴の中とかは吸えそうか? いやいや、匂いは遮れない訳で結局同じか。
……今はタバコなんかどうでもいいんだった。
そんなことを考えていると、段々と気分が悪くなってきた。栄養剤か岩塩が悪かったのだろうか……?
……とにかく、今どうすべきかってことだ。なんとなく手元の槍に目が行った。汚い槍だ。手垢がついて柄が黒ずんでる。穂先も黒く血が張り付いてる。何者の血なんだろうか。この血の主が追ってきてる可能性もあるかもしれない。
なんとなくあたりを見回した。朝霧が晴れ始めている。遠くに山が見えた。そして逆方向には海が見えたのだ。俺がいた県は海に面してなかった! つまり、あの後拉致されて、圏外の海の見えるどこかに放り出された、という可能性がある!
――ということは、だ。俺の体重は60kg以上あったはずだ。それを担いでここまで運ぶのは重労働なはず。車かバイクで運んだ、と考えるのが自然だ。ということは轍があるはずだ。
俺は再び地面に注目して見回した。
……しかし、轍は見当たらなかった。
俺は目覚めた場所まで戻って、その周囲を回るようにゆっくり歩いたのだが、やはり轍は見当たらなかった……。
……。
俺は、さっき見かけたボロ家へ行ってみることにした。
ボロ家は無人で完全に木造だった。トタンや鎹(かすがい)、筋交いすら無かったのだ。わざわざ全て木で作るよりトタンや、ブルーシートなど使ったほうが作りやすいだろうに。このこだわりは何なのか、秘密基地的な日曜大工の延長とか? まぁ、いくらでも考えられるか。
草に埋もれて気付かなかったが、柵が家に繋がって伸びていた。放牧地なのだろうか。ふと足元を見るとこんもりと土が盛り上がっている個所がちらほらある。あー、……糞かー……。いままで気付かず踏んづけてしまっていたかもしれない。
俺は、丘の向こうを見渡せる場所へ移動した。
果たして、そこには似たようなボロ家が立ち並ぶ牧歌的な小さな集落があった。
……そういえば、死体は集落の方角を向いていた。村へたどり着く前に穴に落ちて力尽きた、ということなのだろうか。
俺は集落へ向かうべく足元に注意を払いながらソロリソロリと歩を進めた。
そのうちに、岩が目立つようになった。岩が地面から突き出している…… というより、浮かんでいるような?
俺は試しにかがんで岩の下を覗き込んでみた。
すると、浮いているように見えるような、見えないような……。試しに押してみると、すーっと横にずれて、そのまま転がっていって叢に突っ込んで止まった。
なんだ、コレ!?
やがて、みるみる叢(くさむら)の反発力で浮き上がり、こっちにゆっくり戻って来た。
それを片手で空中で受け止めようとしたが、意外に重く両手で慌てて抑えた。その場に固定しようとしたが、なかなかうまくいかない。どうやら、風に流されているらしい。海風が吹き始めたのだ。
周囲を見るといつの間にか、無数の浮遊石がゆるりと回転しながら浮かび上がり、風なびく草原に過行く朝もやの中、乳白色の水蒸気に斜めに影を投影する幻想的な景色が目の前に現れた。
――そう、ここは異世界だったのだ!
装備:スピア 2kg
装備:服 0.5kg
装備:上着 0.5kg
装備:ズボン 0.5kg
装備:インナー
装備:ボクサーブリーフ
装備:靴下
装備:靴 0.5kg
装備:伊達眼鏡 -
スマホ -
小銭 ¥361
タバコ 3本
¥100ライター
コンドーム
プラスチック袋{栄養剤 43錠}
ビニール袋{岩塩 -}
カギ