祐一郎 は異世界で亜人に奴隷として売られてしまう。
同郷の奴隷達から、人間だけの理想郷の噂を聞かされるが、拳銃ダークエルフの女イーレシスンに買われた。
そして因縁の青髪と赤スカーフの二人と思いがけず遭遇。イーレシスンの魔法でお互い大したけがもなく事なきを得るが、ほとぼりが冷めるまで国を離れることに。
0012〜0013の一週間の出来事を細かく描写します。地の文中心です。
異世界の生活? を実感し始める。酷い前文明的な道行に辟易する。
一日目:2つの村を横切る。第二の太陽は一時間周期。
スケルトンと遭遇。
ステータスウィンドウでイーレシスンのステータスが覗けるようになった事に気づく。そして偽名である事が判明? ステータスウィンドウ上ではヤシンタが彼女を表す名称であると類推した。
二日目:沼で巨大ダンゴムシを目撃。
峠を超えて人の住む土地に辿り着く。
しかし、無人の廃村となっており、動物達の楽園と化していた。
そこで、幽霊に襲われ朝日に命を救われる。
目的地のアトーエへ向かうため、経由地であるイーノエススの玄関口へ入る二人。
そこでは、モンスター対策の壁が乱立する混沌とした村落が点在する一帯であった。
マーマンと村人が対立しており、渡し舟が使えず足止めされて、満員の宿でトラブルとなり野営。
三日目:祐一郎は浮遊クラゲに連れ去られ、イーレシスンが気付いた時には消えていた。
謎の自称美少女アイスに助けられる祐一郎は、浮かれたまま彼女について行き、テンプレの洗礼を受けるが、アイスの目的は人魚を攫った男たちであった。
一方イーレシスンは偶然入った水車小屋で囚われている人魚の子を目にする。
其の九
イーレシスンの口調は、onepieceの女海賊をイメージしてます。
人魚を
『もむ。うまー』
『青い実? じゃあ、俺も』
まだ午前中のはずだが、刺すような日差しとべたつく湿度で張り付いた服が、祐一郎には不快だったが、アイスをちらっと横目にすると酒に酔ったかのように甘く痺れて感じられた。
田んぼから聞こえるカエルや虫の声の響く、牧歌的な日常の風景がいつもと異って見えた。
『——やー、それ毒だよ』
『えーっ——毒ゥ……!(毒で痺れただけかい!) ペッ! ペッ!』
『……アイスは食べても大丈夫なのか?』
『やー、へーき』
『——そ、そうなんだ……』
祐一郎は、男の服の下でネズミの群れが絶えず
日の光の眩しさと共に、道の赤茶色がアイスの目の赤と同じ血色とダブって見えて、彼は額の汗を拭うと共に何度も目をこすった。
『(そういえば、違和感なく日本語で会話してたけど。なんで日本語が通じるんだ? 耳はしっかり尖ってるし……)』
『んー? やー、私に見とれてしまったかー。仕方ないねー。美少女だからねー。大目に見てあげるさー』
『——アイスはなんで日本語喋れるんだ?』
『やー、実は私の前世は日本人だったのさー。今明かされる衝撃の事実に魂消たらいいよー』
『……は?』
祐一郎は世間話感覚で唐突に明かされたアイスの前世に、面食らって
『——やー、冗談だよー。興味本位で教えてもらっただけだよ』
『え、ああ。本当に?』
『ヤー、証明できないと思うけどねー』
『ああ……(こういうとき、日本人しか分からないようなネタをブラフにしてひっかけるのがテンプレなんだが……僕悪いスライムじゃないよ……とか? そもそもスライムじゃねぇ)』
冴えた考えも浮かばないまま、3人は目的地の水車小屋の前についたようだ。
『——観覧車みたいd『ひっかけようとしても無駄』(食い気味……ブラフは想定済みかよ)』
「ここだ……おい! 出てこい!」
——
——男はあわよくば、仲間がアイスと祐一郎を撃退してくれることに期待して、人魚の囚われている水車小屋に声を張り上げるも応答は無かった。
「……おい! どうした!」
「——やー、開けなよ」
「くそっ……」
男は渋々扉に手を掛ける。
ギィィ……
——ズブシャ
「ギャァァァァァァ!」
男はその場に倒れた。扉を開くと同時に左足を槍で刺されたのだ。
「やー……おやぁ?」
『!?(ステータスオープン)』
祐一郎の認識速度が16倍に加速される——
シュ/ズム
『アイス!』
避けるアイスの左肩の前と後に槍が生えていた。小屋の中から投擲されたものだ。
——続いて、小屋から飛び出したのは、ダークエルフの女だった。
『イーレシスン!?』
「祐一郎か!? 『どういうことだ!』」
『こっちが聞きたいよ!』
「……いきなりなんてひどいね……——≪
——唐突にアイスから噴き出す異常な闇の奔流が祐一郎達に襲いかかる。
その場にいたアイス以外の全員が、為す術なく恐怖のとばりに押しつぶされた。
イーレシスンは武器を滅茶苦茶に振り回し——
祐一郎はのたうちながら、その場で回転する面白オブジェと化し——
ネズミに
足を貫かれて地に伏した男は、
——だが。
「ぐ……なに、これ。魔法抵抗が強すぎる……!」
魔法の維持には時間に比例した相応のコストがかかる。認識速度が16倍となった祐一郎の精神系魔法の維持コストも、同様に16倍へと跳ね上がった。
「だめ……維持できない——!」
——フッ……
≪
「ぐ……はっ——何なのさ君はァ……! これじゃまるで……≪
『はぁ! ……はぁ! ——死ぬかと思った!』
「はぁ、ふぅ……魔法が——解除された!?」
魔法の維持が出来なくなったのは祐一郎だけでは無かった。解き放たれたのはイーレシスンも同じだ——
「てヤァ!」
シュピ——キィィィィン
——舞う血液
アイスの血が空中へ散り、
そして彼女の抜き放ったナイフと打ち合った——
「喉を裂かれて動けるのか……その年齢でその技。何処で習った! それに発動体も無しに、俺の魔法抵抗を抜くなんて。おまえ、何者だ?」
「美少女は不条理なものな(んだ)——コブッ……」
「それで答えになってると思ってんのか!」
「——十分すぎる回答だと思うよ……」
チュー
チュー
チュー
チュー
——ヒュ、ガ
イーレシスンがナイフを放つが、アイスの姿はネズミの群れに飲まれて何処にも無かった。
「なんなんだ……」
カカン
後に残されていたのは、イーレシスンの投げたナイフと血の付いた槍だけであった——。
「えぐ……えぐ……」
「もう大丈夫だよ。悪い奴は捕まえたからね」
「ぅええええーーん!」
『あやし方下手?』
『うるさいね! 大方、安心したから急に来たんだろ!』
——あの後、誘拐犯の三人の内二人はネズミから解放され逃げ出そうとしたしたので、一人をイーレシスンが槍で串刺しにし。もう一人は追いかけてロープで縛ってある。
残りの一人は既に彼女に、足を串刺しにされているので諦めていた。
『——何も、ここまですることは無いんじゃ……』
祐一郎は倒れて虫の息の誘拐犯を小屋まで引き摺ってきてぼやいた。
『逃がすわけ無いだろ』
『……』
さも当然とばかりの答えに祐一郎の背筋が凍った。
『——取り敢えず、荷物は縛ってる奴に背負わせるから。その子を持ってけ』
『あ……はい。……えーと、これからどうするんスか……?』
『疲れたな……あの魔法は厄介だった——今回は助かったが。一先ずこの子を落ち着かせて……マーマンに引き渡すか。——でも、一枚岩じゃないって聞くし。引き渡す相手を見極めないとな……』
『マーマンにも悪い奴がいるってこと……スか?』
『人間に悪感情を持つマーマンもいるんだよ。この騒動で人魚の子供を利用しようとする奴が居てもおかしくない』
『考えすぎじゃないんスか。それに、マーマンをどうやって見極めるんスか?』
『……母親がいるはずだ。ジュゴン人魚を渡し場で見たろ。きっとあれがこの子の母だ。あの女をこの子に見せて反応を見ることにしようか』
祐一郎は念のため、背負子から二つの盾を外して、誘拐犯を拘束するロープの端と一緒に持った。
ロープはよく使うので荷物の上の方にあり取り出すのに苦労しなかった。
他の誘拐犯は水車小屋に放り込んでおく——。
コレで2人を拘束して人魚の子共を入れると計5人となった。
祐一郎は歩きながら縛った誘拐犯の背へ意識を向けつつ、先ほどの事を思い出していた。
それは、逃げた誘拐犯への扱いだ。
確かにこれまで自ら進んで血生臭い現場を体験してきている。だが、エルフ相手にモンスターに対するような扱いには距離を感じてしまう。
「う?」
彼は腕の中で不安そうにあたりを見回す人魚の子供を笑いかけて安心させると、曲がり角で背後のイーレシスンをちらりとうかがった——。
『(——それと。アイスだ。きっとアイスは人魚の子供を助けるために、誘拐犯に自分を囮に罠を仕掛けてたんだろうな。
奴隷を連れてたった二人で遊び歩く男女を目にしたら面白くないはずが無い訳だ。
俺を連れて歩いてたのは、誘拐犯の挑発の為……か? 運よく引っかかったけど、来なかったらどうするつもりだったんだ……?
それに、アイスの使ってた魔法(?)は何なんだ?
ネズミを操ってたのも魔法だろうし、黒い煙みたいのもそうだろうな……。
イーレシスンが早まらなけりゃ、一緒に助ければよかったじゃん!)』
祐一郎はそう思うと、早とちりしたイーレシスンが急に恨めしくなってきた。
『(そうだ……いままでいい雰囲気だったのに——邪魔しくさって! 確認くらいするだろ普通! 物騒すぎだろ! 確認もせずやってきた奴に槍ぶん投げるとか何処のアタオカさんだよ!)』
不満たらたら、未練たらたらな祐一郎を人魚の子供が不安そうに見上げる。
「……うぇ?」
『(アイスはきっと、俺たちと同じように足止め喰らってたから解決しようと動いていたんだろうな……だとしたら、行き先は同じか逆方向のどちらかのはずだ! つまり1/2でまた合えるかもしれないってことだよな。よし! その時に誤解を解こう! えーと、説得は……)』
この世界に来て6日目の祐一郎は未だ言葉を理解できないため、アイスとイーレシスンの会話の意味も分からなかった。
アイスは傍目には裕福そうな色白のエルフにしか見えない。いいところの嬢様、といった印象だろうか。
死角であり少量の血であったが濡れてよく見えず、直ぐにねずみの群れに注意を削がれたため、傷の深さをしっかり確認していなかった。そして[普通の人間なら深く裂かれて平然としている訳が無い]というバイアスにより、大した傷ではないと思い込んでいた。
——祐一郎が上の空で説得のシミュレーションをしていると、後ろから呼び止められた。
同じデザインの軽装で身を固めた4人組だ。
「——おい、待て! その人魚の子供は何だ! ダークエルフ!」
「……そこの水車小屋で囚われていたのを助けたんだ。人魚たちに返しに行くからどいてくれ」
「何処で捕らえられてると知った!」
「偶然小屋に入ったら見つけたのさ」
「偶然? ——そんな偶然ある訳ないだろ!」
「……おい、お前。コン・テナさんとこのモンだな! どうして縛られてんだ!」
男が声を上げた。
「……助けてくれ! 仲間が喉を裂かれて死んじまう!」
「——なに! うちのモンに手を掛けたのか!」
4人の男は弾かれたように一斉に槍を構える。
「……止めろ。それ以上近づいたら斬るぞ」
「な……」
誰何したこの男は誘拐犯とは無関係だが、最初は二人に
その時、睨み合う4人の男たちの後方の林からも同じ皮鎧の集団が現れる。数にして8名。その中でひときわ派手な男が人魚の子共に気付く。
「コン・テナさん!」
「ちっ!(誘拐犯の上司か?)」
「なにをしてやがる! それは!? ……その子をこちらに渡せ!」
「——ったく。次から次に……渡すわけ無いだろ! 大体、あんたんとこのが
「何だと……(
「渡すなら、この子の母親に直接渡す。そうじゃなきゃ、話にならないね!」
「そうか……さては、お前が誘拐したんだな!」
「……なに?」
「——お前から人魚を取り返そうとして、うちのモンがやられたんだろう。オイ! お前! そうだな!」
縛られてる誘拐犯の男に問いかけた。
コン・テナは自分の罪を棚に上げて、祐一郎達になすりつけるつもりなのだ!
「あ……え? なにが?「(いいから、はいって言え!)」はい! そうです! 俺がやりました!」
「ああっ!?」
「ぷっ……語るに落ちるとはこういうことを言うんだね」
囁き女将の督戦は逆効果だったようだ。
「——くそ! ……まどろっこしいのは終わりだ! テメェら、やっちまえ!」
ウオオオオオ!
総勢11名が一斉に殺到!
『(ステータスオープン)』
——ステータスウィンドウを開くことで、16倍に加速された認識速度の中。イーレシスンは身を屈めて、左右の手で続けざまにマジックバッグから取り出した槍を投げつけるのが見えた。
ド、ドス——シュ、シュピ——ガ、ドス
狙いは過たずに、吸い込まれるように前方の二人を戦闘不能にした。それを確認せず、イーレシスンは真向から突っ込んでいく。
ナイフを肩に受けた男を盾にしながら素早く踏み込み、隣の男の喉を引きながら刺突剣で付いたかと思うと、引いた分の余裕で変則的に踏み込み返す刃でその隣の男の顔を切り付け、怯んだところナイフを受けた男の右腕を突き刺したのだ。
まるで踊り流れるような動きで、一瞬の早業に七人が地へと伏せる。
『(なんだ!? ……イーレシスンとんでもねーな!?)』
——だが、イーレシスンは止まらない!
ガ——シュッ……ザク
喉を突かれた男の青銅の槍を左手で引っ張って奪うと、そのままの勢いで、やや右後方へ向かって引き、左足で槍の石突きを蹴り背後から迫っていた別の男の腹に槍を浅く突き刺した。
それと同時に右へ倒した刺突剣のナックルガードでふらつく男を突き飛ばすと、右側面から近づきつつあった男へ、いつの間にか奪い取っていたナイフを顔めがけて軽く投擲し、注意が逸れた瞬間に合わせて反動で股間へ突き立てた。
勿論、祐一郎も棒立ちではいられない。
左から突き出された槍を、左の盾で受け流し。右の槍を左足を引いて後退しながら、右の盾でコンパクトに突き出すよう受け流した後、左の槍の重心へ右の盾を叩きつけた。左の男の槍は、そのまま回転しながら遠くへと吹き飛んでいった。
右の男は再度槍を突き出すが、祐一郎は右の盾を右方向へ払いながら、男へ踏み込む。
同じように、武器の重心へ左の盾を叩きつける仕草に、男は取られまいと槍をしっかりと握り備えるが、軽く当てられた左の盾はその反動を利用して、さらに踏み込んだ祐一郎が顎を打ち抜く。脳を揺らされた男は意識を手放した。
反射神経0.01875秒弱で反応する、じゃんけんでいう常時後出し状態の彼に、常人が行動の読み合いで勝てるはずも無い。
『いいね!』
久しぶりの加速戦闘に、祐一郎はある種のゾーンへ入りつつあった——。
「このやろうぉ!」「奴隷が!}
まるで野獣のように飛び掛かると、別の男の槍を盾で止めつつ、逆の盾で視界を塞ぎ足を砕いた。
防いだ槍は盾を貫通し、祐一郎の左腕の外側を浅く切り裂いた。青銅製の槍が盾で鈍らになったせいだろう。
丸まった男の顎を肘で打ち抜き、逆の男に頭突きをお見舞いした。
うう……
いてぇよぉ……
「なんなんだ……お前らはぁ——」
コン・テナは目の前の光景に、戦意を喪失して立ち尽くしていた。
『(結局イーレシスンも魔法使わずに終わったし……俺もなにか掴みかけたけど、不完全燃焼ぎみだな)』
祐一郎は加速を終え、冷えた頭で周囲を見渡した。
——そこには苦痛に藻掻く11人が地に這っていた。
だが、だんだんと彼は恐ろしくなってきた。加速中は人が変わったかのように、動きに集中し戦闘マシーンと化していた事を自覚し始めていた。
『(本当に俺がやったのか……? 前は自分に言い聞かせるように騙し騙しってカンジだったけど……そういう生物になりきってたような……)』
彼が倒したのは四人だ。途中からイーレシスンの視線の中戦っていた。
喧嘩の経験はある。だが、何処か人の目を気にして自分を抑えていた部分もある。その
元々の粗暴さはこの世界へやってきて、進化してしまったのだろうか。この目の前の地獄のような光景に、更なる闘争を求め自衛感情すら抱けない自分に何か決定的な
『(——転移者は全員何らかの記憶が無いって……同じ奴隷だった槻山さんは言ってた——もしかして俺の失われた記憶って……)』
根拠は無い。だが、そう思い始めると、それ以外に考え至らなくなる。
——そして、時間は待ってはくれない。
——祐一郎
——祐一郎
——祐一郎!
『——!?』
『祐一郎! 行くぞ! 人魚の子をだっこしろ!』
『……ああ、——わかった』
『どうした、しっかりしろよな』
『大丈夫。ホントに』
盾で槍を真正面から受けた際に貫通した穴が、彼の欠落を表しているかのようであった。
「——ソコノオマエ! マテ! ソノコをカエセ!」
川沿いに下って行けば、目立つ人魚の子を抱えロープで縛った男二人を連れた5人組が、渡し舟で揉めていたマーマンに見つかるのは自然な流れだ。
二人組のマーマンが鉄製の槍を手に、陸へ上がってきた。
「——オマエ! 誘拐犯カ!?」
「真昼間に人魚の誘拐犯が堂々と川沿いを歩いているはずがないだろ。俺たちはこの子を返しに来たんだ。誘拐犯はコイツらだ」
「うひっ……」
イーレシスンが槍を突き付けると、誘拐犯一味の男は途端におびえ始めた。さっきの立ち回りを見ていれば無理も無いだろう。
因みに他は血まみれのまま置き去りだ。まごまごしていれば誘拐犯の仲間が集まってきかねなず、マーマンとのコンタクトを優先したのだ。
イーレシスンがいくら腕が立とうが、数で押せばひとたまりもないであろうことは、彼女が一番よくわかっていた。
喉が渇いてるだろうと、水袋を渡したのだが、人魚の子供は大人しくなった。抱えている祐一郎は既にびっしょりだ。
イーレシスンが頭をひねる場面もあったが、生物としての構造が違う以上理解しようも無いのかもしれない。
「——ゾイツが、誘拐犯ダト!? ドウイウコドダ?」
「……アヌヒコの所のヤツが、水車小屋に閉じ込めてたんだよ。それを偶然見つけて助けたんだ」
「ソレハ……タズカッダ! 礼ヲ言ウ! サァ、ゴッヂエ!」
「——あ、いや。待ってくれ。渡したいのはやまやまだが、あんたが信用できるか解らん。母親を連れてきてくれないか」
「ナンダト! オレガ信用デキナイドイウノガ! フザゲルナ! コッヂハ昨日カラ付キッ切リデ……!」
「きっとそうなんだろうが、こちらも無責任に他人に押しつけたくないんだ。……手間をかけちまうが、心配してるこの子の母親を呼んできてくれないか」
「グ……オイ」
「アア、ワダジガ呼ンデゴヨウ。ゴゴデイイノガ?」
「……どうする? おそらく取り返しに来るぞ」
「ナンダドッ!?」
「何処か川沿いで身を隠せる場所があれば時間を
「ゾレナラ、ジギノドコノ小屋ガイイダロウ」
「ジギノ小屋デイインダナ。ジャァ、行ッデグル」
「頼ンダゾ——」
川へ消えてゆくマーマンを見送りながら、川沿いの道を海に向かって進んでいく。
そもそも取り返えしに来たとしても大人しく渡してしまえば、災難が降りかかるのはイーレシスン達だけだ。
だが、保身の為とも
一行が歩くペースで1時間も歩けば海につくだろうが、マーマンの一人と共にジギと呼ばれていた人物の小屋を目指すこととなった——。
……しかし、すんなりとは行かないようである。
「——うちのが跳んだ馬鹿野郎で。面倒をおかけしました——ついては、お礼がしたいと思いまして……」
現れたのは、浜辺で顔を合わせたレーというアヌヒコの部下の男が、武装した三人引き連れて行く手を遮った。縛られている二人はうるさいので、服を破って
「……礼ダド!? ——ドウイウゴドダ!」
「「ムグー!」」
「その子をお預かりしましょう」
「マデ! 既ニコノ子ハ我々ガ取リ返シタ! ドウイウツモリダ! コッチモスグニ仲間ガヤッテクル! 我々ト戦争デモ始メルツモリナノカ、人間!」
『チ、仕方ねーな……祐一郎、子供をそのマーマンに渡せ。川に入れば手が出せねぇはずだ』
『いいんスか!?』
『いいから、早くしろ』
「ン? コレハ……」
「その子を抱えて逃げろ」
「オマエ……」
「裏切ったら殺す。行け」
「スマン……」
「逃がすな! 殺しなさい——」
『(ステータスオープン)』
同心円状に広がる加速する認識速度16倍の世界で、レーからの号令で包み込むように一斉に襲い掛かかってくる。
ドス——……ガ、ザク
イーレシスンは槍を投擲するいつものスタイルで、早速一人を沈めると。全力で前に出て意表を突き、接近したもう一人の槍をナックルガードで受け流し、左手に持った槍を突き立てた。
虚を突かれたことで、槍の射線を確保できない最後の一人は、攻撃の一手を無駄にされた。そこへ祐一郎が槍を持つ手にタックルを仕掛けると、男は槍を足元に落とした。祐一郎はそれが地面に触れる前に、芯を蹴りあげて田んぼの中へ飛ばした。
——だが。
ヒュ/ガッ
受け流す。レーの剣撃を祐一郎は体勢を崩しながらも盾でしのいだ。
「——なんで、人魚の子を
「
「反吐がでるな」
「では飲み込んでください」
——光が交差する。
決着は一瞬だった。イーレシスンは相手の意識の隙間をついて踏み込み、
レーが使用したのは叩き斬る用途のブロードソードだ。レーの軌道では根元で受けても打点さえずらせば、彼女の皮鎧を貫通し深い傷を負うことは無いと判断したのだ。
「ガフッ……。強すぎますよ。——まったく不条理だぜ、くそ。だが……吸血鬼だろうと倒せそうだ——」
容赦なく照り付ける日差しが、巻きあがる砂煙に影を落とした——。
人魚を
その中には、コン・テナやロープで縛られていた男も含まれていた。
アヌヒコには非難が集中するはずだが、力で黙らせる意味合いもあるのだろう。
しかし、今回の件で彼等の信用が大きく下がったのは間違いない。
「——な……! どうしたアイス!? 酷い怪我だな!」
「やー、失敗したみたい。ちょっと休眠することにするよー」
アイスは思い出していた。以前受けた≪
≪
しかし、即応反射で≪
「(他に中断させる手段はいくらでもあるけど、あの感覚を再現することは出来ないはずだね……)」
「アイスは得物の選定に
「いやいや、おっさん。それは聞き捨てならないぜ。ルークさんの方針を真向否定するようなモンだ」
「何故、亜人の生き血なんぞで満足せねばならぬのだ。強者は好き勝手に振る舞う権利がある!」
「おっさんよぉ……」
「……やー、あんまり調子に乗ると痛い目見るよー。何事も程々がいいんだよー。それにイキってばかりだとお腹も減るしねー。私みたいに省エネでいけばー?」
「お主のような、大した
「やー、大変だねー。それじゃあ、私はそろそろ行くよー。ばいばーい」
「——ちょっと、待て! 去る前にどんな奴にやられたのか教えろ! 我々の脅威になるやもしれん!」
「それは俺も興味があるな。ソイツ強いのか?」
「やー、ダークエルフのおばさんだよ。実力はまぁまぁ? 一対一ならフィジカルでごり押しすれば……傷は貰うかもしれないけど。7割は余裕(祐一郎のことは……まぁ。いいや)」
「たまーにいる奴だな。近づかなけりゃ大丈夫だろ。無駄なリスクを負わないに越したこっちゃないしな」
「アイス程度で7割なら……ふむ。武器は何を使っていたのだ」
「やー、レイピアかなぁ? 刺突剣は詳しくないから。よくわからない。……それから、舐めてかかる癖は直したほうがいいよー」
「ふん。余計なお世話だ。魔法はどうだ」
「やー、使ってなかったよー」
「……女の身で魔法を使わない刺突剣の使い手などまず居ないだろう。ダークエルフということはアルリカ出身だな? 何処の地方か解るか? ハイエルフのトハナの弟子の可能性もある。確かヤツはアルリカ南西部を中心に活動していると聞いている」
「やー、そこまでは見てないよ。いきなり攻撃されたから、余裕も無かったしねー」
「ハイエルフかー。長く生きてる分、魔法のバリエーションも多いんだろうなぁ」
「やー、長命種はヴァンパイアを見たら形振り構わず問答無用で殺しに来るからねー。ヴァンパイア対策の魔法を伝授しててもおかしくないねー」
「長命種とやり合ったことあんのか? アイスは毎度、そんな情報どっから仕入れてくるんだ?」
「やー、美少女には謎がつきものなのさー」
「……」
「……」
「……もう必要な物は十分手に入ったから、俺は戻るからな……別のが派手にやってるから巻き込まれかねねぇ。お前のことは別にチクッたりしねーが……程々にしろよ」
「……ふん……小物共め——。我も忙しい。コレで失礼するとしよう」
「やー、ばいばーい」
装備:服 1kg
装備:ズボン 1kg
装備:インナー 0.5kg
装備:靴下
装備:靴 0.5kg
装備:円形盾 4kg
装備:円形盾 3.5kg
リュック20L 10kg{
水袋 4L 0.5kg{
水3kg
}
小麻袋 1L{
干し肉0.3kg
}
小麻袋 1L{
干団子0.4kg
干団子0.5kg
}
陶器の瓶0.75L 1kg{
}
小型ナイフ0.5kg
包帯0.5kg
小袋 0.2L{
布切れ{呪文{≪
木の小物入{
裁縫道具
}
}
小袋 0.2L{
火口 0.04kg
火打石 0.2kg
}
布
}
Total:26.44kg
時系列順設定集 0000〜0013+0012蛇足へ