刹那の旅路   作:靴下9153

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 祐一郎 は異世界で亜人に奴隷として売られてしまう。
 同郷の奴隷達から、人間だけの理想郷の噂を聞かされるが、拳銃ダークエルフの女イーレシスンに買われた。
 そして因縁の青髪と赤スカーフの二人と思いがけず遭遇。イーレシスンの魔法でお互い大したけがもなく事なきを得るが、ほとぼりが冷めるまで国を離れることに。
 
 0012〜0013の一週間の出来事を細かく描写します。地の文中心です。
 
 一日目:2つの村を横切る。第二の太陽は一時間周期。
 一部他人のステータスが覗けるようになった事に気づく。
 
 二日目:廃村で幽霊に襲われる。
 村落が点在する一帯で足止めされる。
 
 三日目:祐一郎はアイスという少女と出会う。
 足止の原因を取り除き、アトーエにあるダンジョンを目指し船を乗り継いで、雨の降り出した夕刻の港へ辿り着く。
 そこで煙を吐く奇妙な老人に出会った。
 
 其の十一
 
 イーレシスンの口調は、onepieceの女海賊をイメージしてます。


0012_10 追加分/一週間に起こった出来事 その十一 おじいハウスで話し込む

 ——(マドラ)カニ水滴弾(スイテキハジ)五月雨(サミダレ)ト。

 

 

 水平深(ミズヒラフカ)()ビシ(オモムキ)風合(フウアイ)イニ。

 

 

 雨垂(アマダ)穿(ウガ)水撥(ミズハ)ネノ。

 

 

 モリアオガ工ル ト水面(ミナモ)ニ消エユク。

 

 

 

 ダポ。ダポ。ダポ——

 

 

 

 ——舗装(ほそう)のされていない赤茶けた()き出しの地肌には水溜まりが散在しており、木製の側溝はジャバジャバと雨の後始末に(いそが)しい。

 

 草で編んだだけの靴に泥が入り込んできて気持ち悪く、祐一郎は水たまりを意識して歩いていた。

 

 顔を上げると赤と青の上下二つに分かれた積乱雲が彼を見下ろしている。

 

 既に辺りは薄暗くなっていて小一時間もしないうちに完全に暗くなってしまうのだろう。

 

 煙突に隠れるように気の早いピンク色の一等星が顔を(のぞ)かせていた。

 

 エキセントリックな色は冥王星くらいなものだろうが、確認する手段を持たず異世界なので猶更(なおさら)である。

 

 家の土台代わりになっている縞模様の岩があったので。雨だれで穿(うが)たれた穴が手を置くのに丁度良く支えにして足の砂を払う。

 

 立てかけてあった板には苔が生えていて、木目上で毛髪豊かな人の顔と目が合った。

 

 

『何してる祐一郎。早く来い』

『——あーはいはい……』

 

 

 家の表に回り込むと褐色のエルフとも目が合った。

 

 家の前の男女二人組と、褐色のエルフを連れたエルフが話し込んでいるところに、祐一郎達を連れた老人がそろそろと歩み寄っていく。

 

 

「だれじゃ?」

「——おじい様。キ・ロガよ。(おぼ)えてる?」

「ご無沙汰(ぶさた)しております。チン・シキ先生」

「なんと——お主か。キ・ロアはどうしておる」

「3年前に見罷(みまか)りまして……」

 

「む……そうか。残念じゃのぅ——後ろの御仁は?」

「初めまして。私、タリマヌと申します。

 見ての通りのハーフダークエルフですが、彼とはアトーエで知り合いまして。

 今回所用で来る途中、オタで見かけたので声をかけた次第で。

 お噂は()ねがね(うかが)っております」

「わしを知っておると?」

「イーノエススのフォージマンサーの最長老と(うかが)っております」

 

「む……まぁ、そろそろ暗くなってきたし、家に入って足でも洗ってゆけ——」

 

 

 ◆

 

 

「——それで、その人たちは誰なんですの?」

「宿に困ってるようなので泊めてやることにした」

 

「アルリカの方ですか」

「イーレシスンだ。

 こっちの奴隷は祐一郎だ。

 アトーエのダンジョンへ行くつもりだ」

 

 目的地アトーエはこの地から北西へ直線距離で1000kmだが、怪物蔓延る山脈が遮っており北から回り込まねばならない。

 

「ほう! ダンジョンですか」

 

 ハーフダークエルフのタリマヌはよく通る特徴的な声音で興味深げに眼をパチクリとさせた。

 オタやアトーエではダンジョンは資源として管理されており許可が必要である。

 

 一般人からすれば謎のベールに包まれた神秘的な場所となっている。

 

「へぇ……では、部屋を用意しておきます」

「ハハ……(相変わらず鍛冶以外には興味なしか)」

「俺も手伝おう(妹と俺は一心同体)」

 

 男女の二人組は興味も無さそうにさっさと退室していってしまった。

 

「——キ・ロガよ、お主らは宿はどうしておる」

「押さえてありますから。お構いなく」

「そうか、近頃は旧オストレーからも多いようじゃし混んでおろう」

「商人も目立ちますが、オタの療治院を訪ねる旅行客も多いようでした」

 

 オタ中央には有名な療治院があり、魔法による病気の治療を目的としてオタと行き来する人々が絶えない。

 また、この巨大な島に()いて一二を争う進んだ都市でもあり様々な目的を持った人々がこの地を通過してゆく。

 

「(——途中通った幽霊の出た開拓村の事は黙っておこう……往来の多い街道を避けたからだが……理由を聞かれれば追われてることを誤魔化さなければならなくなるな。まぁ、言う必要は無いだろう)」

 

「——それで、アトーエで暮らしておると聞いたのじゃが……」

「フォージマンサーは(あきら)めて、アトーエ王家の庇護(ひご)のもと鍛冶師(かじし)として(ろく)()んでおります」

「それは運がよかったのう」

「フォージマンサーの才能は無かったのですが、おかげさまで鍛冶師(かじし)として取り立てて頂けました」

「ふむ。何よりじゃのう」

「オストレーが滅びて魔物の圧迫がイーノエススを(おびや)かしていると。方々で良くない(うわさ)を耳にします」

(しか)り」

「旅の途中で金属が高騰(こうとう)している様子も見てきました。

 恐らく戦争を始めるつもりなのでしょう。

 オタと事を構える場合、イーノエススの玄関口であるこの地は真っ先に危機に(さら)されます。

 アトーエはフォージマンサーを求めています。

 好待遇で迎えてくれます。

 いかがでしょうか」

「——まぁ、急くな。話は分かったが性急すぎるわい」

「あ……! これは……失礼しました——!」

鍛冶(かじ)を放り出して来て良かったのか?」

「無理を言って(ひま)を出してもらいました……」

「大方、フォージマンサーを連れ帰る事を引き換えにしたんじゃろう」

「そ、それは……」

「連れ帰れなかったらどうなるんじゃ」

「あ、いえ。ご心配無く。大丈夫です。……見習いに落とされる位で……」

「何故そこまで急ぐんじゃ」

「それはっ……! ——オストレーが荒廃して数年たちますが、難民はアトーエにも押し寄せてきています。

 破滅の未来しかない(てい)のいい開拓村に押しやって……それでもアトーエでは手に余る大量の難民がやってきています」

「イーノエススの北部でも似たようなもんと聞くのう」

「この地も同様に危機に(さら)されているはずだと思ったのです。

 そして、実際に来てみて確信しました。

 オストレーから遠いイーノエススの最奥でもこの惨状(さんじょう)ですから」

「む……」

「やはりお心当たりがあるんですね……この地はアトーエより多くの壁で守られていますが。

 亜人の襲撃やアンデッドの跋扈(ばっこ)を聞かない日は無いと(うかが)いました。

 オストレーにいた頃でもここまで酷くはありませんでした……」

「程度の話となると、なんとも言えんがのぅ……」

「このままでは脱出すらままならなくなるかもしれません……どうか——」

「この周辺では鍛冶師が足りなくなってきておるから、ワシらが一斉に引き上げればさらに荒廃(こうはい)が進むじゃろう。

 今まで世話になってきたこの土地に対して、それは不義理というものじゃ」

御尤(ごもっと)もです。

 しかし先生——アトーエのフォージマンサーの棟梁(とうりょう)は≪断熱結界≫の魔法を運用した、生産施設を複数稼働(かどう)させていました。

 かの魔法は我々の魔法体系には無い術です。

 同様に我々の体系にのみ伝えられる魔法≪白炎武装≫もありますが、アトーエに流れたフォージマンサーの間では(すた)れてしまった魔法です。

 どうか来ていただけませんか」

「……とはいえ若い者たちまで老人の道行に巻き込んでしまうのも心苦しいのう——レイネ。あの子は天性の才を持っておる。

 幾つかの魔法は(すで)にワシの技術を凌駕(りょうが)しておる。

 お主はあの子の元許嫁(もといいなずけ)じゃ……レイネが良いとゆうなら連れて行くがええじゃろう」

「——ありがとうございます。」

 

 

 ——そのあと昔話に花を咲かせるうちに部屋の準備を終えた二人が部屋へ戻ってきた。

 

 

「カユ達に準備させてます。直に終わりますよ」

「ありがとう。わざわざすまない——」

 

「いいえ。——ロガ。本当に久しぶりね」

「レイネも元気そうで何よりだ——」

 

 

 ——先ほどのやり取りを伝えるキ・ロガ。

 

 

「——どうだろうか……」

「急に——そんな、事を言われても。分からないわ……。」

「当然直ぐに、という訳じゃないんだ。待てというなら何日でも待つさ。気楽に——とはいかないが、考えてほしいんだ。」

 

 腕を組んで(ほお)に手をやるレイネは首を(かたむ)け。キ・ロガは恥ずかし気に首の後ろを()でながら話す。

 

「それじゃあ、もう戻るよ。また明日改めて来ます。先生もお会い出来て良かったです——」

 

 キ・ロガとタリマヌは帰っていった。

 

 

 

「——世話になるし、俺も何か協力できればいいんだが」

「なに、構わん。? ……それはレイピアか? どれ、見せてみい」

「ああ」

「預からせて頂く」

 

 腰に()いたレイピアをチン・シキへ手渡した。

 

「フォージマンサーなんて聞いたこと無いな。鍛冶師……でいいんだよな」

鍛冶魔法師(フォージマンサー)という、特殊な鍛冶師じゃ。炭の替わりに魔法で加熱するのじゃよ」

「へぇ、珍しい魔法もあるもんだな。聞いたことも無いよ」

「そうじゃろうな。(まき)の手に入りにくいオストレーで発達した魔法じゃ。滅びたことで各地に散ったんじゃよ。アトーエやオタでは囲われて表に出ないと聞くのぅ」

 

「おじい様。薬です。飲んでください」

「む。レイネ。またか……もはや無駄じゃと言うておろうに」

 

「病気か」

鍛冶魔法師(フォージマンサー)に付き物の職業病のようなものじゃ。肺火腫(パイロモナリ・エデマ)という不治の病じゃよ。この半ば(めし)いた目と同じ鍛冶魔法師(フォージマンサー)の業よ」

 チン・シキ老人の右目は白濁(はくだく)しており焦点(しょうてん)が合っていない。左目にもその兆候(ちょうこう)(うかが)えた。

「——難儀(なんぎ)だな」

「もう十分生きたわい。満足じゃ」

 

「困ります。まだ全ての技を受け()いでません。」

「……十分じゃと思うがのぅ、ここからは自己研鑽(じこけんさん)で伸ばす領域じゃろうに——」

「ダメです。完全じゃありません。()れがあると思います。」

「困った娘じゃ……」

「——それはレイピアですか……大分傷んでるようですね。手入れはされているようですが。刃こぼれもあります。見せてください」

「たしかレイピアを触るのは初めてじゃったか?」

 

 レイピアを手渡す。

 

「——なるほど。あなたは中々の使い手のようですね」

「分かるのか」

「ええ。刀身に負担のかからないよう急所を狙って……!? 刃こぼれを避けるため剣の腹で受け流すか(つば)で受けることが多い……皮で手入れするのは習慣なのかしら。——今日午前中に手強い相手と戦った……?」

「驚いたな。——まったくその通りだよ」

 

 イーレシスンは足の位置を変えながら腕を組んで肩をすくめてみせた。

 

 それに対してレイネは視線を彷徨(さまよ)わせる。

 

 刀身に負担のかからないよう急所を狙った、ということはつまり。人の命より剣への負担軽減を優先した、ということになる。

 負担軽減を考える余裕があったのだ。

 可能であるのに無力化する選択肢を()えて選ばなかったこととも取れる。

 

 武具に精通すれば使用履歴をある程度読み取れてしまう。

 

 彼女は武器からイーレシスンの冷徹(れいてつ)さを感じ取り、気後れから来る恐怖に似た感情を覚えたのである。




所持品

 装備:服 1kg
 装備:ズボン 1kg
 装備:インナー 0.5kg
 装備:靴下
 装備:靴 0.5kg
 装備:円形盾 4kg
 装備:円形盾 3.5kg
 リュック20L 10kg{
  水袋 4L 0.5kg{
   水4kg
  }
  水袋 4L 0.5kg{
   水4kg
  }
  小麻袋 1L{
   干し肉0.3kg
  }
  小麻袋 1L{
   干団子0.4kg
   干団子0.5kg
  }
  陶器の瓶0.75L 1kg{
  }
  小型ナイフ0.5kg
  包帯0.5kg
  小袋 0.2L{
   布切れ{呪文{≪発火(イニシャライズフレイム)≫}}
   木の小物入{
    裁縫道具
   }
  }
  小袋 0.2L{
   火口 0.04kg
   火打石 0.2kg
  }
  靴 0.5kg
 }
 
 Total:32.44kg
時系列順設定集 0000〜0013+0012蛇足へ
時系列順設定集 0012_00〜0012_09へ
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