刹那の旅路   作:靴下9153

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 祐一郎 は異世界で亜人に奴隷として売られてしまう。
 同郷の奴隷達から、人間だけの理想郷の噂を聞かされるが、拳銃ダークエルフの女イーレシスンに買われた。
 そして因縁の青髪と赤スカーフの二人と思いがけず遭遇。イーレシスンの魔法でお互い大したけがもなく事なきを得るが、ほとぼりが冷めるまで国を離れることに。
 
 0012〜0013の一週間の出来事を細かく描写します。地の文中心です。
 
 一日目:2つの村を横切る。第二の太陽は一時間周期。
 一部他人のステータスが覗けるようになった事に気づく。
 
 二日目:廃村で幽霊に襲われる。
 村落が点在する一帯で足止めされる。
 
 三日目:祐一郎はアイスという少女と出会う。
 足止の原因を取り除き、アトーエにあるダンジョンを目指し船を乗り継いで、雨の降り出した夕刻の港へ辿り着く。
 魔法鍛冶師の老人の家に泊めてもらうことになった。
 
 其の十二
 
 イーレシスンの口調は、onepieceの女海賊をイメージしてます。


0012_11 追加分/一週間に起こった出来事 その十二 祐一郎ざまぁする

 

 ——パチ……

 

 ——パチ……

 

 

 レイネに軽く研いでもらう為剣を預けた跡、何故かチン・シキ老人とイーレシスンは囲碁のようなゲームを始めたのである。

 

「——ふむ。初心者ではないようじゃが……」

「まぁ、ルールだけ知ってるって感じだけどな」

 

 

 ——パチ……

 

 ——パチ……

 

 

 盤のサイズは囲碁より小さい。

 

 実は祐一郎。多少囲碁の経験があった。とはいえ定石を幾つか暗記した程度なのだが。

 

 

 ——パチ……

 

 ——パチ……

 

 

 イーレシスンが考えて指すのだが、チン・シキ老人は駒を弄びつつ即応で返してくる。

 技術の差が如実に表れていた。

 

『(コレ……もう。勝負は見えたようなモンじゃね?)』

 

 暇を持て余し始めた祐一郎は尻を掻いたりと、気が散りだす。

 

 

 ——パチ……

 

 ——パチ……

 

 

 盤へ石を置くたび細かく震える。

 (ひま)な祐一郎はステータス加速で観察してみることにした。

 

『(ステータスオープン)』

 

 祐一郎の認識速度が16倍に加速される——

 

 

 ジ……

 

 

 灯火の明かりが油面で揺らめき、部屋の影が震えた。

 

 加速しても影の見え方は変わらないんだな、と妙なところで感心しつつ盤上に目をやる。

 

 石は盤に置かれて細かく揺れた。加速したことでまるで起き上がりこぼしのようにゆっくりと反復運動を繰り返しているように見えている。

 質量が増したような印象である。

 

『(あー、イーレシスン。そこじゃないよ)』

 

 

 ——パチ……

 

 ——パチ……

 

 

 負ける形を避けるように置いていくのが基本だが、イーレシスンは地雷を見事に踏み抜いていた。

 

 とはいえ祐一郎もルールを理解している訳ではないので、勝手な憶測(おくそく)にすぎないのだが……

 

『(アレで定石を調べられたらなぁ……ええと、チャット? じゃない……チャット、チャット? 一度間違ったものを思い浮かべると頭から離れないな……チャットパネル。違う。何だっけ……チャットウィンドウ——)』

 

 

 サ——

 

 

『——はぁ!?』

 

 祐一郎は思いがけない事態にあんぐりと口を開け、思わず声を上げてしまった。

 

『な……なんだ!』

「なにごとじゃ」

 

 

 その様子に二人は一斉に振り返る。

 

 ——なんと、ステータスウィンドウの他に。新たなウィンドウが開いたのである。

 

 そして、そのウィンドウにはこう書かれていた。

 

 

 

 ->はぁ!?

 ->な……なんだ!

 ->なにごとじゃ

 

 

 

『(——話した言葉が翻訳されてそのまま表示されるのか!?)』

 

『どうした祐一郎……ん? もしかして、このゲーム分かるのか?』

『あ、え。まぁ……多少?』

『——もしかして、日本に同じゲームがあるのか?』

 

 イーレシスンは転生者であるが所々記憶が欠落している。

 

「なんじゃ、いったいどうしたのじゃ」

「コイツ……祐一郎って言うんだが、このゲームが分かるって」

「ほう、嘘じゃないな?」

 

 イーレシスンとチン・シキの会話は異世界の言語だが、祐一郎にはチャットウィンドウを通して理解できていた。

 ヒアリングは出来ずとも、二人のリアクションからチャットウィンドウの内容は妥当なように見える。

 

「どうじゃ、()の者にやらせてみんか?」

 

 背伸びするように体全体で祐一郎へ目を向けた。同じ姿勢であったためだろう。

 

『祐一郎——このゲーム。やってみるか?』

 

 イーレシスンは彼に顔だけ向けて首を傾げて問いかけた。

 

『あんまり経験がある訳じゃないけど……』

 

 この流れで断るのも不自然なので承諾(しょうだく)した——というか出来ないのであるが。

 

 祐一郎は首の後ろを掻きながら、ザラザラする座布団のようなものの上に胡坐(あぐら)をかくのであった。

 

 

 

 

 果たして対局は始まった——。

 

 中央に4つの石を配置して始める。

 祐一郎が先手である。

 

『(いやいや、ムリだから! 

 htpps://nihonkiin.com/top/

 ——出る訳無い!

 htpps://shousetu.com/

 ——出ない!

 Call htpps://shousetu.com/

 コマンドプロンプト的な奴かと思ったけど……入力は出来るみたいだ。文法が違うのか?)』

 

『どした、祐一郎。止まってるぞー』

 

 目の前で掌をひらひらさせるイーレシスン。

 

「急かすでない」

「わかってるよ。ボソ(コイツ、時々ボーとして変になるんだよな……)」

 

 

 ->急かすでない

 ->わかってるよ。コイツ、時々ボーとして変になるんだよな……

 

 

『(! ——小声も拾うのかよ!? ていうか五月蠅(うるせ)ぇわ!)』

 

 

 イーレシスンの聞き取れなかった小声まで表示される仕様に驚いた。

 

 ともかくも、対極に集中する事にした。

 

『(真ん中の石が曲者だな……ぜってぇいらねぇだろ。コレ。オセロかよ……)』

 

 

 

 

 その後、盤面は決定的に傾き投了を促されたのであった。

 

「——どっこい。どっこい。じゃのう」

『だろうよ』

 

 

『——! ちょっとまて祐一郎。"だろうよ"ってどういう事だ。お前1か月も経って無いだろ? なんで言葉が理解できてる』

『(ヤベ! イーレシスンにステータスウィンドウの事がばれるのはヤバイ! いざって時の切り札になるかもしれないから、ばれたくない!)』

 

『なんとなく……それっぽく返事しただけだよ。ダメだろうなって、自分でも思ったからさ』

『……』

 

 祐一郎の目がせわしなく動き回る。

 

『(あやしんでるナー……ていうか、何を怪しんでるんだ? 短時間で言葉を理解できる何かしらの手段や能力を持ってるって、怪しんでるのか? スキルとかがある世界なのか? それともそういう魔法やアイテムがあるのか?)』

 

 そして自覚がない。

 

「どうした?」

「いや、何でもない」

 

『……祐一郎。夕方に≪発火(イニシャライズフレイム)≫を使わないという約束を破ったな?』

『……う(そこまで強く言われなかったから、そんな重大に考えてなかったんだよな……)』

『≪発火(イニシャライズフレイム)≫のメモを渡せ。お前に教えるには危険すぎるとわかった』

『——な!? そんな!』

『早く渡せ』

『く……(横暴だ! パワハラだ!)』

 

 結局祐一郎は呪文の書かれたメモを渋々イーレシスンへ渡した。

 

 

 ——しかし、祐一郎もタダで済ますつもりは無い。

 

『(チャットウィンドウって事は過去ログがあるはずだ! バッファがどの程度かわかんねぇけど……)』

 

 祐一郎は部屋の隅でいじける振りをしながらチャットウィンドウのスクロールを試みた。

 

 

 ->遍在せし火の精霊よ。停滞を打ち破りし者よ。小さき種火の王よ。永遠の死より出でて燃えがらより立ち上がりし勝利者よ。我が前の枯れ枝に集いたまえ。拡散し散逸せし炎なる(みこと)の遡行、その偉大なる摂理を再び表したまえ。灯したまえ≪発火(イニシャライズフレイム)≫ 

 

 

『(やっぱり、スクロールできる! ……あった! 呪文のログだ! やったぜ! ざまぁ見ろイーレシスン!)』

 

 祐一郎は内心ほくそ笑む。

 

 念のため確認するが、ログは第1日目まで辿ることが出来た。

 現状ではバッファのサイズは不明ということである。

 意味の無いメッセージも多く使用データ量はむやみに増えそうだ。

 探してみたが、検索機能を見つけることは出来なかった。

 

『(——あ、でも。メモを残す方法が無い……くそ、何か方法は……布に炭で書き写すか? だめだ()れて読めなくなりそうだし確実じゃないし——)』

 

 祐一郎はメモを残す方法が思いつかず爪を噛んだ。

 

『(そうだ、チャットウィンドウがあるなら、ノートパッドみたいのもあるんじゃないのか? 来い! ノートパッド! メモ帳! リッチテキスト! ワード! ……だめだ)』

 

『(——なにかあるはずだ。ステータスウィンドウ……web小説の仕様だと、詳細情報を表示させられるのもあったよな。アイテムに情報を書き込めるヤツもあった。アイテムは表示させられないのか? そうだ、スキルは?)』

 

『(というか、まてまてまて! チャットウィンドウはコンソール形式だから、バッファが流されないうちに最新位置にコピペすりゃいいじゃん! 俺天才かよ! よし! 早速……アレ? コピペできない……ぐぬぬ……いちいちログをスクロールして、入力しなきゃならないんかい!)』

 

 その後祐一郎は、ログと最新位置を往復を始めたところ、またしてもイーレシスンの邪魔が入る。

 

『そろそろ寝るか』

「イーレシスンさんは私と同じ部屋で。奴隷は弟子たちの大部屋に寝具を用意してます——」

 

 

 ->遍在せし火の精霊よ

 ->停滞を打ち破りし者よ

 ->小さき種火の王よ

 ->永遠の死より出でて

 ->そろそろ寝るか

 ->イーレシスンさんは私と同じ部屋で。奴隷は弟子たちの大部屋に寝具を用意してます

 

 

 入力中のチャットウィンドウに強制入力されたのであった。

 

『(うぎゃー! 永遠の死より出でて、そろそろ寝るか。って何だよ!? もりもり死より(いで)たと思ったら戻ってっちゃったよ!)』

 

「? なんでしょか」

「ほっとけ」

 

 転げまわる祐一郎に奇異の目を向けたのであった。

 

 

 

 

 ——その後、大部屋に移りログの引っ越し作業を再開したのだが、弟子たちの囁き声まで拾ってしまうため編集作業は遅々として進まなかった。

 

『(弟子うるせー! ていうか奴隷、奴隷うるせぇ!)』

 

 結局眠静まってから再開した。

 

 

 ——書き込めるのは一行のみなので、ログを確認するためにスクロールすると、とぎれとぎれになってしまう。

 

 そこで文章の一部を細切れにしてパッチワーク状に(つな)ぎ合わせてゆくのである。

 

 例えば原文が[ABCD]である場合。

 

 ->[A]

 ->[B]

 ->[C]

 ->[D]

 

 と最新部分に書き写し、()ぐ上に見えている分断部分を更に写してゆく。

 

 ->[AB]

 ->[CD]

 

 という様に(まと)める。そして、最終的に復元し。

 

 ->[ABCD]

 

 という手順となる。

 

 元の文章はそこそこに長いが、指数関数の逆関数なので手間は大して変わらない。

 しかし操作に慣れておらず、度々間違えてやり直した。

 

 その結果……祐一郎は疲れ果てて寝不足となったのである。

 

『(へ……やってやったぜ! ざまぁ!)』




所持品

 装備:服 1kg
 装備:ズボン 1kg
 装備:インナー 0.5kg
 装備:靴下
 装備:靴 0.5kg
 装備:円形盾 4kg
 装備:円形盾 3.5kg
 リュック20L 10kg{
  水袋 4L 0.5kg{
   水4kg
  }
  水袋 4L 0.5kg{
   水4kg
  }
  小麻袋 1L{
   干し肉0.3kg
  }
  小麻袋 1L{
   干団子0.4kg
   干団子0.5kg
  }
  陶器の瓶0.75L 1kg{
  }
  小型ナイフ0.5kg
  包帯0.5kg
  小袋 0.2L{
   木の小物入{
    裁縫道具
   }
  }
  小袋 0.2L{
   火口 0.04kg
   火打石 0.2kg
  }
  靴 0.5kg
 }
 
 Total:32.44kg
時系列順設定集 0000〜0013+0012蛇足へ
時系列順設定集 0012_00〜0012_09へ
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