刹那の旅路   作:靴下9153

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 祐一郎 は異世界で亜人に奴隷として売られてしまう。
 同郷の奴隷達から、人間だけの理想郷の噂を聞かされるが、拳銃ダークエルフの女イーレシスンに買われた。
 そして因縁の青髪と赤スカーフの二人と思いがけず遭遇。イーレシスンの魔法でお互い大したけがもなく事なきを得るが、ほとぼりが冷めるまで国を離れることに。
 
 0012〜0013のの出来事を細かく描写します。
 
 一日目:2つの村を横切る。第二の太陽は一時間周期。
 一部他人のステータスが覗けるようになった事に気づく。
 
 二日目:廃村で幽霊に襲われる。
 村落が点在する一帯で足止めされる。
 
 三日目:祐一郎はアイスという少女と出会う。
 ガラの悪い男に絡まれて少し足止めを喰らうが、アトーエにあるダンジョンを目指し船を乗り継いで港へ辿り着く。
 魔法鍛冶師の老人の家に泊めてもらうことになった。
 異世界言語を翻訳できるチャットウィンドウのログから呪文メモの内容を参照できるようになる。
 市場でポーションを買い地図を描いて見せてもらった。そしてスリにキレたイーレシスンはついでに祐一郎も半殺しにしてレイネに怒られる。
 
 この章の登場人物{
  チン・チキ:鍛冶魔法師(フォージマンサー)の顔役
  レイネ:鍛冶魔法師(フォージマンサー)。チン・チキの孫。女性
  シスド:レイネの兄
  キ・ロガ:レイネの幼馴染で、独断でアトーエからリクルートにやってきた
  タリマヌ:キ・ロガの旅仲間でダークエルフ
  火傷の仮面の男:チンピラ
 }
 
 其の十五
 
 イーレシスンの口調は、onepieceの女海賊をイメージしてます。


0012_14 追加分/一週間に起こった出来事 その十五 ナゾな襲撃

 母屋に案内されてきたキ・ロガとタリマヌと、祐一郎達は入れ替わりに出発する事となった。北上し川沿いに遡上し西へ。そのあと湖に沿ってまた北上し目的地へ向かうのである。

 

 あのあと何度か回復を受けてどうにか動けるようになった祐一郎を連れてイーレシスンは玄関前で振り返った。そして何でもないような顔でしれっと礼を言ってのけた。

 

「それじゃあ、世話になった」

 

 一瞬目をしばたたかせたレイネであったが、チン・シキガ世話になった礼を返すと彼女らを見送ったのであった。

 

 

 ——太陽は真上に登り庭の樹木が日陰を作っている。病み上がりでまた日差しの中を重い荷物を背負って歩くのかと思うと、祐一郎は酷く憂鬱(ゆううつ)な気分になるのである。

 

 門を出ると入れ替わりに、キ・ロガとタリマヌが中へ(いざな)われて入っていった。

 

 

 互いに横目でちらちらと、うかがいながらすれ違う——。

 

 

 ……祐一郎はなんとなく嫌な感じがして、後ろを見ると玄関から入って行く二人の後ろ姿が見えた。もちろんおかしなところなど何もなく、気のせいだろうと思うことにした。

 

 最後に一瞬レイネと目が合ったが。もう会うことも無いだと思うと残念な気がした。

 それと同時にこれからもイーレシスンに引き摺りまわされるのだと、なんだか気分が沈んだ。

 だがここにいても始まらないので、イーレシスンを追いかけて門を潜ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 カーン——カーン——

 

 

 工房では朝も明けきらぬうちから槌音(つちおと)が響いていた。祐一郎やレイネ達が朝食を共にしている間も弟子たちの作業は続いていたのである。

 

 工房の周りでは同心円状に五色の帯が繁茂(はんも)し独特な景観が形作られている。

 2色の土の色とその間にある雑草、それに2種類の苔のコントラストでそのように見えているのだ。

 この奇観は鍛冶魔法で維持される炉に見られるこの土地を含む地域独特な風景で、鍛冶魔法師(フォージマンサー)の間では良い炉の(あかし)とされているのである。

 継続的に工房から出る熱と魔力がそういった見た目を作る。

 

 

 レイネの朝の日課は他の高弟子たちとともに炉の温度を魔法で上げる事である。

 夜のうちに冷えた炉を温めなおし、減った魔力を(たま)さかの休憩で補っている。

 

 もっともそんなことイーレシスンは興味もないし知る由も無いのであるが、レイネ達も()えて語るようなことでもないので話題にあがることは無かった。

 

 

 さて。祐一郎達が去ったあとキ・ロガはレイネと言葉を交わし、熱気の(こも)る工房へ移った。

 互いの技術を披露(ひろう)しあう流れになったのである。

 

 かつての同門であり。チン・シキの元、槌を振るい許嫁(いいなずけ)として互いに憎からず認識していた。

 

 年月を経て変わったこと。今までの出来事を交わす中、鍛冶の技術を確認しあうのは自然な成り行きであろう。

 

 

 キ・ロガが鍛冶の技術を見せると、弟子たちの間にはあきらめにも似た雰囲気が漂い始めた。

 工房のお嬢様であるレイネを射止めれば、次期親方になることが出来る。

 

 しかし。元とはいえ許嫁(いいなずけ)でもあるキ・ロガの技術の高さに付け入るスキは無く、野心の低い高弟子は己の未熟さを痛感したのである。

 

 とはいえ、そんな殊勝(しゅしょう)な弟子ばかりではない。

 野心に(あふ)れた次期親方とも目される弟子も当然複数存在していた。

 そして高弟子はなにも男だけではないのだ。

 

 

「……リンは何処にいったんだ?」

「……さっきまで、そこにいたぞ」

「……人が居れば熱も()るから。体を壊したとか?」

 

 ライバル同士の足の引っ張り合いも頻繁(ひんぱん)に起こり、男尊女卑の傾向は恰好(かっこう)の攻撃材料でもある。

 

「……だらしないな。

 やはり鍛冶は女には勤まらんな」

「……ロン兄弟子もいないぞ」

 

 勿論、軽率な発言も攻撃材料となるのであるが。

 

「……。」

 

 

 ——そんなときだ。

 唐突に昼間の気怠い雰囲気を引き裂くような悲鳴が母屋から響き渡った!

 

「キャァァァァ……!」

 

 

「な……なんなの!?」

 

 レイネを始め工房内に緊張がはしる。

 

 

 ドン——バタン

 

 

 ……母屋からは騒然とした気配が伝わってきていた。

 聞き耳を立てる緊張の漂う沈黙の中で顔を見合わせるが、レイネがすぐさま指示をだす。

 

「兄さん! カイ! ロセ! ロガ! それからタム、ゴンも。一緒に来て!

 ライ! ロメイは武器庫に向かって!」

 

 何者かの襲撃と仮定して武器を取りに向かわせたのだ。

 レイネとしては全員で駆けつけたかったが、行き渡るほどの武器はこの場には無かった。

 そのため卸す前の武器を取りに向かわせたのである。

 

 町中とはいえ、オストレーが滅びて以来ここイーノエススではモンスターが人を襲う事件は日に一度は必ず起こるほどだ。

 

 そのため身近に武器を置いて生活することが不文律となっていた。

 そして主に高弟子は工房内にも武器を持ち込んでいる。

 

 

 

 

 ライとロメイは武器庫の扉の前へ来ていた。

 卸す前の武器をまとめて置いておく蔵である。

 しかし——

 

「鍵が壊されてる!?」

 

 扉は変形して開かなくなっていた。

 

「なんで……」

「あ、おい。なんだあんた……え——ちょ、まて! ぐわ——!」

 

 

 

 

 ——レイネ達が母屋の裏口に入ると、まだ子供の弟子が倒れていたので慌てて駆け寄った。

 

「カユ! しっかりして! 大丈夫まだ息はあるわね——≪小治癒(キュアウーンズ)≫」

 

 魔法を受けるとカユは呼吸をやわらげ落ち着いた様子になった。コレで死ぬことは無いだろう。

 間に合ってよかったと胸をなでおろすレイネであったが、未だ賊は邸内にいるのである。

 そして彼女の祖父であり工房主であるチン・シキも——

 

「タム! カユを工房へ連れて行って!」

 

 タムにカユを預けると、レイネは焦りを押し殺して慎重に奥へと進んでいった。

 

 

「お嬢! あそこにも!」

 

 またしても倒れているのを見つけ全員で警戒しながら近寄っていく。

 

「衛兵のゴザだ。

 これは、もうダメだな……」

「——あっちに相棒のサンスも……!」

「く……なんなの——」

「おい。アレ、リンじゃ……」

 

 高弟子のカイが指さした先には、果たして血濡れの女高弟子であるリンがこちらへふらつきながら近づいて来ていた。

 髪を振り乱しその様子は(さなが)ら幽霊のようである。

 

 倒れ込むリンをレイネは慌てて支える。

 

「リン! (これは——魔法でも手遅れね……)何があったの!」

「ゴフッ……こんなはずじゃ……あなたさえ居なければ。

 ロンとこの工房を私の物に——」

 

 リンはそれだけ言って事切れたのであった。

 レイネを除けば一番の古株で実力者のロンが順当に後継者となる。

 リンはロンの妻として工房の主になることを画策していたのだ。

 

「おい、ロンが……」

「これは、もう死んでる——」

 

 はたしてロンも同じ末路を辿って壁に槍で縫い付けられていたのであった。

 

 

 ——そしてチン・シキも

 

 

「っおじい様!」

 

 奥の部屋に転がる小さな骸はただレイネ達を写していた。

 

「そんな——」

 

 レイネは膝から崩れ落ちるしかなかった。

 様々な思いが彼女の中に去来する。

 だが、事態はそれを許してはくれない!

 

 

 

「こいつらが——!」

 

 

 シュッ!——ザス

 

 高弟子のロセが突然の侵入者にいち早く気付き槍を投擲(とうてき)した。

 狭い為交わす余地は無く見事命中したのだが、男たちは一瞬で殺到する。

 挟み撃ちだ。チン・シキは囮だったのだ。

 

「——うおおおお!」

 

 サシュ——ズブ——ガッ

 

 カイは男と相打ちになったが、横から迫った別の男に馬乗りにされてめった刺しにされている。

 

 ロセは槍を投げた後ショートソードを抜こうとしたところを、大型のナイフで同じく穴だらけにされた。

 

 武器をもたないゴンは後ろで震えるばかりだ——。

 

 なだれ込んでくる暴漢たちにシスドは手一杯であるが、それが行く手を遮る形になり後続の足を止めていたのであった。

 

 

 

 そして。それは一瞬の出来事——。

 

 

 

「ロガ!」「おっとアーティファクト

≪ダブルキャスト:漏出の手≫」

 

 柱の影から現れたタリマヌがキ・ロガに触れると、彼は耳と鼻から血を吹き出し血の涙を流しながら気を失った。≪漏出の手≫は魔力を削り取り強制的に枯渇させる魔法だ。

 

「タリマヌ! あなた、始めからこのつもりで!

蜃気楼(ミラージュ)≫」

 

 レイネの姿が幾重にもダブって見えはじめた。

 

「素晴らしい! 異なる原理で別系統の魔法と同等の現象を引き起こすとは!」

 

 本来姿をぼやけさせる魔法は光系統の魔法である。

 しかし鍛冶魔法師(フォージマンサー)である彼女は、炎熱系統魔法≪蜃気楼(ミラージュ)≫としてまったく同じことをやってのけたのである。

 

「やはり鍛冶魔法師(フォージマンサー)は是非とも欲しいですね! どれ」

 

 タリマヌはレイピアを目にもとまらぬ速さで突き立てる。

 

 

 シュピ——

 

 

「いくら攻撃しても無駄よ! 私はそこには居ないわ!」

 

 必殺に一撃を(かわ)されたにも関わらず、タリマヌはおどけてレイネに人差し指を向けた。彼女は意図に気づいたがもう遅い。

 

「ハハ。ではこうしましょう

電界(サージ)≫」

「キャァ!」

 

 

 ——パァン

 

 

 耳を(つんざ)く轟音と共に不規則な光の帯が網膜を焼きレイネへ収束した!

 

「……回避不能の必中魔法です。

 対象へ自動的に吸い寄せられるので、魔法で居場所を誤魔化そうとしても無駄ですよ。

 いらぬ独り相撲でしたね」

 

 タリマヌは気怠げに耳の穴をほじりつつ気を失った彼女を冷たく見下ろし、ポーションを(あお)って足りない魔力を補うと。使用済みのひび割れた魔石を

 ——踏みつぶした。

 

 

 

 

 ——母屋の裏で砂を踏みしめ、レイネを肩に担いでいる男がいる。

 その男の顔一面には酷い火傷のあとが広がり男の人相をより一層凶悪なものにしていた。

 

「……じゃぁ、よろしく」

「ああ」

 

 男はタリマヌに声を掛けられつつ、淡々とレイネを担ぎ出して離れの外へと向かうのであった。しかし……

 

 

 ——ヒュ——パゴ!

 

「ガッ!?」

 

 火傷の男の顔に盾が突き刺さり、バランスを崩した男の肩からレイネがずり落ちたのである。

 

 

 ザ

 

 

 さらに裏門から侵入したイーレシスンは踏み込んで槍を投擲するが、レイネを盾にするように動いた男の肩に突き刺さるにとどまった。

 

 そして跳ね返って地面で弧を描きながら回転するソレを見て男は思い出した。

 

「これは……船で俺を落とした奴隷のガキの……!」

 

 そう祐一郎が船で横入りした火傷の男を落とした時と同じく、盾を顔に直撃させたのだ。

 なお仮面が無いのは海に落ちたとき、どさくさ紛れでマーマンに剥ぎ取れたたためである。

 

 

 動揺する男にイーレシスンは再びアイテムボックスから槍を取り出すが、タリマヌが機先を制した。

 

「——おっと、先輩。そこまでにしてくれませんかねぇ?」

 

 

 タリマヌは横たわるレイネの喉元にレイピアを突き付けて、イーレシスンを牽制(けんせい)した。

 

 

 そして歪んだ薄笑いを浮かべて甚振るかのように、もったい付けて口を開いた。

 

「お話はかねがね聞いてますよぉ……なんでも。落ちこぼれだとかぁ?

 ベニサドさんとの決闘は今でもお笑い種ですよ。

 流石に大先生のお膝元にいられなくなって、こんな辺境まで逃げてくるとは。

 くく……俺だったら、恥ずかしくて生きていられませんよ」

「長ったらしく。

 あんたこそ、男のおしゃべりはみっともないって、分からないのかい?

 それに——

 

 どうせ左遷組だろ」

 

 

 イーレシスンへの挑発は空振りし、逆に見下していた相手からの自信のプライドを(えぐ)りだす暴言に自制心を失った。

 

 ——いや、自制心を保つ必要性を感じなかったといったほうが正解かもしれない。

 それはベニサドから彼女の攻略法を聞いていたがため、負けるはずが無いという確信。

 そして長年使い慣れた≪電界(サージ)≫の魔法への、信頼があったからに他ならない。

 

 

「——言っていいことと悪いことがあるんだぜ!

 ババァ!

 死ねぇ!

電界(サージ)≫」

 

 イーレシスンへ必殺の魔法が迫る——




所持品

 装備:服 1kg
 装備:ズボン 1kg
 装備:インナー 0.5kg
 装備:靴下
 装備:靴 0.5kg
 装備:円形盾 4kg
 
 Total:7.00kg
時系列順設定集 0000〜0013+0012蛇足へ
時系列順設定集 0012_00〜0012_09へ
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