刹那の旅路   作:靴下9153

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0002 会話

 風が朝もやを吹き飛ばしたおかげで視界が開けた。

 

 民家のある方角には急峻な山があり谷間には広い範囲に民家が散在しているようだった。

 

 そして、目指す村落の左側には沼があり、そこの沼の水面がきらきらと光を反射している。沼の上にも相変わらず浮遊石が浮いているのだが、10mはあろうかという巨大なものまであった。あの岩塊が倒れてきたところを想像するとブルッと少し震えてしまった。

 

 

 朝日を背に進んでゆく。やや左後方だろうか。つまりおよそ南西方向へ進んでいる。

 

 沼へやって来た。草の生えた地面だと思って足を踏み入れたらそのまま、足首まで埋まってしまった。慌てて足を抜くと、靴まで脱げてしまい、慌ててほじくり出した。靴は泥まみれだ。水ですすいでごまかしたが、靴下まで濡れて気持ち悪い。

 

 倒木の上へ腰かけて靴下を絞ってから、枝にかけて暫く休んだ。5分ほどで靴下を履きなおすが、もちろん濡れたままだ。倒木から立ち上がると尻が湿っていることに気づいた! 倒木の苔が朝露で湿っていたのだ! パンツまでぐしょぬれでさらに気持ち悪さが増す結果となってしまった。

 

 慣れてくると、湿地と草原の区別がおぼろげについて来た。判断付かない場所はあえて通らず迂回した。

 

 

 村落に着くころには、太陽はほぼ真上に位置して、おそらく正午前だろうと思われた。

 

 中央の広場では老人たちが談笑していて、民家の周囲には時折人が見かけられた。洗濯物が干してあったり、積み上げた薪に屋根を被せて乾燥させていたり、暑いのか家の引き戸を全開で、母親と子供が何やら手作業で植物を加工している。そんなめちゃくちゃ牧歌的な光景が広がっていた。

 

 全体的に背が低い気がする。服装は着物のように見える。顔つきはアジア人と表現するしかないような、平たい顔だ。やはり、耳が長い。

 

 そろそろ昼だが、飯の用意はしないらしい。一日二食の食習慣なのだろうか。

 

 

 

「リウェイ、ニャ?」

 

 ――そのとき突然後ろから声を掛けられた。

 

 そこには、武装した二人組が佇んでいた! 油断していてまったく気付かなかった……。

 

 

 二人とも簡素な革の鎧に身を包み、槍を手にしていた。おそらくこの村を守る仕事の人ではないだろうか。正式な呼び方は知らないが、衛兵と呼ぶことにしよう。

 片方は青い逆立った髪の人だ。仮に青髪さんと呼ぼう。

 もう片方は赤いスカーフの人なので赤スカーフと呼ぼう。

 

 そして二人とも、やはり耳が長かった。この世界の人間はどうやら耳が長いらしい。逆に俺の耳は短いので目立ってしょうがないな……。

 

「****」

「****?」

 

 何を言っているのか全く分からない。言葉が通じないのだ。おそらく最初の言葉は挨拶か誰何(すいか)のはずだ。一か八か始めの言葉をそのままオウム返しにすることにした。

 

「リウェイ、ニャ」

「**、******、*****。**」

 

 どうやら、挨拶はコレでいいらしいが、そのあとの言葉はまったく分からなかった。困ったな……。言葉を返せずにいると、二人は相談を始めた。暫くすると、ついてこいという意味にとれるジェスチャーで俺に同行を促した。

 

 とりあえず行く当ても無いので従うことにして、二人の跡を着いてゆく。

 

 

 案内されたのは、隣に物見台のある木造の平屋だった。交番的なヤツだろうか。促されるまま中へ入って行く。

 

 家の中は生活感あふれる有様で、有体に言って散らかっていた。二人とも人間のオスなので、この惨状は自然の摂理といってもいいだろう。仕方ないのだ。

 

「****」

 

 水を出された。今の言葉の中に水を表す意味が含まれていたはずだ。大丈夫、ちゃんと記憶した。試しに容器の中を指さして繰り返してみる。

 

「(みず)」

「**! **! (みず)! (みず)!」

 

 通じたようだ! なんだろう、ムズムズするのだが。喉が渇いていたので、水を飲み干した。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 30分後。俺は便所と友達になった。水に当たってしまったのだ。煮沸して飲むべきだった、と今更後悔しても遅い。その水を勧めたあいつらといえば現在大笑いしている。まんまといたずらに引っかかったってことか? それとも不慮の事故なのか。

 

「「ぎゃはははは!」」

 

 言葉は違えど、笑い方は一緒らしい。そこまで笑わなくてもいいだろうに……。

 

 ――なんにせよ、異世界初の友達が便所…… どうなんだ、それ。

 





所持品

装備:スピア 2kg
装備:服 0.5kg
装備:上着 0.5kg
装備:ズボン 0.5kg
装備:インナー
装備:ボクサーブリーフ
装備:靴下
装備:靴 0.5kg
装備:伊達眼鏡 -
スマホ -
小銭 ¥361
タバコ 3本
¥100ライター
コンドーム
プラスチック袋{栄養剤 43錠}
ビニール袋{岩塩 -}
カギ
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