刹那の旅路   作:靴下9153

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 祐一郎 は異世界で亜人に奴隷として売られてしまう。
 同郷の奴隷達から、人間だけの理想郷の噂を聞かされるが、拳銃ダークエルフの女イーレシスンに買われた。
 そして因縁の青髪と赤スカーフの二人と思いがけず遭遇。イーレシスンの魔法でお互い大したけがもなく事なきを得るが、ほとぼりが冷めるまで国を離れることに。
 
 0012〜0013のの出来事を細かく描写します。
 
 一日目:2つの村を横切る。第二の太陽は一時間周期。
 一部他人のステータスが覗けるようになった事に気づく。
 
 二日目:廃村で幽霊に襲われる。
 村落が点在する一帯で足止めされる。
 
 三日目:祐一郎はアイスという少女と出会う。
 ガラの悪い男に絡まれて少し足止めを喰らうが、アトーエにあるダンジョンを目指し船を乗り継いで港へ辿り着く。
 魔法鍛冶師の老人の家に泊めてもらうことになった。
 異世界言語を翻訳できるチャットウィンドウのログから呪文メモの内容を参照できるようになる。
 工房から出発した祐一郎達を見計らったかのように、襲撃を掛けるタリマヌとその部下達に絶体絶命と思われたその時。祐一郎達が戻ってきてレイネ誘拐を阻止したのであった。
 そしてイーレシスンに回避不能攻撃が放たれるが魔法で阻止しタリマヌは自爆する。
 
 この章の登場人物{
  チン・チキ:鍛冶魔法師(フォージマンサー)の顔役
  レイネ:鍛冶魔法師(フォージマンサー)。チン・チキの孫。女性
  シスド:レイネの兄
  キ・ロガ:レイネの幼馴染で、独断でアトーエからリクルートにやってきた
  タリマヌ:キ・ロガの旅仲間でダークエルフ
  火傷の仮面の男:チンピラ
 }
 
 其の十七
 
 イーレシスンの口調は、onepieceの女海賊をイメージしてます。



0012_16 追加分/一週間に起こった出来事 その十七 騒動の真相と後片づけ

 襲撃者をあらかた無力化した。

 

 死者は裏切った兄弟子のロンとリン、衛兵の2人。襲撃者は5人。そして下働きの若いエルフたちが7人。重傷者は13人、襲撃者側は6人と惨憺(さんたん)たる有様である。

 

 助けを呼んで重軽傷者は治療院へ担ぎ込まれ、残った者は後かたずけに追われている。

 

『(最初に盾を投げたのはマズかったかなぁ……)』

 

 などとさっきの戦闘の反省をしながら、ボロボロの体を酷使して手伝いに追われていた。

 

 

 襲撃者はレイネ誘拐のため使い捨てにするつもりだったらしい。

 彼等の懐から似つかわしくない量の銭が転がり出てきたことから、現地で集めたようだ。

 

 人を集める場合は地元の斡旋者(あっせんしゃ)を通すもので、当然斡旋(あっせん)屋が許すはずも無い。

 それが背後に何らかの組織がいることを匂わせていた。

 

 

 そんな彼等に事情を聴いたところあっさりと吐いた。

 彼等は全員タリマヌに雇われた、その日暮らしの無頼漢達であった。

 

 彼等を見捨ててさっさと逃げる。とことん使い捨ての腹積もりだったようである。

 彼等に対する口止めの形跡すら無かった。

 

 おそらく逃走経路も用意されていたのだろう。

 

 そしてタリマヌはレイネの誘拐を命じていたのだが、襲撃者が知っていたのはここまでである。

 

 

 ここからはイーレシスンの予想になる。

 

 

 タリマヌはダークエルフである。

 そしてダークエルフは北の大陸の主要民族で、この地域ではあまり目にしない。

 

 イーレシスンは以前ハイエルフに弟子入りして技を磨いていた時期があった。

 ハイエルフへの弟子入りとは、とある組織に所属することと同義である。

 教導機関【大樹】は、国家に跨る教育機関で王侯貴族への箔付けや政治的折衝の場として機能する組織なのだという。

 

 大陸諸国のなれ合いの場。つまりは社交空間である。

 

 当然絶大な権力を持つ物と想像できるが、実際はそうでもなく各国の相互関係の元雁字搦(がんじがら)めに身動きすらままならない形骸化した組織である。

 抑止弁。保障。互いに牽制しあう取り決めが硬直化を招いていた。

 

 もともとはイーレシスンも師事していたハイエルフ、トハナの保身のための組織であったという。

 

 ハイエルフの寿命は不明である。

 寿命が尽きたハイエルフが確認されていないためだ。

 少なくとも7000年以上ともいわれている。

 

 実はこの世界のエルフの平均寿命は50年程度である。

 ハイエルフは特別なのだ。

 当然、権力者たちは彼女の不老の秘密を求めた。

 そのため保身の必要性から、協力者を教育して生み出すという目的の元自然発生的に生まれたのが【大樹】の前身組織である。

 

 トハナは教育者として卓越した技術を持って、彼女の為にその身を惜しまぬ超技巧者集団を生み出していった。

 もはや洗脳といってもいいだろう。

 

 そうして信奉者達が権力に組み込まれ、彼女の身の保身に貢献していったのである。

 

 身の保身こそ彼女の至上目的。

 そのためには平和は重要な要素なのだ。

 彼女は大陸の平和の為に奔走する。

 全てはわが身可愛さの為に。

 

 ——権力者たちは高い技術を短期間で習得できる場の独占を計るためあらゆる計略を仕掛けてきた。

 そのために用意されたのが【大樹】である。

 

 基本教鞭をとるのは、彼女から直接手ほどきを受けた上位教導者であるが、貴族たちの要望を断れず自ら出向かざるを得ない場面が多々生じる。

 

 しかも実に広範囲。

 面積では世界の半分に迫る。

 赤道を取り巻く広大な大陸のほぼすべてをカバーしているのである。

 

 到底身が持つ訳が無い。

 

 そこで教育機関を集約し、移動距離の短縮を図った結果。

 婚約破棄とかしてそうな王侯貴族の通う巨大学院【葉】が大陸各地に建設されたのである。

 

 それはもうにょきにょきと乱立した。まるで雨の後の筍のように。

 だが同時に質の悪いものも紛れ込み、機関の評判を大いに落としめることとなる。

 

 ——さて、ここで疑問が生じるだろう。

 イーレシスンの素行の悪さは貴族のソレとは到底程遠いものだ。 

 

 ——では、質の悪い学園に通っていたのか?

 

 

 真逆である。

 

 

 大陸の平和、そして均衡と調和の為に活動する事を目的の一つとする組織が秘密裏に存在している。

 仮に【ザイレム】と呼ぼう。

 

 彼等は魔法使いのエリートだ。

 ハイエルフが真に才能あるものたちに、英才教育を施された選ばれし者達である。

 

 そこに身分の貴卑は無い。

 その末端に属していたのが、元階級外出身のイーレシスン。そして元市民階級のタリマヌだったのである。

 

 

 貢献度稼ぎに暴走したタリマヌの仕業。というのがイーレシスンの予測だ。

 レイネの誘拐によって珍しい魔術を献上することで己の出世に役立てようと画策したのではないかと。

 

 

 さて、未だ疑問は残っている。

 

 

 ——何故タイミングよく彼等が助けにやって来たのか。

 

 端的に言って偶然であった。

 

 チャットウィンドウのカバー範囲にいないはずの人物の言葉が入り込んできたのだ。

 障害物を透過し距離内の音を自動で拾ってしまう、いつも通りの残念仕様のなせる業である。

 そして工房へ押し入って行く物々しく武装した火傷の男を見出したのだ。

 

 であるなら、とっとと追いかければいいものであるが。

 意思疎通に時間がかかってしまった。

 そもそもチャットウィンドウについて話したとしても、話が長くなるし切り札を全て晒すことになる。

 なにより、祐一郎が襲撃者に気付いた理由に説明が付かないからだ。

 

 うだうだと要領を得ない内容を話すうち、祐一郎は襲撃者がついに動き出したことを感じ、その場に荷物を置いて襲撃者達の方向へ走り出したのである。

 荷物が重く戦闘を想定して全力走行で駆けつける訳にもいかない。

 息も絶え絶えでは何の役にも立たないからだ。

 

 生きぎたないイーレシスンは、茂みに全財産である荷物を投げ込んで駆けつけた。

 流石にその場に生活の生命線を投げ捨てて駆けつけるほど、お人好しでも無いし第一襲撃されているという確信も無い。

 そのため、遅れることとなったのである。

 

 

 

 そして結局日が暮れるまで片付けを手伝ったのであった——。

 

 

 

 

「また、助けていただき、ありがとうございました」

「まぁ……なんだ。亡くなった奴らにはご愁傷様(しゅうしょうさま)——」

「あの、これはお礼に納めてください」

 

 レイネはお礼のお金を差し出すがイーレシスンは決まり悪そうに断った。

 

「いいよ。あんたらも、これから、もの入りだろう?

 それにこっちも迷惑かけたし。

 それで相殺ってことにしてくれよ」

「すみません……」

「俺らは明日出ていくけど、まぁ。

 厳しいだろうけど、気をしっかり持って。

 何にも知らない部外者が何言ってんだって感じだろうけどさ」

「ありがとうございます……」

 

 今回の件。タリマヌの暴走だとすれば再びレイネが襲われる可能性は低いだろうが確証はない。

 関係は無いのだが、今後の身の振り方について聞いてみることにした。

 

「あー、ところで。あんたこれからどうするつもりなんだ?

 話したが【大樹】の仕業だとすると、また狙われるかもしれないぞ」

「それは……」

 

 イーレシスンは【ザイレム】についてはぼかして伝えていた。

 レイネは目を伏せて不安げに言いよどむが、そこへ突然キ・ロガが割って入ってきたのである。

 

「ちょっといいか。まず今回の件、俺からも礼を言わせてほしい。

 あのままであったら、俺もタリマヌに殺されていただろう」

「いや、大した怪我もなくて良かったな」

「ああ、お気遣いありがとう。

 ……それで、彼女は俺とアトーエへ行くことになったんだ。

 あんたの言った通り、また襲われて弟子達が巻き込まれかねないからな」

「そいうことか」

 

 アトーエでは【大樹】の活動はほぼ無いといっていい。

 それにキ・ロガはアトーエの鍛冶師としてレイネをスカウトにやって来たのだ。

 こんな治安も覚束ない辺境にいるよりマシな事は確かである。

 恐らく差し迫った脅威はないであろうと、身辺を整理してから北回りで発つつもりだという。

 

 

 

 

 そして翌朝、霧煙る中で出発することとなった。

 

 見送りにはレイネとシスド、キ・ロガの姿と弟子達がおり。

 当然ながらチン・シキの姿は見られなかったのである。

 

 実に後味の悪い結末。

 

 それもこれも全ては意思疎通の不全が原因なのは確かだ。

 もっと早くに駆けつけていれば救えたかもしれない。

 

 

 ——祐一郎の心の中には罪悪感がわだかまっている。

 

 荷物を失う覚悟で駆けつけていれば確実に犠牲者は減らせただろう。

 

 自分一人でも駆けつけていれば……しかし、悔いても死人は蘇りはしない。

 何気ない決断が容易く人の命を刈り取って行く現実に打ちのめされるような思いを抱くのだ。

 

 あたかも自分の未来と、他人の命を天秤に掛けているかのようだと——

 

 どうしたらよかったのだろうか。

 

 

 ふと、チン・シキ老人と食卓を囲んだ光景を幻視した。

 

 

 ……レイネ達は祐一郎達が霧の中に見えなくなるまで見送っていたのであった。

 




 構想中のため暫く短めです。
所持品

 装備:服 1kg
 装備:ズボン 1kg
 装備:インナー 0.5kg
 装備:靴下
 装備:靴 0.5kg
 装備:円形盾 4kg
 装備:円形盾 4kg
 リュック20L 10kg{
  水袋 4L 0.5kg{
   水4kg
  }
  水袋 4L 0.5kg{
   水4kg
  }
  小麻袋 1L{
   干し肉0.3kg
  }
  小麻袋 1L{
   干団子0.4kg
   干団子0.5kg
  }
  陶器の瓶0.75L 1kg{
  }
  小型ナイフ0.5kg
  包帯0.5kg
  小袋 0.2L{
   木の小物入{
    裁縫道具
   }
  }
  小袋 0.2L{
   火口 0.04kg
   火打石 0.2kg
  }
  靴 0.5kg
 }
 
 Total:32.94kg
時系列順設定集 0000〜0013+0012蛇足へ
時系列順設定集 0012_00〜0012_09へ
時系列順設定集 0012_10〜0012_16へ
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