刹那の旅路   作:靴下9153

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 祐一郎 は異世界で亜人に奴隷として売られてしまう。
 同郷の奴隷達から、人間だけの理想郷の噂を聞かされるが、拳銃ダークエルフの女イーレシスンに買われた。
 そして因縁の青髪と赤スカーフの二人と思いがけず遭遇。イーレシスンの魔法でお互い大したけがもなく事なきを得るが、ほとぼりが冷めるまで国を離れることに。
 
 0012〜0013のの出来事を細かく描写します。
 
 一日目:2つの村を横切る。第二の太陽は一時間周期。
 一部他人のステータスが覗けるようになった事に気づく。
 
 二日目:廃村で幽霊に襲われる。
 村落が点在する一帯で足止めされる。
 
 三日目:祐一郎はアイスという少女と出会う。
 アトーエにあるダンジョンを目指し船を乗り継いで港へ辿り着き、魔法鍛冶師誘拐未遂を防ぐ。
 
 四日目:後片付けを手伝い出発するが迷って尻尾の無い巨大サソリ。ヴァイオレントスパイダーと遭遇してしまう。
 しかし、そこへ謎の女ハロが現れ同行することに。
 川を渡ろうとしたところトラブルに遭遇し、イーレシスンと知り合いの兵士が現れヴァンパイアに殺された被害者達を調べることになった。
 第二の被害者クォブを殺害したのは詐欺被害者のギェンであった。
 
 其の二十五
 
 この章の登場人物{
  ハロ:同行することとなった女性
  ジャグ:兵士。直情的
  ゾイ:兵士。ヴァンパイア事件の解決には消極的
  ギェン:クォブに騙された被害者
 }
 捜査メモ{
「ファノ。売春宿の従業員。男性23才。裏路地で倒れていました。契約結婚をしていたようです。親族から苦情が寄せられています」
「クォブ。大工。32才。私の担当区域外。屋根補修詐欺の噂がありましたが担当者は賄賂で見逃していたようです。住民には相当不満が溜まっていたようです」
「ジャー。金貸し。43才。飼ってる犬を嗾けて子供に噛みつかせて大怪我を負わせましたが、やはり担当者を賄賂で丸め込んでいたようです。周辺住民は不安を感じていたと耳にしています」
 }
 イーレシスンの口調は、onepieceの女海賊をイメージしてます。


0012_24 追加分/一週間に起こった出来事 その二十五 蛇に襲われる、びしょ濡れ女中さん。

 

 

 ——現在。一応(ひさし)もあり日陰ではあるが。風も無く、じっとしているだけで汗が出てくる——湿度を感じる、そんな嫌な暑さ。そして体全体にのしかかってくる空気。

 

 どんな扱いを受けても文句など言えない立場にも関わらず、ギェンという男は実にふてぶてしい。

 

 さっさと牢屋にぶち込んでしまえばいいのだが——それもこれも、ちゃんとした留置先が無いせいでもある。

 

 屯所が洪水に流されてしまったのがそもそもの原因。

 現在建設中なのだが資金繰りが悪く、中途半端に放置されている状態である。

 

 おしなべて物資が高騰し、遅々として町全体の復興が進まない。

 その余波もあって屯所の建設すら遅れている酷い状態なのだが、原因はそれだけではない。

 

 

 何故か本部が金を出し渋っているのだという——。

 

 

 現在、その建設を引き受けているフェンという元締めの屋敷に訪れていた。

 

 

『遅いっスねぇ』

『……もう、日が傾き始めてるな』

 

 

 地平線から45度から60度の位置に太陽がある。

 地球と同じ一日が24時間であるこの世界では3、4時間もすれば日が落ちる。

 

 ——屋根から祐一郎達を覗き込むのは金床雲だ。

 

 イーノエススでは日本と同じく西から天気が崩れる。

 現在西に見える積乱雲は(じき)にここ一帯をスコールで洗い流すことだろう。

 

 

「——あ、いた。

 おたくがイーレシスンさん?」

「……ああ」

「そとで待たせちまって悪いね。

 中へ入ってくれ」

「随分時間がかかったな」

「今立て込んでてね。

 悪いね」

 

 

 遠くで雷鳴がした。

 

 

 

 

 果たして、祐一郎とイーレシスンが玄関を潜ると修羅場であった。

 

「——何だとこの野郎!」「ヤんのか!? ああ!?」

 

 想像を絶する低次元な口喧嘩が繰り広げられている。

 非生産的な際限のない罵声の応酬。

 不毛である。

 

 

 イーレシスンの姿を見つけ、歩み寄りながら声を掛けるジャグ。

 

「——イーレシスン」

「ジャグ。なんだコレは」

オジキ(・・・)達が全部出払ってて、どっちが主導権を得るかなんだと。

 それより、さっさとギェンを引き渡して次に行こう。

 日が暮れちまう。

 

 ——じゃぁ、頼むぜ」

「はい、承りました——」

 

 ギェンは男に連れられて奥へと消えていった。

 

 祐一郎達がいるここは、一帯を取り仕切るフェンの屋敷である。

 

 バキ——ドカ

 

「——大丈夫なのか?」

「今までもオジキに預けてきた。大丈夫だ」

 

「オジキってのは?」

「まぁ、俺のオヤジの兄貴だ」

「……」

 

 ジャグの肉親を疑ったことに気が付いのだろう、イーレシスンは小さく目をみはった。

 

「——いや、疑う気は無かったんだ。すまん」

「いや、気にしてないさ。

 ははは」

 

『(——イーレシスンってあやるんだ!?)』

 

 酷い言い草である。

 

『止めなくていいんスか!?』

『ん? 混ざりたいのか?』

『は?』

『止めたいんだろう?

 そら、行ってこい』

 

 イーレシスンは祐一郎を喧嘩中の二人へ突き飛ばした。

 

「なんだてめぇ!」

「奴隷が!」

 

『(待て! 待て! 待て! 待て! ステータスオープン!)』

 

 認識速度が加速し——拳の雨を巧みに躱してゆく。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 ——数分後。

 

 

「はぁ……はぁ……」

「だめだ……拳が全然当たらねぇ……」

 

 疲労しつくした二人は床で伸びていた。

 

『止められたじゃないか』

『……コレじゃない感!』

 

 

「お前……奴隷だよな?」

 

 ジャグは目の前の状況に唖然とした表情で固まっていた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 本来、ヴァンパイア対策の為に助力を頼んだのに、未だ出番のないイーレシスン。

 ヴァンパイアの仕業と思われた殺人は、ヴァンパイア騒動に便乗した模倣犯。つまり人の手によるものだった。

 

 イーレシスンからしたら実に拍子抜けであろう。

 

「まったく、ヴァンパイアは最悪だが、人も人だぜ」

「文句を言っても始まるまい——」

 

 現在、祐一郎達一行は金床雲を右手に見ながら、建築物(ひし)めく丘を目指していた。

 いまだ暑さはあるものの風が吹き始めたせいで、気化熱が若干涼しく感じさせる。

 

 祐一郎からしたら、もう少し歩調を落として欲しいだろう。だが、言い出せるものでも無い。

 30kgの荷物と比べると、イーレシスンらは殆ど無荷に等しい……というのは言い過ぎだが、(ひが)みめいた不満を持つのも仕方のないことといえるだろう。

 

 ——肩の痛みがひどい。

 祐一郎は居心地悪く肩を気にするそぶりを見せる。

 

 背負子の肩ひもの長さが合っていないのかもしれない。

 背負っているうちに緩んできてしまったのだろう。

 

 それと海から離れて、()の塩臭さが鼻につくのだろう。実に不快げだ。

 

 ——垢じみているのが当たり前。

 そんな現状を再認識してしまうと、うんざりしてしまうのも仕方がない。

 

 クーラーの効いた部屋でキンキンに冷えたコーラを一気飲み。塩辛いポテチを鷲掴みで鱈腹(たらふく)胃に詰め込む。

 

 あま。しょっぱ。あま。しょっぱ。

 

 涎が出てくるのを慌てて拭う。

 

『(あー。コーラの味忘れちゃったよ……どんなんだったけ?)』

 

 

 いつでも取り出せるよう、肩ひもにぶら下げていた袋から塩辛い干し肉を取り出して齧り取った。

 唾液を着けないよう前歯で摘まみ(・・・)引きちぎるのだ。

 唾液がつくと一気に腐敗が進むことをこの一週間で身に染みて痛感していた。

 

 

 ——アホみたいにショッパイ粘土。

 

 

 無いよりはマシである……。

 

 同じく腰あたりにぶら下がっている水袋から、水を口を付けずに(あお)った。

 

『(そういえば、これまで食堂で出された飯。スパイスが効いてたな。

 コーラ作れんじゃね?)』

 

 気もそぞろに水を嚥下(えんげ)する。何かの動物の胃袋だろうが臭い。そして温い。

 温いといっても25度くらいだろうか。

 ジャグの家の水甕(みずがめ)から汲んだものだ。

 

 胃袋には水を通す細かい穴が無数に空いており、気化熱で冷える。

 

 

 ——カッ——

 

 

 ゴロゴロゴロ——

 

 

 閃光のあと、たっぷり10秒は間を開けて音がやってきた。

 15度では音の速さは約340m/s

 10秒では約3400m先で音が鳴った計算だ。

 台風並みの自転車と同じ速度で一直線に向かってくるなら、約11分後に到着する。

 

 未だ遠いと思っていた金床雲は、いつの間にか見えなくなり、灰色の空が重く立ち込める。

 右手の地平線には雨柱が立ち上がり段々と近づいてきた——。

 

 

 丁度その時だ。雨具売りが通りがかったのは。

 

 そこで二人と一人分購入。

 やっと追いついた祐一郎は雨具を受け取る。

 

 ——何とも申し訳ない気分になる祐一郎であった。

 

『あ、ありがとう……』

『働いて返せ』

『わかった』

 

 しかし奴隷の健康に気を遣うのも主人の自由。

 イーレシスンは祐一郎をダンジョン攻略の前衛にするつもりなので、こんなつまらない場所で壊すつもりは無い。

 あくまで打算ありきである。

 

 そもそも勝手に拉致されて売り払われた挙句、イーレシスンに買われたのだ。

 祐一郎はそのことに気が付いて、納得いかない気分からか眉をしかめた。

 

『(うぐ——このままだと不味い……。

 チャットウィンドウの過去ログがあるから、詠唱を聞けば習得できるんだ。

 上手いこと詠唱してる場面に立ち会えるようなシュチュに持ってけないもんかな……)』

 

 祐一郎はステーションウィンドウの他にチャットウィンドウを目前に表示させることが出来る。

 ある程度の距離の会話をチャットウィンドウが拾い、過去ログに集積する機能があるのだ。

 そこに記録された詠唱を復唱し魔術の習熟を深めることで、≪発火(イニシャライズフレイム)≫の魔法を習得している。

 既に前例がある以上、他の魔法も覚えることが出来るはず。

 

 

 祐一郎の真上には、いよいよ雲が覆いはじめていた。

 とはいえ、雲が覆うのは頭上だけで、太陽が斜めに照り付け足元には影が落ちる、いわゆる天気雨である。

 そして。うだるような暑さの中、生暖かい風がやってきた。

 

 

 女性だ。

 

 ——雨の気配を察してか、進行方向の民家の合間を女性が足早に通り過ぎていく。

 

 

 

 そして雨具を身に着けた直後——

 

 

 

ゴロゴロゴロ——

 

 

 

 ザァァァァァァァァァァ

 

 

 スコールである。

 

 

 風が横から吹き付け、雨具を被っていても腹の下まで濡れてしまう。

 ジャグが避難を促す——。

 

「だめだこりゃ!

 イーレシスン!

 雨宿りしよう!」

「分かった。

 あそこがいいだろう」

 

 祐一郎達は民家の軒下に入り込む——。

 

 背の荷物があたって雨が避けられないので、足下に逆向きで下し壁に張り付く。

 そして肩ひもの長さの調整を始めた。

 

 

 ザァァァァァ……

 

 

 雨足は衰えず、軒下にいても太腿(ふともも)が濡れる始末である。

 

「酷い雨だな」

「ここいらは西にデカイ湖があるから。

 そこから雲が上がって西風に吹かれてこっちまで来るとかって聞いたぜ。

 ウアジェトの南じゃそうでもないらしいけどな」

「へぇ。

 北はどうなんだ——」

 

 ——手持ち無沙汰。

 何時止むともしれない雨にうんざり気味な一行であったが、案外に(ひま)を持て余すほどでは無かったようだ。

 

 

 先ほどの女性が路地から転がり出てきたのだ。

 

「おい! あれ……!」

「——助けるぞ!」

 

 祐一郎が指摘するまでも無く、イーレシスンとジャグは槍と剣を抜き放ち向かっていった。

 もちろん祐一郎もこの場に残っているわけにもいかず、荷物を抱えて土砂降りの中後を追いかける。

 

 

 シャー

 

 

 果たして女性を襲っていたのは4m以上はありそうな蛇。

 舌をチロチロ出して威嚇音を発し鎌首をもたげた。

 

「コブラか——」

 

 猛毒を持つ蛇。異世界という割にはチンケだが、確実に脅威ではある。

 イーレシスンは走りざまに槍を投げつけた。

 

 

 ドス——

 

 

 (かす)った。

 

 

 今まさに飛び掛からんとして、引いた首の腹を切り裂たのである。

 イーレシスンにして、豪雨の中 直径一桁に20m離れた位置から走りながら命中させる技量は無かったようだ。

 

 怯んだコブラは、逆方向へ這い始めた。

 ここで逃がす訳にはいかないと、全身を緊張させる——。

 

「オラッ!」

 

 ジャグは走り込みざまに、掬い上げるように幅広剣(ブロードソード)を切り上げるが、若干跳ねただけ。

 叩きつけて使うのが本来の使い方だ。それに鱗もある。刃を立てることに失敗したのか浅く切り裂くにとどまった。

 

 

 

 サク——

 

 

 イーレシスンは先の尖った幅広剣(ブロードソード)を地面ごと突き刺し釘付けにし、

 

「ジャグ!」

「任せろ!」

 

 ズチュ——

 

 ジャグはコブラの首に近い部分を踏んで、幅広剣(ブロードソード)を振り下ろす。

 頭部に近い為、任せたのである。

 

 

 

 

 

 ——いつの間にか雨は小降りとなっていた。

 

 そのときイーレシスンは香りを感じ、小さく空気を吸い込んだ。

 薬のような匂い。

 ……しかし、すぐに嗅覚は霧散してしまう。

 

 ——へたり込む彼女へ手を差し出す。

 

「大丈夫か?

 噛まれていないか——?」

「はぁ、はぁ。

 大丈夫です。噛まれてません。

 助けていただいて、

 どうもありがとうございました」

 

 短時間だが恐怖で疲労したのだろう。

 顔面蒼白。

 元々色白なのだろうが余計に青い。

 麻栗色の(まつげ)が不安げに揺れ、酷く草臥(くたび)れて見えた。

 よく見ると、(いか)つい青銅のナイフを握っている。それで抵抗するつもりだったのだろう。

 

 コブラは町の中央部でも彼方此方(あちこち)に茂みや林もあるので、出没してもおかしくはない。

 

 この世界。解毒の魔法は有れど ある種の才能が必要で、使い手は多くない。

 更に解毒魔法を習得していても、適切な診察で毒の種類を特定できなければ魔法は失敗してしまう。

 エリクサも同様だ。毒の種類ごとに効果的なエリクサが異なるのである。

 故に毒は脅威であり、それを使うものは忌み嫌われる。

 

 

 ジャグは毒腺ごと頭をつぶして、祐一郎にコブラの死骸を渡してきた。

 猛毒のコブラの毒腺は売買禁止で取り締まり対象である。悪用されないように。そして、万が一うっかり牙が刺さってしまわないよう歯を折ったのだ。

 

「——ほい」

『え——ほいって! ちょっと……!

 どうすんのコレ!?』

 

 あまりに自然に渡してきたので思わず受け取ってしまう祐一郎。

 それに構わず、ジャグは女性に話しかけた。大夫ゾンザイな扱いである。

 

「——どうも、衛士のジャグです。

 しかし、災難でしたね。まさかこんな中、しつこくコブラが人を襲うとは」

「本当に助かりました。

 あの恐ろしい蛇に噛まれたらと思うと……」

 

 落ち着いたのだろう。

 緊張感から疲労で弛緩し——冷えた震える手を胸に置いて答えた。

 

 女性の頬に赤みが戻ってきたように見える。

 

 

 





所持品

 装備:服 1kg
 装備:ズボン 1kg
 装備:インナー 0.5kg
 装備:靴下
 装備:靴 0.5kg
 装備:円形盾 4kg
 装備:円形盾 4kg
 装備:時計
 装備:雨具 2kg
 リュック20L 10kg{
  水袋 4L 0.5kg{
   水2.5kg
  }
  水袋 4L 0.5kg{
   水3kg
  }
  小麻袋 1L{
  }
  小麻袋 1L{
   干団子0.4kg
   干団子0.5kg
  }
  陶器の瓶0.75L 1kg{
  }
  小型ナイフ0.5kg
  包帯0.5kg
  小袋 0.2L{
   木の小物入{
    裁縫道具
   }
  }
  小袋 0.2L{
   火口 0.04kg
   火打石 0.2kg
  }
  靴 0.5kg
 }
 
 Total:32.14kg
時系列順設定集 0000〜0013+0012蛇足へ
時系列順設定集 0012_00〜0012_09へ
時系列順設定集 0012_10〜0012_16へ
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