同郷の奴隷達から、人間だけの理想郷の噂を聞かされるが、ダークエルフの女イーレシスンに買われた。
三日目:イーレシスンは故郷に帰るための魔法のアイテムを求め、ダンジョンを目指す。
火をつける魔法を覚えるなど、虎視眈々と力をつける祐一郎。
船を乗り継いで港へ辿り着き、魔法鍛冶師誘拐未遂を防ぐ。
四日目:ハロが同行。
イーレシスンと知り合いの兵士が現れ、ヴァンパイアに殺された被害者達を調べることになった。
第二の被害者クォブを殺害したのは詐欺被害者のギェンであった。
そして第三の被害者ジャーの邸宅へ向かう途中、下女リヤノを助ける。
そしていよいよ、捜索を開始しようとした矢先、悲鳴が響き渡った。
其の二十七
この章の登場人物{
ハロ:同行することとなった女性。黄エルフ。ゾイと同行中
ジャグ:兵士。直情的。叔父が権力強め。黄エルフ
リヤノ:ジャー邸女中
アナナイ:純正先住ズーラ・ストラ
モラン:ジャー邸執事。大柄な高齢男性。黄エルフ
グエン、レ、?:ジャー邸用心棒
ダン:おそらく屋敷の主人の名前。レ談
}
捜査メモ{
「ファノ。売春宿の従業員。男性23才。裏路地で倒れていました。契約結婚をしていたようです。親族から苦情が寄せられています」
[/]解決済み:「クォブ。大工。32才。私の担当区域外。屋根補修詐欺の噂がありましたが担当者は賄賂で見逃していたようです。住民には相当不満が溜まっていたようです」
「ジャー。金貸し。43才。飼ってる犬を嗾けて子供に噛みつかせて大怪我を負わせましたが、やはり担当者を賄賂で丸め込んでいたようです。周辺住民は不安を感じていたと耳にしています」
}
イーレシスンの口調は、onepieceの女海賊をイメージしてます。
屋敷は普通と異なる、異国情緒を感じる二階建ての建物だ。
高温多湿なので、窓が大きく、出入り口は多い。
正直何処から声がしたかなど、館の住民でも判断付かない。
手分けして館を回った。
ややもして、グエンが戻ってきた。
「——ヴーが殺された!」
「「「——!」」」
衛兵グエンのその言葉に、その場にいた
『(ヴー……笑ってはいけな○かな?)』
異世界なので、こういうこともあるが……祐一郎からしたら微妙だろう。
「——何処でです!」
「…ヴァンパイアが、ここにいる!?」
「——とにかく、来てくれよ!」
グエンの案内で、廊下を進んでいく。ちなみに土足厳禁である。
『(なにか…おかしいような——)』
首の後ろをチリチリとするような感覚。思い出そうとしても思い出せない、喉につっかえてあと少しで出ない。
あたかも、そんな時に見せるであろう様子で、眉間にシワを寄せ周囲を窺う祐一郎。
廊下の前を行くイーレシスンも、緊張感を漂わせている。何かに気が付いているのだろうか。
まぁ、ヴーという名前に引っ掛かってる訳でもないだろうが、祐一郎と同じく何かを感じているのかもしれない。
そうこうするうち、現場に到着した。
狭い廊下の先——採光部が限られるのだろう、そこには薄暗い闇がわだかまっていた。
——人を拒むかのような倉庫。
祐一郎に、イーレシスン、ジャグとリヤノ、案内をしたグエンが入ると、かなり狭く感じられる。
遅れてレと下女がやってきたが、執事モランの姿が見えない。
「あの執事は?」
「ダンの旦那を呼びに行ったよ」
ダンとはジャーの跡取りである。
——灯火に照らし出される殺害現場。
投げ出された男の足が、幽霊のような蜘蛛の巣越しに揺らめく。
それは陳列された備品に、無機質で引き延ばされた沈黙を投影する。
北側の鎧戸を開けると、灰色の明かりに僅かな埃が舞った。
ヴーは舌を突き出し、目はボツボツと赤く染まり、凄まじい形相を浮かべ、仰け反って倒れていた。
首から上だけが赤く染まり、壮絶な最後を想像させる。
「これは——絞殺だ」
ジャグはそう判断したようだ。
——スン
鼻につく臭い……
「ヴー……」
——衛兵のグエンとレと似た武装しているので、衛兵なのだろう。
剣は近くの箱に隙間に挟まっていた。抜かれた形跡は無い。
ざっと現場の観察を終えたジャグはグエンへ質問する。
「悲鳴を上げた女性は?」
「下女のファニだよ」
グエンが連れてきた下女がファニなのだろう。
祐一郎と目が合うと、露骨に奴隷を見下す気配を漂わせた。
しかしジャグが視界に入ると、急にしおらしくしくなる。
「初めまして、私は衛士のジャグといいます。
リヤノと買い物に出かけたのは、そこに倒れているヴーですか」
「そうです…」
『(リヤノさんが復讐したって線は無さそうだ。
俺たちといた以上アリバイがあるし)』
「ファニさん、見つけたときの状況を聞かせてください」
「…ええと。あの——」
「落ち着いてください」
「はい…あれは、物音がして——。
駆けつけたら、ああなってて」
「その時何を?」
「雑用です」
「詳しく教えてください」
「夕食の準備で、頼んでいた食材を受け取って——
汚れが気になったので、すこし掃除を。
そのあと、洗濯ものが放り出してあったので、裏に行きました。
それから、彼を——」
『(ヴァンパイアが化けてたりして。まさかな——。
にしても、ヴァンパイアが首絞めて殺すか?)』
「ふむ……どう思う、イーレシスン」
衛士ジャグは首をさすった後、イーレシスンへ意見を求めた。
「ヴァンパイアじゃないと思うが。
あいつらは生き血しか飲まない。
一応噛み跡を確認してみたらどうだ」
被害者のヴーはレザーアーマーを着こんでいる。
これを剥がすのは苦労しそうだ。
鎧は身に着けるのに時間がかかる。
わざわざ着せなおしてまで血を吸ったとも考えにくいが——
そこで祐一郎は違和感に気付いた。
『腰部分が無い——』
同じ衛兵のグエンとレの革鎧には腰部分があるが、彼には無い。
「たしかに、腰を守るパーツが無い」
「「……」」
『?』
浮ついた空気を漂わせ始める、衛兵の二人。
イーレシスンは、彼らを見て舌打ちし腕組みをする。
『チ——ヴァンパイアはいったい、何時出てくるのやら』
「——」
ジャグも気が付いた。
指でつまんで、ズボンの中身を覗き込むと——履いていなかった。
「うむむ——他の下女は?」
「そこにいるファニと、リヤノ、他にウェイという通いの年配の女性が居る」
リヤノにはアリバイ。
ウェイは年配女性。
そして、ファニは若い女性。
消去法で行くと——
「一応、ウェイさんに話を聞いた方がいいですか?
ファニさん——」
彼女は顔を真っ青にして震えている。そのあと、彼女は偽装したことを告白した。
「直前まで
人気のない部屋で、
「おいおい、他のヤツは気付かなかったのか——」
「強引に……」
女性一人の力で、衛兵の男をどうこう出来るだろうか。出来るなら、そもそも衛兵は要らない。
絞め殺される間、パニックにより為す術なく見ていたか、あらぬ嫌疑を恐れて誤魔化すつもりだったのか。
腕には強い力で圧迫によりできた痕も見られ、首は縄で絞められたように見えないことから、大蛇の存在の信憑性は高まるだろう。
そして、蛇は何処から現れたのか。
ここは屋敷の奥まった場所だ。蛇が入り込むのはどう考えてもおかしい。
ジャグが疑問を呈する。
「——へび? ここに?」
それには衛兵のグエンが答えた。
——この屋敷は森に面しており、色々な動物が入り込んでくるのだという。
定期的に【動物除け】のエリクサを
「燻煙? じゃあ、なんで蛇が入り込んできたんだ?」
「恐らく、効果が切れた合間を縫って侵入しんだろよ」
「じゃあ、今もこの屋敷の中に?」
「いないだろうな」
「どういうことだ、イーレシスン」
「【動物除け】のエリクサは燻煙済みということだ」
「ん? 益々訳が分からないぞ。
燻煙済みなら、そもそも蛇が入り込む訳が無い」
「今は、だ。この中に魔法の素質のある者はいるか?」
この場にいる全員無反応。
「……それがあるとどうなるんだよ?」
衛兵のグエンが疑問を呈する。
「魔法の素質のある者なら、エリクサの存在に気付ける」
「逆を言えば、エリクサの存在に気付けるものは素質があることになるってことかよ」
『(俺は魔法の素質lv3.9あるぜ! イーレシスンよりも上だ! 発火しか使えないけど!
——ン? ……ってことは、さっきから感じてたヘンな感じはエリクサの気配だったのか?)』
「——アナナイは錬金術をやってるが、素質はあるのかよ?」
「一概に言えない——」
続けてジャグが提案する。
「じゃあ、
エリクサの存在に気付けば、素質持ちってことだな。
(イーレシスンの言いざまを信じるしかないが、もう蛇の仕業ってことにして、とっととジャーの件を始めたいんだが……。
イーレシスン、結構めんどくさいなー。まぁ、何にせよ全員集めんと始まらんな)」
「リヤノ。アナナイを呼んできてくれよ、あんた仲いいだろ」
「——え、あの——あ、はい…」
グエンの含みを持たせた言いざまに、下女のリヤノは若干不服そうに部屋から出ていった。
「……それから、一応だが。ヴァンパイアは必ず 魔法の素質 を持ってる。
だから、この場にいる屋敷の者はヴァンパイアじゃない」
「自分で言ってるだけだが、嘘を言ってるかもしれないよ……?」
グエンの物言いに、ファニとレが抗議する。
「ちょ…嘘じゃないわ!」
「そうだ! 人聞きの悪いことを言うな!」
それに対して、ちらりとイーレシスンを見やって、ジャグが口を開いた。
「素質のある人間なら、魔法の素質持ちは見てわかるだろ。
(ヴァンパイアは、必ず魔法の素質持ってるのか! 聞いてないぞ! イーレシスン!)」
「まぁ……なるほど」
「——たしかに」
『(へー)』
素質持ち同士で分かりあう、というのは常識なのだ。
「蛇が何処へ逃げたか分かりますか?」
「いえ……そんな余裕は——」
「偽装する余裕はあるのに?」
「それは——驚いて思わず逃げたので、そこまでは……」
——事情聴取は中々進まない。
時間はかかったが、端的にまとめると。
——ヤってる最中に蛇に殺されたという、酷い事故だった。
という線で固まりつつあるようだ。
もしそうなら、ヴーという男は死んでも死にきれないだろう。
性欲を制御出来ず、人目に付きにくい倉庫とはいえ、白昼堂々下女を組み敷いたまま逝ったのだ。
恥である。
——だが、ハプニングはコレで終わりでは無かった。
ガシャァァァァァン!
突然、陶器の割れる音が響いた。上からだ。
「はぁ……次から次に、なんなんだ、まったく。
また蛇か?」
「——ジャグ、死人が出てるんだ」
「……いや、良くないな。すまん」
「俺が行くがいいか」
「ああ、頼む」
イーレシスンが様子を見に行くことになった。
殆ど言葉の喋れない祐一郎が、ここにいても仕方ないので、もちろんついていく。
『——痛て!』
祐一郎は陶器の破片を踏ん付けた。
階段から床全体にかけて、陶器の破片が散乱している。結構遠くまで飛ぶものだ。
二階へ行くべく階段へやってきたが、茶色いものが大量にばら撒かれている。
最初、祐一郎は干物かと思ったが、液体がヌラヌラと光を鈍く反射させている様子から、目を凝らすとそれはトカゲであることが分かった。
どうやら、陶器の瓶に入った大量のトカゲをばら撒いてしまったらしい——
『(量からして、それなりの大きさだったはずだよな。
そいつらは何処から来た?)』
そこへ、二階の吹き抜けから、見知らぬ男がが顔を見せた。
「君たちがジャグの連れか——」
よく見ると、階段の上で年配女性と執事モランが、かたずけている。
その隣の年配女性が、おそらく通い下女のウェイなのだろう。
「イーレシスンだ。ヴァンパイア退治の助っ人で雇われた」
「私はダン。この家の当主だ。
——雇うとは?」
「衛士のジャグに雇われたんだ」
「ジャグ。なるほど——ヴァンパイアが見つかったら、是非よろしく頼むよ。我々には手に余る。
アナナイと、東側の階段から下へ降りるから、そう伝えてくれ」
「わかった」
当主ダンはそう言うと、足音を響かせ頭上を歩き去った。去り際にちらりとアナナイが見切れていた。
「——」
ウェイへ耳打ちすると執事も続く。
それを目で追うイーレシスン。
大量のトカゲは何処から来たのか。
今も二階の天井をトカゲが走っている。家の中にいるのは間違いないだろう。
それにしても、である。数が異常なのだ。
いくら屋敷が広いといっても、限度がある。そもそも餌は何処から得ているのか。誰かが餌付けでもしているのか。
——まったく疑問は尽きないが、いつまでもこの場にいる訳にはいかない。
祐一郎たちは戻ることにした。
装備:服 1kg
装備:ズボン 1kg
装備:インナー 0.5kg
装備:靴下
装備:靴 0.5kg
装備:円形盾 4kg
装備:円形盾 4kg
装備:時計
装備:雨具 2kg
リュック20L 10kg{
水袋 4L 0.5kg{
水2.5kg
}
水袋 4L 0.5kg{
水3kg
}
小麻袋 1L{
}
小麻袋 1L{
干団子0.4kg
干団子0.5kg
}
陶器の瓶0.75L 1kg{
}
小型ナイフ0.5kg
包帯0.5kg
小袋 0.2L{
木の小物入{
裁縫道具
}
}
小袋 0.2L{
火口 0.04kg
火打石 0.2kg
}
靴 0.5kg
}
Total:32.14kg
時系列順設定集 0000〜0013+0012蛇足へ
時系列順設定集 0012_00〜0012_09へ
時系列順設定集 0012_10〜0012_16へ
時系列順設定集 0012_17〜0012_25へ