同郷の奴隷達から、人間だけの理想郷の噂を聞かされるが、ダークエルフの女イーレシスンに買われた。
三日目:イーレシスンは故郷に帰るための魔法のアイテムを求め、ダンジョンを目指す。
火をつける魔法を覚えるなど、虎視眈々と力をつける祐一郎。
四日目:ハロが同行。
イーレシスンと知り合いの兵士が現れ、ヴァンパイアに殺された被害者達を調べることになった。
第三の被害者ジャーの邸宅へ向かう途中、下女リヤノを助ける。
祐一郎は好奇心から天井裏を調べる。現れた大量のヘビやトカゲなどの爬虫類を退けた。
そこへリヤノを連れたイーレシスンが現れる。
其の三十
この章の登場人物{
ハロ:同行することとなった女性。黄エルフ。ゾイと同行中
ジャグ:兵士。犯罪の取り締まりを行う。土地の有力者の血統。相談に問題を解決もしている。直情的。世話焼き黄エルフ
リヤノ:ジャー邸女中
アナナイ:純正先住ズーラ・ストラ
モラン:ジャー邸執事。大柄な高齢男性。黄エルフ
グエン、レ、?:ジャー邸用心棒
ダン:おそらく屋敷の主人の名前。レ談
}
イーレシスンの口調は、onepieceの女海賊をイメージしてます。
「私は
そして、あなたのお父様、ジャーは私の
危うい雰囲気を漂わせたリヤノの言葉に、皆が途惑いや
「な、あ——リ、リヤノがお父さんを殺した…!?」
「そうだ。蛇を使ってな」
イーレシスンがアナナイの言葉を肯定する。
「蛇。天井裏にもいた、あの大量の——?」
ジャグはイーレシスンを訝しげに見やる。
大量のヘビの由来や、今まで気が付かなかったという不自然さが引っかかっているのだろう。
跡取りのダンも、イーレシスンに疑問を呈する。
「あれだけのヘビを、殺すために集めたんですか? 我々に気付かれずに?」
「【爬虫類召喚】のエリクサというものがある」
「よくわかりませんね。他の方法でも呼べるのでは?」
「その通りだ。【
リヤノに魔法の素質は無いし、スクロールは素質が無いと読めない。魔法の品は何とも言えないが、エリクサならソレより手に入り易いだろう。
人目に付きにくい夜に、殺されたジャーの部屋に予め仕掛けておいた、ということだ」
いまいち納得でき兼ねるといった感じに、ダンは腕組みをして考え込んでしまった。
「あそこまでの蛇が集まってくれば、夜でも気が付くと思うけどね」
「恐らくリヤノにとっても想定外だったんだろう」
「想定外……?」
「【
「よくわからないな。勿体ぶらずに核心を教えて欲しいんだけどね」
その言葉にイーレシスンは首の後ろを掻きむしると、めんどくさそうに言い放った。
「——湧くんだよ。何もないところから」
「は?」
各々呆気にとられたような表情で固まる。
あんぐりと口を開け、心底馬鹿にした舐め腐った表情を見せるもの。
瞬きを繰り返したあと、眉間にシワを寄せ首を傾げるもの。
意味が解らず周りの人間に目をやるもの。
イーレシスンは予想通りの反応に息を一つ吐くと言葉を続けた。
「完全に密閉された部屋でエリクサを使うと、蛇が出てくるんだ」
「なんて?」
「証明できるのかな?」
「——ああ。離れていてくれ」
全員がイーレシスンから距離を取る。
「竜と分かたれし太古の血脈よ。我が
ゴト——
うねった硬質な蛇が、
『(なんか、思ってたのと違うし、雑……。まぁ、だけども。ヘビ召喚の呪文ゲットだぜ!)』
唐突な登場の仕方。なにより蛇の置物が虚空から出現したように見えた。もっと有機的な感触かと思ったのだろう。皆、瞬き一つしたあとイーレシスンを見やった。
シュルルルルル——
その直後一拍置いて、蛇は鎌首をもたげ舌を出し入れする。
ザク——
間髪入れずイーレシスンは
「あ。」
「すまんな。召喚は出来ても制御できないんだ」
「えー……」
イーレシスンははっきりとは言及しなかったが、爬虫類召喚とは厳密には以下のとおりである。
爬虫類召喚;爬虫類に類するものを対象とする。
効果発揮時、魔法インスタンス作成で最終出力値がランダムに決定される。
距離をパラメータに反比例する関数により出力された数値を参考に目標値を設定し、漸次判定し一定時間誘引する。
距離に反比例した強度で爬虫類を誘引する。
また、一定時間ごとに、一定範囲内に該当対象が一定数いなければ「湧き」により数を補填する。
燻煙タイプのエリクサでの効果範囲は、空気中に漂う濃さで効果強度が決定される。
「湧く」とは。祐一郎が突然この世界に現れたように、生物が突然出現する現象である。一般的に知られておらず原因も定かではない。
実は明確な矛盾があるのだが、イーレシスンは他の魔法でもって爬虫類召喚に見せかけていた。
「——まぁ、今のを見てだいたい分ったよ。流石に目の前で実演されればね。魔法で出来るなら、エリクサでも出来るという理屈だね」
「そういうことだ。もちろん誘引もするが、湧きもする。リヤノの想定を超えて、たまたま大量のヘビを招いたのだろう」
「あのパイソンも何もないところから湧いて出てきたのかな? だとしたら相当強力な魔法だと思うけど」
「いや。パイソンや毒蛇は誘引されてやって来たんだろう。偶々周囲に集まっていたのか、おびき寄せたか、何かから逃げたか……」
「なるほど。蛇の件は分かったよ。——続いてリヤノの件だけど。イーレシスンさん。さっきは厠というのは方便で。逃げようとしたリヤノを追いかけたんだね」
「その通りだ」
「何故彼女が犯人だと? 気が付いたんですか?」
「エリクサだ——。
最も疑わしいのは、アナナイだろう。だが、分かり易すぎる。後はエリクサの買い物役だったグエンと、アナナイと仲が良かったというリヤノ。わざわざ仕掛けて自分が噛まれてるグエンはお粗末すぎる」
「消去法でリヤノかい」
「ブラフにかかったのさ」
「……」リヤノは憮然として佇んでいる。
「動物を引き寄せる【爬虫類召喚】の燻煙エリクサ——燻煙の範囲に湧くか召喚させる」
とある人物の目が泳ぐ。
「——それを使って大量の蛇を呼んだと? しかし、上手く呼べても父さんに
「ジャーは【治癒】のエリクサを常飲していたと言ったな」
「ええ、それがどう関係しているんだね?」
「世の中には血管を病む病気がある。高齢の老人のように体の中はボロボロとなる。そんな人物が鍵まで掛けて、安全と思っている書斎に蛇が現れたらどう思う?」
「それは。驚くだろう、ね……」
「若いと実感が湧かないだろうが、老人は驚いただけで命を落とすこともある。この屋敷は二重壁になってたな。どこかに蛇が移動できる隙間があるんじゃないのか」
根拠薄弱だが、既に自白したリヤノを弁護するほどでもない。
実は、この屋敷は風を循環させる構造になっていて、夏でもそれほど熱くならない。
角の内側の部屋の間取りに微妙なスペースがある。そこを調べられれば、上へ登れることを証明出来てしまうだろう。そのことを意識してなのか、ダンは腕組みした。そして、だんまりを決め込んで成り行きを見守っている。
「そういえば、書斎の隠し扉壊れてたよ。壁の裏と繋がってたからそこから入り込んだんじゃねぇの?」
エリクサですっかり回復したグエンが合いの手を打った。
今だ疲労感が抜けきらない彼は、事件をさっさと終わらせてほしいのだろう。その投げやりな態度から願望が伺える。
「2階や天井裏にいたのは【爬虫類忌避】のエリクサが焚かれて、煙が下から上へ広がり屋敷に残っていた爬虫類が追いやられた結果だろう。地下にいた大蛇は偶々。煙が達したので上へ逃げて、偶然そこにいた下女のファニと衛兵のヴーを襲ったという訳だ。
そして【爬虫類召喚】のエリクサだ——」
イーレシスンが【爬虫類召喚】のエリクサに言及すると、アナナイは明らかな動揺を見せた。
「【爬虫類召喚】のエリクサは、アナナイが持っていたものだな?」
「——!」
その言葉にアナナイは、ビクリと肩を震わせた。
リヤノへ渡したのなら、危険なエリクサが使われることを知っていて見過ごしたことになる。つまり共犯者ということになってしまう。
——事件の発端はジャーの不審死。噛み跡がヴァンパイアを連想させ、犬の監督不行き届きによるトラブルが報告されていた。
犬の被害者による、ヴァンパイアの模倣犯と真っ先に疑う取っ掛かりだった。
しかし、蓋を開ければ、下女リアノの自白と、義理の息子の共謀による殺害を疑わせる内容だった。
「お、俺は、確かに持ってたけど。グエンが間違えて買ってきたやつで…」
「ああん?」
「ひっ——!」
「グエン」
「チッ……」
「確かなのか」
「……そうですよ」
一部の人間には魔法を
エリクサも魔法も卑怯な手品で、使われる前に武器で制して仕舞えば良い。という考えなのだ。
オタク蔑視とやや似ている。蔑視者はアニメと漫画の区別すらついていない事がある。
同様にエリクサと魔法の区別も
彼の場合、見事にそれと一致していた。
グエンの失態である。
「——かくっ、か、確認しないと分らないけど……」
アナナイは紛失したのか把握していなかったようだ。
基本的に危険物であるという意識が低いのだ。
より具体的には、確認頻度の低さが。
「つまり、リヤノが勝手に取ったと言いたいのか。どうなんだ」
ダンはイーレシスンへ詰問すると、イーレシスンは鋭い目つきでリヤノへ発言を促した。
彼女は
「ジャグはこの町へふらりとやって来た ただの傭兵にしか見えなかったといいます。
そして何処から得たのか、大量の宝飾品を元手に金貸しを始めると、瞬く間に大きくなったそうです。侵略戦争復興の好景気で、誰もがお金を求めていた時代だったのでしょう——」
——あたしは、ジャーさんの昔を知ってるよ——
ジャグの舎弟が、話好きで通い下女のウェイおばさんに事前に聞いていた話だ。
——亡くなった人を悪し様に言いたかないけどさ、旦那は執念深い蛇のような人だったね。いやね。悪い意味じゃなくて、金貸しなら、そういう性格がピッタリだと思うんだよ——
何処から得たのか、大量の宝飾品を元手に金貸しを始めると瞬く間に大きくなったそうだ。オーリア・ストラの侵略の戦後復興で誰もが金を求めていた。
見事に時流に乗ったといえる。
時流に乗れず流されていった人々も多かったろう。失敗を恐れず果敢に挑戦した結果、成功を掴んだ僅かな上澄みが、富豪にして一代貴族のジャーだったのだ。
彼女によれば、
「……故郷を追われたオルムウッドは、全財産を宝飾品として持ち歩いていました。オーリア・ストラ侵略戦争では脱走兵が相次いだといいます。中には100人隊がまとめて脱走したこともあったそうです。当時。脱走兵によって、オルムウッド達が襲われた事件が相次いでいました。彼等が持っていた宝飾品は何処へ行ったのでしょう——」
「まさか……」
「その通りです。ダン様——」
「君はオルムウッドだという……。戦争は10年前。オルムウッドへの略奪——そこで君は見てしまったんだね」
——10年前。彼女は虐殺の現場にいた。そこで見たのだ。そして何度もフラッシュバックを繰り返し彼女を責め苛む。
——お零れで生きるゴミ虫め!
——盗人が! どうせ盗んだものなんだろ! 俺たちが有効利用してやる!
——侵略戦争で戦った俺たちが割を食って、なんでお前らは、のうのうとしていられるんだ!
——お前らは病気を広める家畜だ! 屠殺処分してやる!
彼女はこの後裁かれるだろう。失う者など無いのだ——。
「……そうだ! 私はあいつらに滅ぼされた正統なイーノエスス人の生き残り! 私こそがイーノエススの怒り——!
お前も、お前も、お前も!
お前ら全員オーリア・ストラの連中と変わらない——」
——侵略者だ!
沈黙——
耳鳴りがひどく痛む。
一同の中で同情的とは言えない表情を見せているのは、ジャグとアナナイ以外の全員だ。
——負け犬。
——人殺し。
——終わったな。
——どうでもいい。
悲劇の主人公はお呼びじゃない。白けた空気の中、何処までも冷淡である。
「リヤ……」
ジャグが何か言いかけた、まさにその時——
涙に濡れたリヤノはエリクサの瓶を振り上げていた! 毒々しい色の液体が重力に逆らう、瓶の中で揺動していた殺意が目覚める——
イーレシスンはリヤノを取り押さえるが、もはや揮発性の【毒薬】のエリクサは彼女の手を離れ、重力により自由を得てしまった。
全てが、その場にいた全員が、スローモーションの世界を共有していた。
その中でただ一人——
『(ステータスオープン)』
更なる加速の世界へ没入する者がいる——。
祐一郎たちは毒の海に
その水面は嵐のように揺らぎ、平衡感覚を失わせる。
そして幾何学模様を描く光の軌跡が、酩酊する視界を飛び交う。
ガラスの運命を掌握するのは脈打つ五つの肉の
——それらはカルネアデスの板切れの上で
そんな掌の上で揺れる液面を包むガラスには、青ざめた一同の表情が写り込んでいた。
『はぁ、はぁ、はぁ……』
祐一郎は毒瓶を間一髪で受け止めたのだ——。
混乱しひっ迫した状況は、その場では意味が解らなくとも、後になり頭の中でようやく整理出来る事があります。
ガラスとはエリクサの入っていた瓶。五つの肉の蕾とは、それを包む五つの指の事です。
カルネアデスの板とは、複数の漂流者の前に現れた寄る辺。解毒のエリクサです。数が限られるため奪い合いになる可能性がありました。
装備:服 1kg
装備:ズボン 1kg
装備:インナー 0.5kg
装備:時計
装備:槍 2kg
地図
Total:4.5kg
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