日は正午を過ぎ、村落を照り付ける太陽が地上を照らしていた。村人も家に引っ込み、手作業をしている。暑すぎて外での作業などやっていられないのだろう。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「げ、なんだ!」
「****!」
「****!」
悲鳴が響き渡った! 村落中に緊迫した空気が走り、俺を連れてきた二人の男が槍を手に飛び出す!
丁度その時俺は、ぐったり板の間に横たわっていたのだが、やや遅れて俺の槍をつかんで重たい足を引きずりながらも追いかけた。未だ知らないことの多いこの世界を知るチャンスでもある。それに、女性を助けてちやほやされる図を頭に描いたことも否定はできない。
悲鳴のあった現場はすぐ近くだった。なにせ、100人に満たない村落で。民家が密集しているのですぐに駆けつけることができた。
そこでは、緑色の小人が女性に襲い掛かっているところだった。
緑色の小人の手には粗末な石斧が握られている。20代後半位の女性は果敢にも木の棒を手に応戦している! この世界の女性、逞(たくま)しすぎだろ!
よく見ると、緑色の小人は他にも来ており、民家の影になって見えない位置から、叫び声や物が壊れる音など、損然とした状態となっている!
「**!」
「**!」
二人は別れて、緑色の小人にあたるようだ。
これはステータス加速(ブースト)を試す、いいチャンスなのではないか?
『ステータスオープン!』
念じるた瞬間、周囲の動きがスローモーションになった! よし、実戦でもちゃんと動いてるな。
目の前の緑色の小人は既に、槍の男が向かっている。とりあえず、民家を回り込むことにした。
タン
タン
タン
タン
タン
……遅!
『閉じろ』
ステータスウィンドウをいったん閉じて、緑色の小人を探すことにしたのだった。
果たして熱風吹き抜ける、二軒先の民家から争う気配がする。
民家の手前でステータスウィンドウを開く。
『ステータスオープン』
再びスローモーションになる世界。いくぞ!
タタ
タン
音が足を地面につけたタイミングとずれて聞こえる。たしか秒速360mだったか、全てスローモーションなら音の早さも遅くなる理屈だ。
タン
タン
果たして民家の中では、血を流した女性が横たわり、子供に槍を向ける耳の長い緑色の小人がこちらに背を向けていた。耳は長いが人間とは違う種だとおもう。
タン
タン
こちらに気づき振り返ろうとする緑色の小人。
タン
タン
こちらに顔を向けつつも体が横を向いたままだ。俺は勢いのまま槍を繰り出す! 槍は、まるで家具を押しているかのような重さで、徐々に空気中で速度を上げてゆく。
出だしで狙いを誤り、このままでは緑色の小人に当らない! 俺は渾身の握力で軌道修正を試みるが、無駄だった! スローなら、どうにでもなるだろうとナメてかかったのだ!
槍は振り返りつつある緑色の小人の横をすり抜ける軌道でゆっくり直進していく。
俺は槍を戻して、次の攻撃に掛けることにした。
槍を戻していくが重すぎる! もっと早く! もっと力強く! 俺は槍を引き戻すモーションの反作用を利用して、一歩前へすり足で重心を落とし、全力で引き戻した。
緑色の小人の槍を持っている右肩が跳ねる。攻撃モーションへ移る前駆挙動だろう。
やがて手元に戻るも、俺の槍は後ろへ行き過ぎていってしまう! 重すぎる! 例えるなら無重力で、満杯の20リットルポリタンクを振り回しているかのような感覚だ! いや、20リットルより重い! 30kgはあるだろう。スローモーションになるのは自分も含めてすべてなのだ。
緑色の小人が槍をこちらへ突き出すモーションへ入った。
俺は槍と一緒に後ろへ下がることにした。槍へなるべく水平になるよう力を加えて、水平な槍の上に乗るようなイメージで両足を地面からきもち上げた。
しかし槍は上へ向かい始めた。完全に水平方向へ力を入れられなかったのだ! 電車でGOみたいな操作感覚だ。
緑色の小人の槍の穂先がこちらへ向き始める。
30kg級の重量を感じる槍の移動する向きは、未だ後方へ向いて速度は落ちつつある。俺は焦らず、水平を保つように速度が0になるまで姿勢を維持することに努めた。
緑色の小人の槍の穂先がこちらへ向き、ややフライング気味に槍が繰り出された。ゆっくりと緑色の小人の槍が迫る。
未だに俺の槍は速度0にならない! もはや、回避に専念することにした。
緑色の小人の槍の軌道を観察する。このままだとどうやら、だいぶ内側へ逸れそうで、回避する必要はなさそうだ。というか、緑色の小人の槍は1mで俺の槍は2m近くあるのだが、この距離では腕をめいっぱい伸ばしても緑色の小人では届かないだろう。安心して槍を繰り出せる。
俺は槍を両手で慎重に、緑色の小人に向かって押し込み始めた。始めは優しく正確に、徐々に力強くなるように。
30kg相当の重さに感じる槍は、徐々に緑色の小人に向かって速度を増してゆく。途中で手の置き所が悪く位置調整したため、力が乗り切らない瞬間があった。おそらくそのせいで最終的なダメージは下がるだろうが仕方がない。
そしてついに互いの槍の穂先が交差する。確実に緑色の小人の槍は外れる軌道だ。俺はそれを確認すると30kg相当となった槍を全力で両手で押し込み始めた。軌道は緑色の小人の左肩だ。緑色の小人自体がやや、回転しているので命中するか心配だ。水平に繰り出すことに集中しすぎて何処を狙うか考えてなかった。
しかし、槍の穂先は緑色の小人の左肩へ確実に直進している。最後のダメ押しに体ごと全力で押し込む。
ザ・シュ
そして、俺の槍は緑色の小人の左肩へ埋もれてゆき、穂先の半ばで止まった! 俺の全力では貫通しなかった!
そう、例え全てをスローモーションにしても、俺の力が増すわけではなかったのだ。
装備:スピア 2kg
装備:服 0.5kg
装備:上着 0.5kg
装備:ズボン 0.5kg
装備:インナー
装備:ボクサーブリーフ
装備:靴下
装備:靴 0.5kg
装備:伊達眼鏡 -
スマホ -
小銭 ¥361
タバコ 3本
¥100ライター
コンドーム
プラスチック袋{栄養剤 43錠}
ビニール袋{岩塩 -}
カギ